「いや〜流石はナナコさんの手料理、絶品ですなぁ〜」
「誰がナナコさんよ!」
突然だが団欒中である。
「はっはっはっ、そうですよ白鳥君、ナナコさんは木連のアイドル的存在。このような方と一緒にされては苦情の電話が鳴りっぱなしですよ?」
「…山崎博士。今、何気に私の事バカにしませんでした?」
「いえ〜全然〜」
山崎、イイ度胸してるな。
「そうだぞベン子、むやみやたらに人を疑うな。だからお前は有機栽培スポーツドリンク株式会社(仮)と呼ばれるんだぞ?」
「…レンって会社だったの?」
「…会社?」
「…そんな訳ないじゃない…ってベン子言うな!」
ごげすっ!
「ぎびっ!?」
「ふふふ…ここでの生活になれて腕が鈍ったか?」
「くっ…またも月臣さんを盾に使うとは…ならば!でぇりゃ!」
がっしゃーんっ!
がんっ!
「へぶっ!」
「ふっ…悪は滅びるものなのよ」
アキト、悪に認定される。
「…ちゃぶ台を武器にするとは成長したねレンナ君」
「流石はレンナさん。容赦がない」
「あ〜まだ全部食べて無いのに〜」
レンナのツッコミに関心する面々、だが食事は台無しのようだ。
「…確保完了」
しかしラピスは自分の分を確保したようだ。
流石はアキトの妹。
「あらあら、食事ダメになっちゃったのね?じゃあこっちに来て一緒に食べる?」
「「「「「いえ、結構です」」」」」
「あらそう?」
アキト母の申し出を全力で断る面々。
その理由は、
「ぬぅ…流石に時速300キロで回る回転寿司は迫力があるな」
アキト父の目の前にある高速回転する物体のせいである。
というより食えるのかそれ?
伝説の3号機
その22
「それじゃ今日は僕ちょっと出かけるので留守番よろしくね?」
「ん?何処に行くんだイカサマ衣装?」
「…その名は決定なんだね」
「当然」
「……まあいいか。うん、ちょっとヤボ用があってね」
「ヤボ用?何だ?バーゲンで包丁のつかみ取りでもあるのか?」
「まあね」
あんのか!?
「そんな恐怖しか生まれないバーゲンあったっけお兄ちゃん?」
「さ、さあな」
「…ばーげん?」
「そんな事より包丁のつかみ取りってどんなよ…」
想像はしがたい。
「それじゃ後の事はよろしくお願いします、テンカワ博士」
「ああ、任せてくれたまえ。全力疾走する大名行列並にがんばるから」
「…いえ、普通でお願いします」
「そうですか?じゃあ物凄い勢いで蒸発するみそ汁並で行きますか」
「だから普通でお願いしますってば…」
山崎、苦労してるな。
「おいおい親父、あんまり困らせるなよ。ほらイカサマ衣装から何かが出ちゃうじゃないか」
「な、何が出るんですか!?」
山崎、恐怖する。
「ところで毎日がエブリデイな親父」
「む、なんだ?我が愛しのビーボーイ!ここで会ったが3ヶ月目!!」
「まあ、確かに」
そんなに経ってたのか。
「で、何だ?」
「ああ、オレたちって何やってりゃいいんだ?何時もどうり外に出たらダメなんだろう?」
「そうねぇ、木連は地球人を悪と見ている人が多いから下手に出歩くと大変な事になっちゃうしね〜」
「そ、そうなんですか?私よくユキナちゃんやラピスちゃんと一緒に買い物に出てますけど何時も平気でしたよ?」
「あ、女性には優しいのよ」
「そうなんですか…あれ?アキトは?」
「あ、たった今これでもかって位の勢いで飛び出していったよ?」
「うん、あきとおにーちゃん、『オレは火星人じゃーっ!』って言いながら出てった」
「…あのバカ、話半分で出ていったわね」
頭を抱えるレンナ。
「よしよし」
で、ラピスに頭なでなでされていたりする。
「…まあとにかく行ってきま〜す」
ただ出かけるだけなのに何でこんなに大騒ぎになるのだろう?
「…」
で、元一朗はいつもどおり、屍中である。
「草壁さん来ましたよ〜」
「ああ、入っていいぞ…誰かさん」
いきなり誰かさん発言をするこの男、これでも木連のお偉いさんである。
「…山崎です」
「ああ、そうだったな、やすき節」
「…『や』しか合ってないですよ」
「細かい事は気にするな、やかん」
「…いい加減、人の名前覚えてくださいよ」
「気にするな。大した障害がある訳でもないだろうが」
「…もういいです」
「それで今日は何の用だ?」
「…ええ、先日もお話しましたがテンカワ夫妻とその他の捕虜の件なんですが」
「…なあ夜勤」
「…山崎です。なんですか?」
「テンカワとは誰だ?」
「…………10年前から空間跳躍の研究をしている火星の捕虜ですよ」
「…居たか?」
「居ます。と言うより時々会ってるでしょ?」
「……………ああ!あのふざけた言動をする男とほんわかした女か!」
ぽんっと手を叩き草壁納得である。
「…まあ合ってますね。で、その2人と捕虜の件なんですが」
「…なあ役所」
「山崎です。どうしました?」
「その報告は3ヶ月前に行う筈ではなかったか?」
「人の名前は覚えないのにそういうことは覚えてるんですね…」
「人の上に立つものはこうでないとな」
「いえ、凄まじく間違ってると思いますよ?」
「そうか?まあいいだろう、そういう細かい事は」
「全然細かくないです…もう話戻しますよ?それでそのテンカワ夫妻と捕虜ですが…」
「何だ?また実験にでも使うのか?」
「それも良いのですが…3ヶ月前にも言いましたが面白い事が分かりまして、その事についていい案が…」
「ほう、それでその案とは何だ?矢文」
「…山崎です」
本当に人の名前を覚えないヤツである。
「…では早速、取り掛かりますね」
「うむ」
どうやら話にひと段落着いたようだ。
「それじゃ、僕はそろそろ行きますよ。ではまた」
そう言って退出する山崎。
「…ホトトギス」
がたこんっ!
草壁の呼びかけと同時に背後から盛大な音が聞こえた。
「…何をやっているホットケーキ?」
「…」
当の盛大にコケた男、草壁の呼びかけに答える気力も残っていないのかただヒクついていた。
「一体どうしたいうのだ?」
まあ理由は言うまでもない。
「ははは…何だかここに来るたび疲れるような気がするねぇ〜」
草壁の下からの帰り道、そんな事を呟きながら山崎が歩いている。
「だからって3ヶ月も報告を伸ばす僕も僕か。ははは…」
木連こんなのばっかか。
「おや?なんだか賑やかですね…ん?あれは確か…」
山崎がふと見た方向にソレは居た。
「え〜?これじゃ滑れないよ〜?」
「軟弱者がーーーーっ!!」
どがぁ!
「げふぅ!?」
騒ぎの当人、アキトは全力でパンチを放った!
「ど、どうだ分かったか!」
「自分で自分の顔殴って分かったか?って聞かれても…」
「ふっ…オレはこう見えても『歯医者さんに痒いとこありませんか?』って聞かれてことがある程の男だぞ?」
嫌な歯医者である。
「何言ってんの?…でもお兄ちゃん、すべり台がおろし金になったらだれも滑れないと思うよ〜?」
「何を言うか!よしオレが手本を見せてやる!よーく見ていろ!」
「うん、わかったよ…」
「それじゃ…」
ぞりぞりぞり…
「ぎゃあああああああぁぁぁっ!!!」
自爆もいいとこである。
「だ、大丈夫〜?」
「あ、ああ。全然OKだ。さあレッツチャレンジ!」
「いや」
「何故だああああああぁぁぁっ!?」
「…何をやっているんですか君は?」
「ぬ?未確認飛行物体発見!」
「落ち着きなさいって」
ヤケにハイテンションなアキトだった。
「なんだ、イカサマ衣装か。何の用かのぅ…ごほごほ…」
「何で突然老けてんですかアナタは…それで、何やってるんですかこんな所で?」
「おお、ちょっと消防署に電話したら留守番電話だったんでな、ちょっと様子を伺わない方向で」
どんな消防署だ。
「…一体何がしたいんですかアナタは」
「それはオレが聞きたい」
「…」
もはや黙るしかない山崎だった。
「じゃあね〜お兄ちゃん」
先ほどの子供が手を振って帰っていく。
「おう!まさしくオレはお兄さんだ!だが間違ってもおじさん等と呼んだ日には明日のお天道様は拝めないと思え!」
何する気だアキト。
「鬼かですかアナタは…あ、そうそうテンカワ君」
「何だ?イカサマ衣装?」
「…僕は山崎ですよ」
「ん、だからイカサマ衣装」
「…はぁ、何で僕の周りはこんな人ばかり」
「何か言ったか?」
「いえ、別に」
「そうか?何気に苦労してるって足の裏に出てるぞ?」
足の裏か!?しかも見えるのか!?
「…まあ、それはいいとして、ちょっとご相談があるんですよ」
「装弾?」
「相談ですってば。何で弾詰めこまにゃならないんですか?」
「ああ、そりゃあキャベツの収穫には欠かせないからな」
「キャベツの収穫に何で装弾の必要があるんですか…?」
「ん〜じゃあ、きゅうりでもいいぞ?」
そういう問題じゃない。
「…………話聞く気あります?」
「勿論!タイムサービス並にあるぞ!」
「…なんだか一辺その頭の中覗いてみたい気分になってきましたよ」
「はっはっはっ、安心しろイカサマ衣装!おそらくいい感じに漬かってるぞ?」
「あなたの頭は漬物樽ですか…」
「おしい!実は浅漬けだ!」
「…もういいです。それでお話があるのですが、そうですね…昼食を何処かで食べながらにしましょうか」
「…なあ一つ聞いていいか?」
「なんです?」
「昼食って何だ?」
「…昼に取る食事のことですよ」
「なにぃ!?それを『昼食』と呼ぶのか?…知らなかった」
「………………アナタは一体何処の星の人間ですか…」
「ぬう…それは難題だな。よしヒントだ!南南西の方角に向かって上下しろ!」
「…それでどうなるんです?」
「まあ、鼻血は覚悟だな」
「……………………………………………なんだかどっと疲れました」
「ん?疲れたのか?そんな時はこの特性みりんを飲むといいぞ?何気にハッカ味だ」
みりんのハッカ味って一体…。
「…これ以上付き合っても時間の無駄ですね」
さくっ
「はぅ!?」
「あ、間違えました。こっちです」
何と間違えた山崎。
プスっ
「ほうっ!?…………………なんだか久しぶりな感じ」
ぱたっ
アキトは眠りについた!
何気になんか呟いたようだが気にしないでおこう。
「全く、もう少し穏便に済ませたかったんですが…仕方が無いですね。では行動開始といきますか」
山崎、何かを始めるようである。
「あ、折角買ってきた包丁が汚れちゃいましたね〜」
買ってきたのか!?包丁のつかみ取りで!?というより間違えんなよ!
りりーん♪
「はいはーいっと、只今この電話番号は使われておりません。来々軒の番号は末尾が2です。お掛けなおしの上、
迷惑料としてラーメンの出前よこせ、この10時きっかりお届け宅急便野郎!」
げすっ!
「え〜、こほん。代わりました。レンナです」
アキト父、お約束かまして、散る。
「ナイスツッコミよレンナちゃん」
その後ろではアキト母が親指を上げていたりする。
「あれ?山崎博士ですか、どうしたんですか?え?テンカワさん達を軍施設に呼んでほしい?
どうしてまた?あれ?もしもし?山崎博士?…切れちゃった」
「どうしたのレン?」
「ん?なんだかお仕事みたい。アンリさーん」
アキト母を呼ぶレンナ、だが…
「あらあら、大きなたんこぶ」
なでなで…
やっぱり聞いちゃいなかった。
「…アンリさん。旦那さんに膝枕してないで話聞いてくれます?」
「あらあら…」
「『あらあら』じゃないですよ…あ、伝言です。山崎博士がテンカワさん達に軍部に有る第5研究所まで来てほしいって」
「第5研究所?何かしら?今日はお休みの筈だけど?」
「まあ行けば分からないだろう」
「分からないんか!」
思わずツッコミを入れるレンナだった。
「そうね。それじゃ悪いけどレンナちゃん、お留守番頼める?」
「あ、はい任せてください」
「何かあったらココに電話して、私達の名前を出せば取り次いでくれるはずだから」
「分かりました」
「おーい、行くぞー。早くしないと伸びるぞ〜」
アキト父、お前は麺か。
「は〜い。じゃ、宜しくね」
そう言ってアキト父の元に走っていくアキト母。
びゅん!
「お待たせ」
「ははは、相変わらず凄い瞬発力だな」
「ん〜でも昔はもう少し早かったわよ?」
「そうだったかな?」
ぽややんな空気が漂っている。
「…今、走ってるの見えなかった」
何者だ、アキト母。
「…あれ?そういえばユキナちゃんとラピスちゃん何処行ったのかしら?」
「ああ、ユキナとラピスならさっき遊びに出かけましたよ?」
「うむ、やけに楽しそうだったな」
レンナの疑問に九十九と元一朗が答える。
「お〜い2人共〜何処〜?」
だがレンナは聞いちゃいなかった。
「「無視かい!」」
ハモリツッコミ炸裂である。
「来たぞー帰るぞー」
「来た瞬間に帰らないで下さい!」
流石はアキトの父、いい根性している。
「それで山崎博士、一体どうしたんですか?今日はお休みの筈では?」
「え?ええ、実はちょっとご相談がありまして」
「装弾?」
「…何気に息子さんと同じボケかまさないで下さい」
「何!?アイツがこの技を!?」
技なのか。
「成長したな…」
「ええ、月日が経つのは早いですね」
「なんでそこで浸るんですか…」
テンカワ家特有なのだろう。
「で?ご相談とはなんですか?」
「え?ああ、実は…」
どごんっ!
「ふざけるな!………て、手が…ぐおぉ…」
アキト父、おもいっきりテーブル叩いて自爆である。
「山崎博士、どういうつもりです?幾らなんでもそれは受け入れられませんよ?」
「何を言います。科学者にとってこれは切っても切り離せない道ですよ?」
「それじゃ、切ーった」
「ああああああ、切らないでくださいよ〜…って何やらせるんですかぁっ」
「乗ってたくせに…」
「と、とにかく、ここでのあなた達の立場を考えれば断ることは出来ない筈ですよ?」
「ふん、なんと言われようとフラミンゴを使った実験など誰がやるか!…だからって人もダメだぞ?」
何故フラミンゴなのだろう?
しかも人が二の次である。
「そうよ。幾ら科学者とはいえ、それはあまりにもやりすぎだわ」
「そうだ。それにフラミンゴって生きていくのに欠かせないものだし」
そうか?フラミンゴだぞ?
「ふふふ、分かっていませんね〜。科学を追及するのに一番必要不可欠なものは何だと思います?」
「…さあな。もなかか?むぐむぐ…」
「科学の何処にもなかが必要なんですか…しかもお茶請けのもなか、さり気に僕の分まで食べないでください」
「けちけち言うな。どうせたっぷり有るんだろう?」
「全く…さて、話は戻りますが科学者をやる上で必要なもの、それは実験材料でも研究資金でもない、好奇心と探究心ですよ」
「…じゃあ何か?アンタはその好奇心と探究心を満たすためだけにフラミンゴを使って実験をやると?」
嫌な好奇心と探究心である。
「その通りです。これに関してはあなた方も同類ですよ?実験のために他の生き物を使う事は良くても
フラミンゴを使う事はダメなんて理屈は通用しませんからね」
「ふん、言うじゃないか青三十才」
「…普通は青二才でしょう」
「いいの。お前見た目三十超えてそうだから」
「…もういいです。さて、お話はここまでにしましょうか。で、お返事は?」
「はいの180度だ」
「つまり『いいえ』ね」
ナイス通訳。
「どうしても?」
「聞くなそんなこと。恥ずかしいじゃないか」
「あら、アナタったら照れ屋さんねゥ」
「…はぁ、仕方ありませんか。あなた方の生態跳躍に関する知識は惜しいのですがね」
「んなこと知りたきゃ自分で調べろ。伊達に科学者という名札さげてるわけじゃないだろう?」
「はい山崎博士」
そう言ってアキト母が山崎に何かを手渡す。
「…律儀に『かがくしゃ やまさき よしお』の名札渡さなくても」
「まあ最低限の礼儀だな」
どんな礼儀だ。
「しかし交渉決裂ですか。こりゃ怒られるかな〜」
「ああ、たっぷり怒られて来い。小屋に閉じ込められてもピーピー泣くなよ?」
「ん〜でも閉じ込められる前にちゃんとご飯食べなきゃダメよ?軽く1ヶ月はその中だから」
長いな…。
「はっはっはっ、参りましたね〜…でもこれならどうです?」
そう言って山崎がパチンと指を鳴らすと壁に突如映像が写しだされる。
そこには…
「これを見てもまだ断りますか?」
「ん〜?おや、アキトじゃないか」
「あら、本当にアキトね」
「……………………………それだけですか?」
「「何が?」」
「自分の息子が手術台に貼り付けにされてもがいているんですよ!?動揺とかしないんですか!?」
「ああ、そうだったな。忘れてた」
「アナタったら本当忘れん坊さんゥ」
「はっはっはっ、参ったな」
のん気である。
「い、いいんですか!?あなた達がそういう態度を取ると息子さんが無事ではすみませんよ!?」
「ほお、どうなるんだ?」
「ちょっと興味があったりするわね〜」
「あなた方、本当に親ですか?」
「「まあ、2%確率で親」」
「低っ!」
「「………じゃない方」」
「紛らわしいわ!…もう知りませんよ!こうなったらセルフサービスで手術しちゃいますからね!?」
嫌な手術だな。
『くおらああああぁぁっ!離さんかぁぁぁっ!!ぶっとばすぞーーっ!!!』
アキト必死に抵抗中。
「はいはい、大丈夫大丈夫、落ち着いて。痛くするから」
『ぬああああぁぁっ!!ダメだろそれじゃーっ!!!』
「おー良かったなアキト。ガンバレよー」
「あらあら、大変ねー」
テンカワ夫妻のん気である。
『止めさせんかあああぁぁっ!!』
「さあ、科学の進歩に遠慮は無用!どーんといきましょうか!」
『無茶言うなああああぁぁっ!』
「はっはっはっ、遠慮しないで」
『あ〜もうコイツ!完璧に脳みそがバーストしかけてるな!?』
「さあ行くよー」
『コラ!止めんか!今オレに触るともれなく不幸セット、紐の切れた靴と黒猫とカラスと不幸の手紙と大凶のおみくじがついてくるぞ!?』
「はいはい。まあノラ犬に噛まれたと思って諦めるんだね」
『いやーーーーーーーーーっ!!』
漫才の終結と共に山崎が何かをしようとするが、そこへ、
『アキト〜何遊んでんの〜?』
『…あきとおにーちゃん楽しそう』
『おお!兄色リスにラピUではないか!交代するか?』
『ん〜いいや。何か怖そうだし』
『…ぽちぽち』
何処から入ってきたのかユキナとラピスがアキトの居る手術室に潜り込んできた!
しかも何気にラピスが拘束といてるし。
「…助かったみたいね」
「だな」
「……………な、何でえええええええぇぇぇっ!!!!?」
まあ山崎の気持ちも分からないでもない。
しかしここの警備は一体どうなっているのだろうか?
「しかしなー山崎博士」
「な、なんです?」
「いやな、アキトを人質にとって俺達を脅したのは良しとしよう」
「はぁ…」
良いのだろうか?
「まあアキトが息子だから利用したんだろうが…それって別にラピスでも良かったんだじゃないか?」
「ふっ…甘い、甘いですよテンカワ博士。そりゃあワッフルに練乳かけるくらい」
「ぬ…それはキツそうだな」
「そうかしら?私は美味しそうだと思うけど?」
アキト母、極度の甘党のようである。
「ラピスを使う?それは勿論考えましたよ。ですが、それじゃあ…
僕、根っからの悪人みたいじゃないですかっ!!!」
山崎、魂の叫びである。
「…そうか」
「…そうよね」
納得してるし。
「まあアキトなら多少壊れても融通利きそうだし」
「そうねぇ…ちょっとくらい改造されても喜びそうだし」
アキトの評価って…。
「でしょう?だからアキト君を使ったんですよ」
「うむ、よく分かったぞ山崎博士。さて、おーいアキトー」
『ん?その声はレッドッドキングか?』
「バカモノ、今は怪人もち男だ」
いつクラスチェンジしたのだろう?
『何!?何時の間に!?くっ…小1時間どころか半日は問い詰めたいとこだが今は勘弁してやろう。本来なら下手すると乱闘だぞ親父!』
「ふん、この父に勝負を挑むか。だがまだまだ早いぞ、あと2〜3分したらかかってこい!」
あっという間のような気がする。
『それで親父、一体何の用だ?今ちょっと祭が催される予定なのだが』
一体何時決定したのだろう?
「そうか、実はここ、もうすぐ爆発するから物凄い勢いで逃げろ。死んだように」
『…なあ、怪人もち男』
「何だ?ちなみに必殺技はふくらみだ」
どんな効果があるのだろう?
『耳が35体合体したのかオレには爆発するって聞こえたんだが?』
どんな耳だ…。
「大丈夫、異常だ。間違いない」
『そうか。そりゃ良かった』
「はっはっはっ、そうだな良かった良かった」
流石は親子会話に無駄…しかない。
「『はっはっはっ』」
ごごんっ!…こん
「『ほら、笑ってないで逃げるわよ』」
『…逃げる』
ユキナ、アキト母、ナイスツッコミである。
勿論おまけはラピスだ。
「待ちなさい!そうはいきませんよ!簡単に逃がすと思いますか!?」
山崎、立ちはだかる!
「大丈夫よねアナタ?」
「おう!逃げるが引き分けってな!」
引き分けなのか。
しかし復活が早い。
「でぇい!」
こんっ…ころころ…
何かが山崎の足元まで転がってきた。
「…何ですかコレ?」
「閃光が出る予定の玉だ」
「不発ですね」
「…不発ね」
「…不発だな」
「「「…」」」
ちょっと痛い沈黙が続く。
「はぁ…仕方ないですね。コレ代わりに使ってください」
山崎が懐から今度は小さな玉を取り出しアキト父に手渡す。
「おお、ありがたい。では…どりゃ!」
ドン!
爆発と共に白煙が辺りを包む!
「おわぁ!し、しまったぁ!」
「ぬう…中々おいしいボケを…」
「ほほほほ…楽しい方ね〜」
山崎、天然か?
てててて…
で、手術室を抜け出したアキト、ユキナ、ラピス、只今逃亡中である。
「ん〜しかし親父め。爆発などと、なんて…羨ましいことを!」
「何で羨ましがるかな〜?」
「…羨ましい?」
「おいおい何言ってるんだ兄色リス、爆発は笑いの基本だぞ?」
「そうなの?」
「そーなの?」
「勿論だ!で、爆発の後はアフロ!これで決まりだ!」
「…そういえば警備の人全然出てこないね〜」
「…静か」
「………流すなよ」
アキト、ちょっぴり落ち込む。
「しかし本当に静かだな」
だがすぐに立ち直った。
「ん〜…はっ!ラピス、今何時だっけ?」
「…午後3時」
「3時!?…し、しまったぁ〜今はティータイムだよ〜」
「お前らは英国紳士か」
珍しくアキトが突っ込む。
「じゃあ仕方ないよね〜…そうだ!私達もお茶にしようか!」
「…私、ミルクティーがいい」
「ぬ?…ならばオレは玉露で」
今、爆発寸前じゃなかったか?
がちゃがちゃ…
「アキトーこっちは私とラピスの2人でいいから場所の用意しておいてー」
「あきとおにーちゃん、宜しく」
「おう!しかし茶会か。早速コレを使う時が来たな…」
そう言ってアキトが何かを取り出す
「何それ?」
「…何?」
「ん?これか?これはな?親父特製全自動カップかき混ぜ機『那流吐』だ!!」
「…何それ?」
「…なると?」
それ以前にどっから持ってきた?
「うむ!よくぞ聞くんじゃねぇ!!…さて、これはだな?」
どっちなんだアキト。
「なんとカップに入ったお茶を自動的にかき混ぜて砂糖を溶かしてくれるのだ!凄いだろ!!」
「ラピス、スプーン用意して」
「わかった」
「…あのーもしもし?兄色リスさん?」
「何?」
「折角これだけ説明したのに、無視は酷いと思いません?」
「だって必要ないし」
「うん、スプーンで十分」
その通りだ。
「…もしかして、コレ無駄?」
「「と言うよりいらない」」
「そんな…折角用意したのに」
「しまえしまえ、そんな無駄にしからならいもの」
「…利用価値無し」
アキト父の発明、ボロクソに言われて無駄に終わる。
「そんじゃそこの応接室でも使わせてもらうか」
「うん、私達もすぐに行くよ」
「…やかん…何処?」
だから爆発寸前じゃないのか?
「ふんふ〜ん♪っと、さて………迷った。またか!と、一人ツッコミを入れてみるオレ、とってもいい感じ」
何を訳の分からない事を…。
「ん〜…確かそこ曲がり角を上に…」
上へは行けないだろう。
ぬぼっ
アキトが角を曲がった瞬間、突如目の前に未確認生物が現れた!
「うおおおぉぉっ!?ビ、ビックリしたぁ!」
「ん?何だ貴様は?」
「む、何だとは何だ。お前こそ何者だ!それ以前にそのトカゲのお面を外して素顔を見せろ!初対面の相手に失礼だろうが!」
「…コレは自前だ」
お前も初対面の相手にソレは無いだろう。
「嘘つけ!そんな人の規格をとび抜けた顔が有ってたまるか!」
「ほぉう」
「そうだ!その死ぬほど怪しい顔に、人目をはばかるマント!
時代錯誤もいいとこの編み笠!煌く小刀!怪しく!地味にこそこそと!
こいつ絶対陰で犯罪やってるぞ!と言わんばかりの格好だろうが!!」
「むぅ…なかなかの洞察力」
認めるのか!?
「よっし正解!商品はなんだ!?やはりお約束で金のプレートか何かか!?」
何時からクイズ番組になった?
「少し落ち着け貴様は…しかし意外と見込みがあるかもしれんな。どうだ?我の部下になるか?」
「誰がなるか!オレをお前のような人間ビックリショーと一緒にするんじゃない!」
いや、十分その中に入れるぞアキト。
「ほ、ほお…」
「そうだ!公共の場でその顔はちょっと心臓に悪いぞ!と言うより外歩いてたら絶対補導されるぞ!?」
一体どんな顔なんだ?
「貴様…問答無用で切り刻んでやりたくなってきたぞ…」
「む?そうか?まあ確かにそういうのも『親父のクシャミがうるさいから』という理由で世間的には許されると思うが…」
「…どんな理由だ」
「とにかく元気出せ!まあアンタの顔が認められる日は永遠に来ないと思うが気をしっかり持てよ!」
「………もういい」
「何だもういいのか?まあオレもそんなに暇じゃないからな。ああそれとコレは珍しいもの(トカゲ顔)見せてもらった駄賃だ、とっとけ」
ポトリとトカゲ男に黒飴(特大)を手渡すアキト。
「………………」
「じゃあな!ああ、それと万国ビックリショーという名の番組に出たら教えろ。おめでとうの花束を一輪贈ってやるぞ?」
ソレは花束ではない。
「あ、そうだ!よく考えたらオレ、家のガスの元栓締めてなかった!急いで帰らなくちゃ。じゃあな、トカゲのおっさん!」
そんな捨て台詞を残しアキトは去っていった。
「………………………………」
そして、当のトカゲ男は手元にある黒飴(特大)を見つけながら呆然としていたとか。
「そういえばアナタ、爆発って何時なの?」
「ああ、10日後だ」
遅っ!
アキト…いや謎のトカゲ男の運命はどっちだ!?続くような続かないような思わなくも無きにしも非ず。
あとがきです。
こんにちは、彼の煤iかのしぐま)です。
え〜、掲示板にもありましたがこのHN、煤iシグマ)の部分について不都合が生じるとのことで変更も考えていましたが今更変えるのもなんですし、
突然変えたら管理人さん、代理人さん、そして感想を下さっている方々や読んで下さっている方々にご迷惑かと思いましたのでこのように
『彼の煤iかのしぐま)』読み仮名つけました。
ですのでこれからは『彼の煤x『かのしぐま』どちらでもお好きにお呼びください。
どうか、これで勘弁してやってください。はい。
…では、気を取り直して。
出た。
ついに出た。
やっと出た。
長かった…。
いや、本当に。
出ました!謎のトカゲ男!(核爆)
…まあバレバレですが(汗)
更にボケだし(泣)
しかもまあ山崎も天然だし、
草壁も人の名前覚えないヤツだし、
他の奴等は英国紳士(?)だし…
さて、何気に大変な事になってきましたよそこの方!(誰?)
いよいよ動き始めた物語!
…まあギャグばっかりでちっとも進んでなかったのは私の責任ですが(激汗)
次回は大脱出!…の予定(爆)
アキト、レンナ、ユキナ、ラピス、山崎、草壁、謎のトカゲ男…ついでに九十九、元一朗。
そしてテンカワ夫妻の運命は!
そんな訳でここまで読んで下さった方、感想を下さった方々に感謝をしつつ
次回に続く!…何時かはわかりませんけど(滝汗)
…まあ絶対にシリアスにはならないでしょう(笑)
では最後に…決まりましたよアキトに対するラピスの呼び方。
『あきとおにーちゃん』
ナイツさん!元ネタありがとーっ!アナタのおかげだ!…ちょっとアレンジしちゃいましたが(汗)
代理人のツッコミ
いやだっ!
全身にワセリン塗りたくったマッチョとか親バカとかロリペドとかな草壁も嫌だけど、
こんな津久井教生さんの度を越した早口で「ふ・・・・・また、世界を縮めてしまった」とか
「俺がスロウリィィィ!?」とか喋ってそうな草壁も嫌だーッ!(爆笑)
(分からない人は「スクライド」とゆーアニメのビデオを借りて見て下さい(爆))