ドゴォォォォォォォ・・・・・・・・
破壊そして蹂躙し尽くされた宇宙コロニー。
いやコロニーだった場所。
あちこちで火の手があがり、そして爆発が起きていた。
「なあユリカ…いったい俺達が何をしたと言うのだろうな?」
外界とは反対に静まりかえったサレナのコクピット。
しかしその問いに答える者はもういない…
「いったい何処で俺達は間違いを犯したんだろうな?」
血に塗れし復讐鬼が最後に手にしたのは最愛の女性の亡骸
「俺達がA級ジャンパーだった事か?俺が君を守る力が無かった事か?それとも君が俺に出会ってしまった事か?」
「こんな事なら『遺跡』を破壊すれば良かったかな…?」
悲しき復讐鬼の独白に答えるものはもういない…そうもういないのだ……
「さあユリカ…一緒に行こう……もう決して離さないから……」
そう呟き最愛の女性…ユリカにそっと口付けをする
あたりに虹色の光が広がりそして――――――
機動戦艦ナデシコ
時の帰還者
火星の後継者事件の後、俺はユリカをルリちゃんに任せユーチャイリスで火星の後継者の残党狩りをしていた。
後継者の殆どは草壁が起こしたクーデターの時、火星に集結していた為にルリちゃんの乗るナデシコCによって
ほぼ無傷で捕まえられていた。
しかし全部が全部捕まえられて訳では無く一部の到着の遅れた部隊、また後継者を陰ながら支援していた
政治家や実業家などは今だ捕まっていなかった。
一応当初の目的――ユリカ救出と北辰の抹殺――は果たした、後は到着の遅れた部隊そして支援していた
実業家や政治家を狩るだけだ……
もう全て終わりにしてユリカやルリちゃんと静かに暮らさないか…?と考えた事もあった。
しかし俺にはそんな時間はもう残ってはいない、ネルガルに救出された時点で余命は後5・6年だとイネスさんに言われた。
あれから既に2年が経っている、残るはあと3年…こんな俺が今更帰ったとしても一体なにができる?
死に逝く様を見せ付けて余計にあの二人を苦しませるだけでは無いのか?
ならば俺はあの二人の為に…今後の脅威になり得る連中をこの命尽きるまで狩り続けるまでだ。
だからまず俺は到着に遅れた実行部隊の連中を狩り始めた。
この間にネルガルには支援していた連中の割り出し、及びその裏づけを取ってもらっている。
それとラピスについてだが、考えた末にユリカに預ける事にした。
もともと何時までもこんな事に付き合わせるつもりは無かった…ラピスが俺に対して依存しているのは分かっている、
だけどその点ならユリカに任せれば問題ないだろう。
あいつならきっとラピスに笑顔を取り戻させてくれるだろう。
ユリカを置いて来ておきながら肝心な所ではユリカに頼る…お笑いだな。
後リンクについてだがそれは最近イネスさんが確立された理論で何とかするつもりだ。
最近イネスさんが確立された理論――オモイカネ級コンピュターにラピス代わりをさせる――
つまりオモイカネ級コンピュターにリンクするのだ。
もともと五感は大量の電気信号を脳で計算しているものだ…ラピスとのリンクは俺の代わりに
この電気信号を計算して貰っていると言ったものだから、ようはこの膨大な電気情報を計算出来る存在にリンクしていれば
よいのだ。
リンクを切るのはラピスが嫌がるだろうが仕方が無い・・・多少強引にでも切るしか無いだろう、
少なくともこんな事に付き合わせるよりか遥かにマシだからな。
それに俺としてもラピスには普通の少女としての生活に戻って欲しいからな。
そんな事を考えながら残党狩りをしていたある日新たな悲劇は起こった・・・いやいっそ『喜劇』と言ったほうがいいか・・・・・・
―――――ネルガル月秘密ドック―――――
「アキト君・・・ユリカさんもうあまり長く持たないそうよ・・・」
半年ぶりに会ったエリナの第一声がこれだった。
「なんだと!!!遺跡との切り離しは上手くいったんじゃなかったのか!?」
「切り離しじたいは上手くいったそうよ…
だけど衰弱がひどすぎるのよ…この分じゃ後半年しか持たないそうよ」
エリナからこの事を聞いた時、俺は目の前が真っ暗になった。
俺が今までしてきた事は一体なんだったのか?
結局は徒労か?この命を削り人の道を外してまで助け出したのは一体なんだったのか?
どうやら死神は――いや神は血に塗れた復讐鬼の命だけでは飽き足らないらしい、
まだ生贄が足らぬと…生贄をよこせと要求する腹づもりらしいな……
「それに・・・」
「それに?どうした」
珍しくエリナが言いよどむ、こんな事は俺が復讐を始めて以来はじめてだ。
―――――ターミナルコロニー『アマノイワト』―――――
「第1第2防衛ライン…か、壊滅!!」
「なにぃ――突破されたではないのか?」
「ち、違います…壊滅しまし…い、いえ違います壊滅ではなく殲滅されました!!!」
―――ユリカを遺跡と再び融合させるだと!?そんなバカな!!―――
「ば、バカな此処の守備隊は精鋭揃いだぞ!!」
―――あいつは…ヤマサキは宇宙軍とも繋がっていたのよ…―――
「続けて第3第4防衛ラインと交戦に入ります!!」
―――ヤマサキは始めからどちらが勝利しても良い様に保険を掛けていたのよ―――
「敵機動兵器に重力波の増大を確認!!」
―――遺跡と融合すれば少なくともユリカさんは死なない…それを盾にミスマル提督からユリカさんを奪い、
そして自分は改めてゆっくりと研究をする―――
「ま、まさか…機動兵器がグラビティーブラストを撃つというのか?」
―――おそらく始めからそのつもりでユリカさんを生かさず殺さずの状態にしておいたのよ…きっと―――
「て、敵グラビティーブラスト発射、被害多数!!」
―――宇宙軍にしてもこの一件でボソンジャンプの戦術的的有効性は思い知らされたでしょうから…
簡単にヤマサキの口車に乗ったのよ―――
「戦艦では分が悪い!!此方も機動兵器主体で攻めろ!!!その間に戦艦を第6防衛ラインまで下げて守備を厚くしろ!!!」
―――エリナ…ユリカは今何処にいる……?―――
「だ、駄目です…まるで歯が立ちません!!これはまるで一方的な虐殺です!!!」
―――タ―ミナルコロニ―『アマノイワト』…アキト君どうしても行くの……?―――
「なんて奴だ…後方の戦艦に伝令!!多少の犠牲はやむもえん!!!全艦一斉射撃!!!」
―――あぁ、もう二度と戻ってくる事は無いだろう……それと補給ありがとう―――
「だ、駄目です、まるで当たりません!!それに奴は戦艦クラスのディストーションフィールドを保持している様です!!!」
―――いいのよ…私は会長のおつかい……だから―――
どうやら俺は随分と『甘すぎ』た様だな…
あれだけコロニーを落としたのに…あれだけ人を殺したと言うのに、軍はまだ『人柱』を使ってジャンプを独占しようとする!!
きさまら軍にとって俺たちA級ジャンパーはあくまで戦争の兵器でしか無い様だな!!
生きていればモルモット、死ねば――死にそうになれば遺跡の翻訳機!!!
いいだろう!!貴様らのその高慢な考えが一体何を生み出したかしっかりと見せてやる!!!
これまでは最小限の被害で目的を達成してきたが今は違う!!!
貴様らを虐殺にする事で神への生贄にして!!貴様らに醒めない悪夢を見せ付ける事で
貴様らの思い上がりがいかに高慢であるか重い知らせてやる!!!
―――1時間後―――
アキトは遺跡に向かい合っていた。
守備隊は完全に殲滅した、此処にいた科学者達も例外なく殺した、脱出しようとしていた奴らも全て打ち落とした。
現在はイネスに教わった遺跡とユリカの分離作業をしている最中だ。
科学者の中にヤマサキの姿が見当たらなかったが気にする必要は無いだろう、奴にとってユリカは大事な実験サンプル
であり、そして切り札であったはずだ、その切り札が無い今、奴は牢獄に逆戻りしか道は無いはずだ。
作業は順調に進んでいき30分後にはユリカと遺跡の切り離しが終わった。
本当にこれで良かったのだろうか?
そんな考えがアキトの脳裏によぎる。
確かに現在ユリカを死から助け出す方法は存在しない、しかしこのまま遺跡と融合しつつ、
時が流れれば何時かユリカを助けるだけの技術が発見されたかもしれないのだ。
今やっている事はただヤマサキにユリカを触れさせたくないという自分勝手なエゴじゃないのか?
確かに今この場でユリカを助けなければ、まず軍がユリカを遺跡から切り離すなんて事はしないだろう。
そう例え未来において治療法が発見されたとしてもまず手放す事は無いだろう。
これしか方法は無かった…これしか……でもこれが本当に最良の選択だったのだろうか?
ユリカを抱き上げサレナのコクッピットで一人考える。
後はユリカと共に今度こそ誰も追ってこれ無い所にジャンプするだけだ。
「…っうぅ……アキト……?」
ユリカのうめき声に我にかえる。
「…!!ユリカ気がついたのか!?」
「…やっぱりアキトだ…私を助けに来てくれたんだね、やっぱりアキトは私の王子様だね」
「…ユリカ……すまない本当にすまない………俺は君を守る事も、君の王子様になる事も出来なかった…許してくれユリカ」
枯れたはずの涙が止まらない。
「うぅん、違うよアキトは立派な私の王子様だよ…だから、自分を、責め…な…い……で」
傍目でもユリカの生気が失われていく様が分かる。
おそらく短期間に2度も融合と切り離しを行った為、
かすかに残っていた命の灯火を一気に消費してしまう事になったのだろう。
「ユリカ!!しっかりしろユリカ!!!今から新婚旅行の続きをするんだぞ!!!」
何故か感覚の無いはずの両腕からユリカの体温が無くなって行く様がはっきりと分かった。
「フフ…新婚…旅行か……また、行き………たい……ね」
「あぁそうだ今度こそ一緒に行くんだ!! だから死ぬな、死ぬんじゃない!!!!!」
「ゴメンね…アキ…ト、い…っしょに、行け…なく……て、本、当に、ゴメ…ンね」
「オイ!!ユリカ!!!返事してくれ……ユリカァァ〜〜〜!!!!」
破壊そして蹂躙し尽くされた宇宙コロニー。
いやコロニーだった場所。
あちこちで火の手があがり、そして爆発が起きていた。
「なあユリカ…いったい俺達が何をしたと言うのだろうな?」
外界とは反対に静まりかえったサレナのコクピット。
しかしその問いに答える者はもういない…
「いったい何処で俺達は間違いを犯したんだろうな?」
血に塗れし復讐鬼が最後に手にしたのは最愛の女性の亡骸
「俺達がA級ジャンパーだった事か?俺が君を守る力が無かった事か?それとも君が俺に出会ってしまった事か?」
「こんな事なら『遺跡』を破壊すれば良かったかな…?」
悲しき復讐鬼の独白に答えるものはもういない…そうもういないのだ……
「さあユリカ…一緒に行こう……もう決して離さないから……」
そう呟き最愛の女性…ユリカにそっと口付けをする
あたりに虹色の光が広がりそして――――――
続く
後書き
どうも始めまして霜月という者です。
始めての作品にしていきなりの連載物です。
いきなり暗い展開ですが決してジェノサイドな展開が好きなわけでは無いです、この暗さが後3話続けられたら
拍手を貰いたいくらいです。
稚拙なSSでありますがなにとぞ長い目で見てやって下さい。
管理人の感想
霜月さんからの初投稿です!!
ダークっすね〜
いや〜、本当に救いが無いっす(苦笑)
・・・なんて、Benが言うとパソコンに向かって突っ込む人が多そうなので止めておきます(爆)
しかし、これはプロローグなんですよね?
これから先は坂道を転げ落ちるように不幸の連続が(待てい)
と、冗談はこれくらいにしておいて。
続きを楽しみにして待っていますね!!
では、霜月さん!! 投稿有難うございました!!
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