話は前回より数分ほど遡る。

 

「お〜アレが月か〜」

「ホント、初めて見たわ」

「お月様…」

どうやら地球圏まで到着したようだ。

現在、月の手前辺りである。

「ようやっと到着か…もうすぐだ。もうすぐこの地獄から…」

「アキトぉ?何か言ったぁ?」

「いんや何も」

「そう?」

「ああ、ココアの神様に誓ってもいい」

いるのかそんなの?

「そうかぁ。私はてっきりここを地獄って言ったような気がしたんだけどなぁ〜」

「…聞いてんじゃねーか」

まあ、お約束である。

ちなみに『まいだーりん』という呼び名は一時的に封印された。

流石にあんな風に呼ばれていてはバレバレだからという事らしい。

 

「なんだかんだで仲良いね、あの2人」

「うん、2人共好きだから仲が良いと私も嬉しい」

和やかムードが漂うが、その時。

 

がくんっ

 

「わ!?」

「おお!?」

「わわっ」

「珈琲の祟りか!?」

衝撃が船を襲った。

 

「な、何〜?」

「どうしたの?また前みたいに隕石か何か?」

「う〜ん、どちらかというと今のは突然止まったっぽいけど…ん?ラピス何してんの?」

「ちょっと調べてみる」

コンソールパネルに手を置き、船内を調べていくラピス。

「凄いねラピスちゃん。そんな事出来たんだ」

「そういえばラピスの手の甲に文様が出てるね。これのお陰なのかな?」

「おう!オレにも似たようなのがあるぞ?ちなみにコレはイリュージョン・フィンガー・シリーズ、

通称『IFS』と言って実は某秘密結社の…」

「これはね『IFS』って言って、火星では結構メジャーなものなんだけど、

ナノマシンを体内に注入してその補助でコンピュータや機械を操作出来るようになるものなんだよ?」

「へ〜」

「…あの、オレの話も聞いて欲しいな〜」

「「や」」

「…くすん」

アキトいじける。

 

「わかったよ」

「それで原因は?」

「うん、無理してここまで来たせいでエンジンやその他の機関がイカレちゃったみたい」

「ま〜確かに結構なスピードでここまで来たからね〜」

あれだけぶっ飛ばしていれば当然である。

ピピッ

「あれ?」

「ん?どうかしたのユキナちゃん」

「うん、何か反応があったみたい」

「反応って…」

「…何かが接近してる」

「接近?ラピスちゃん、何か分かる?」

「うん、待って」

「近づいてるモノって何だろう?」

「さあ?」

「少なくとも多くとも生八橋でないことは確かだな」

「「だったら言うな」」

「…くすん」

アキト再びいじける。

「映像出るよ」

ラピスの操作により外の映像が映し出される。

「ほら、アレ」

「あ、ホントだ」

「んん?何だか人型みたいに見えるけど…」

「あ〜ありゃエステだな」

「えすて?何それ?」

「あきとおにーちゃん、何?」

「…と言うより見事にまあ復活したわね」

最近、立ち直りの速度が飛躍的に上昇している。

「おう、エステか?正式名称エっちゃんナっちゃんの本格派ライフサイクルというもので、まあ一種の兵器だな。

ちなみに略称はエステバリス、更に略してエステ、もっと略すとスス、別名ちょっぴりキュートなホタル好きの天気予報士だ」

「「絶対嘘でしょそれ」」

「…違うの?」

そんな名称嫌だ。

「…最近冷たいな」

当然であろう。

ピーピー

「…あ」

「どうしたのラピス」

「あれ、どんどん近づいてくる」

「あ、ホントだ」

「何だろ?もしかして救助かな?」

「でも凄いスピード出してるわよ?」

「そうだね」

ピーピーピー

「…更に接近」

「ね、ねえレン」

「な、何かなユキナちゃん」

「もしかしてアレって…」

「うん、私も今そうじゃないかなーって考えてたとこ」

「「ま、まさか…」」

嫌な考えが頭を過ぎり真っ青になるレンナとユキナ。

「どうしたの?」

「さあな、おそらく変な物でも捕ったんだろう………ん?あのエステのパーソナルカラーは確かヤ…」

アキトが何かを言おうとしたその時ソレは来た!

 

 

 

 

『ガァイ!スゥゥパァァァァァ!!ヌァッパァァァァァッ!!!』

 

 

ずごがあああああぁぁぁぁん!!!!

 

 

「「「「のびゃああああああぁぁぁっ!!!?」」」」

 


 

 

 

 

 

 

 

 

伝説の3号機

その27

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビー!ビー!ビー!

警戒音が鳴り響く。

「なんなのもー!あのロボット、一体何の恨みが…って、わわわ!ど、どうしよう!?何かエンジンの辺りから火が出てるよ!?」

ユキナが指差す先には火の海に包まれる船内の映像。

「お、おお落ち着いて皆!そ、そうだ、こういう時は手の平に男爵って27回書いて一晩寝ればスッキリ!!…出来るかぁ!

レンナ一人でボケとツッコミである。

「…もうこの船ダメ」

只今『世弐下』乗務員混乱中。

「皆の衆、注目じゃ!」

そう言うと何処からともなく取り出した笛を『ピッ』と鳴らし号令をかけるアキト。

「「「何?」」」

「とあっ」

シュバッ!!

突如アキトの体が宙を舞った。

「「「と、跳んだ!?」」」

そのまま空中で1回転を加えレンナ達の前に着地する。

「さて……………………………………どうしたものかな?」

「「さっきの意味は!?」」

どうやらないらしい。

「…しかも何も考えてない」

いかにもアキトだ。

「仕方ない!じゃあ今すぐ時間を戻せ!」

「「出来るか!」」

「何!?生意気な!」

「「無茶苦茶よ…」」

「…もくもく」

ピピピッ

そんな面々をほおっておいて1人で何かの作業に没頭するラピス。

ようかん食べながら。

ガコンッ

「わわ!?」

「な、何!?」

「ぬ!?ラピU、何をした?」

「ブリッジ部分を切り離して脱出させた」

「「おお!」」

「そうか!誉めてつかわすぞラピU!」

偉そうにふんぞり返りラピスの頭をなでなでするアキト。

「…」

ラピス、ちょっと嬉しそうに俯く。

「あ、大変!」

「今度は何!?」

「さっきのロボットがまた向かってくるよ!?」

「ええ!?」

「でもこの脱出艇、早く動けない」

「「えええ!?」」

「ぬぅ…仕方あるまい。こうなれば親父に託された最後の手段を使うか」

「最後の手段?」

「そんなの有ったの!?だったら早く!!」

「まあ待て。ラピU、ヤツが『世弐下』本体に差し掛かったら合図してくれ」

「わかった」

「ど、どうするの?」

「くだらない事やったら承知しないわよ!?」

「まあ見てろ…まだか?」

「もうすぐ………今」

「よし!てい!!」

アキトが叫んだと同時にまたも何処からともなく取り出したスイッチを押した!

 

 

ちゅどぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!

 

 

爆発音が辺りに響く…。

「「へ?」」

「…『世弐下』爆発した?」

「ふっ、見たか。親父があの船に取り付けた唯一の武器『自爆装置』だ!」

「「「…」」」

アキトのセリフを聞き青くなる面々。

「…ね、ねえアキト」

「何だ?ハテナ?」

「もしかして木連を脱出してからそのスイッチずっと持ってたりする?」

「おう、勿論!肌身離さず寝る時も一緒だ!!」

「「「…」」」

再び沈黙が支配した。

で、

 

「「いやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」」

「…危ない」

 

泣き叫ぶレンナとユキナ。

ラピスの言うとおり危険極まりない。

よく今まで無事だったものだ。

 

 

 

 

『ぐぉわあぁぁぁぁあぁぁっ!!!?』

その頃、当のエステは『世弐下』の自爆に巻き込まれ大損害である。

合掌。

 

 

 

 

ピピッ

「あ」

「今度は何〜」

「う〜」

疲れきった顔のレンナとユキナ、ラピスの声に僅かに反応する。

「うん、もう1機さっきと同じ形のロボットが近づいてくる」

「え〜また〜?」

「もう嫌。いっそ一瞬で散らせて」

レンナ、人生に終止符を打つ覚悟を決める。

「むむ?またか?ではまたも最後の手段を…」

「「やるなぁぁぁぁぁっ!!!」」

 

ごげぐぢゃ!!

…ぺくっ

 

「一瞬で散らせてって言ったじゃないかぁ…げびゅ」

「アンタに散らされるのは嫌なのよ」

我侭である。

ちなみにラピスのトドメは裏拳だ。

 

『そこの艇ー止まりなさーい』

「え、何?」

「通信?何処から?」

「…あのロボットからみたい」

「…今度は問答無用で攻撃されるようなことは無いみたいね」

「だ、大丈夫かなぁ〜?」

「どうするの?」

「………よし、じゃあ私が話して…」

「おう、こちらは『角煮風味ストロベリー』だ。誰だお前は?さっさと言え!

ちなみに拒否権は認めないからな!」

『…は?』

 

がしょん!!

 

景気のイイ音が鳴り響いた。

「あ、すみません。こっちの話です。あははははは」

『そ、そう。でも彼、大丈夫なんですか?何だか壁にめり込んでいるような…』

「気のせいです」

『でも背後にちゃんと…』

「目の錯覚です」

『さっき凄い音も…』

「空耳です」

『記録にも…』

「消して下さい。今すぐ。光よりも早く。可及的速やかに

『…』

もはや沈黙するしかないエステのパイロットであった。

 

「アキト〜生きてる〜?」

「つんつん…おきとおにーちゃん、大丈夫?」

「…」

今回は少々ダメージが大きいのか復活に時間が掛かりそうである。

 

「それで、アナタは?それにさっきのロボットは一体なんだったんですか?」

『…その事ですが少々複雑怪奇な事情がありまして…それにこのままお話するのもなんなので私達の艦に来てくれませんか?

あなた達はどうやら漂流者のようですし、こちらで保護しますので』

「え?あ、そうですね。助かります」

『では、けん引しますね』

早速けん引作業に取り掛かるエステのパイロット。

しかし何故か冷汗を掻いているように見えるのは気のせいだろうか?

「え〜と、でもあなた達の艦に行く前に名前だけでも教えていただけますか?」

『…そうですね。私の名前はイツキ・カザマ。見ての通りパイロットです』

「それでは私も。私はフクベ・レンナ、宜しく。ああ、それと私の事をベン子って言ったら三途の川の道先案内人をしますので」

『ベ…ベン?』

イツキ戸惑う。

「はーい次は私!私の名前は白鳥ユキナ!宜しく〜!ちなみにここで寝てるヤツのお嫁さん候補なんだよ!…あ、言っちゃいけなかったんだっけ

『は?…オヨメサン?』

イツキ、続いてのユキナの自己紹介に固まる。

「私はラピス・ラズリ。あきとおにーちゃんの妹。本名不明。宜しく」

『へ?…ほんみょうふめい?』

ラピスの自己紹介に再び固まるイツキ。

まあ無理もない。

『…なんだか分かりませんがとにかく行きますね』

考えても仕方ないと判断し、けん引作業に没頭するようにしたようだ。

「あの、イツキさん?」

『…はい?何です?』

「さっきのもう一機のロボットの方はほおって置いていいんですか?」

『ああ、ヤマダさんですか。大丈夫です。彼ならあの程度じゃへこたれないって艦内規約に書いてありましたから』

「そうですか」

『そうです。じゃあ行きますね』

何だかやたら酷い話である。

待てやこらぁ!オレの自己紹介がまだだろうが!」

「あ、やっと起きた」

「うんうん、やっぱりアキトはこうじゃなくっちゃね」

「いつも道理」

『…で、あなたは?』

妙に疲れた表情でアキトに目線を送るイツキ。

「おう!トリに控えるはこの船、唯一の男であるオレ!名をテンカワ・アキト。見た目も中身も18歳!だが胸の内は秘密♪

火星出身のナイスガイだ!宜しくなキザ!!

相変わらずである。

『…は?キザ?それって何…』

『待てええええぇぇぇい!!ガイは俺の名だぞ!?』

自爆に巻き込まれ沈黙していたエステ。

そのパイロット、アキトに触発されて復活。

勿論イツキの言ったことなんて誰も聞いてない。

『しかもなんて事しやがるてめぇらぁぁあぁっ!!』

「む?ヤジン、煩いぞ。廊下に立ってろ」

お前は先生か?

「やかましい!大体…ってアキト!?な、なんでお前がそんなとこに居るんだ!?」

「聞きたいか?ならば…」

「「あーーっ!!!!」」

「あー」

「…お前ら」

アキトが何か言おうとしたようだがイツキと同様にレンナ、ユキナ、ラピスの声にかき消された。

「お、お兄ちゃん!?な、なんでこんな所にいるの!?」

「まさか白鳥さん、ユキナちゃんが心配でここまで追ってきたとか?」

「…?…何だか微妙に…」

ガイの顔を見た瞬間騒ぎ出す女性陣。

だがラピスのみ違和感を覚えているようだ。

『ちょ、ちょっと待て。お兄ちゃん?シラトリさん?誰だそりゃ?俺はダイゴウジ・ガイ!それ以下でもそれ以上でもねえ!覚えとけ!!』

「え?べ、別人?」

「嘘…すごい似てるけど…」

「…でもちょっと違うかも」

戸惑う女性陣。

『あの…彼は一応私達と同じ艦のクルーです。人違いでは?』

『待てやイツキ。なんだその『一応』ってのは?』

『どうです?よーく見てください』

すかさずイツキが入れたフォローのようなものをガイが抗議するが当然聞いちゃいない。

「そう…そうだよね」

「ユキナちゃん…やっぱり白鳥さんの事を…」

「ユキナ…」

「ぬう…そこまでスターオムツの事を…アバウトなヤツめ」

何処がだ?

「そう………良かった。もしこんなとこで会ったら間違いなく抹殺してるとこだよ。あははははは」

「「『『…』』」」

ユキナの発言に沈黙する一同。

「ふっ…流石はハテナ。やるな!」

『…何がだよ』

アキトの呟きに思わずツッコミを入れるガイ。

「何を言うか!ヤツを誰だと思っている!こう見えても昔は千切りコンパニオンと呼ばれていたんだぞ!?」

『訳分からんわ!!』

「…あ〜ちなみに逞しいヤツって事だから」

『そ、そうか。通訳ありがとう』

「いえいえ」

レンナの通訳、本当に便利である。

『と、とにかく、今はそんな事はどうでもいい!アキト!話を戻すぞ!!さっきのお前のガイ宣言だが今すぐ撤回しろ!!

ガイの名は幾らお前でも譲れんぞ!!』

「何を!?優柔不断な!」

『んだと!?二束三文だろうが!』

使い方間違っていないか?

「とにかく、このナイスガイ!テンカワ・アキトの名は譲れんな!」

『なんだと!ガイは俺のことだ!勝手に独占するな!』

「何を!?先に使ったのは俺だぞ!?」

『何!?このダイゴウジ・ガイ様が先に名乗ったに決まっているだろう!』

「そんなもん何時決まったんだ!?」

『俺がこの世に生まれた瞬間だ!』

「はっ、残念だったなヤジン。俺がナイスガイとして生まれてくる事は宇宙の誕生以前に決まっていたことだ。諦めろ」

『くっ…そうなのか』

いや、認めるのか?

『しかぁし!この名だけは譲れん!!』

「む?やる気か?」

『おおよ!』

2人が身構える!

 

アキトは脱出艇内部の隅っこに隠れながら。

 

ガイはボロボロのエステ、コクピット内部の足元にうずくまりながら。

 

「『さあ、いざ尋常に勝負!!』」

 

「「『せんでいい!』」」

 

ごげげん!!!

 

…ふみっ

 

「『ぐびっ…』」

女性陣のツッコミにより沈黙するバカ2人。

そしてラピスのトドメは踏みつけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、わかりましたー」

元気な声を上げ、通信を切る若い男…いや少年と言った方が正しいだろうか。

「イツキさんからですか?」

その少年に声を掛けたのは髪を全て後ろに下ろしている女性。

幾分落ち着いた雰囲気が漂っている。

「ええ、何でも漂流者を数名保護したらしいですよ」

「漂流者?こんな所で?」

その2人の話に割って入ってきたのはいかにも『退屈』という言葉が全身から溢れている女性。

どうもじっとしているのが嫌で仕方ないといった感じである。

「怪しいわねぇ。それ本当に人間?」

更に話しに加わってきたのはロシア系クォーターの女性、金髪が眩しい。

少々おっとりしている人のようだ。

「大丈夫ですよ。聞いたところでは、え〜と…男性1人、女性3…いえ、女性1人、女の子2人だそうです」

「あらあら、親子かしら?…はっ!、ま、まさか親子共々この世の中に嫌気がさして心中!?…うう…なんて不憫な…」

「「ないない」」

「ホントに涙もろいですね…」

えぐえぐしながらハンカチで涙を拭く金髪の女性を見て、呆れるその他のクルー。

「はぁ…でも何故こんな宙域に?ここは一般人の来るような所ではないわよ?」

「おそらく何処かの艦からの脱出者ではないのか?」

そんな会話を繰り広げる面々に加わってきたのは軍服を着た1人の男性。

少々、気難しい顔をしている。

「あら、副提督。いらしたんですか」

「あれ?他の皆はどうしたの?」

「ぐすっ…先程まで軍部とお話されていたのでは?」

「ああ、ついさっき終わったばかりだ。艦長は一旦部屋で休むと言っていたぞ?提督はまだ抗議しているがな。他のは知らん」

「あらら…提督もいい加減に諦めればいいのに…」

「こらこら、そういう事を言うもんじゃない」

「あ、すみません」

流石に悪いと持ったのか、少し萎縮する少年。

「まあまあ。あ、それより副提督、先程偵察に出ていたイツキ・カザマより報告が有り、漂流者を4名保護したとの事です」

「何?こんな所でか?」

「はい。ただその際ヤマダ・ジロウさんがその漂流者の乗った船を木星蜥蜴の艦と勘違いして撃墜してしまったそうです…」

「「「え゛?」」」

「ま、まあ、その船から脱出艇が出たおかげで死傷者は無かったそうなんですが…」

「…何だ?言ってみろ」

「え〜…」

どうやら話づらいのか中々話せない髪を後ろに下ろしている女性。

「大破した船が自爆してヤマダ機が巻き込まれエライ事になっているそうです」

「「「「…」」」」

そこへすかさず少年がフォローの意味で報告を読み上げるが流石に絶句するブリッジクルー。

シュッ

「全く、本当に腹立たしい限りですわね…あら、皆さんどうしましたの?」

そんな面々の所にやってきたのはかなりの黒髪美人。

「お、おや、艦長。もういいので?」

「ええ、何時までも寝ているわけには行きませんから。それで、一体どうしましたの?なにやらあったようですが?」

「え、ええ。先程偵察に出たイツキ・カザマとヤマダ・ジロウですが、偵察途中に漂流者を見つけ保護した模様です。ただその際…」

「なんです?ハッキリ言っていただかなくてはわかりませんわ」

「は、はぁ…どうもヤマダ・ジロウがまたやらかしたようで…」

「またですか…本当にアレが最高の人材ですの?」

「「「「「さあ?」」」」」

ガイ、全然信用無し。

「それで、その漂流者は?」

「あ、はい。後、5分程で到着するとイツキさんから連絡がありました」

「そう。それとその漂流者の名前は聞いている?念のため検索をかけて身元を洗っておいて」

「え?そこまでする必要あるんですか?」

「勿論ですわ。こんな所で漂流している人間なんてまず一般人の訳がありませんもの。何かあるに決まっています」

「そうでしょうか?…わ、わかりました。すぐに検索しますぅ〜」

艦長の迫力が余程凄かったのか少年は泣きそうになりつつも検索を実行する。

「え〜と…『フクベ・レンナ』…『シラトリ・ユキナ』に…『ラピス・ラズリ』?…かわった名前だな…最後が…『テンカワ・アキト』っと」

「今なんて言いました!?」

「うわ!?な、なんですかぁ〜?」

「か、艦長?」

「ど、どうしたんですか?あれ、でも今確か…」

「んん?私、なんだか聞いたことのある名があったような…」

「ええ、私も聞き覚えのある名があったような…」

突然の艦長の大声に引くブリッジクルー。

だが女性クルーのみ反応が若干違うようだ。

「先程言った名前です!なんと言ったのかともう1度復唱しなさい!!」

「え?え〜…『フクベ・レンナ』」

「次!」

「…『シラトリ・ユキナ』」

「それも違います!次!!」

「…『ラピス・ラズリ』」

「違う!!!」

「…『テンカワ・アキト』」

「それ!それです!!画像は無いの!?」

「え、いえ…通信のみだったので…」

「それでその漂流者は今何処に!?」

「えっと…あ、たった今格納庫にイツキさんとヤマダさんが到着したようです。多分一緒じゃあないか…」

ダダダダダダダダダ…!!

少年の話を最後まで聞かずブリッジから跳び出してゆく艦長。

 

「…はっ!?ま、拙い!カオル!リサコ!止めに行くわよ!!」

「わかったわエマ!!」

「了〜解!」

ドドドドドドドドドドド…!!!

更に跳び出して行く他の女性ブリッジクルー。

 

「…え〜と、カイオウ副提督。どうしたらいいんでしょう?」

「俺に聞くなハーリー」

残された男性クルーはひたすら呆然としていた。

 

 

 

 

 

 

 

ここは格納庫。

ようやく到着した面々だが…

 

「アキト!てめぇ一体どういうつもりだ!?」

もめていた。

 

「何がだ?自爆の件か?だったら理由は簡単だ。あんな攻撃しまくってくるひたすら物騒なモノ、

問答無用で完全粉砕するのがするのが世の為人の為ってもんだろうが」

「そこはいい!問題は別だ!」

いいのか?

「俺の名を勝手に使うなってことだ!!」

「あ、それか。もういいぞ。飽きたから

「なんじゃそりゃ!?」

ガイ、遊ばれる。

 

「さて、あっちはほおっておいて…まずは…」

「あ、その前にイツキさん」

「はい?何ですか?トイレだったらそこの出口を出て十字路を左に曲がって突き当たりですが?」

「あ、そうですか。では…って、違います!そうじゃなくて…!」

「え?じゃあ食事ですか?食堂だったら…」

「そういえばお腹減った…って、それも違います!この艦の名前を知りたかっただけですよ!!」

レンナ、一旦乗るなよ。

「なんだ、だったら初めに言ってくださいよ」

「…言う暇なかったじゃない」

「うん、私もそう思う」

さり気にツッコミを入れるユキナとラピス。

「この艦の名前は『NERGAL ND-002』、通称『コスモス』です」

「コスモスですか…」

「ふ〜ん、秋桜か〜良い名前だね〜」

「あきとおにーちゃんと名前が似てる」

それぞれの感想が飛び出す。

評判は上々のようだ。

「ではまず身元調査を行います。少し待ってくださいね」

身元調査を行う為、イツキがブリッジに連絡を取っている。

「あ〜いよいよね」

「どきどき」

「…どきどき」

「どっきどき!」

ぎぐっ!

「あんたはソレ止めなさい。気持ち悪いから」

「アキト、流石に私もソレはいただけないかも」

「あきとおにーちゃん、私もそう思う」

「り、理不尽なり〜」

しゃしゃり出てきたアキト、見事撃沈。

「アキト、おめぇ一体何やってんだ?」

「聞くな」

「んじゃ聞かねぇ」

「…冷たいなヤジン」

「だから俺の名はダ…!」

 

「ここですか!?」

 

ガイの言葉を遮って現れたのはさっきブリッジを跳び出していったこの艦『コスモス』の艦長。

 

「な、何?」

「あれ誰?」

「誰?」

「ガイ…って、おう艦長じゃねえか」

「あら?艦長?何故ここに?」

 

「あなた達!ここにアキト様が居るでしょ!?何処ですか!?今すぐ出しなさい!!!

隠すとは無いわよ!?」

 

「「「「「は?」」」」」

突然の事に固まる面々。

 

「あ、居た!」

「早く捕まえて!」

「間に合うかしら!?」

 

そんな固まっている面々とひたすら喚き続けている艦長の所に走りよってくるのは先程ブリッジから跳び出した女性クルー。

 

「ストップ!ストップです!!」

「そうそう!落ち着いて!!まだ本人と決まったわけじゃないでしょ!?」

「ここは堪えて。ほら深呼吸、すぅーはぁー」

 

「ええい!離しなさい!ホウショウ!ムラサメ!タカチホ!

ワタクシはに生きる女なのです!!」

 

ジタバタと暴れるコスモス艦長とそれを取り押さえる『ホウショウ』、『ムラサメ』、『タカチホ』と呼ばれた女性クルー。

 

「「「何あれ?」」」

「あ〜一応コスモスの艦長とブリッジクルーの方々です」

「「「はぁ?」」」

「まあ、何時もの事だ。あんまり気にするな」

ガイにも呆れられている艦長とブリッジクルーって一体…。

 

「…う〜…何だぁ?騒がしいな…」

そんな騒動がうるさかったのか、アキトお目覚めという名の復活である。

「ん?あれは?」

と、アキトが振り向く先には先程から暴れる女性クルー達。

「あ」

「「「「あ」」」」

アキトが振り向いた瞬間に目が会ったのか、その場で硬直する面々。

「あ…あ…ああ…あ、アキト様?」

「うそ…本当に…アキトさん?」

「うそぉ…ホントにアキト君?」

「あらら、テンカワ君だ」

「あ、あ、あ、あああわわわわ…」

女性クルー、アキトを知っているのか全員しばし呆然とする。

…アキトは腰を抜かしていたが。

 

「アキト様…アキト様…」

そしてアキトの名を連呼し身体が震えだすコスモス艦長。

 

「…はっ!?いけない!カオル!リサコ!」

「はっ!?しまった!」

「ダメ、もう手遅れね」

「とにかく取り押さえて!」

ホウショウが艦長に飛び掛かるが…

 

すかっ…どてっ

「あうっ」

 

一足遅く、からぶった。

 

「…もはやこれまで」

「ああなったら誰にも止められない」

「アキトさん、せめて生きていてね」

ムラサメ、タカチホ、そしてホウショウ。

アキトに合掌する。

 

 

「あわわわわわわ…た、助け…」

 

 

「アキト様ーーーーーーーーっ!!!!!!」

 

 

ドゴォッ!!!

 

 

「ぐぶぅ!!!!?」

 

 

腰を抜かしながら逃げようとしたアキトのどてっ腹にフライング・ボディーアタックをかますコスモス艦長…

 

 

 

 

 

 

 

 

カグヤ・オニキリマル見参である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキト…いやカグヤの運命はどっちだ!?続くような続かないような思わなくも無きにしも非ず。

 

あとがきです。

こんにちは、彼の煤iかのしぐま)です。

え〜そんな訳で『空白の8ヶ月間編』(笑)

 

『木連編』に続きまして…

 

『2つ目のナデシコ、コスモス編』をお送りします!

 

…どかーん。

 

 

…とまあ爆発音はさておき(爆)

主要メンバーは今のところ以下の通りです。

役職 誰?
カグヤ・オニキリマル コスモス艦長 言わずと知れた…彼女です(笑)
エマ・ホウショウ コスモス副長 いつも冷静沈着…の筈
カグヤ・ガールズの1人
カオル・ムラサメ 通信士兼オペレーター 実家が日本武道の大家
自分中心に物事を考える節がある
カグヤ・ガールズの1人
リサコ・タカチホ 操縦士 ベルギー出身
行動パターンがしっかり、おっとりしているが涙もろい
カグヤ・ガールズの1人
マキビ・ハリ(ハーリー) サブオペレーター 不幸になると思われる少年…言うまでもないか(笑)
カイオウ コスモス副提督 階級は大佐
性格は…不明(爆)
イツキ・カザマ パイロット …性格に関しては1番迷ってます(滝汗)
ヤマダ・ジロウ
(ダイゴウジ・ガイ)
パイロット 熱血!

とまあこんな感じです。

…むぅ、結構無理あるかも(大汗)

しかもコスモスにカグヤを乗せるって結構あるような…(激汗)

 

あ、それに漫画版を知らない方はオリキャラとして見ていただくしかないんですよね(滝汗)

 

さて、他のメンバーはこの後、少しづつ出てくる予定…ってもうあんまりストックが無かったり(涙)

はい、がんばります。

 

しかし今回ガイ活躍できたのかな…?

前回のあとがき通りになっていればいいけど…自信なし!(爆)

代理人さんの言うとおりになったかどうかも怪しいし…。

ま、まあ考えてもしかたない!うん!

 

さてさて、まだ続くオリジナルなお話。

ナデシコの登場を期待されていた方、申し訳ないです。

もう少し、お付き合いくださいませ(謝)

 

では、ここまで読んで下さった方、また感想を下さった方々に感謝をしつつ、

次回は…ユキナVSカグヤになるのかな?(笑)

 

それでは!

 

 

代理人の感想

え〜と、前回の後書き・・・(ごそごそ)

 

(しばらくの間)

 

・・・・・まぁ、ウケはそれなりに取れてるので「活躍した」と言うことにしておきましょうよ!

そのほうがシアワセっぽいです・・・・・・・・色々と。

 

 

それはさておき、コミック版ではカグヤちゃんはユリカとおなじく火星時代の幼馴染だったわけですが、

アキトの事を知ってるカグヤガールズ達もその頃からの知り合いなんでしょうね。

(コミック版ではアキトと彼女たちの絡みがないので実際どうだったかは不分明です)

アキトが腰を抜かすなんて、一体何があったのやらw