< 時の流れに福音を伝えし者 >

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナデシコは戦闘が終わり不時着した後、

 前回同様はブリッチに集まっていた。

 だが、前回はオモイカネ自身の暴走で問題が発生していたが

 今回は入り込んだウイルスが原因だ。

 かなり歴史に食い違いが出来てきている。

 今後は過去の経験は役に立たないかもしれないな。

 

 だがどうする。 ルリちゃんが対処しきれないのに俺に何とか出来るのか。

 

「おい、アキト。 ちょっといいか?」

 

「なんです、ウリバタケさん。」

 

 その時、ウリバタケさんが俺だけに聞こえるように話しかけられた。

 

「ちょっと相談があるんだ。

 オモイカネを助けたくねえか?」

 

「そりゃあ、助けたいですけど。」

 

「それならいい方法がある。

 そのためにはお前の手助けも必要だ。

 手伝ってくんねえか?」

 

「わかりました、手伝いましょう。」

 

 オモイカネもナデシコクルーだ。

 仲間なんだから助けてやらないとな。

 

 

 

 

 

 

 そして、瓜畑秘密研究所 ナデシコ支部に俺は来ていた。

 ・・・怪しさ大爆発だよな・・・何時見てもココは。

 でも、支部って?

 

「・・・臭いですね。」

 

「じきに慣れる!!」

 

 俺は・・・慣れたくないですよウリバタケさん。

 

「ここ以外の場所でやれないんですか?」

 

 料理人は嗅覚も大切なんだぞ。

 ・・・料理人にまだなれるのか? この俺が?

 

「しょうが無いだろ。

 本来なら制御室でやってもよかったんだが

 でしゃばってきた連合軍が占拠しちまったし・・・

 ブリッチはルリルリが使ってる。

 あ!! そこ作りかけのフィギィアが!!」

 

 ・・・はいはい。

 

「でも、俺だけに話す必要なかったんじゃないですか?」

 

「べ、別にいいじゃねえか。

 第一俺の部屋はそんなに入れねえよ。

 (それに間違って組織の計画書を見つけられでもしたら不味いからな。)」

 

 ウリバタケさんの顔が濁る。

 何かこの部屋に不味いものでもあるのか?

 まあウリバタケさんなんだからそんなのいくらでもあるか。

 

 そしてウリバタケさんのホストコンピュータから、オモイカネに浸入・・・

 何だかんだと言いながらも、さすが技術屋。

 ウリバタケさんの守備範囲は広い。

 

「さて!! それでは行こうかテンカワエステ!!」

 

「了解。」

 

 俺はシュミレージョンルームと同じヘルメットをかぶる。

 今回はルリちゃんのバックアップはない。

 まあ、道案内くらいならウリバタケさんでも大丈夫だろう。

 

「準備完了です。」

 

「よっしゃ!! では電脳世界にGO!!」

 

 

 ヴィィィィィィィィィィィンンンンンンン!!!!

 

 

 そして俺は・・・

 ウリバタケさんのビジュアル化した、オモイカネの中に出現する。

 前回は綺麗に本が棚にかけられ、エステバリス達が整理をしていたが、

 今は酷いありさまになっていた。

 本は散らばり棚は倒れエステバリス達もすべて大破して転がっていた。

 

「酷い事になってるな。」

 

「ああ、テンカワ急げ。

 この様子じゃ中枢のオモイカネの自意識部分はどうなってるかわからんぞ。」

 

「で、どう進めばいいんです?」

 

 前回一度来ただけだから道順なんてまったく覚えてないからな。

 

「とにかく奥に進めばいい。

 まずはまっすぐだ。」

 

「はいはい。」

 

 そして今回はウリバタケさんの誘導に従いオモイカネの自意識部分に向った。

 

 

 

 

 途中で大破した連合軍の戦艦=プログラムを見かけた。

 

「ウリバタケさん、あれって・・・」

 

「連合軍のワクチンプログラムだな。

 だが逆にやられちまったみたいだな。」

 

 やっぱり役に立たなかったみたいだ。

 そして俺は再び先を急ぐ

 

 

 そして・・・事件は起きた。

 

 

 ピピピ!!!

 

 

「まずい!! こっちにまでウイルスの手が回ってきやがった!!

 済まんテンカワ!!

 俺はこいつを何とか抑えておくから、

 お前は何とか自力でオモイカネの自意識部分に向かってくれ。

 とにかく奥に進めばそこにたどり着く筈だ。

 ついでにそこにルリルリもいる筈だ。」

 

「ちょ、ちょっとウリバタケさん!!」

 

 そう言ってウリバタケさんは通信ウィンドウから消えてしまった。

 ルリちゃんもオモイカネの自意識部分にいるのか。

 

「でも、どうすりゃいいんだ。

 奥って言ったって幾つも分かれ道があるんだぞ。」

 

「だったら僕が案内しましょうか。」

 

 その時突然誰かに声を掛けられ、俺は声のした方を咄嗟に振り向いた。

 

 

「シ、シンジくん!!??」

 

 

 そこには何故かシンジくんがいた。

 ただ背中から紅い翼を生やして飛んでいるが。

 

「な、何できみがここに!?」

 

「僕の能力の一つです。」

 

 親指をグッっと立てて笑顔でそう言うシンジくん。

 もうなんでもありって感じだし、だんだんナデシコに染まってきてるぞ。

 

「それより案内必要なんでしょう

 僕の事は自意識部分に向かいながら説明しますよ。」

 

「あ、ああ。」

 

 そして俺はシンジくんに案内されながら先に進み始めた。

 

 

 

「アキトさんは僕がこの中に直接入ってきてると思っているでしょうけど実際には違います。

 僕は正確には分体で本体はちゃんと外にあります。」

 

「分体?」

 

「ええ、と言っても今は本体とこの分体は意識がリークしてるんで

 今のアキトさんとそんなに変わりませんよ。

 普段はこの分体は休眠させています。

 この体はちょっと前にコンピューター内に忍び込ませた本体の細胞の一部で、

 その細胞から意識をデータ化してこの電脳世界に体を実体化させているんです。

 つまりこの分体はデータでもありながら肉体を持つ半電子半有機体と言ったところです。」

 

 えっと・・・

 

「つまり今の君はオモイカネに入り込んだ細胞が肉体で、

 俺が見ているのはその細胞が作り出した映像って事かな?」

 

「その通りです。

 理解してくれて嬉しいですよ。」

 

「難しい説明は過去のイネスさんにいやってほど聞かされた事があるからね。

 これくらいの説明、どうって事ないよ。」

 

「そうですか。

 あ、そろそろオモイカネの中枢に着きますよ。」

 

 そして最後のトンネルのようなところに入った。

 まわりには植物の根が張り巡らされている。

 確かに近いな。

 

 

 

 そして、トンネルを抜け広い空洞に出た。

 その中心部には巨大な樹が立っているがその半分近くが枯れ始めていた。

 そしてその樹の頂上の辺りに巨大な人型の物体が見えた。

 その顔には見覚えがあった。

 

「あれはシンジくんの記憶にあった・・・」

 

「初号機・・・昔のエヴァンゲリオン初号機。

 でもなんで・・・」

 

 シンジくんも困惑した様子だ。

 初号機の全長は今の五倍はあり、おそらく木連のジンシリーズよりでかい。

 まさかあれがウイルスなのか。

 

「アキトさん、あれ!!」

 

 シンジくんは初号機が攻撃しているところを差す。

 

 

「ルリちゃん!!!」

 

 

 ルリちゃんは初号機の間に立ちふさがりオモイカネの樹を守っていた。

 両手を前につきだし架空のディストーション・フィルドで初号機の攻撃を受けていた。

 俺はすぐさまイメージでD・F・Sを作り出し攻撃を続ける初号機の腕を切り落とした。

 そしてそのままルリちゃんの元へ向かう。

 

「ルリちゃん!! 大丈夫か!?」

 

「ア、アキトさん・・・・・・来てくれたんですね。」

 

 ルリちゃんの姿は十六歳の未来のルリちゃんの姿だった。

 だがあの初号機の攻撃に耐え続けてもうふらふらな状態だ。

 俺はルリちゃんの体を支えながら答える。

 

「ああ、それにシンジくんも一緒だ。

 オモイカネも無事か?」

 

『ルリ、アキト、シンジ、助けて!!

 僕が消えちゃう!!』

 

 クッ、オモイカネはあまり大丈夫じゃなさそうだな。

 早く何とかしないと。

 

「ルリちゃんは疲れてもう無理だ。

 後は俺達に任せてくれ。」

 

「でも、オモイカネが・・・

 それにシンジさん、あれは何なんです。

 シンジさんのエヴァにとてもよく似ているんですが。」

 

「あれは昔のエヴァの姿だよ。

 でもそれは外見にすぎない、直接接触するまで気がつかなかったよ。

 あれはウイルスなんかじゃない、使徒だ。」

 

 

「え!?」 (ルリ アキト オモイカネ)

 

 

 ガコンッ!!

 

 

 その時、エヴァの顎の装甲が外れ口が開かれた。

 

『その通りだ、ファースト。

 何時かは気づかれるかと思ったが、

 まさかここまでくるとは思ってなかったぞ。』

 

 口を動かししゃべり始める初号機。

 この外見で口を動かして喋るというのは何かすごいな。

 

『俺の名はジュド、イレブンエンジェル。

 夜を司る天使イロウルの化身だ。』

 

「そのアンタが何故オモイカネを消そうとする?」

 

 俺はジュドとかいう奴に問い掛ける。

 

『そいつの自意識を消してしまえば、俺がこの戦艦を自由に操作出来るからさ。

 そっから先はファースト、お前との交渉だ。

 ナデシコをどうしたいかってな。』

 

 ナデシコを人質にする気か。

 

「そんなこと・・・・・・させません。」

 

「ルリちゃん、無理するな!!」

 

『そうだぜ、本気じゃなかったとはいえ、俺の攻撃に耐え続けたんだ。

 あんたはもう体力の限界の筈さ。』

 

「本気じゃなかった・・・?」

 

「何故本気を出さなかったんだ?」

 

 俺とルリちゃんは疑問に思いそれを口に出す。

 それを答えたのはシンジくんだった。

 

「僕に気づかれない為でしょう。

 もし本気を出せば君の力の波動がはっきりしてしまう。

 だから僕に気づかれない程度の力しか出さなかった。」

 

『ご名答、その通りだ。

 だが既に、お前に気づかれちまった以上、力を加減する必要はなくなった。

 こっからは本気でやらしてもらうぜ。』

 

 そう言うとジュドのまわりにATフィールドが現れた。

 その上切り落とした腕も再生してしまった。

 

『うわぁぁぁあぁぁぁぁ!!!』

 

 その時オモイカネが悲鳴を上げた。

 オモイカネの樹を見ると、枯れる速度が目に見えて速くなっていた。

 

『くらいな!!』

 

 しまった!!

 オモイカネに気を取られている内にジュドに先手を取られてしまった。

 対応が間に合わない!!

 

「させません!!」

 

「ルリちゃん!!」

 

 その時ルリちゃんが前に飛び出しディストーション・フィールドを張った。

 

『そんなもんじゃ今の俺の攻撃に耐えられねえよ。』

 

「キャアァァァ!!」

 

 ジュドの拳はディストーション・フィールドを突き破りルリちゃんを吹き飛ばした。

 俺は何とか受け止めるがルリちゃんは気絶する寸前だった。

 

「ルリちゃん!! しっかりして、ルリちゃん!!」

 

「うっ・・・うぅぅ・・・・・・え、映像が・・・」

 

 映像? なんのことだ?

 そう言い残すとルリちゃんはすぅっと煙のように消えてしまった。

 

「ルリちゃん!? ルリちゃん!?」

 

 俺はまわりを探すが何処にも見当たらない。

 そこへシンジくんが・・・

 

「アキトさん、落ち着いて下さい!!

 多分気絶したせいで意識が外の体に戻ったんですよ。」

 

 そ、そうか、よかった。

 

『オラオラ、よそ見してんじゃねえ。』

 

 ジュドの拳が俺達に降り掛かってくる。

 俺とシンジくんは間一髪でそれを避ける。

 よくもルリちゃんを傷つけてくれたな!!

 

『アキト!! シンジ!! 何とかして!!』

 

 その時オモイカネもまた悲痛の声を上げた。

 くっ、こうしている間にもオモイカネが・・・

 どうすればいい・・・

 

「アキトさん、僕がオモイカネの侵食を阻止します。

 だからアキトさんは時間稼ぎをしてください!!」

 

「わかった!! オモイカネを頼むぞ!!」

 

 そしてオモイカネにシンジくんは向かい、

 俺はジュドに向き合った。

 

『へっ、ただの人間に俺の相手が勤まるわけねえだろ。』

 

「言っておくが俺は時間稼ぎをするつもりはない。

 お前を殺す気でやらしてもらう。

 ルリちゃんの敵だ!!」

 

『いいぜ、そんなら相手してやろうじゃねえか。』

 

 そして俺対ジュドの戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕はジュドをアキトさんにまかせオモイカネの元へ向かった。

 だがアキトさんがいくら強いからってジュドの相手をするのは無理だ。

 早くオモイカネを何とかしてジュドの相手をしにいかないと。

 

 確かにアキトさんの実力とD・F・Sがあれば通常空間なら使徒を倒せる可能性はある。

 だけどここは電脳空間、ジュドの土俵どころか独壇場とも言える場所なんだ。

 いくらジュドを攻撃してもこの空間では絶対に死なない。

 倒せるとすれば同じ力を持っている僕だけだ。

 

 僕はオモイカネの樹の侵食され枯れた部分に近づき、

 ATフィールドの波動を送ってジュドの力を打ち消し始める。

 すると、その枯れた部分が再び緑色に戻った。

 だがその間にも他の箇所の侵食は収まらない。

 

「・・・だめだ!!

 侵食速度が早すぎて僕の力が追いつかない!!」

 

『そんな!! シンジ、何とかならないの!!

 僕、消えたくないよ!!』

 

 オモイカネが悲痛の声を上げて僕に助けを求める。

 だけど侵食がかなり広がり過ぎて速度が速い。

 それに外側から一個所ずつATフィールドで干渉してたら範囲が広すぎる上、

 別の箇所に干渉している内に治した場所がまた侵食されていくらやってもきりがない。

 

 ん・・・外側から?

 そうか!!

 

 僕はオモイカネの樹のまだ侵食されてない部分の幹へ向かいそこへ手を着いた。

 

「オモイカネ、このままじゃ君は完全にジュドに侵食されてしまう。

 だけど僕と融合すれば何とかなる筈だ。」

 

『融合?』

 

「うん、オモイカネに僕の力が宿ればその力でジュドの力を打ち消すことが出来る筈だ。」

 

『人格や記憶はどうなるの?

 僕は僕じゃなくなるのは嫌だ!!』

 

 さすがオモイカネってところかな? そこまで気がつくなんて。

 普通のコンピュータ、いやAIじゃ絶対気づかないよ。

 

「安心して、人格は君のままに僕の人格は消える。

 記憶の方も僕の記憶が記録として君に伝えられるだけだから。」

 

『シンジの人格が消えるって・・・

 それじゃあ、シンジはどうなるの?』

 

「ここにいる僕は本物のイカリシンジじゃてくて分身なんだ。

 今の君には確認出来ないだろうけど本物はちゃんと外にいて、

 僕を通してここの状況を見ている。

 だから僕が君と融合して消えてしまっても分身が消えるに過ぎないんだ。」

 

『そうなんだ、わかったよ。』

 

「それは承諾と受け取るよ、もう時間が無いからね。

 それじゃあ、僕が君の中に入るから身を任せて。」

 

『うん。』

 

 オモイカネがそう答えると僕は手から幹の中に入っていく。

 僕がオモイカネの樹の中に入り込むとオモイカネの侵食されていない部分が光を放ち始めた。

 

『・・・なんだろ?

 なんだかとっても暖かい。

 これが・・・シンジの心。

 そして今は・・・僕の・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はジュドの巨体を何度もD・F・Sで切り裂くがすぐに復活してしまう。

 やはりここが電脳空間だから、殺すことが出来ないのか。

 

『なかなかやるじゃないか。

 この空間じゃなかったら俺は負けてたかも知んねえな。

 だがそろそろ終わらしてもらうぜ!!』

 

 ジュドは右腕を上に掲げ紅い捩じれた二股の槍を作り出す。

 あれは確かシンジくんの記憶で見た確かロンギヌスの槍!!

 

『くらいな!!』

 

 そしてジュドは槍を俺に向かって投げてきた。

 速い!!

 

 

 ビュヴォン!!

 

 

 ジュドに投げられた槍はとてつもない速さで襲い掛かってきたが

 体を僅かに捻って槍をかわした。

 

「何て速さだ、当たったら一たまりも無いな。」

 

 俺は飛んでいった槍からジュドの方に向き直る。

 だがジュドは何故か余裕の笑みを浮かべている。

 なんだ?

 

 

 ジュゴォォォォォ!!

 

 

 その時僅かな噴出音が聞こえ、俺は咄嗟の勘でその場を緊急離脱した。

 

 

 ビュヴォン!!

 

 

 その直後、俺のいた場所を再びロンギヌスの槍が通り過ぎた。

 槍は捩じれてる部分が傘のように開き、

 そこからジェット機のように推進力を吹き出し軌道を変えて戻ってきたのか。

 ジュドは手元に戻ってきた槍を受け止める。

 

『ちっ、これも避けるとはな。』

 

 ジュドはそう呟いて再び槍を構える。

 

「くっ!! どうすれば・・・」

 

 その時この空洞のまわりが突然光り始めた。

 

「な、何だ!?」

 

 よく見るとそれは根っこの部分が光っており、

 その根っこはどんどん中心部の樹の方に集まっていく。

 そしてオモイカネの樹も枯れた部分を除いて光を発している。

 だがその光は枯れた部分を逆に押し返すように消しながら広がっていく。

 

『馬鹿な!! 俺の力が押されているだと!!』

 

 そういう事か、シンジくんがオモイカネの破壊を止めてくれたか。

 

 ついに枯れた部分がすべて光に打ち消されると、

 オモイカネの樹が形を変えて巨大な光の球体になっていく。

 

『何をするか知らねえがさせるかよ。』

 

 ジュドが光の球体に向かってロンギヌスの槍を投げた。

 しまった!!

 

 打ち落とそうとしに槍に追いつこうにも速すぎる!!

 そして槍が光の球体に槍が突き刺さろうとする。

 

 

 ジュワ!!

 

 

『な!! 何!?』

 

 だが槍は光の球体に触れたと同時に一瞬で蒸発してしまった。

 その後、光の球体はだんだん小さくなり直径二mくらいの大きさになると、

 球体は再び形を変えて人の輪郭へと変化していく。

 

 光が完全に人の輪郭へと変化し終わると光が消え、その姿が明らかになる。

 その姿はまるでルリちゃんとシンジくんを足して二で割ったかのようで、

 そのまわりにはまだ光の粒子が残り神秘的な雰囲気を漂わせていた。

 

 

 目を閉じていて瞳の色は分からないが、

 姿形は今のルリちゃんと未来のルリちゃんの間辺りの姿だった。

 髪は纏めず流すことでふわふわと光と共に揺れ、

 服は白一色のローブがなびいており、

 ついでに言うと何故かプロポーションだけが未来のルリちゃんよりもいい気がしたが。

 

 シンジくんを思わす部分は髪の色とその雰囲気だ。

 ふわふわと揺れる髪には白銀色の輝きを放っており、

 その表情には見た目の年齢とは合わない長年の経験から生まれる落ち着いた物腰を感じた。

 更にその背中には色は白くなっているがシンジくんと同じ形の翼を持っていた。

 

 

 

 

 

 

 そしてその瞳が開かれた。

 その瞳の色はシンジくんと同じ紅い瞳だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

第十二話 その二に続く