かの偉人はこう書き残す。

 

 


「今が最悪の事態だ」と言える間は最悪ではない。  [シェイクスピア]

 

 

 

だが敢えて言おう。

 

 

 

 

「アキト様アキト様アキト様アキト様アキト様アキト様〜〜〜〜!」

 

 

ぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ

 

 

べぎごぎぼぎぐぎがぎょ!!!

 

 

「あぎゃあああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

 

 

 

 

今がアキトにとって最悪であると。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

伝説の3号機

その28

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごぎゅっべぎゃぐごっ!!!

アキトから嫌な音が途切れることなく聞こえてくる。

 

ち〜ん…

コスモスのAI『アメノホヒ』が何故か鐘を鳴らした。

 

「ああ、アキト様…6年5ヶ月と17日と21時間36分12秒ぶりですわね…」

ウットリとしながらアキトを熱い眼差しで見つめるカグヤ。

 

「…」

だが当のアキトは返事が出来る状態ではない。

と言うより聞こえているかどうかも怪しい。

 

「こんな所で再会できるなんて…もはやこれは運命と言わざるを得ないですわ…」

頬を紅潮させながらトリップするカグヤ。

 

「…」

勿論アキトは…以下略。

 

 

「…予想通りになったわね」

「ああ。でも本人だったから良かったものの、今まで同姓同名の被害者が何人居たことか…」

「ざっと28人ね。うう、可哀想に…」

その犠牲者達の冥福を祈ろう。

「また泣く…ってあら?エマは?」

 

「長き時の間にどれだけの犠牲を出した事か…

そして私もどれだけの時をその行為に費やした事か…

この数年、休まることの無い日が続いた…

でも、今この時、アキトさんという男性が出現した事で私の気苦労もきっと無くなることでしょう…

ありがとう、微笑ましく見つめてくれるお月様。

ありがとう、何時も私を照らしてくれる太陽さん。

ありがとう、こんな私を支えてくれる皆。

そして…ありがとう、生贄のアキトさん。

あなたの事は忘れない…」

何だこの詩は…。

 

「あ〜まぁたトリップしちゃってるよエマの奴」

「マイポエム、絶好調ね」

余程苦労してたんだな。

 

「…さてと。それじゃあ、どうしましょうか?あのままじゃアキトさん、逝っちゃうわよ?」

「ようやく戻ってきたか。とまあ、それはいいとして…だよねぇ、じゃあスパッと行って止める?」

「…カオル、いいからその銃刀法違反に絶対引っかかるような物騒な物しまいなさい」

「そう?…残念

「一体何をする気だったのよ…」

マトモなことでは無いだろうな。

 

「あの〜お話の最中すみませんが、ちょっといいですか?」

「あ、ごめんなさい。ちょっと色々考えちゃって…え〜と、あなたは?」

「私フクベ・レンナっていいます。あの…一体何が起こってるんですか?」

「ああ〜漂流者の人。うん?あれ?あれはね、言わば儀式ね」

「ぎ、儀式?」

「そう。男と女が数年振りに再会を果たした際の恒例行事と言ってもいいわね。うんうん、わかるわよカグヤ艦長」

「行事…」

あんなものが恒例なのか…。

「思えばアレが始めて飛び出したのは今から大体10年くらい前かしら」

「ああ、そういえばそうか。あの時は大変だったわね…」

「そうね。あの頃の私達は無力だったわ…」

「10年前…何があったんですか?」

「そうですね…では折角ですし、お話します。カグヤ様とアキトさんの思い出を…

そう、あれはまだカグヤ様が9歳の頃、たまたま親御さんに連れられて火星の開発地区査察に行ったことが始まりでした。

その際、私達も社会の勉強を兼ねてという事で一緒に連れて行ってもらったんですが、その際…」

「その際?」

「カグヤ様が誘拐されてアキトさんが総攻撃し、が芽生えました」

「「「「「「いや、はしょりすぎ」」」」」」

「そうですか?」

総員ツッコミにエマ、疑問顔。

「あーまあつまり要約すると、ある日カグヤさんが誘拐され、その事態にみんなオロオロ、それを傍で見ていたエマさん達の所に

野次馬で親子共々来ていたアキトが現れ、事情を何故か察知し、ワタリさんのウェポンをフル装備したパーフェクトアキトがワタリさんの車に

エマさん達を乗せ暴走しながら犯人が居そうな場所を探していたら、たまたまサングラスをかけた怪しさドッカンな挙動不審男が

廃屋に入るのを目撃し、アキトが『あからさまにヤツが犯人だ!』と言い即座に総攻撃を開始。

そして荒野になった後にはコゲたカグヤさんと犯人グループが居たけど、何故かアキトが手錠をかけたのはカグヤさん。

まあ思いっきり勘違いをしていたってトコね。その後、アキトは感謝されるどころか全員からタコ殴りにされたと。

しかも一番ぶん殴っていたのはワタリさんで、理由が『何故俺を連れていかない!?』ってなとこね。

でもカグヤさんだけはまるで白馬の王子様にあったような顔して、話を聞いたら案の定惚れていたと」

何故わかる!?

「その通りです。本当にアキトさんってお茶目ですよね」

「いやまあ、もうお茶目っていうレベルをはるかに超えているような気がするけど…」

まあ子供だからお茶目でいいのだろう。

「そしてそんなアキトさんにカグヤ様が駆け寄り…」

「ああなったと」

「はい」

チラっと張本人を見やる2人。

 

「アキト様〜

ぎょぎっ

「…ぶくぶく」

アキト、危険領域突入。

 

「…バイオレンスね」

「ええ、ハードボイルドです」

「いや、ダンディズムでしょ?」

「いい話ね…うう…」

そうなのか?

「しかしアレだけの情報でよく分かりましたね」

「いやぁ〜最近じゃあ1を聞いて3.141592…くらいわからないと」

「そうなのか?」

「さぁ?」

何故1つを聞いて円周率になる?

「レンナさん…貴女とはいい友人になれそうだわ!」

「ええ、こちらこそ宜しく!」

がしっ

固い握手を交わすエマとレンナ。

今ここに1つの奇妙な友情が芽生えた。

 

 

「レンの通訳能力、レベルアップしてる」

「凄い…」

関心するユキナとラピス。

 

「「…」」

だがイツキとガイはとてもついていけず、ただひたすら呆然としていた。

 

 

「あれ?でもカグヤさん、よくアキトを火星に置いて地球に帰りましたね。そんなに好きなら無理矢理にでも連れて行きそうですけど…」

「ええ、その事なんですが…」

「な、何かあったんですか?」

「…実は」

「はい」

「カグヤ様が暴走機関車になってしまって…」

「「「「は?」」」」

またもエマのはしょり過ぎた発言にユキナ、ラピス、イツキ、ガイは固まり、

「「…はぁ〜」」

カオルとリサコは重いため息を漏らした。

「う〜ん、つまりアキトの両親がシャトル事故で行方不明、つまり死亡扱いにされた事によってアキトが孤児院に預けられる事になった。

そんな時、別コロニーへ行っていたカグヤさんはエマさんとカオルさん、リサコさんを連れて再びユートピアコロニーへ戻ってきた。

だけどアキトの家は既に無くなっていて、それを見たカグヤさんは半狂乱に!ホテルのスィートルームを1つ2つ消滅させたと。

そして散々大暴れしてやっと事の真相を知ったカグヤさんは我が事のように嘆き、アキトを孤児院から連れ出そうとした。

でもその時、たまたま孤児院に帰ってきたお爺ちゃんがアキトを修行に連れ出しちゃったせいで空振り。更に不幸は重なるもので、

丁度良く、カグヤさんのご両親やエマさん達の家族が地球に移住する事になったと。

勿論カグヤさんはアキトを連れて行きたいから大暴れ、その様はまるで暴走機関車の如き暴れっぷりってことね」

「「「「「「おおー」」」」」」

もはやレンナの通訳に関心するしかない一同。

「更に付け加えれば、その暴れっぷりで新聞沙汰」

「…コホン。え〜と、アキトが居ないせいでカグヤさんの暴れっぷりに拍車がかかり、扉を蹴破る、窓を叩き割るなんて当たり前、

孤児院でもそれは発動し、ちょっぴり全壊させちゃってまあ大変。終いにゃ新聞に載ちゃってカグヤさんのご両親も大慌て、侵害賠償金を

めいいっぱい払ってすごすごと火星を後にしたと。で、当のカグヤさんはエマさんらの活躍で拘束具、檻、鎖、そして金庫

厳重な警備の元、地球に送還されました。めでたしめでたし」

カグヤは猛獣か?

「いや、あんまりめでたくないような」

「…うん」

「でもカグヤ艦長、よく逮捕されませんでしたね」

「艦長の大暴れに巻き込まれて警官隊が全滅したんじゃねーのか?」

「…いや、正しくその通りなんだけどね」

「ええ、ある意味、木星蜥蜴よりたち悪いかも」

カグヤよ、一体何者だお前は?

 

「でもお爺ちゃんの孤児院、結構色んな目にあってきたんだ…」

ちょっと遠い目をするレンナ。

きっとその先には孤児院の破壊されていく光景が浮かんでいるのだろう。

「あら?確かあの孤児院は、かのフクベ提督の息子さん夫婦が経営している筈ですが…」

「ん?そういえば…確かアンタの名前って…」

「『フクベ・レンナ』ね」

「はい、私もその孤児院でお世話になったことがあるんです。ちょっとした事情があってそのフクベ夫妻の養子になって今の名前になりましたけど」

「そうですか。苦労なされたんですね…」

「まあ、人生色々よ」

「なんて不憫な…うう…」

カグヤガールズ、同情する。

「はい、ティッシュ」

「柔らか仕立て」

「うう…ありがとう…ちーん」

そんなカグヤガールズの1人、リサコに何気にやさしくするユキナとラピス。

「…色んな人生がありますよね」

そして遠い目をするイツキ。

「ま、オレの熱き心の叫びが轟きまくる人生はそうそう無いだろうがな!」

「「「「はいはい」」」」

ガイの戯言をあっさり流すコスモスクルー。

慣れたものだ。


 

「…あれ?」

「どうしたのユキナ?」

「うん、なんだか需要な事を忘れているような…」

「また?」

随分と忘れっぽいな。

「う〜ん…ぽくぽくぽく………ちーん…あ、そうだった!」

「思い出した?」

伝統のアレを使用し、何かを思い出したユキナ。

途端、カグヤガールズに詰め寄る。

「ね、ねえねえ!聞いていいかな!?」

「はい、何かしら?え〜と…確かあなたも例の漂流者の1人だったわね」

「まあこの際、漂流者だろうが、独裁者だろうが、そんな事は置いといて!」

漂流者と独裁者は全く違うのでは?

「あのカグヤって人、アキトの何なの!?」

「カグヤ様ですか?そうですね…まあ、幼馴染って所ですね」

「お、幼馴染…」

「それにひたすら初恋を未だに引きずってるし」

「は、初恋…?」

「今も愛しい人に会えた喜びが全身から溢れ出しているしね」

「い、愛しい人!?」

「ユキナ?」

カグヤガールズの言葉を聞き、ユキナ愕然。

「ふ…ふ、ふっふっふっ……そう……そうなんだ…ふ〜〜〜〜ん」

ユキナ、目がつり上る。

「ゆ、ユキナが…レン、ユキナが怖い」

「ラピスちゃん、離れて。今ユキナちゃんに近づくと地獄を見るわよ?」

「わ、わかった」

「私達も一旦退却!」

「「了解」」

すさささささささ…!

レンナ、ラピス、そしてカグヤガールズ、一旦ユキナから距離を置く。

「何だ何だ?一体何なんだ?お?おい、お前、なーにさっきから含み笑いしてんだ?」

「あ…ばか」

「ふっふっふっ…ギランッ!!

 

どぐぉ!!!

 

「ぎゅびっ!!?」

ガイ、激しく散る。

しかし睨みの瞬間にぶっ飛ばすとは…ユキナ、恐るべし。

「なるほどね。お約束と言われる王道をひた走る人物の登場…これは正にライバルの登場!

だが、しかぁし!女はライバルが出現してこそ燃えるんだからね!!ずびしっ!」

ユキナは声を高らかに上げ、指を天井目掛けて突き上げ、カグヤをライバル宣言だ。

 

「「おおお」」

感心するレンナ、ラピス。

 

「あの子もアキトさんの事好きなのかしら?」

「まあ、そうなんじゃない?」

「…見守ってあげましょう」

カグヤガールズはユキナを呆れと好奇の目で見つめる。

 

「ヤマダさん。ああいう時は極力近づかないのが長生きする秘訣ですよ?」

「…俺はダイゴウジ・ガイだぁ〜………がくっ」

イツキの人生の教訓も今のガイには聞こえない。

 

 

「そうだよね!恋愛なんて、そうすんなりと話が進む訳がないよね!よーし、この困難を乗り越えてアキトと私の絆は更に深まるんだ!!」

ユキナの宣言という名の妄想はまだ続く。

 

「アキト様アキト様アキト様〜

ごぎっ!

「…びくっ」

…が、カグヤは聞いちゃいない。

アキトはもう身体が大変な事になっているが。

 

「さてと…ずんずんずん…つんつん、ちょっとアンタ」

「なんですの?今取り込み中なので後にして下さらない?」

「どいて。ぐいっ」

「な、何をするんですか!」

アキトから引き離されたのが余程気に触ったか、カグヤが抗議の声を上げる。

「ゴメンねアキト。私が側に付いていながらあんな女にこんな風にされちゃって…だから私がやさしく介抱してあげるね」

…が、ユキナも聞いちゃいなかった。

ぴくっ

「ほほほ。突然現れてなぁにを言っているのかしらねこの子は?」

 

「あああ、カグヤ様が怒ってる…」

「あらら、目元がひくついてるわ」

「う〜ん、良い青筋」

静かな怒りに燃えているカグヤをカグヤガールズが分析する。

 

「ふ〜んだ。オバサンはあっち行ってて。アキトはずっと私と一緒に居てくれるって約束したんだもん!だから邪魔しないで!!」

「お、おば!?ほほほ、疲れているのかしら?何だか幻聴が…」

「あらら大変。年喰うと疲れやすいんだからもう帰って寝たら?アキトは私が面倒見るから」

「と、年!?…そうねぇ、確かに最近過重労働で疲れているかもしれないわね。

まあその辺の事情なんてお子様には到底理解できないでしょうけどねぇ」

「お子様ぁ!?…ふふふ、そうだね〜私若いから知らなくて当然だよねぇ〜でもこれからだもんね!」

「ほほほ、確かに若いわね〜その貧弱なボディが何よりの証拠よねぇ。ん?つるぺたの方がいいかしら?

まあ、この豊満なボディを所有しているワタクシには到底及びもつかないといった所でしょうけど?」

「つ、つるぺた!?…ふ、ふん!私はこれから成長するんだもね!どうせアンタなんか、

数年もすれば垂れ下がって見るも無残な姿になるのよ、きっと!」

「た、垂れ下が!?…ま、まあ〜このボディをガキンチョが羨ましがるのは勝手ですけどねぇ。

幾ら成長期といっても今の段階でその程度じゃあ先も見えているものよねぇ〜」

 

ぶちっ

 

ぶちっ

 

今、何かが切れた。

 

「ほほほほほほほほ…」

 

「ふふふふふふふふ…」

 

乾いた笑いが木霊する。

 

「レン、こ、怖い」

「え、ええ。確かにあの空間は私もゴメンね」

「ああ…なにやら冷たい空気が流れているような…」

「何やらどころかあからさまにね」

「う〜ん、すぐにブリザードレベルまで行きそうね感じね…」

「うわぉ、お互いにクリーンヒット連発でしたね」

ギャラリーは一歩も動けず静観である。

 

ぴくぴく…

「…」

ちなみにアキトは逆海老ぞり状態のまま放置中である。

 

コキッ

「…」

そして、ガイは2人が発生させているブリザードにより凍りついている。

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 

 

「ふっふっふ〜」

「おほほほほほ…」

 

 

なにやら妙な効果音をバックに睨みあうユキナとカグヤ。

 

 

 

「か、カグヤ様が燃えている!」

「見える。見えるわ!カグヤの背後に炎を背負った阿修羅王が!」

「これはかなりキてるわね…」

カグヤガールズ、カグヤの怒りゲージを見取る!

 

 

「ユキナ、目がマジ」

「見える。見えるわ!ユキナちゃんの背後にユーカリの葉を食べるコアラが!」

「ラヴリー♪」

負けじとレンナ達もユキナのやる気…らしきものを見取る!

 

今ここに阿修羅王コアラの対決が始まる!

 

 

 

「ほほほ、大体あなたはアキト様の一体なんなのかしら?」

「ふん、決まってるじゃない!私はアキトの許婚よ!」

どーん

ユキナは言いきった!

 

 

「「おおお」」

感心するレンナとラピス。

「す、凄いわね、あの子」

「カグヤを目の前にしてあんな暴言を吐けるなんて…これで2人目ね」

「ええ、あのボケというか天然というか天真爛漫というか抜けてるのか抜けてないのかわからないあの子以来ね」

それって…。

「でもテンカワさんって、それ了承してるのかしら」

「アキト、犯罪には走るなよ?」

船を落としたお前が言うな。

しかし何時の間に復活したのだガイよ?

 

 

「許婚?ふっ…笑わせないでほしいわね。ワタクシはアキト様に始めてあった頃から身も心も全て捧げています!

言わばこれは永遠の伴侶!ワタクシはアキト様のモノなのです!」

ばーん

カグヤも言いきった!

 

 

「「おおおお」」

またも感心するレンナとラピス。

「さ、流石はカグヤ様。そんな恥ずかしいセリフを惜しげも無く…」

「うーん…昔、アキトから離れたくないからってずっと一緒に居ようとしたってのはホントか」

もしかしてそれは以前アキトが言っていた…?

「本当に昔から変わらないわね」

「だからテンカワさんの意思は?」

「多分ねーだろそんなもん」

その通りだガイ。


 

 

 

と、その時…!

 

 

 

グルメ祭りin赤道直下ーっ!……げふっ」

 

妙な叫び声と共にアキトは昇天した。

しかしアキトは何を見たのだろう。

 

 

 

とまあそんなバカはほっといて、2人の睨みはまだ続く。

 

ばぢばぢばぢ…!

両者の間に火花が飛び散る!

 

 

「でもこのままじゃ何時まで経っても終わらない気がするんだけど…」

「下手したら乱闘騒ぎ」

「そ、そうですね。カグヤ様に暴れられたらコスモスが大変な事になりそうですし…」

「どうしようか?」

「私に聞かれても…」

「う〜ん、困りましたね」

「なら、いっそゲキガンガーでぶっ飛ばすか?」

「「「「「止めんか!」」」」」

ごすっ!

 

「ダメ」

さくっ

 

「あ、こらこら。子供がそんなもの持っちゃダメよ?」

「うん、ごめん」

ラピス、トドメにカオルの持っていた小太刀使ったようだ。

ガイ、生きてるのか?

 

 

 

「ふっ…とまあ、こんな不毛な争いしてても仕方ないよね」

「あら?意外と淡白ですわね。しかしアキト様の事は譲れな…って、ああ!」

カグヤ何かに気付いたのか慌てる。

「あ、アキト様!?アキト様!な、なんて酷いお姿に…一体誰がこんな事を!」

関節が大変な事になっているアキトにようやく気付いたカグヤ。

涙を流しアキトを勢いよく揺らしている。

 

「「「「「「「おいおい、アンタだ、アンタ」」」」」」」

そんなカグヤへツッコミを入れる一同であった。

 

 

「でも、このままじゃアキト、本当に大変な事になっちゃうね」

「あきとおにーちゃん、白目むいてる」

もはや、この状態では復活できまい。

「仕方ない。エマさん、医務室は何処ですか?コイツ連れて行きますので」

「いえ!それには及びません!ここはワタクシ、カグヤに…!」

「はいはい。もうその辺で止めときな」

「そうそう。女性は引き際も大切ですよカグヤ艦長?」

「え?…でも」

流石に止めに入る、カオルとリサコ。

「カグヤ様。後々お見舞いに顔を出せば良いじゃないですか。アキトさんはどうやらお疲れのようですし、ここはゆっくりして貰いましょう」

「…わかりましたわ。それでは…ええと、レンナさんといったかしら?アキト様を頼みます。

エマ、案内してあげて。ワタクシはアキト様達の事について報告を済ませておきます」

意外とすんなり引き下がるカグヤ。

「流石はエマ、カグヤの扱いには慣れてるわね」

「大したものだわ」

「…長年付き合えば誰だってこのくらい」

ちょっと陰を背負ったエマであった。

 

 

 

 

「さて、これで良しっと」

「アキト大丈夫かな?」

「あきとおにーちゃん…」

なんとか医務室にアキトを運び入れたようである。

「大丈夫ですよ。幸い骨は折れていませんでしたし、関節が少々イってますがこの艦には整体の知識がある者も居ます。何とかなりますよ」

「そうですか。それじゃあ後を頼みます。ユキナちゃん、ラピスちゃん、行くよ?」

「うん…アキト、また来るね」

「あきとおにーちゃん、何か欲しいのものある?」

「ん!じゃあ草餅でも持ってきてもらえるか?ざっと5年分くらい!」

そんなにどうする?

「…って、何で起きてんのよアンタは!」

「ふっ…甘いなベン…」

ごすっ

いつものである。

「それで?」

「…お、おう。過去にあの強力な抱きつきを毎度喰らっていたんだ。その対処方も既に習得済なのだよ!はっはっはっ!!」

「へぇ、成長しましたねアキトさん。それでその対処方とは?」

「死んだふり」

「「「熊かよ!」」」

「…鈴はいらないの?」

カグヤはやっぱり猛獣なのか?

「まあ、後は関節をいい具合に外して力を逃がしたわけだ」

「…何気にアンタ、凄い事してたのね」

「うんうん、流石はアキト!」

「あきとおにーちゃん、やるときはやる」

「まあ、良しとしますか。それでは早速カグヤ様に報告を…」

「「「「待て」」」」

「何か?」

エマ、疑問顔。

「さっきの繰り返しになるからカグヤさんは呼ばないで。頼むから」

「もう、疲れたよ〜」

「私も色んな意味で疲れた…」

「うむ。オレも果てしなく疲れたからこのままココで寝たい気分だ」

「そうですか…わかりました。ですが翌日早くにはココを出た方がいいかと思いますよ?カグヤ様、朝早いですから」

「…肝に銘じておく」

メチャクチャ真面目な顔で頷くアキト。

不意打ちは勘弁らしい。

 

「それじゃあね、アキト」

「アキトまたね〜」

「あきとおにーちゃん、また明日」

「おう、お前らも凄い勢いで休め!」

「「「いや、それ休めない」」」

「そうか?」

何時ものやり取りである。

 

 

レンナ達が出て行って、医務室はアキトとエマの2人きりになる。

「ふふ、変わりませんねアキトさん」

「おう。お前もなマンション!

げずっ!

「本当に変わらないですね」

だがいい雰囲気には全然ならないのがアキトらしい。

しかしエマ、どうやらあだ名に対するリアクションはレンナと同様らしい。

 

「エマぁーアキト君の様子どおー?」

「そろそろ休まないと明日もキツイわよ?」

「ええ。全然大丈夫よ」

医務室に入ってきたカオルとリサコに満面の笑みを浮かべるエマ。

「…それはアキトが?それともエマが?」

「何だかテンカワ君の頭にどデカイタンコブが見えるわね〜」

医務室の現状を観察してのカオルとリサコの感想である。

「ぐぉぉ…と、突然なにをする…?」

アキト、辛うじて復活。

「あら、まだ意識があったんですね」

「やっぱりアンタの仕業か」

「予想は付いたけどね」

「ん?何だ3人揃ってるじゃないか。改めて久しぶりだな。マンション!オムライス!リサーチ!

合わせてトライアングル・ネエさんズ!

 

どごぐざっ!!!

 

「「「本当に変わらない」」」

アキト、結局そのまま医務室で夜を明かす。

 

 

 

 

 

「という訳でラピス、いってらっしゃい♪」

「…ユキナ、何が?」

「聞いてなかったの?」

「…まだ何も聞いてない」

「あれ?そうだっけ?あはは」

後頭部をぽりぽりしつつ乾いた笑いを上げるユキナ。

ここはコスモス艦内のとある通路である。

「とにかくラピス、今日はあのオバ…もといカグヤさんのとこで一緒に寝るから」

「え?どうして?」

「うん、あの人一応ここの艦長みたいだし、これからお世話になるだろうし…だから親睦を深める意味で一緒に寝て仲良しになろうってことよ!」

「…そうなの?…うん、わかった」

「うんうん、ラピスは良い子だね」

「じゃあ行く」

「あ、ゴメンねラピス。先に行っててくれないかな?」

「…ユキナ?」

「うん、大丈夫。後からちゃんと行くよ?私はちょっとアキトのとこに行って挨拶してくるだけだから安心してラピス」

「じゃあ私も行く」

「あ、え〜と…うんうん、気持ちはわかるけどね。でもさラピス、そこは気を使ってくれないかな?

何せ夫婦でしか話せない会話なんかもあるわけだから!うん、そうなのよ!」

ユキナ、何気に夫婦発言である。

「…夫婦」

ポッ

ラピスは何故か頬を赤らめた!

「………わかった。先に行ってる」

「うん!後で私も行くからね〜」

「…うん」

ラピス、とてとてと歩きながらカグヤの私室に向かう。

「ふっふっふっ…」

この時、ユキナの目は邪悪になっていたとか。

 

ぴんぽ〜ん♪

『はいはい、どちら様?』

「私ラピス」

『あら?ラピスちゃん?待っててくださいね、今開けますから』

シュッ

「どうしかたのですかラピスちゃん?こんな夜中に?」

「うん、一緒に寝ようと思って」

「え?ワタクシと?」

「うん」

「…そう、そうなのね。わかりましたわ!流石はアキト様の妹さん、良い眼力をしていらっしゃるわ!

そう、あんなガキンチョなんかにアキト様を任せてなんかいられませんものね!ほーっほっほっほっ!」

カグヤの高笑いが木霊する。

しかし何気にラピスの情報も掴んでいる辺りが凄いところだ。

「さあさあ、お上がりなさいな。それとも何かお飲みになります?」

「ううん、もう寝たい」

確かにラピス、かなりお寝むのようだ。

「そうですか。それでは一緒に寝ましょう♪」

「…うん…でも、ユキナも後で来るって言ってた」

「あらそう。何でしょう?ワタクシに貢物でもあるのかしら?」

そう言いながら床につく2人。

 

そんなやりとりを物陰に隠れながら見つめる人物が1人。

「にぃ………かかった」

怖い。

 

 

 

で、数分後。

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

コスモス艦内に女性の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

その悲鳴を聞き、ほくそ笑む影。

「ふっふっふっ〜。見たか!これぞユキナちゃんの『ラピスで丸ごといただきます大作戦』!

まんまのネーミングである。

「よしよし、後はラピスに全て任せて私はアキトの所にでも…ん?」

スキップをかましながらその場を離れようとしたユキナだが、ふと足元に違和感を感じ目線を下ろすとそこには…

「…カプカプ」

ユキナの脚を食べているラピスが居た。

「どひゃああああぁぁぁぁぁっ!!!!な、なんでラピスがここに居るのぉぉぉぉぉぉ!!?」

よくよく見るとカグヤの部屋のドアが開いている。

何気に歯型が付いた白い手が見えていたりするがそこは良しとしよう。

「…ユキナ〜…お代わり…」

「ちょ、ちょっと待ってラピス!今回の目標は私じゃなくてあの年増…」

「カプリ♪」

「うっきゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

その日遅く、2回目の悲鳴がコスモス艦内に木霊した。

 

 

「むぎゅむぎゅ…」

「アキトーっ!まいだーりーん!!助けてえええぇぇぇぇっ!!!」

ラピスに食べられながらアキトに助けを求めるユキナ。

だがアキトはユキナの声を聞いて「やだ」と言ったとか言わなかったとか。

実はアキトも先ほどの悲鳴を聞き、布団の中でひたすらぷるぷる震えていたらしい。

まあ以前のアレがトラウマになっているのだろう。

結局ユキナの『ラピスで丸ごといただきます大作戦』、ラピスの1人勝ちで幕を閉じる。

 

「…ふぇ?」

本人に自覚は無いが。

 

 

 

 

 

「何やってんだか…」

その惨劇の一部始終を見ていた見習オペレーターはそんな事を呟いていたとか。

 

「無欲の勝利ね」

と、突然そんな声が聞こえた。

 

「…誰だ君は?」

「気にしないで下さい」

「いえ、とっても気になるんですが…」

「じゃあ、通りすがりのちょっとおセンチ通訳さんって事で」

「「はぁ?」」

何時の間にかブリッジに現れたレンナに戸惑うカイオウ副提督とハーリーであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキト…いやユキナとカグヤの運命はどっちだ!?続くような続かないような思わなくも無きにしも非ず。

 

あとがきです。

こんにちは、彼の煤iかのしぐま)です。

はい、そんな訳でカグヤがとんでもない人物になってしまいました(汗)

それでも勝敗はドローでしたが…(笑)

 

そしてカグヤガールズ。

アキトのまとめたネーミングですが、実は候補がこれだけありました。

・三本勝負ネエさんズ

・三身一体ネエさんズ

・三面記事なネエさんズ

・ネエさん三つ巴

・三日月背負ったネエさんズ

・三編みネエさんズ

・ネエさん達は三種の神器 ←1番マンガ版っぽい

・三国無双ネエさんズ

・三途の河の番人ネエさんズ

・実は3代目ネエさんズ

・3・3・7拍子ですよネエさんズ

・三葉虫なネエさんズ

・3Aネエさんズ

・3つ星ネエさんズ

・ネエさん3連星

・3食欠かさずネエさんズ

・3原色なネエさんズ

・座布団3枚ネエさんズ

以上なんですが…後半訳わからないですね(笑)

で、これだけ候補がありながら結局『トライアングル・ネエさんズ』(汗)

いや、カグヤガールズでいいじゃないかというツッコミはナシの方向で(爆死)

 

では次回ですが…残りのコスモスクルーを出したいと思います。

それでは!

 

 

代理人の感想

・・・・・クレージーキャッツの映画じゃあるまいし、よくもまぁこれだけひねり出したもんだ(爆)。

 

 

それはさておき。

 

 

さすがにカグヤ、キャラは強烈でしたがひょっとしたらカグヤ以上にベン・・・・・

げふんげふん、レンナが目立ってるような気が(笑)

 

あそこまで逝ったらもはや超能力の域と言ってよろしいかと。

もっとも、染まりきっただけかもしれませんが(南無阿弥陀仏)