< 時の流れに福音を伝えし者 >

 

 

 

 

 

第十一話アフター.ひとときの休息

 

 

 

 

 

 

「お休みですか?」

 

 皆さんがブリッチに集まり、艦長がプロスさんにそう言う。

 

「はい、今までナデシコは地球に戻ってからずっと任務続きでしたので

 明日から一週間停泊する街で皆さんに休養を取ってもらうことにしました。

 街のホテルで外泊してもらってもかまいません。

 有事の際にはコミュニケで呼び出しをしますので

 すぐにナデシコに戻れるように街の外へは出ないようにしてください」

 

 そういえばナデシコってはっきりした休日がいままでなかったよな。

 雰囲気的にいっつも休んでる気がしてたし。(テニシアン島の時とか)

 

「でもプロスさん、何で今頃になってお休みなんですか?」

 

 そこへメグミさんがプロスさんに質問する。

 他の皆さんもそう言えばと思い頷く。

 

「実は先日の戦闘でやられた相転移エンジンの調子が非常に悪いんですよ。

 行き成り爆発という事はもちろんありませんが整備班だけでは応急処置で限界でして、

 このまま任務に就くのは非常に危険と本社とウリバタケさんに言われまして、

 丁度いい機会でしたのでナデシコの修理ついでに休暇という事になりまして」

 

 ふ〜ん、そういう訳なんだ。

 

「なお、街のネルガルの運営する店を利用していただく時に皆さんの社員IDを見せていただければ

 30%OFFで利用出来るサービスも用意してあります。

 よい休日を過ごして下さい」

 

 プロスさんがそう言い終えて皆さんは解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アキトさん!!! 明日一緒にお買い物に行きませんか!?」

 

 

「アキトー!!! お休みに一緒お買い物に行こ!!!」

 

 

「アキトさん!!!明日の予定空いてます!?」

 

 

「テンカワ!!! 休みに一緒どっか行かねえか!?」

 

 

 上からルリちゃん、艦長、メグミさん、リョーコさんが解散した直後、

 そう言いながら群がるようにアキトさんの傍に向かった。

 アキトさん、四人に一斉に攻められて逃げられずに困ってるよ。

 

「駄目ですよ皆さん。 

 アキトさんは私と出かけるんですから!!」

 

「アキトは私の王子様なんだよ。

 だから私をエスコートしてくれなきゃ!!」

 

「そんなことありません。

 私がアキトさんと一緒に行くんです!!」

 

「勝手に決めるな!!

 テンカワはお、俺とどっか行くんだからな!!」

 

 

「うぅぅ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」 ×4

 

 

 四人がアキトさんを中心にしてにらみ合って火花を散らしているように見える。

 アキトさんは三竦み(さんすくみ)ならぬ四竦みの中に閉じ込められて身動きが取れずおろおろしている。

 無様ですね、アキトさん。

 

「まったく、何をやっているのかしら」

 

 その時、隣にいたエリナさんがそう呟いた。

 その表情にはなんだか残念そうに諦めたような顔をしていた。

 試しに、聞いてみる事にした。

 

「何がそんなに残念なんですか?」

 

「私は停泊する街で支社に会長秘書として呼ばれてるのよ。

 本当なら私だってアキトくんを誘って・・・」

 

「誘って・・・?」

 

 

「・・・って何言わせるのよ!!!

 私は別に残念なんて思って・・・・ウッ!!!」

 

 

 四対の眼光がエリナさんを黙らせる。

 今から否定しても説得力ありませんよ。

 そこへイネスさんが・・・

 

「そう言えば私も支社の方に呼ばれてるのよね。

 ウォンさんじゃないけど残念だわ」

 

 眼光がイネスさんにも向けられるがイネスさんは怯まない。

 

「イネスさん、さり気なく言ってきましたね」

 

「大人の女は待つものなのよ」

 

 そういうもんなんですか。

 でもアキトさん、鈍感だから何時まで待っても気づかないんじゃ。

 

「あの、シンジさん」

 

「ん、何イアナちゃん?」

 

 話しかけてきたイアナちゃんは何かもじもじしていて、両手の指を絡めたりしている。

 

「え、えっと、明日街に買い物に行きたいんですけど、

 い、一緒に付いてきてくれませんか?」

 

「え!?」

 

 僕はそれを聞いてアキトさん達の方を見て、

 イアナちゃんもつられてそっちを見る。

 ルリちゃん達の睨み合いはまだ続いていた。

 そして顔を戻す。

 

「ベ、別にああいう意味じゃありません!!

 た、ただ生活用品を買いたいんですけど、何を買えばいいのか良く解らなくって。

 それで出来たらシンジさんに教えてもらえればって・・・(//////)」

 

 そう言うとイアナちゃんは顔を赤くして俯いてしまう。

 かなり動揺してたけど、本当に何を買えばいいのか解らないんだろうな。

 今まで牢獄に閉じ込められたような生活をしてたみたいだし。

 

「わかったよ、一緒に行ってあげる」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「うん、だからもうちょっと落ち着いて。

 でもイアナちゃんは女の子だからそういう用品を選ぶためにも

 誰か丁度いい人も誘うけどいいかな?」

 

「・・・はい、かまいません」

 

 イアナちゃんは少し間を置いて了解する。

 そんなに残念そうな顔をしないでよ。

 

 ともかくイアナちゃんの生活用品を選んでくれそうな人は・・・

 いた、やっぱりこの人しかいないな。

 他の人は何かと忙しそうだし。

 

 僕は頼めそうな人に声を掛ける。

 

「ミナトさん、ちょっと頼みたい事があるんですけどいいですか」

 

「なあに、シンちゃん?」

 

 やっぱりミナトさんしかいないよ。

 それに何かと世話好きな人みたいだし。

 

「実はイアナちゃんがお休みの間に生活用品を買いに行きたいんですよ。

 でも僕、女性用の生活用品までは良く解らないんでミナトさんも付いてきてくれませんか」

 

「ええ、いいわよ、特に予定もないし。

 それにしてもシンちゃんって結構世話焼「アキト(テンカワ、さん)は誰と一緒に行きたいですか?」 ×4

 

 

 ミナトさんの了解を聞いた後だったからよかったけど

 その後のミナトさんの声は争っている四人の声にかき消されてしまった。

 

 ルリちゃん達は睨み合いに痺れを切らしてアキトさんに決めてもらうことにしたみたいだ。

 アキトさんは矛先がついに自分に向けられて冷や汗を流している。

 どうしよう・・・・・・・・・・・・そうだ!!

 

「ミナトさん、イアナちゃんってほとんど生活用品持ってないですよね。

 それで買う物が多くて僕達だけじゃ持ち切れなくなるんじゃないかと思いません?」

 

「え、ええ、そうかもしれないわね」

 

 ミナトさんは突然僕が喋り出し少し戸惑う。

 

「それで誰か荷物持ちが必要だと思うんですよ。

 誰か丁度いい人いませんか?」

 

 そう言いつつ目線をアキトさんの方向に向ける。

 ミナトさんもそちらの方を向いて表情を変える。

 

(あ、そういう事ね。)

 

 ミナトさんは僕の言葉の意図に気がついたみたい。

 

「それなら丁度いい人がいるわよ、あそこにね」

 

「それじゃあミナトさんの方から話しておいて下さいね。

 僕じゃあなんだか不味そうなんで(ニッコリ)」

 

「しょうがないわね、ふふふ♪」

 

 そう言うとミナトさんは四人に追いつめられているアキトさんのところに向かう。

 

「アキトくん、ちょっといいかしら?」

 

「な、何ですか、ミナトさん!?」

 

 アキトさんは追いつめられている状況で何とか返事をする。

 それと同時に四人にも睨まれるけどミナトさんは怯まない。

 すごいなミナトさんは、僕は長く生きているけどそこまで度胸無いよ。

 

「実はイアナちゃんが自分の生活用品を買いに行くみたいなのよ。

 それで結構な量になりそうだから荷物持ちをお願い出来ないかしら」

 

 

「喜んで荷物持ちさせていただきます!!!!

 いえ、させて下さい!!!!」

 

 

 アキトさんは涙を流してそれを了解した。

 

「ありがと、そういう訳だから四人ともごめんなさいね」

 

 そう言うとミナトさんはアキトさんを連れてそこから抜け出した。

 あっという間の出来事にルリちゃん達は呆然としている。

 

「シンちゃんにお礼を言ってあげたら、アキトくん。

 あれを抜け出す方法を考えてくれたのはシンちゃんなんだから」

 

「そうだったのか、ありがとうシンジくん助かったよ」

 

「別にいいですよ、でも荷物持ちは本当なんですからお願いしますよ」

 

「ああわかった、それくらいで済むんならね」

 

 そういう事で翌日、僕とイアナちゃんとミナトさんとアキトさんは

 一緒に街に買い物に行く事になった。

 そして暫らく呆然としていた四人は気づいた時・・・

 

 

「そんな〜〜〜〜〜〜!!!!!」 ×4

 

 

 と、悔しがっていた。

 ごめんねルリちゃん、あそこまで追いつめたらさすがにアキトさんが可哀相だと思って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日・・・

 午前中から僕達四人は買い物に街へ繰り出した。

 いろいろな店をまわり大体正午に差し掛かった頃

 アキトさんは・・・

 

「アキトさん、大丈夫ですか?

 よかったら半分持ちますよ」

 

「いや大丈夫だよ、これくらい」

 

 既に買った物はアキトさんの両手いっぱいに積み重なっており

 正面からはまったくアキトさんの顔が荷物に隠れてしまっていた。 

 女性の買い物ってどうしてこんなに多いんだろう?

 

「でももうそろそろお昼ですし食事にしましょう。

 僕、イアナちゃんとミナトさんを呼んできます」

 

「ああ、わかった」

 

 僕達は今イアナちゃん達が入っている店の前に立っていた。

 僕は店の中に入って二人を探し出す。

 

「イアナちゃん、ミナトさん、もうお昼なんで食事にいきましょう」

 

「そう言えばそんな時間ね。

 イアナちゃん、選んだ物の支払いをして来てちょうだい」

 

「はい」

 

 そう言うとイアナちゃんはレジの方へ行った。

 

「イアナちゃん、楽しそうね」

 

「ショッピングとかも初めてみたいですからね。

 いた場所が場所でしたから、普通の生活に憧れてたのかもしれませんね」

 

「普通の生活ね。 

 ナデシコが住まいって言うのは普通の生活って言えるのかしら?」

 

「あんまり言えませんね、でも今は十分楽しんでるみたいですし、これでいいんじゃないですか?」

 

「そうよね、でもシンちゃんと二人だけの方がイアナちゃん喜んだんじゃないかしら」

 

「それはどういう意味ですか?」

 

「・・・・・・」

 

 ミナトさんが僕の言葉に沈黙する。

 

「・・・シンちゃんもアキトくんと同じで鈍感?」

 

 失礼ですね、そこの部分で僕とアキトさんを一緒にしないでください。

 

「もしかしてイアナちゃんが僕のことをどう思っているかという事ですか?」

 

「と言うよりイアナちゃん、シンちゃんの事が好きなんだと思うわよ。

 気づかなかった?」

 

「イアナちゃんが僕の事を好きかどうかは別として特別な感情を持っている事には気づいてましたよ。

 でもそれが僕に対して恋心を抱いているのかまでは良く解りません。

 僕が人に好かれるなんて自覚出来たのは数えられる程度ですし、

 イアナちゃんはまだはっきりと僕の事を好きになってるんじゃないと思います」

 

「どうしてそんなことが言えるの?」

 

「僕がイアナちゃんを悪い奴等から助け出した。

 艦長みたいな考えだけど、イアナちゃんから見れば

 僕は悪い魔法使い達から救い出した王子様みたいに思ってるんじゃないかと思います。

 今はまだ憧れみたいなもので、今後僕に対しどういう感情を持つかは別として

 僕の事を恋愛対象としては見ていないと思います」

 

「なるほどね〜。 でもシンちゃん、人に好かれたと自覚した事が少ないとか言っておいて

 今の話聞いてるととてもそうは思えないんだけど」

 

「イアナちゃんがどういう感情を持っているのかわかったのは単純な人間の心理ですよ。

 例えば女性の大半が雰囲気やロマンチックなムードの中で優しくされたり告白されたりすると

 無意識にファンタジーのヒロインへの憧れをそのまま相手への恋心と判断してしまう事がありますから」

 

「ふ〜ん、女心がわかったような風に言うわね」

 

「気に触ったのなら謝ります、すみません。

 もちろん僕だって心理という言葉だけで人の心が解るなんで思ってません。

 僕は人の心こそが永遠の謎だと思っています」

 

 それが他人の心であろうと自分の心であっても。

 

「人の心は時に相手の心を癒し時には傷つけてしまいます。

 心が癒されれば安らぎを得、傷付けられればより心が痛みます。

 人は常にいつも一人で心の何処かに寂しさを感じ、心を傷付けながら生きています。

 そしてその心の隙間を埋めようとしていますが、

 同時に相手の心に触れて傷つく事に臆病になっています。

 矛盾してますよね、誰でも痛いのは嫌ですけど、

 相手の心に触れることで心を癒さなければ普通の心なら何時かは壊れてしまいます」

 

 普通の心ならだけどね。

 僕の心はサードインパクトによって補完されてしまった。

 それにより僕の心は傷ついても決して壊れることのないものになってしまった。

 そうでなければ僕は千年近くをあの赤い海で過ごす事は出来なかっただろう。

 

「人は一人では生きていけないというのはこういう事なんでしょうね。

 例え一人で生きていく環境が整っていたとしても、

 寂しさが癒されない人の心を壊してしまうからでしょう」

 

「・・・・・・シンちゃん、結構哲学的なことを言うのね」

 

「一部は僕の親友の受け売りですよ。

 他は僕が親友の言葉の先に見つけた答えです。

 それに気がつくのにかなりの時間が掛かってしまいましたけど」

 

 僕の心は千年たったとしても癒された訳じゃなかった。

 それをヒカルさんに教えてもらって気がついたんだもの。

 時間かかりすぎだよ。

 

「なんだか話がかなりずれちゃいましたね。

 とにかくイアナちゃんの気持ちは様子見という事です。

 もう少し経ってイアナちゃんが僕の事を知り、それがはっきりと恋愛感情だと自覚したら、

 僕もイアナちゃんの気持ちにどう応えるか考えるつもりです」

 

「そう、でも恋愛ってものは複雑だけど深く考えるものじゃないと思うわ。

 ただ自分が相手をどう思っているか正直に応えればいいと思うの」

 

「そういうものですか?

 でも・・・」

 

「シンジさーん!! ミナトさーん!!

 支払い済ませました〜!!」

 

 その時イアナちゃんが戻って来た。

 

「途中ですけど話はここまでにしておきましょう。

 外でアキトさんも待ってますし」

 

「そうね、イアナちゃんがその気になったら自分から告白する筈わよね。

 もし困った事になったらいつでも相談に乗ってあげるからね」

 

「ありがとうございます」

 

 そう言いつつ僕達は店を出てアキトさんと共の近くのレストランに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、何でこの私がファーストとフィフスを殺りにいかなきゃいけないのさ。

 あたしじゃなくて他の奴に任せりゃいいじゃない」

 

「上の命令なんだから仕方ないよ」

 

「それに上に逆らったらいきなりボンなんだから」

 

「僕らは楽しければそれでいいんだけど」

 

「そんなんで逝ちゃったら呆れてものもいえないよ」

 

「死んだらどっちにしろ言えないけどね」

 

「まあ、すぐに復活させられちゃうけど」

 

「それに殺っていいのはフィフスだけ。

 ファーストはリリスに向かうか解らないから絶対捕獲だって言われたじゃないか」

 

「オバサン、学習能力ないの?」

 

「誰がオバサンだって!!

 さっきから聞いてりゃ言いたい放題言って!!

 大体相手は二人なんだろ!!

 あんたらも二人なんだから二対二で丁度いいじゃないのさ!!」

 

 

「「僕らは二人で一人なの」」

 

 

「つまりは一人で半人前ってことかい。

 見た目がガキなら中身もガキってこと。

 あたしはガキのお守りも押し付けられてるって訳か」

 

 

「「む〜う、ガキガキって言うな!!!」」

 

 

「はいはい、この程度で怒るなんてやっぱりガキね。

 さっさとガキのお守りは終わらせるに限るわ」

 

 

「「ああ!!! こら、待て〜!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達はレストランに入りそれぞれのメニューを注文した。

 もちろん入った店はネルガル経営のレストランだ。

 せっかくの割引サービスがあるのだから有効に使わなくては。

 

「そういえばシンちゃんとアキトくんって何時からの知り合いなの?」

 

 そこへミナトさんが俺とシンジくんに質問して来た。

 まあ、何も話さずに一緒に食事するのもつまらないからな。

 

「別に何時からって程でもないですよね」

 

「ああ、ほとんどナデシコに乗る少し前だが」

 

「ほんと? その割には最初から仲が良かったし、結構息があってたじゃない」

 

 確かに言われてみればそんな気もするが。

 

「アキトさんには何処となく共感するところがありましたから、

 たぶんそれが要因じゃないかと思います」

 

「共感するところって?」

 

「う〜ん・・・・・・考え方とか経験かな?」

 

 考え方に経験・・・・・・確かにな。

 一度にたくさんの物を失い、再び失う事を恐れている。

 実に嬉しくない共感だな。

 

 だがその反面、俺と同じと思える存在がいると思うと何処かほっとする自分がいる。

 その考えは間違っている、俺は奪ったものに復讐しその過程でたくさんの人間を殺した。

 シンジくんは復讐の闇に染まった俺とは違う、復讐する対象すらいなかった。

 しかし、復讐の対象がいたとしたら復讐をしたのか?

 いや、【しかし】はない、俺は今過去にいるが自分の過去を変えている訳じゃない。

 そしてシンジくんが自分の世界の過去に行き歴史を変えたとしても

 それはシンジくん自身の過去を変えた事にはならないのだ。

 だからシンジくんは復讐しなかった、それでいいんだ。

 俺みたいな人間がいない方が・・・

 

 だが、俺はシンジくんの過去を見せてもらった時、そこに煮えたぎるほどの怒りを感じた。

 シンジくんはその怒りをぶつける先が何処にも無く、

 全てが終わった後、長い間ずっと一人で生き耐えて来たのだ。

 それがどれほどの辛さだったかは俺には想像もつかない。

 

「ねえ、アキトくんはどう思う?」

 

「俺ですか?」

 

 ミナトさんが考え込んでいた俺に振る。

 どう答えるか? 

 シンジくんの言ってる事がもっともだと思うけど・・・

 

「俺は・・・ただ相性が良かったのかもしれませんね」

 

「ふ〜ん相性かぁ、そうかもしれないわねえ。

 でも相性がいいからってシンちゃんに手を出さないようにね」

 

 

 ブッ!! ×3

 

 

 俺とシンジくんとイアナちゃんは同時に吹き出す。

 

「ミ、ミナトさん、何を言っているんですか!?」

 

「そ、そうですよ!?」

 

「あの、テンカワさんてそうなんですか?」

 

「さあ、どうかしら?

 でもシンちゃんはなんて言うか・・・中性的な顔つきをしてるじゃない。

 だから男女関係なくもてそうよね?」

 

「シンジさんってもてるんですか?」

 

 イアナちゃんはシンジくんに問い掛ける。

 

「僕はよく解らないよ。

 もてるなんて思った事もないし」

 

(う〜ん、やっぱりシンちゃんもアキトくんほどじゃないけど鈍感みたいね。)

 

「そうか? 俺から見たらシンジくんは結構もてると思うが」

 

(アキトさん(くん)には言われたくないです(わね))

 

 シンジくんとミナトさんが怪訝な顔をする。

 俺、何か変な事言ったか?

 イアナちゃんも何だかわからない様子だし。

 

「まあ、アキトくんの天然は置いといて?」

 

 天然?

 

「シンちゃんは間違いなくもてる方なんだから

 早いうちに言っとかないとシンちゃん誰かに取られちゃうわよ」

 

「ミ、ミナトさん!!(//////)」

 

 イアナちゃんが顔を赤くして縮こまる。

 彼女はシンジくんのことが好きなのか?

 だとしたら本人の前でそんな事言うか、ミナトさん。

 俺はシンジくんにだけ聞こえるように話しかける。

 

「シンジくん、イアナちゃんは君の事・・・」

 

「他人の場合は並みの感性があるんですね、アキトさん。

 どうやらそうみたいですよ」

 

 前半の内容が少し気になるが、シンジくんも知っているのか。

 

「野暮な事を聞くけど、シンジくんはどうするつもりなんだい?」

 

「僕からはよほどのアプローチが無い限り普通に接しますよ。

 まあ、告白でもされたらちゃんとそれに応えようとは思ってますよ」

 

「シンジくんにはその気が無いって事か」

 

「ええ、今の所は無いですよ。

 でもこの先イアナちゃんがずっとそう思っているとは限りませんからね」

 

「ちゃんと考えてるんだな」

 

「そういう点ではアキトさんが少し羨ましいですよ。

 考える必要がありませんからね」

 

「さっきからシンジくんの言っている事が一部よくわからないんだが」

 

「わからないのならいいですよ。

 ただこれがアキトさんが鈍感と言われる理由だとだけ覚えておいて下さい」

 

 ・・・・・・やっぱりよくわからん。

 俺の何処が一体鈍感なんだ。

 鈍感というんだから何かに気づいていないって事なんだよな。

 一体俺は何を見過ごしているんだ?

 

 

 

 

 

 

「いくら考えても解かりっこありませんよ。

 自分を客観的に見れるようになれば分かるかも知れませんけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

第十一話 その二に続く