< 時の流れに福音を伝えし者 >

 

 

 

 

 

第二話. その二 『「緑の地球」はまかせとけ・・・全ての業は俺が背負う!!』

一人で背負わないで下さい
僕も手伝いますから

 

 

 

 

 

 ・・・まあ、予想通りなので仕方が無い事だが。

 

 ムネタケ副提督が叛乱を起こした。

 

 俺は食堂から動くつもりは無かったが・・・

 ルリちゃんの頼んだ出前を持って、ブリッジに来ていた。

 ・・・これも、ルリちゃんなりの可愛い悪戯だ。

 これしきの事では、未来も簡単に変わる事はないだろうしな。

 そして現れる連合宇宙軍の戦艦・・・

 俺とルリちゃんは、目の前の戦艦と通信を繋いだ瞬間、両手で耳栓をしていた。

 

 

「ユリカ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 

 

「お父様!!」

 

 相変らず元気そうだな・・・お養父さん・・・いやミスマル提督、だな。

 と、言ってもよく考えればこの時点では、提督もユリカもお互いに無事だ。

 ちなみに始めのミスマル提督の一声で、ブリッジの半分位の人が意識を手放しかけていた。

 その隙を狙ったかの様に、ユリカとミスマル提督の親子の会話が続いている・・・

 

「ユリカ!!

 おお、久しぶりだなこんなに立派になって(号泣)」

 

「そんな、お父様とは今朝も一緒に、食事をしたじゃないですか。」

 

「そうだったかな?」

 

 ・・・アルツハイマー症候群になるのは、早すぎるでしょうミスマル提督。

 俺も流石に、声に出してそんな事は言わないが。

 

「これはこれは、ミスマル提督・・・一体どの様な御用件でしょうか?」

 

 このままでは、親子の会話から抜け出せ無いと判断したらしく・・・

 プロスさんが復活し、ユリカとミスマル提督の会話に割り込んだ。

 

「うむ、こちらの用件を言おう。

 機動戦艦ナデシコに告ぐ!! 地球連合宇宙軍提督として命じる!! 直ちに停船せよ!!」

 

 簡単に言えば、ナデシコを寄越せ・・・という事だ。

 

 良く考えれば、虫の良い話しだな・・・

 まあ、それだけ宇宙軍には余裕が無いのだろう。

 確かにナデシコの実力は、宇宙軍には魅力的に映っただろうな。

 

「・・・どうします、アキトさん?」

 

「・・・今回も動くつもりは無いよルリちゃん。」

 

 ルリちゃんが俺に質問をしてくる。

 ちなみに、昼御飯にと俺にオーダーしたチキンライスを、今も食べている。

 

 ・・・行儀が悪いぞ、ルリちゃん。

 

「・・・解りました。

 それとハーリー君に連絡入れておきました、OKだそうです。」

 

 チキンライスを食べ終え。

 口元を拭きながら、俺に小声で報告をするルリちゃん。

 

「・・・そうか、ラピスにはもう連絡をしているから、後は大丈夫だな。」

 

「・・・まだ、繋がってるのですか?」

 

 何故か悔しそうな目で、俺を見るルリちゃんだった。

 

「・・・あ、ああ?」

 

 そこで俺と、ルリちゃんの小声での会話は終わった。

 その後の展開は・・・

 ユリカが皆の制止を聞かずマスターキーを抜き、ナデシコは操作不能になり。

 そしてユリカはプロスさんとジュンを連れて、提督の待つ戦艦に乗り込んで行った。

 ・・・しかし前回もそうだが、何をしに行ったんだユリカは?

 

 この時俺は知らなかったが・・・

 ユリカがしつこく、俺がユリカと別れてからの過去を聞くので、俺は両親が殺された事を話した。

 犯人は既に知っているが・・・

 この時点でのユリカへの言い逃れには、最適だと思った。

 それに、前回もそう言ったからな。

 

 ・・・後にこの事件の真相を聞いたら・・・やはりユリカだ、と思った。

 

 

 

 今、俺達の目の届かない所で、戦艦クロッカスとパンジーがチューリップに吸い込まれていた・・・

 

 

 

 

 

 僕達は今、軍人の人達に食堂に閉じ込められている。

 何でも、連合軍がナデシコを欲しがったらしい。

 

 はぁ・・・どうして、権力者ってこんなんばっかなんだろう?

 

「どうした!! 皆、暗いぞ!!

 俺が元気の出る物を見せてやる!!」

 

 何やら、こんな状況でもなんだか燃えているアニメ好きな人。 エステバリスで転んで足を折った、情けない人。

 自称【ダイゴウジ ガイ】ことヤマダ ジロウさん。

 

 何でもナデシコのキャッチフレーズは『性格に問題があっても能力は一流』らしいけど・・・

 この人の場合、性格のせいで腕が駄目になってるんじゃないかな?

 

 既に足が駄目になってるけど・・・

 

「どうします?

 もうすぐユリカさんが帰って来ますよ。」

 

 僕とアキトさんとルリちゃんはテーブルに座ってこの後の事を相談していた。

 ルリちゃんはオレンジジュースを飲むのを止めてアキトさんに話し掛ける。

 

「う〜ん、前回は勢いで反撃をしたからな・・・

 今回はどうやって・・・考える必要は無いみたいだよルリちゃん。」

 

「・・・ですね。」

 

 僕達の目の前では既に、ガイさんを先頭に皆が反撃を始めていた。

 だけどガイさん・・・あなた、足骨折してるの忘れてるんですか?

 

「あ、こけましたね。」

 

「ああ、その上皆に踏まれているな。」

 

「先立って行ったのに、なんだか哀れですね。」

 

 前回はこのあとすぐに殺されてしまったっていうから、なんだかガイさん同情してしまった。

 そして僕達は、叛乱した兵士達を鎮圧しつつデッキに向かった。

 

 俺も途中で遭遇した兵士を知識にあった体術で倒した。

 体が人でなくなっても身体能力はそんなに変化はなかった。

 だが、赤い世界で暇つぶしにいろんな武術を練習したが、今まで相手がいなかったので手加減が分からなかった。

 アキトさんも今後、トレーニングをするそうだから手加減を覚える為にも一緒にしようかな?

 

 

 

 

 

 そして、僕達はは廊下で操舵手のミナトさんと言う人に出会った。

 

「あれ〜、ルリちゃんってアキト君やシンジ君と仲がいいんだ?」

 

「いえ、僕がルリちゃんと会ったのは出港した日ですから、そういう訳ではありません。」

 

 僕は、いち早く訂正をした。

 こういう場合は、僕が言ったほうがいいだろう。

 

「ふーん、じゃあアキトくんとルリちゃんって前々からの知り合いだったんだ。」

 

「はい、そうなんですミナトさん。」

 

 ルリちゃんはこの問いには素早く答えた。

 

「アキト君も艦長とルリちゃんを、天秤にかけたりしないわよね〜。」

 

 ・・・声は軽いが、ミナトさんの目は妙に真剣で恐い。

 

「アキトさんはそんな事しませんよ、ミナトさん。」

 

 アキトさんが言うにはルリちゃんは妹のようなものだって言うから、加持さんとアスカの様な関係だと思ってたけど・・・

 ルリちゃんは真剣にアキトさんが好きなのかな?

 

「ふ〜ん、アキト君の事には詳しいんだルリちゃんは。」

 

 今度は優しい目でルリちゃんを見詰めるミナトさん。

 ミナトさんにとってもルリちゃんは妹のようなものなのかな?

 

「ええ、アキトさんの事には詳しいですよ私は。」

 

 ルリちゃんも、ミナトさんに微笑みながら返事をする。

 そんなルリちゃんの返事と表情に、驚くミナトさん。

 

「初対面の時は、あんなに無表情だったルリちゃんが・・・

 そうか、これも全部アキト君のお陰なのね。」

 

 未来では実際どうだったか知らないけど、多分アキトのおかげではあると思う。

 だけど、この様子だと未来ではミナトさんも関係していたのかもしれない。

 

「そうですね。

 最初の時は実は緊張してたんです。

 アキトさんと、再会出来るかどうか解らなかったので・・・」

 

「ほぉぉぉぉぉぉ!! 言うじゃないルリちゃん!!」

 

 いい加減、次にいかないと・・・

 ルリちゃんのその言葉を最後に、ミナトさんはホウメイさんの手伝いに。

 僕達は外で動いているチューリップという物を牽制する為に格納庫に向かった。

 

 

 

 

 

「・・・今回もマニュアル発進ですね。」

 

 何故か嬉しそうなルリちゃん。

 あれはちょっと・・・流石に今度もやるのは俺も嫌だ。

 

「・・・ちゃんと空戦フレームに変えて行くよ、今回は。」

 

「前回はどうしたんですか?」

 

 シンジくんの質問に画面のルリちゃんの目が細まり口元が歪む。

 しまった!! 失言だったか!!

 

「前回はアキトさん、陸戦フレームで出たんですよ。 どうなったと思います?」

 

「やっぱ陸戦ですから空は飛べませんし、海に・・・」

 

 ルリちゃんはくすくすと口を抑えて笑っている。

 

「ええ、落ちました。 ミナトさんが言うにはピョコピョンピョコピョン水面を跳ねてたそうです。」

 

 ピョコピョンピョコピョンって・・・そんなに変だったのか?

 

「その後ヤマダさんが空戦で出撃してアキトさんのアサルトピットに空戦を分離合体しました。」

 

「なんでそうする必要があったの? ガイさんがそのまま戦えばよかったのに。」

 

「骨折していたという名目もありましたが、ただやりたかっただけでしょうね。

 アキトさんも昔はこういうの好きでしたから。」

 

 否定でき何のが情けない・・・

 

「そういうわけで・・・ヤマダさんは今回は、イイトコ無しですね。

 でも、シンジさん。 あなたもヤマダさんのことそう呼ぶんですね。」

 

「え? いけないかな?」

 

「いえ・・・いけなくはないんですけど、そう呼んでたのはアキトさん位でしたし。」

 

「別に本人がそう呼んでほしいって言ってるんだからいいんじゃないですか。

 それに本名を知らないと言う理由もあるけど、それってプロスさんと同じじゃないですか。」

 

 ・・・身も蓋もないことだった。

 確かにはたから見れば、ガイとプロスさんは同じ事をしている。

 

「・・・・・・」

 

 ルリちゃんもボー然とその意味を理解している。

 

「・・・ルリちゃん」

 

「・・・はい、マニュアル発進。 用意、ドン」

 

 ・・・俺とルリちゃんは出撃することで話題をそらすことにした。

 だが、当分【プロスさんはガイ(ヤマダさん)と同類】という考えが否定できない為に

 俺達の頭から離れず悩ませるのだった。

 

 

 

 

 

「ルリちゃんどうしたの、なんだか妙に影背負っちゃって?」

 

「ちょっと、あることに気がついてしまったんです。

 それでちょっと悩んでて・・・」

 

「気づいたことって?」

 

「世の中には気づかないほうがいいことがあるんです。

 多分これは気づいてはいけないことなんだと思います。

 

「そうなの? ルリちゃん」

 

「ええ、私も早く忘れたいです。」

 

「わ、わかったわ、もう聞かないでおく・・・」

 

 僕の言ったことをルリちゃんは引きずっているようだ。

 そんなにすごいこと、僕言ったのかな?

 

「・・・あの、僕も出ますよ。」

 

 僕はエヴァに乗って、外部マイクで伝える。

 

「・・・あ、はい。 よーいドン。」

 

 僕はルリちゃんの合図にあわせて片膝をついて走り出す体制を整える。

 そしてクラウチングスタートでエヴァを走り出させる。

 エステバリスではこの体勢は出来ないだろう。

 

 エヴァの筋力は人間のサイズに換算しても数倍の筋力がある。

 そしてすぐに速度は百km以上に達し、カタパルトを飛び出した。

 

 飛び出した空中でエヴァはATフィールドの赤い羽を広げ、

 アキトさんの乗るエステに続いた。

 

 

 

 

 俺達はエステのディストーションフィールドによる高速度攻撃と、エヴァのATフィールドの刃で

 チューリップの触手に対応。

 余裕でチューリップの触手をいなし、その間にユリカが帰艦し

 戦闘はナデシコがチューリップの入り口に頭を突っ込み、グラビティ・ブラストの一撃で決着はついた。

 

「しかし・・・ルリちゃんの成長には驚かされたな。

 ・・・そうだよな、ルリちゃんが俺のあの2年間を知らない様に。

 俺も知らない、ルリちゃんの2年間があるんだからな。」

 

(ラピス・・・)

 

(何、アキト?)

 

(・・・頑張ろうな。)

 

(・・・うん、アキトも頑張ってね。

 私もハリと一緒に地球で頑張るから。)

 

(・・・ああ、じゃあまた。)

 

(うん。)

 

 ラピスも精神的に、急激に成長している・・・

 俺の心残りは、だんだん解消されていくだろう。

 

「後は・・・」

 

 俺はその時の事を夢見ながら、ナデシコに帰艦した・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

第三話に続く

 

 

 

 

呆然としてる代理人の感想

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エヴァンゲリオンって、身長40mですよね。

原作ではジンタイプ(30m)が丸々収納されていたナデシコの格納庫に入ったことはまだ見逃せるとしても、

どこをどうやったら身長10mにも満たないエステ用のカタパルトで発進できるんでしょうか?

なんか、全身の関節を外して月の化身かサンタナの如く

カタパルトをずるずると這い進む初号機の姿が想像できてとっても怖いんですが(爆)