「何!?ナデシコが行方不明!?」

 

ブリッジにアキトの声が響く。

あの後、どうにか落ち着きブリッジに集合した面々。

カグヤの話を聞いたアキトの第一声がこれだった。

 

「はい。火星より通信が途絶してからもう7ヶ月近くになりますわ。おそらくは…」

「そ、そんな…」

「アキト…」

「アキトぉ…」

「あきとおにーちゃん…」

愕然とした表情のアキトを見て、レンナ、ユキナ、ラピスは流石に心配のようだ。

 

「アキト様…」

今回ばかりはカグヤもどう声を掛けていいか分からない。

 

「そうか…もう会えないんだな…」

「「「「「「「「「「…」」」」」」」」」」

 

 

 

 

「ナデシコに」

 

 

 

 

「「「「「「「「「「「クルーじゃなくてそっちか!」」」」」」」」」」

総員ツッコミが炸裂した瞬間であった。



 

 

 

 

 

 

 

 

伝説の3号機

その30

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何なのよコイツは…まあいいわ。さて、本題に入るわよ?昨日の会議で当面のコスモスの動向が決まったわ。

暫くはこの宙域の巡回及び補給艦として後方支援につく事ですって。

そんな訳で、上からの指示があるまではこの宙域をひたすら偵察ね。ま、私の為にせいぜい気張ってちょうだい」

ブリッジにてムネタケがいかにも嫌味でございといった風に軍本部からの命令を読み上げる。

 

「いちまいだ〜に〜まいだ〜さんまいだ〜おしまいだぁ〜…」

ちなみにアキトは何故か変なお経を唱えている。

その目の前には『名出刺古』と書かれた遺影が鎮座していた。

 

「まあガンバレ」

そしてカイオウがなげやりな激励の言葉を送る。

本当に応援しているのか怪しいところだ。

 

「またですの?コスモスの火力があれば木星蜥蜴なんて物の数でもないでしょうに」

「ようするに『お前ら邪魔だから適当にその辺を見回ってろ』ってことですね?」

「ハーリー君、流石にそこまで露骨に言う事は…」

「はぁ〜ものの見事に厄介者扱いだね〜」

「それは仕方ないわね。幾らネルガルと軍が仲直りしたとはいえ先のナデシコの一件はただ事ではないもの。ああ…不憫よね…うう…」

「全く!ミスマル・ユリカのやることは何故いつもいつもいつも周りに迷惑ばかりかけるんでしょうね!」

カグヤ、昨晩の一件もあってご機嫌斜め…どころか軽く90度突破といった所である。

無理もないが。

「まあまあカグヤ様落ち着いて。もう過ぎた事ですし」

「でもまた当分の間は暇になりそうだね〜」

「そうねぇ。この辺りは木星蜥蜴はあまり見ないし、ほおっておいても何ら問題ないような宙域ですものね」

「でも戦わなくて済むならそれに越したことはありませんよ。この艦には僕のような民間から選出されたクルーも居ますし」

「そうそう平和が一番だよねぇ。ねえエリナ君?」

「アンタの頭の中が1番平和だけどね」

ブリッジクルーとパイロットの面々がそれぞれの感想を漏らす。

「とにかくここで文句を言っていても仕方ありません!今、月艦隊は木星蜥蜴との一戦に備えて戦力を集中させています。

私達は艦隊を支援をしつつ偵察につきます。よろしいですか?」

「「「「「了解」」」」」

「うんうん、なんだかんだ言ってもやることはやるんだよな」

「ふん…何時までもつかしらね」

カグヤの号令によって面々はそれぞれの配置につく。

 

「あのーそれで私達はどうすれば?」

そんな中レンナが挙手をし、ムネタケへ質問を投げかける。

「そうだったわね。色々と聞きたい事はあるけど、まずは…」

「アキト様は結婚式をあげるなら和と洋どちらになさいますか?」

カグヤ、でしゃばる。

「「「「「「「いきなり結婚式かよ」」」」」」」

思わず総員でツッコミ(2回目)だ。

「ちょっと!私を差し置いて何を…!」

無論、ムネタケは無視だ。

「…いや、オレはまだ結婚とかそういう難しいことは隣に住んでる受験生に聞いてくれ」

アキトは逃げ腰になった。

「やはり和式でしょうか…ああ…ワタクシの白無垢姿を見たらきっとアキト様はそのまま…」

「何言ってんの!やっぱりウェディングドレスを着て教会で結婚式に決まってるじゃない!」

勿論ユキナも負けずにでしゃばる。

「ほほほ!これだからお子様は困りますわ。伝統を重んじる心が無いとは嘆かわしい限りですわね」

「ふんだ、別にいいじゃない憧れたって。それにその伝統をとか言ってるのがオバサン臭いっていうのよ!」

ぴくっ

「ほほほほほほ…相変わらずいい度胸ですわね」

「ふんだ。地球女…もとい怪獣女なんかに負けないもんね!」

ぴくぴくっ

「おほほほほほほほほほほほ…チンクシャのガキンチョが何を言っているのかしらねぇ〜?」

「ふふふふふふふふ…負け惜しみ何て聞きたくないな〜」

ぴくぴくぴくぴくぴくっっっ

今、カグヤのコメカミに過去に類を見ないほどの量の青筋が浮かんだ。

「カ、カグヤ様?ど、どうか落ち着いてください。ここは大人の対応を…」

そこへなんとかエマがなだめに入る。

「ほほほ……大丈夫よホウショウ、ここは大人らしく一撃でKOするから

ビシッと親指を立てるカグヤ。

「KOしちゃダメです!」

エマはカグヤを羽交い絞めにし、暴走を止めようと必死だ。

「ユキナちゃん、ここは逃げた方がいいよー?」

「そうね。あと数秒後には修羅場と化す可能性が大だから」

そんなやりとりを横目にカオルとリサコがユキナ達を促す。

「えーでも…」

「ユキナちゃん、ここは大人しく従っておきましょ?ね?」

「うん、私もその方がいいと思う」

しぶるユキナをレンナとラピスも説得に入る。

「うーん、まあいいか。アキトは…えーと、きょろきょろ…そこっ」

びしっ

どさっ

「ぐべっ」

ユキナが線香が飾られている『名出刺古』の遺影を投げて天井を突くと、そこからアキトが落ちてきた。

クッションとして活躍したアカツキはそのまま昇天である。

「…たまには人の役に立つこともするのね」

勿論、エリナは心配などしない。

「…ハテナ、何故オレが天井に張り付いている事がわかった?」

「女のカン」

「便利だな」

「でしょう?」

それで済む問題なのだろうか?

「ほら行くよアキト」

ずるずるずる…

アキトの襟首を掴み、引きずりながらブリッジを後にするユキナ。

それにレンナとラピスも続く。

「ああ!アキト様ぁ!このワタクシを置いて何処に行かれるのですかぁ!!」

「いや、オレの意思は今ここに存在していない」

ユキナに引きずられながらそんなセリフを吐くアキト。

「そんな…例えこの艦が…いえ!地球が破壊されようともいとわない!一生側に居ると、そう誓いあったじゃないですか!」

「誓っとらん、誓っとらん」

カグヤの妄想100%の戯言を軽く流しアキト退場。

 

「あ、君達は暫くの間、生活班の手伝いをお願いできるかな?何しろ人手不足でね」

「え?…はぁ」

「食堂に行けば何か仕事がある筈だから宜しく。君達の話は暇な時にでも聞くよ。今のこの状況じゃろくに話も出来ないだろうからね」

「はーい、わかりましたー」

「…のん気」

面々のやりとりを見てのラピスの感想でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どがぁーん!

「ぬぁぁぁぁぁ!?」

「ぶわぁーっはっはっはっ!参ったかアキト!俺の実力を認める気になったかぁ!?」

アキトは頭を抱えながら絶叫しつつこの世の終わりのような顔している。

その横ではガイがアキトに指を突きつけ高笑いをしながら勝利宣言だ。

「はいはい、その辺にして訓練続けるよ?」

「その割にはアカツキさん、何もしてないじゃないですか」

「ふっ、イツキ君。僕のレベルくらいまで成長してもらわないと楽しみにならないじゃないか。だから今は見ているだけなのさ」

「本当は面倒なだけなのよ」

「エリナ君…身も蓋も無い言い方はいただけないな…」

 

 

そんな訳で、ただいまパイロットの面々とアキトはシミュレータールームにて戦闘訓練中だ。

「テンカワ君はナデシコでパイロットも兼任していたようだからね。ただでさえ人員不足で苦労してるんだから協力してもらわないと」

という訳でアキトのみここに連行されて現在に至る。

コスモスには他にもパイロットが数名居るがアキトの教育にはこの3人が選ばれたようだ。

エリナは…

「まあ仕事なんて何処でも出来るし」

監視役といったところか。

 

 

「とにかく、せいぜい足手まといにならない位には成長してもらわないとね…そうじゃないと僕がこき使われるし

「もうとっくにカグヤ艦長にこき使われてるじゃない」

「大変かもしれませんが頑張ってくださいね。指導は私達がキッチリ行いますから。ええ、きっと!」

「俺に全て任せておけ!新人を教育するのもヒーローの勤めだ!くぅー俺っていいヤツ!」

「まあ何だかしらんが宜しくしてやってくれ!はっはっはっ!!

…それぞれのペースで訓練を行うようだ。

不安満載ではあるが。

 

 

ちゅどぉぉぉぉん!

そして再び爆発音が響き渡る。

「だぁーっはっはっはっ!弱いなアキト!」

「ぬがぁぁぁっ!もう一戦だぁ!!」

やけに燃えている。

 

「テンカワさん、頑張りますね〜」

「でもねぇ…彼、学習能力あるのか疑問だね」

「…確かに」

アカツキとイツキ、アキトとガイのシミュレーション訓練を見て思わず呟く。

その理由は…。

 

「うおらぁぁぁぁぁっ!!」

ぼがーん!

「ぶひゃぁぁぁっ!?お、おのれええぇぇ!!ヤジンの分際でオレに194連勝するとは…だがまだ負けが決まったわけではなぁーい!!」

そこまでやられていれば負け同然…とまあそういう訳である。

 

「彼、役に立つのかしら?」

ちょっと頭を抱えるエリナだった。

 

「ふっふっふっ、何時でもかかってこいやぁ!挑戦ならば何時でも受けてたつぞ!!」

「ぬぅ…ならば!

「来いアキト!!」

「ちょっと休憩♪」

ごがん!

派手な音が響いた。

 

「さて、メシ食いに行くか」

「そうですね」

「僕も付き合うよ」

「勿論奢りでね」

「…待てやてめぇら…」

「ヤジンよ、休む時に休んどかないと後で痛い目みるぞ?」

「…俺はダイゴウジ・ガイだー…」

もう痛い目をみているコンソールに頭をめり込ませたガイであった。

 

 

 

 

 

その頃…。

 

かちゃかちゃかちゃ…

「…」

「はい、ラピス」

「…ふきふき」

突然、皿洗いを始めているのはレンナとユキナとラピス。

 

この3人は食堂の久美一家に事情を話し、食堂での仕事(雑用)を任された。

とりあえず次の補給時に月に下りるまでの間は人手不足の食堂の手伝いをすることになったようである。

そして現在は3人共、生活班の制服に着替え、気分はクルーの一員だ。

 

「ねえねえレン」

「ん?何ユキナちゃん?」

「私達さ」

「うん」

「いつまでここで皿洗いしてなきゃいけないのかな?」

「…ふきふき」

「……………………………きっと啓示が下りるまでね」

「そうかー」

何故か納得するユキナ。

「はふぅ〜…でも結局は状況に流されっぱなしってことだよね…」

「言わないで。考えないようにしてたんだから…」

「…次まだ?」

軽く涙を流しつつ皿を洗いつづけるユキナとレンナ。

ラピスのみ真剣に皿拭きをしていたが。

「ははは、がんばれよ〜」

「あんた、あんまりからかっちゃダメだよ」

「お父さん、お母さん。喋ってないで手を動かして!」

「へいへい。手際のいい娘がいて俺は幸せだよ」

「ははは、全くだね」

久美の叱りに全然動じず料理を作っていく2人。

「ほら!A定食に日替わり、それにレバニラ定食!急いで!!」

「「はいはい」」

慣れたものだ。

 

 

 

「はい、お待たせしましたー」

「久美ちゃん、ありがとう」

「久美君、お礼に今度食事に招待しよう。勿論2人きりで。何時がいい?僕は今夜辺り都合が良いんだけど?」

「あ、軽く流していいわよ。本当は仕事が溜まってて手が離せないのよ」

コスモス艦内では何時もの風景が見られる食堂。

お昼休憩となったパイロットの面々である。

「…頼む今度こそ…!」

無事復活したガイは必死に何かに祈っていた。

 

「…アカツキさん、そんな物も食べられないんですか?女々しいですよ」

アカツキの手元を見て思わずそう呟くイツキ。

「全くだ!漢の風上にも置けねえ奴だな!」

ゲキガン定食(別名お子様ランチ)をかき込みつつガイも同意する。

「ほおっておいてくれないかな?僕はこれが苦手なんだよ」

適当に言葉を返しながらアカツキは酢の物からひたすら麩を取り除いていた。

「そう言っているヤマダさんは何時もソレじゃないですか?もしかして他の物食べられないんですか?」

「ふっふっふっ、語るに落ちたねヤマダ君。君もたまには別の物を頼んで食べてみたらどうだい?」

「うるせえ!俺はこのゲキガン定食に付いてくるオマケを全種集めねーと気がすまねえんだ!それに俺はダイゴウジ・ガイだっつってんだろうが!」

熱く語るガイの手にはオマケで付いていたゲキガンガーのトレカが握られていた事は言うまでもない。

 

「…」

更にその横ではエリナがアカツキがひたすら取り除いた麩を小鉢に戻していた。

暇なのだろうか?

 

 

 

そしてアキトは。

「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!」

叫んでいた。

 

 

「アキ坊、スープをかき混ぜるだけなのに気合入れすぎだ」

「いや、料理は何事も一発勝負と、どこかの偉人さんも考えていた筈だし…つーかオレ、メシ食いに来たのに何でメシ作ってんだ?」

「そりゃあアンタがコック兼任だからだよ。後それが出来たら次はそこにある野菜片っ端から切っとくれ」

「へ〜い…って、ダンボール何個分あるんだ一体…」

積み上げられたダンボールを見て途方に暮れるアキト。

「アキトさん、煩いから料理を作るときは静かに気合入れてやってね。あ、野菜切りが終わったら倉庫から調味料を持ってきてね。はいリスト」

「人使いが荒いぞ…しかもこのリストに入ってるヤモリの黒焼きとか鹿の角とかセミの抜け殻とか…何に使うんだ?」

「「「料理」」」

「…そうか」

すっかり意気投合しているアキトと久美一家であった。

 

 

 

「カレーお願いします…」

おずおずと注文を出すのは食事休憩に来たハーリーだ。

「はいはい、ちょっと待っててね」

「あ、あの…ニンジン入れないでくれますか…?」

「…アキトさん、特別定食入りまーす!」

「え?僕はカレーを…」

久美はこの時、不敵な笑みを浮かべていたと後にハーリーは語る。

「あいよっ!」

そして出てきたのは…

「ほいお待ち!特別定食、ニンジンづくし!!

「………」

「ニンジンの汁で炊いたご飯にニンジンが具のみそ汁、ニンジンの炒め物、ニンジンの漬物、ニンジンの煮物といった所だ」

「………………あ、あの…だからニンジンは…」

「む?もしかして洋食の方がいいのか?ならばニンジンの汁を盛り込んだパンにニンジンのスープ、ニンジンサラダ、ニンジンジュース、

そしてデザートはキャロットケーキだ!」

問答無用である。

「う…う…うわああああああああぁぁぁぁぁん!人の話聞いてくれないーっ!!

ハーリーは泣きながら食堂を飛び出していった。

「逃がすかぁ!」

それをアキトが追撃に出た。

 

 

「アキトさん…サボリね?」

アキトの真意はものの見事に読まれていたようだ。

「後でキッチリ働いてもうからね」

「…アキ坊…今日は眠れねえな…」

思わず天を仰ぐ久美父だった。

その目には光るものがあったらしい。

 

 

ドドドドドドドドドド…!

うわああああああああぁぁぁ…あ?」

「ふっ…まだまだ甘いな!」

アキトはハーリーに追い着き、更に…。

「ほれ、食え」

ニンジン定食を突きつけた。

全力疾走中なのによく持てるものだ。

「くっ…ま、負けません!」

ハーリー、更に加速する。

「むむ!?まだ小学校低学年な年齢のクセに大した跳躍力だな!だが負けん!」

「くっ…まだまだぁ!」

「ぬおおおおおおぉぉぉぉぉっ!」

「たりゃああああああぁぁぁっ!!」

ドドドドドドドドドドドドドド……………!!

どうやらライバル誕生の瞬間になったようだ。

 

 

 

 

 

『あー艦内放送艦内放送。ただいまアキト君とハーリー君がチェイスの真っ最中です。轢かれたらまず助かりませんのでご注意くだ…』

突如、カオルの声が響き渡るが。

 

ごぎゃっ!

「げぶば!?」

 

手遅れだった。

 

「…ま、またなの…?」

轢かれたのはまたもムネタケのようだ。

 

【合掌】

その時、アメノホヒのウィンドウが開いていたとかいなかったとか。

 

 

 

 

 

「ぜぇ…ぜぇ…ふっ…な、中々やるな」

「ごほごほ…そ、そちらこそ」

何故か認め合い握手をかます2人。

「まあこれからも宜しくだな」

「ええ、宜しくお願いします」

不思議な友情が芽生えた瞬間だった。

「じゃあ食堂に戻りましょうかテンカワさん。ニンジンづくし定食、チャレンジしてみます」

「そうか。あ、それとオレはアキトでいいぞ?」

「そうですか?それじゃあアキトさん、僕はハーリーで構いませんので」

「そうか?んじゃ行くかビリ

「………………………………………………は?」

この時ハーリーの時は数秒ほど止まった。

「どうした?何を呆けているんだビリ

「……………………………………………………………あの、アキトさん」

「何だビリ

「………その…ビリってなんですか?」

「決まっている、お前の名前」

「…………う、うわあああぁぁぁん!勝手に名前変えられたああああぁぁっ!!

ドドドドドドドド…!!

ハーリーまたも逃げ出す。

「ぬ!?もしかしてビリっけつの方が良かったか!?」

激しく間違いながら再びハーリーを追いかけるアキト。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃の食堂。

「う〜まだやるの〜?」

「まだまだあるわね…」

「いっぱい」

3人の目の前には無数の皿、皿、皿とにかく皿がいっぱい。

「なんでこの艦、食器洗い機が無いのよ〜」

「なんでも誰かが使おうとしたら触った瞬間、爆発しちゃったんだって」

「…爆弾?」

どんな食器洗い機なのだろう?

「う〜誰よぉ。そんな迷惑千万なことやってくれるのは〜」

「そうね…その内捜査に乗り出しましょう」

「…探偵ごっこ?」

「ほらほらアンタ達、喋ってないでどんどん洗ってね!まだまだ客はくるよ!」

「「はぁ〜い」」

「ふきふき」

再び皿洗いに専念するレンナ、ユキナ、ラピス。

一体何時終わるのだろう。

 

「う〜ん…さてと、ユキナちゃん、私ちょっと休憩してくるね」

「はーい、でも10分だけだよ?」

「はいはい」

レンナが休憩を取るために厨房を出て行く。

それを見送りつつ皿洗いに専念するユキナだが…

「…う〜、こうしてる間にもアキトにあのオバサンの魔の手が迫ってるかもしれないのにぃ」

頭の中は全然別のことを考えていた。

「…ユキナ?」

「よし、こうなったらレンには悪いけど…きょろ、右よーし。きょろ、左よーし。きょろ、正面よーし。今だ!しゅたたたたた!」

ユキナは食堂から逃げ出した。

「………しゅたたたたた」

ちょっと間を置いて何故かユキナについて行くラピス。

 

そして10分後。

 

「さーて、休憩終わりーっと。ユキナちゃん、次、休憩取って…って、あら?いない?ラピスちゃんも?あらら?もしかして神隠し?」

レンナが辺りを見回すもユキナとラピスの姿は当然なし。

「ほらほらボーっとしてないで!さっさと洗う!」

「え?ええ?で、でも、あのユキナちゃんとラピスちゃんは…?」

「たぶん休憩だろ?食器が足りなくなってきてるんだ!急いでおくれ!」

「は、はーい!」

急ピッチで皿を洗い始めるレンナ。

だが、その後何時まで経ってもユキナとラピスは帰ってこなかったそうな。

 

 

 

 

 

「…つんつん」

「ラピスー何してんのー?」

「ユキナ、これ何?」

「…ラピス、道端に落ちてるモノをむやみやたらに触らない」

「わかった」

「…」

道端に落ちているモノことムネタケ、ゴミ扱いである。

「ほら行くよ」

「ユキナ、待って」

とにかくそんなものはほっぽいておいて先に進むユキナとラピス。

「それにしてもアキトはどこに…む?」

「あら?」

アキトを探しつつ通路を曲がった瞬間、鉢合わせになったのはユキナとカグヤ。

瞬時に表情が一変する。

「こんな所でなにしてんのさ」

「あなたこそこんな所で何をしていらっしゃいますの?仕事があったのでは?」

「ふんだ。アンタこそ艦長の仕事はどうしたのよ」

「ほほほ、ワタクシには有能な部下がいますから」

その頃、この艦の副長はひたすら報告書を書いていたとか。

勿論ポエムが炸裂したことは言うまでもない。

「そちらの仕事は?」

「こっちだって優秀な助手がついてるんだから」

レンナは何時からユキナの助手になったのだろう?

「ま、お互い様ってとこね」

「まあそうですわね」

不敵な笑みを浮かべながら睨みあう2人。

と、そこへあの音が聞こえてきた。

ドドドドドドドドドドドド…!

「…ユキナ、何か聞こえる」

「ラピス、今忙しいから後で。さてと、そこどいてくれない?私先を急ぐから」

「あら偶然ですわね。ワタクシもちょっと急ぎの用がありますの」

「へえ、じゃあどいてよ」

「アナタこそどいて下さらない?」

結局微動だにせず、そのまま立ち往生が続く。

 

そして、そんな2人の下へ奴等はやってきた。

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…!!!!

 

 

「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

「今日は特売日!お一人様卵2パックまで!!」

 

 

何時からそんな競争になったのだろう?

 

 

「まだまだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

「何っ!?タイムサービスで惣菜が半額だとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!?」

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…!!!!

 

そして2つの嵐は去っていった。

 

「「…」」

しばし呆然とするユキナとカグヤ。

「…あきとおにーちゃん?」

ラピスはギリギリで反応したが。

 

「はっ!アキト待てーっ!!」

「アキト様ー!カグヤを置いていかないでーっ!!」

再起動を果たした2人もその後に続く。

 

「…まてー」

ラピスもノリで付いていくようだ。

 

 

 

 

 

 

「へへっ、やったぜ!これで全種コンプリートだ!」

「本当に好きですよねヤマダさん」

「やれやれ、君のアニメ好きには頭が下がるよ」

「だったら一度でもその無い頭下げてみなさいよ」

この面々、食事を終えたのか只今移動中である。

 

そして勿論奴等はやってくる。

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…!!!!

 

 

「僕は負けないぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」

 

「くっ!賞味期限ギリギリのモノが安いが

今すぐ食べるわけじゃない!どうする!?」

 

 

「――!!エリナさん!」

「ええ!こっちへ!」

イツキ、エリナ近くの部屋へ退避完了。

「お、おや?何事…」

「へへへ〜何度見ても良い物は…」

そして逃げ遅れた2人は…

 

ずぎゃごっ!!

 

「げぶっ!?」

「ごぎゅ!?」

 

こうなる。

 

 

「頂点に立つのは僕だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

金が足りねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…!!!!

 

 

痛々しい爪あとを残し嵐は去ってゆく。

 

「…な、何が…?」

「…お、俺のゲキガ…ン…」

 

 

だがまだ宴は終わらない。

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…!!!!

 

「アキトーっ!許婚を置いていくなーっ!!」

 

「アキト様ぁ!一緒に語り合いませんことーっ!」

 

どがしっ!!

 

「ぶばびっ!?」

「へぎゅぼ!?」

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…!!!!

 

第2波が多大な損害を出し通り過ぎてゆく。

 

 

「…行ったようですね」

「…この2人も逝ったようね」

 

「「…」」

アカツキ、ガイ散る。

 

だがまだまだ終わらないのが宴のいい所。

 

とてとてとて…

 

「あれ?ラピスちゃん?」

「どうしたの?」

 

「おいかけっこ」

『シュタッ』と手を上げ律儀に答えるラピス。

そして勿論。

 

ふみっ

けりっ

 

トドメを刺していく。

 

「「…」」

もはや反応も出来ないようだ。

 

「がんばってねー」

「転ばないようにね」

「わかった」

 

とてとてとて…

 

 

こうして訳の分からない競争はまだ続く。

 

 

「さて…ちょっと大きめのポリバケツが要るわね」

「エリナさん………分別はきちんとしないとダメですよ?」

「そうね」

そういう問題ではない。

 

 

 

 

そして食堂では…。

 

「…あ、あと2、3分もしたら帰ってくるわよ。きっとそうよ。さっき、まな板占いにもそう出てたもの。ふふふ…」

不気味な笑みを浮かべながら皿を洗いつづける女がその日、厨房で目撃されたとか。

その異様な雰囲気に誰も声をかけることは出来なかったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあこんな日が毎日続き、数週間の時が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いの宴が始りである。

 

 

 

 

 

 

 

 

どがぁぁん!

本物の爆発音が響き渡る。

「よっしゃーっ!これで50機目だ!」

「甘いよヤマダ君。僕はさっきので63機目だ」

「2人共遊びじゃないんですよ?真面目にお願いします」

「全くだ!少しはオレを見習ってみろ!」

「「「出撃した直後にバッタの体当たり喰らって退場した奴が言うな」」」

「ぬぅ!?痛い所を!」

ナイスハモリでツッコミ炸裂である。

 

現在コスモスは月にて地球軍と共同戦線中。

ほんの数十分前より始まった第4次月攻略戦に戦力として駆り出された訳である。

そして只今戦闘の真っ最中。

 

「仕方ないだろうが!突然目の前に黄色い物体が飛び込んできたら誰だって抱きしめたくなるだろう!?」

「なるかぁ!」

「まあ女性だったら大歓迎だけどね」

「テンカワさん、そんな事言ってるとカグヤ艦長が今度バッタの格好で飛び込んできますよ?」

「………訂正。逃げたくなる」

 

だが緊張感は全く無かった。

 

 

 

 

「前方に敵艦隊捕捉」

「わかりました…グラビティ・ブラスト、スタンバイ!」

「OK!武士道を貫くならひたすら攻撃あるのみ!くーやっぱりこうでなくちゃ!」

「カオル、だからってはしゃぎ過ぎ。…グラビティ・ブラスト、スタンバイOK」

「よし。エステバリス隊は?」

「現在艦前方、左右に展開し交戦中です」

「…ホウショウそうではないでしょ?」

「は?」

「ワタクシのアキト様は何処に居るのかと聞いているのです!」

「………先程エステバリスの修理を終え再度出撃。現在ヤマダ機の援護に回っているようです」

「そうですか…アキト様、ワタクシを守ってくださっているのですね」

 

「どうして、どうしてなの?

つい数日前までは平和な日々。

それがほんの一瞬起こったひずみで全てが変わってしまう。

いえ、元に戻ってしまった。

何故、あの平和な日々は偽りだったの?

教えて。誰か私に教えて。

例え偽り平和でも私にとっては甘美な響き。

もう1度あの時を我が手に…」

 

エマ、またもあっちに逝く。

 

「…大丈夫なの?」

「私に聞かれてもわかりません」

ムネタケとカイオウは遠い目をした。

 

「あのーそれでどうしたらいいんでしょうか?」

「どうするもなにも…ねえ?」

「そうだよねぇ…とにかく撃っときますか。グラビティ・ブラスト発射」

「あー!前方のエステバリスの皆さーん!退避して下さーい!!」

ハーリーの必死の叫びがブリッジと各エステバリスに木霊した。

次の瞬間宇宙空間に黒き波の中に無数の火の花が咲いた。

だがエステバリス各機からの苦情で誰も見ちゃいなかったのはご愛嬌である。

 

「でも僕、研修に来ただけなのにココに居ていいんですか?」

「いいんじゃない?誰も何も言わないし」

「と言うよりそれぞれが勝手にしてるから気を配る暇が無いのよね」

 

「…帰りたい」

ハーリーの呟きは背後でトリップするカグヤとエマの声と苦情の声で掻き消され誰にも聞いてもらえなかった。

つくづく緊張感の無い艦である。

 

 

そして戦いはなおも続く。

 

 

 

 

「こそこそ…」

「こそこそ…」

「ひたひた…」

「ひたひた…」

「そろそろ…」

「そろそろ…」

「さささっ」

「さささっ」

「…で、何やってんの?」

「う!バレた!」

「…バレた」

擬音を口にしてブリッジに侵入を果たしたのは当然この2人。

「あら、ユキナちゃんにラピスちゃんじゃない。どしたの?」

「戦闘中はここ立入禁止よ?」

「へへへ〜ちょっと暇だったんで見学に来ちゃった」

「あきとおにーちゃん、どこ?」

「アキト様は今ワタクシの為に戦って下さっているのですわ!」

当然のように答えるカグヤ。

「む?ふふんだ!何言ってんの?この艦には私とラピスとレンが居るんだよ?守るのは当然じゃない!」

無論ユキナも黙ってはいない。

「ほほほほほ、これだからお子様は困るわね。艦を守るのは当たり前、ですがアキト様が守っているものはそれだけではありません!

このワタクシ、カグヤ・オニキリマルを自らが剣となり盾となりその愛を示してくれているのです!わかりますか!?これが真実なのです!」

「むむ…でもアキトが私の許婚だっていうのはもう決まったことなんだからね!」

「甘いわね。所詮、許婚は許婚、まだ結婚前の段階でしかありませんわ。ならばその前に何をしようが自由!わかるわね?」

「む〜〜〜〜〜〜〜!」

ぷくっとふくれて怒りを現すユキナ。

なんとも可愛らしいが今回の口喧嘩はカグヤに軍配が上がったようだ。

 

「…ハーリー、お前だけでも戦況報告頼むぞ」

「…僕まだ6歳なんですけど…」

「気にするな」

どうやらここでは老若男女の差別は無いようだ。

限度があるが。

 

 

 

 

その頃の戦場。

 

 

「へっへっへっ〜おーまた来やがった来やがったぁ。少しはしゃすぎだぜ有象無象どもが、

無駄な抵抗はするなよ?俺が今からてめえ等を裁いて地獄に送ってやる。何、俺の名か?

よーし耳の穴かっぽじって聞きやがれ!俺の名は…」

 

 

ずがごぉぉん!!

 

 

「ぶがっ!」

結構きっついダメージを受けたようだ。

 

「ヤマダ君、前置き長すぎ」

「ヤマダさん、またですか…」

「ぬう…おいしい役どころを…」

相変わらず緊張感は無い。

 

「だが負けていられん!オレも行くぞ!」

負けじとアキトがバッタの群れに飛び込んでいく。

 

「へ?ちょ、ちょっとテンカワ君!?」

「テンカワさん前に出過ぎです!戻ってください!」

アカツキとイツキが呼びかける。

 

「安心しろ!こんな時の為にお守りを託されてきたのだ!見よ!」

アキトが懐から出したのは一枚の紙切れ。

 

「テンカワ君、とっても言いにくいんだが…」

「それってどう見ても…」

「ああ、おつかいメモにしか見えんぞ」

ガイ、ボロボロでもツッコミを入れる。

 

「…なぬ?………おおっ、本当だ。じゃあちょっと待っててくれ。今からスーパーへ買い物…」

 

「「「行くなぁ!!!」」」

 

「ダメなのか!?」

本気だったのか。

そしてアキトはバッタに囲まれて大ピンチである。

 

 

 

 

「た、大変です!テンカワ機が敵編隊に囲まれました!」

「なんですってぇぇぇぇぇぇぇっ!!!?」

「ええええええ!?アキトは大丈夫なの!?」

「ふ、2人共落ち着いて」

「これが落ち着いていられますか!ハーリー君!状況はどうなの!?言いなさい!」

「ハーリー!言わないと今日のご飯はとんでもない事になるよ!?」

がっくんがっくんとハーリーを揺さぶるカグヤと攻め立てるユキナ。

だが当のハーリーは。

 

「…ぐぇぇ」

 

危険領域に突入していた。

 

「とにかく現状把握をお願い」

「エマ、やっと戻ってきたわね」

「まあ状況が状況だから。カオル、アキトさんに通信繋げる?」

「はいはいっと…繋がったわよ」

カオルの声と共にアキトへの通信が繋がる。

 

 

 

『しゃっちょーさん、ちょと!ちょと!いいへやあるよ、ワタシ友達』

 

だが聞こえてきた声はアキトのバッタを相手にした怪しい呼び込みだった。

 

 

「「「「「「「「「「…」」」」」」」」」」

しばし呆然とするブリッジクルー。

 

『『『…』』』

バッタも呆然としている。

 

 

「アキトー…」

ユキナがギリギリで復活を果たし、アキトに呼びかける。

『ぬ?なんだハテナか。今ちょっと忙しいんだ早急に用件を述べよ』

「………あのさ、何やってんの?」

『言うならばコミュニケーションを図ろうとして焦っているという所だ』

「無人兵器相手に効く訳ないでしょ…それに大体その『しゃっちょーさん』てのは何なの?」

『…シャチホコの息子の兄弟だ』

「それ、デタラメでしょ」

『オレは考えるのが苦手でな』

「知ってる」

『…最近ツッコミが早くなったな』

ちょっと感心するアキトだった。

 

ガゴン!

 

『ぬあ!?』

そんなやりとりをしている間にバッタが復活しアキトに襲い掛かった。

 

「アキト!?大丈夫」

「アキト様!?」

叫ぶようにアキトの名を呼ぶユキナとカグヤ。

 

「あきとおにーちゃん…」

ラピスはアキトが心配なのか少々泣き顔だ。

 

『ラピU!』

「ぐす…あきとおにーちゃん、何?」

 

 

[エステバリスの歌(アキトVer)]

戦いの日々が続く

だが恐れる事は無い

オレには強い味方がいる

イイきらめきだマイエステ

泳げ、潜れ、何でも出来るイカスロボット

オレのみの期待を込めていざ行かん

エステが腰の舞う

さあ今こそ、その力を示す時

『そういえばオレの本当のエステ何処いったんだろう?』

それは誰にもわからない。

 

 

「何よその歌はーっ!!?」

『元気の出る歌』

「アキト様、素敵…」

『クールミントテイストだからな』

「アキトさん…出来ますね」

『早起きは八丁味噌の得と言うしな』

ユキナはツッコミ、カグヤは呆け、エマはアキトをライバル視し、アキトはよくわからない事をのたまった。

 

「ふっ、では好評につき第二弾を…」

『止めんか』

 

ズドガンッ!!

 

『ぐぉぉ…ベ、ベン子!お前よりによって戦闘中にミサイルでツッコミ入れるな!』

「大丈夫!あんたならミサイル喰らったくらいじゃ死なないって信じてるから!」

グッと親指を上げてみせるレンナ。

「レンナ…火器管制を勝手に…」

「…レンナさん、何時の間に来たの?」

「まあ暇だったって所よね」

カオルとリサコの呟きに律儀に答えるのは何故か居るエリナ。

「…エリナさん、アナタが連れてきたんですね?」

「知らないわね」

すっとぼける。

戦闘中の緊張感は未だ皆無である。

 

『と、とにかく!泣くなラピU!オレは大丈夫だ!ちゃんと帰ったらとびっきりのディナーをご馳走してやるから待ってろ!』

「あきとおにーちゃん…うん、わかった」

『よし!いい子だ!』

ウィンドウ越しになでなでするアキト。

『へえ…テンカワさん、意外と良い所あるんですね』

『バカモノ!オレは何時でも良いお兄さんだ!だがたまに変身して別人になるが今は置いておく!』

『…どうなるのか非常に気になるけど…それで大丈夫なのかい?』

『当たり前だ!でもピンチだ!』

『どっちなんだよ?もしかしてさっきのやつで何処か損傷でもしたのか?』

『いや違う!』

『じゃあなんだよ?』

『うむ!さっきからオレの事をつけ狙っている鬼娘が存在しているのだ!だから大丈夫だがピンチなんだ!』

 

ドゴォン!

 

「誰が何だってぇ?ん?言ってみな、ア・キ・ト・君

『…いやレンナ君。もうテンカワ君、今ので戦闘不能状態…』

レンナのツッコミでアキト強制的に戦闘終了!

 

「さてっと…」

 

ドューワー♪

「はっ!?な、何、今の音!?」

突如ブリッジに鳴り響いた音に周りを見渡す面々。


「全く!あんな妙な歌なんか唄うなんて士気低下もいい所だわ!ここは私が口直しならぬ耳直しに一曲…」

そしてブリッジ中央にはマイクを持った女が1人。

 

『なぁ!?ちょ、ちょっと待てベ…』

 

だがアキトの静止の声は届かず。

 

 

 

 

 

 

「う゛す゛へ゛に゛の゛コ゛ス゛モ゛ス゛が〜♪」

 

 

 

 

 

 

 

『ぴぎゃああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

その時、コスモス周辺に居た戦艦、機動兵器が全て沈黙したらしい。

 

 

 

 

「うん!」

そして歌い終わったレンナ、非常に満足そうである。

 

 

 

 

 

 

「うう…みんな大丈夫…?」

「な、なんとか…」

「な、なんて歌声…」

「おおお…脳にきた…」

「な、なんなのよ今の…」

「ほ、ほほほ…いい声ですわ…ね……ミスマルおじさま以上かしら…?」

「…み、耳栓しててもこれ程なの…?」

「…あうぅぅぅ…ユキナぁ、耳がぐわんぐわんいってる…」

「…」

ブリッジクルーが何とか立ち上がる中、沈黙するものが1人。

「あれ?ハーリー君、大丈夫?…って、うわ!?」

「ど、どうしたの!?」

「ああっ!?ハ、ハーリー君の耳から何だか妙な汁が出てるーっ!?」

「うわわわわわ!?」

「あ、そうか。ハーリー君さっきコスモスAIの『アメノホヒ』と直接リンクしてたからまともにアレを…」

「納得してないで医療班呼んでーっ!!」

「ハーリー君しっかりー!傷は深いわよーー!!」

もはや大混乱である。

 

「…」

ハーリー、この日、生まれて初めて脅威という言葉を知る。

 

「え?え?どうしたの?」

事の元凶、全くついていけず。

 

【…ぴー】

そしてアメノホヒは逝っちゃった心電図状態になっている。

 

 

 

再び場面は変わり…。

 

『な、なんだったんだろうね…さっきの音』

『す、少なくとも音なんて生易しいものじゃないですね。言わばアレは超音波という所でしょう』

『ちょ、超音波だと!?木星蜥蜴も新兵器を導入してきやがったか!』

『いやヤマダ君、それは無いと思うよ?』

『俺はダイゴウジ・ガイだ!で、何でそう思うんだ?』

『ほらアレ見てくださいよ』

イツキが指差す先には…。

『アレ?……………残骸だな』

バッタの残骸が多数。

『ええ、残骸です』

『それが?』

『じゃあ問題、さっきまで戦っていたバッタの群れは何処に行ったのかな?』

『あ?そりゃあ…………………まさか』

『うん、その考えは正しいと思うよ?』

『そ、そうなのか?それじゃさっきのアレは一体?』

『その辺の事情はブリッジに聞けば分かると思いますよ?なんだか大騒ぎしてるみたいですから』

『……そうか』

 

そう、先程のレンナの歌声によってバッタ(およそ数百匹)は全て沈黙したのであった。

物凄い威力である。

敵味方全てに有効だが。

 

『…ん?そういえばアキトはどうした?』

『おや、そういえば見当たらないね?』

『そうですね。一体何処に?』

 

 

 

 

 

 

 

 

その話題のアキト。

 

「がっでーーーむ!!!」

レンナの歌声によってエステが爆発することは無かったようだが、機器異常が発生しとんでもない方向へ爆走していた。

 

 

 

 

 

 

アキトの運命は如何に!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキト…とコスモスの運命はどっちだ!?続くような続かないような思わなくも無きにしも非ず。

 

あとがきです。

こんにちは、彼の煤iかのしぐま)です。

え〜と(汗)

すみません、変な歌聴きながら書いたらとんでもない事になってしまいました(泣)

 

さて、最後の場面ですが…わかる方居るでしょうね。

はい、これはTV版のアレです。

次回がどうなるかは…考え中(爆)

 

ではこの辺で〜。

 

 

代理人の感想

 

 

 

 

スタンド名『グレートエスケープ』

本体 マキビ・ハリ・・・・・・・・・・・・・・再起不能(リタイヤ)

 

 

こんな感じですか(爆)。

 

 

 

 

アキト?

ああ、なんか忘れられてそうですね(爆)。