「サイゾウさん、本当にお世話になりました。」
「おう、これから大変だろうが、これを作った思い入れがあれば望みは必ずかなうだろうよ。何かあったら、いつでも戻ってこい。またこき使ってやる。」
「え〜〜〜! 半人前以下なのはわかりますが、こき使うのは勘弁してください。」
「ははは、そう言うな。おまえを心配しているやつがここにもいるってことだ。元気でやれよ、アキト」
これが、地球にきて1年お世話になった、店を旅立つアキトと雪谷食堂の店主サイゾウとの別れの風景である。
火星の空に思いを込めて
− 第一話 大切な人を捜して・・・ −
「サイゾウさんには、本当に世話になったなぁ。この件が終わったら、また会いに行こっと」
そう思いながらアキトは、自転車で駅まで向かっていた。
1年前、火星のユートピアコロニーのシェルターで木星蜥蜴に襲われたアキトは、死を覚悟したが、突然青い光に包まれ気を失っていた。
気づくとそこは、昔お世話になった家の庭であった。
アキトは、そこで2年半の間住んでおり、合い鍵も持っていた。
状況の確認と家の人に挨拶をと思い、家に入ろうとするが人の気配が全くしなかった。
鍵もかかっていたので、合い鍵で家にはいるがやはり誰もいなかった。
アキトが、地球で頼れるのはこの家だけなので、これからのことを考えながら、家の前で途方に暮れていた。
そこに、サイゾウさんが現れ、「困ってるんならうちに来い」の一言で世話になることになった。
店から出る理由となった”この件”とは、昔お世話になった人達を捜すことであった。
捜している人達のことを思いながら、駅に向かっているアキトの横を猛スピードで通り過ぎてゆく車がいる。
アキトは、「危ないなぁ」とため息混じりでいうと、正面からスーツケースが飛んできた。
とっさに避けることが出来なかったアキトは、もろに衝撃を受けた。
気が遠くなりつつあるアキトは、車から降りてくる女性をみながら「幸先悪いなぁ」と思った。
中身のばらまかれたスーツケースに、荷物を詰め込む手伝いをするアキトをジッと見つめる女性が、
「ぶしつけな質問で申し訳ございませんが、以前どこかでお会いしたことはありませんでしたか?」
と聞いてきたが、アキトには覚えがないので、
「会ったことはないと思いますが。」
と答えた。
荷物が片づき、スーツケースを女性に渡す頃、同乗していた男性が女性をせかすように、
「ユリカ〜、時間がないから、急いで佐世保のドックまでいかなと。」
「ご協力感謝いたします。」
「いえどういたしまして。」
と、車に向かう女性を見送った。
見送った後、アキトも駅に向かおうとしたところ、足下にフォトスタンドがあることに気づく。
「自分のものじゃないし、さっきの人のだろう。」
と、拾い上げ中の写真を何気なく見ると、4、5歳頃の自分と女の子が写っていた。
「僕が写ってる?隣の女の子は、さっきの人?・・・ユリカ?・・・あー!!」
写真を見ながら、火星での思い出がよみがえってくる。
いつもアキトの後をつけてくるユリカ。
ユリカのいたずらのせいで、両親に怒られるアキト。
アキトを自分の王子様と信じ込んでいるユリカ。
あまりいい思い出はないが、幼なじみのユリカである。
「たしか、ユリカのお父さんは軍の要職に就いてたはず。もしかしたらお父さん達が巻き込まれた研究所の爆発について何か知っているかも。」
「これを届ける口実にユリカにあって、聞いてみよう。たしか、さっき佐世保のドックって言ってたな。」
そう思いながら、アキトは予定を変更して佐世保のドックへと向かった。
ドックの入り口の守衛さんに、「ここで働いている人の落とし物を届けにきたので会わせてほしい。」とお願いすると、親切な守衛さんは連絡を取ってくれた。
本人の居場所がわからないので、代わりの人が来ると聞き、しばらく待たせてもらうことにした。
めがねをかけてひげを生やした、男性が現れ、
「あなたですか。ユリカさんの落とし物を届けてくださった方は?」
と質問してきた。その男性は、プロスペクターと名乗り名刺を差し出した。
「そうです。これが落とし物です。プロスペクターさん」
「プロスで結構ですよ。」
フォトスタンドを見せながら、アキトはプロスと会話をしていた。
守衛からユリカへの面会者がきていること聞き、門に向かうプロス。
「艦長はいったい何時になったらきてくれるんでしょうなぁ〜」
と、愚痴をこぼしながら守衛小屋にはいると、守衛と17,8歳ぐらいの少年が待っていた。
プロスは、少年をみて(テンカワ博士のご子息に似ていますねぇ)と思いながら、
「あなたですか。ユリカさんの落とし物を届けてくださった方は?」
「ユリカに会わせてもらえないでしょうか。ユリカとは幼なじみで、もしかすると死んだ僕の両親が巻き込まれた研究室の爆発の原因を聞いているかもしれません。できれば会ってそのことを聞きたいんです。」
「困りましたね、ユリカさんは今大切な仕事に就いていますので簡単に会わせるわけには行かないのです。」
「そうですか。」
「そう残念がらないでください。簡単に会わせられないだけで、会わせないわけではないです。その前に、」
「あなたのお名前なんって〜の♪」
そう歌いながらプロスは、DNA判定機でアキトの照会を行った。
照会結果を見て、(やはり、テンカワ博士のご子息でしたか。でもなぜ目が金色なのでしょうか?)思いながら、
「テンカワ アキトさんですね。犯罪歴などはありませんから、私の監視が付くという条件でユリカさんとの面会は、許可できると思います。」
(アキトさんは両親が、暗殺されかけた理由は知らないのですね。まぁ、あの方達にも言わないようにお願いしたことですし。確かに真相を知りたいのはわからないでもないですなぁ。)
「ありがとうございます。」
「では、テンカワさん参りましょうか。」
(本当は、こんな簡単に許可できませんが、あのテンカワ博士のご子息のお願いですから多少の無理はしましょう。)
そう思いながらプロスは、アキトをナデシコに案内した。
プロスが、アキトにナデシコを案内している際に、ナデシコの外見をみたアキトの感想や格納庫での惨劇をプロスは考えないようにし、艦橋へと向かった。
艦橋は3層構造で、アキトとプロスは、ユリカがいるはずの最上段に現れた。
しかし、ユリカはまだいなかった。プロスは、そこにいた、大きな男性にユリカのことを聞いている様子で、その間アキトは物珍しそうに、辺りを見回していた。
その途中、中段の真ん中に座っている少女がこちらをみていることに気が付く。
その少女を見た瞬間、アキトは次の行動に移っていた。
あとがき
しろくまです。
話が全然進みません(^^;)
いったい何話で終わるのでしょうか・・・
この話の終わりで、私が何派かばれてしまいました。
話もその通りに進める予定です。
出来れば週1ペースで更新したいけど年度末やし、無理やろうなぁ〜。
では、またお会いしましょう。
代理人の感想
>その少女を見た瞬間、アキトは次の行動に移っていた。
・・まさか、ブリッジ最上段からのルパンダイブっ(核爆)!?