暖かい…。
なんだか体が重い。
―――そうかもう朝なのか、と瞼を薄く開く。
「眩しい・・・。」
まだ惰眠を貪っていたいと体中が訴えてくるが、そんな事をすればエルが”強制措置”を取りかねないので、心の中で平謝りしつつ、身を起こそうとする。
ぷに
――――――刹那、既視感と眩暈が大挙して押し寄せてきた。
むう…。
こ、この平らなようでそうではなく、僅かに隆起しているのホドヨイカンショクハ・・・・?
ぎ ぎ ぎ
布団のシーツの上に支えとして置いたはずの、左手を見ようとした首の動きは、妙に鈍かった。
そして、その左手の先にあったのは。
『へぇ…アキトさんって、そういうことしますか。』
『見損ないました…アキトさん。』
『酷いよアキト…ユリカの相手はしてくれないくせにそんな娘を連れ込むなんて!』
『『『これはもう、お仕置きしかないですね』』』
―――――――――――――――はっ?!今俺は何やっていたんだ。
絶対にここに居るはずの無い人々の声が聞こえたような気がしたぞ。
…でも、なんでスフィアちゃんが?
っていうか、何時の間に?!
俺に気配を悟らせずに忍び込んだとでも言うのか?
だとしたらショックだけど、――――――――どうも違う気がする。
何にせよ、この子を起こさないと。
「スフィアちゃん、スフィアちゃん?」
「……。」
体を揺さぶって声を掛けてみた。
あ、微かに頭が動いた。
とりあえず話を―――――――――――
ひしっ
「へ・・・?」
起きたら起きたで、いきなり抱きついてきた。
ああ、細く華奢なつくりの身体、未発達な胸の少し硬い感触…っておい。
―――――――――――いかん。思考が、激ヤバな方向に。
断じて違うぞ!
俺は、…俺は頭文字Rでは断じてない!!…多分(ボソッ)
「ねえ、ス、スフィアサン?一先ず抱きつくのを止めて、俺の質問に答えちゃぁくれませんか?」
自分でも、パニック状態に陥っているのが良く分かる。
「―――――――――――や。」
ああもう。
お父さんはそんな子に育てた覚えはありません。
―――――――――――って、チガウゾソレハ。
いかん!今度は娘萌え・・・・・違う!!!
「頼むから離れてくれないかなぁ。こんなところをエルの奴に見つかったら何を言われるか・・・・。」
そう―――――――――見つかったら。
見つかったら。
『へえ・・・・・・・・・・・・・・アキトってそんな趣味があったんだぁ。知らなかった。
!!まさか、私の事もそんな風に見ていたとか!?イヤン、アキトのバカぁ』
…むう。別の意味でヤバイ。
まず、俺が「なんでお前なんかのことをそんな風に見なくちゃいけないんだ!」と言う。
言わなければいいじゃないかと言う突っ込みはこの際スルーの方向で。
俺の中に流れるツッコミの血がそうさせてはくれないんだ(断言)
そして、エルは恐らく「あら、『なんか』?へえ、アキトの癖に私の美貌にケチつけようっての?上等じゃないの。
そこになおりなさい!まずその根性を叩き直してあげる!!!」
とか…。
あとは理不尽な暴力の嵐や(言葉では言い表せないものや放送コードに引っかかるものを含むので以下略)なんて仕打ちを受けるんだろう。
「ふっ…。」
瞬間、目の前が真っ暗になった。
「アキトお兄ちゃん?しっかりしてぇ!!?」
数分後
「…で?何で俺の布団の中に?」
「だって、エルのお姉ちゃんが、こうすればアキトお兄ちゃんが悦ぶって。」
―――――――――待て、コラ。
すると何か?俺にそっちの気があるとでも!?
どうして俺がそんな―――――――――――――――――うーん、つい数分前のことがあるし・・・。
不味い。
否定できる材料が無い。
っていうか寧ろ肯定的なものばかりだ。
嗚呼・・・、イネスさん。お兄ちゃん堕落しちゃったよ。
そして
俺が自分の倫理観と必死に格闘していたとき、そいつは現れた。
「アーキート―♪起きたー?上手くヤッテマスカー?」
やかましい。この似非外人風策士。
心の中に去来する様々な思念を強制的に排除して、俺はエルに立ち向かっていった。
「あのなエル。何を考えてこんな小さい子を俺の布団の中に?」
そう。なるべく、極力、控えめに。
「一体俺に何の恨みがあって…。」
「ふっ、何を言うかと思えば。」
エルはそう言うと、顎に手を当て、少し明後日のほうへと意識の焦点をずらして、数秒後、それはもう曇りのない笑顔で答えた。
「少なくとも、その外見からすれば、貴方はロ●じゃないわ。だって、そんなにたいした年齢の違いはないのだから。」
成る程。言われてみればその通り。
しかし、なんだ?さっきの間は。
しかも質問の答えになっちゃいない。
俺の疑問は直ぐに氷解する事になった。
エルはさらに続けた。
「つ、ま、り♪襲うなら今ってことよ。」
そうか、襲うなら…ってオイ!
「アホかっ!お前何…まてよ、もしかしてお前。」
そう考えれば、全ての辻褄が合う。
はなっから理由なんか存在しなかったのだから。
「俺で遊んでいただけなんじゃないだろうな?」
「まさか。」
短い返答。
長々と言うより、それらの言葉は彼女の本心を象徴していた。
「―――――お前、俺をいじめるのがそんなに楽しいのか?え?」
「あ、やっぱり分かる?」
そら見たことか。
言った後で、しまったと言う顔をしたってもう遅い。
「スフィアちゃん。」
「…?」
一息置く。
不安げにこっちを見上げるその視線もまたよろしい。
「このお姉さんみたいになっちゃぁいけないよ?」
「な゛っ…!」
「・・・・・・・・・・・うん、わかった。」
こくり、と彼女は頷いた。
あ、エルが固まった。
「ね、ねぇ、スフィア?」
「――――――――――(じりっ)」
エルがスフィアちゃんのほうを見ると、彼女はおびえた風に一歩退いた。
―――――――――――――――――――――――――――――木造の廊下に、一陣の風が、何か嘲笑めいて吹いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
そして、彼女は石になった。
ふっ。漸く弱点が見つかったぞ。
数分後。
漸く復活したエルと、俺は今後の予定について話し合いを始めた。
「で?どうするんだよ。これから。」
「一先ず、これから町に出て、何か、剣でも買ってあげるわよ。」
「へえ、エルにしてはえらく気前のいいことで。」
「人を某ホモ系少女漫画の発明好きな少年国王みたく言わないでよ。私、あんな守銭奴とは違うもん。」
誰も其処まで言っちゃいないって。
「それにね、私だって呪錠なんかしたままで、素手で戦えなんて酷な事はいわないって。鬼じゃあるまいし。」
イエ、アナタハスベテノセイメイノ母。
鬼なんか目じゃねえデス。
―――――――――――――――――でも、性格は最悪。
直後、辺りに鈍い音が響き渡った。
まだ、頭が痛い。
まさか、口に出していたとは。
ふ、油断大敵。
しっかし、剣て言っても…、どれを買えばいいのか、俺には良く分からない。
なのにエルは、金だけ渡して
『私はこの子といるから』
とかいってついてきてくれなかった。
・・・・・気のせいだろうか、『ゆっくりと話し合いましょうね?』とか、聞こえたような。
しかも、『望むところよ』とか―――――――オレハナニモキイチャイナイゾ。
兎に角、そこらへんを歩き回ってみるか。
―――――――――――今帰ったら、大変な事になる気がするし。
煉瓦造りの道を、ただひたすら歩く。
この辺りは、露店中心になっていて、人通りも多く活気にあふれている。
―――異世界っていっても、結局何処だって商売人ってのはいるもんだなあ。
「これはこれはお坊ちゃま。
どうです、この護身用の魔銃なんか。」
色白の、それはそれは良く肥えていらっしゃる、長袖の旦那サマが両手をもみながら擦り寄ってくる。
…キモイ。
「…魔銃?何それ。」
恐らくこの世界では常識なのであろうことを、平然と訊く。
大人なら怪しまれるんだろうが、幸い今の俺は…止めよう。何故か虚しくなって来た。
予想通り、男は愛想笑いを崩さずに説明を始めた。
「魔力というものは知っていますね?」
ああ、知っているさ。嫌というほどに。
―――数日前のことだ。
俺たちは盗賊団に襲われてしまった。
そのときだった。
戦闘に突入していた俺の事を無視して、…エルの奴魔法を使いやがった。
眩しい光球が幾つも幾つも・・・。叩き付けるかのように襲ってきたんだ。
結果は…、俺は昂気を使ったものの、数十m程吹っ飛ばされて木に頭をぶつけて気を失った。
流石に反省したエルは、俺に魔力の事を教えてくれるようになった。
だから、基礎的なことぐらいなら理解できる…と、思う。
――――――――――――――イカン、トラウマガヨミガエル。
「それをこの魔莢につめて、いつでも打ち出せるようにしたものが、魔銃なんです。」
手の長さと同じぐらいの、円筒形の物体を示して言う。
要するに、純粋に魔力だけを打ち出せるようにしたものなんだな。
「ご理解いただけましたか?」
「ええ、非常に分かりやすかったです。」
だが、ここだけで判断するのはまだ早いんじゃないのか?
「すいません、もう少しほかの店も見て回りたいんだけど。」
男は、少しも笑顔を崩さずに返す。
「ええ、構いませんよ。但し…。」
「但し、何ですか?」
「別に他の店に流れても構いませんが。」
そこで男は、いったん言葉を切った。
不意に、周囲の店からも視線がきたような気がした。
しかも熱い。さらに言うと、一斉に、だ。
「なるべくなら、刀剣類の店には回らないでくださいな。」
何故だろう。
不意に、ここはいけないと感じた。
何故だか分からない。
ただ、ここには俺の世界とは違った種類の、悪意がある。
どんなものかは説明できないけれど、凝り固まった訳でもなければ、うっすらとある訳でもない。
それを表現する言葉は、俺の中で未だに創造できていない。
店主に一応の礼を言い、再び歩き出す。
先程の感覚が何だったのかも分からずに、ただただ彷徨い歩く。
しかし、分からん。
何故、『刀剣類』だけなんだ?
そんな事を言うくらいなら、他の店にも行かないように頼めばいいじゃないか。
―――駄目だ、さっぱり分からん。
まあ、今の俺には関係ないさ。
自分のすべき事…武器を買えばいいだけの事だ。
あの店主が何を言おうが、そんなもの知ったこっちゃないね。
直線的な道沿いを、そのまま突き進む。
道の両側には露天が建ち並んでいる。
当然、武器だけではなく、食料や防具、果ては駄菓子屋まで。
――――――――――本当に、商売の町だな。
残念なのは…何処の店も、武器の値段は似たようなものだという事だ。
暫く行くと、三叉路に行き着いた。
―――さて、どっちにいく?
右か?
左か?
とりあえず右のほうに行ってみる事にした。
こっちは…、なんか人が少ないな。
――――失敗したかな?これは。
なんてことを考えていたら、仕舞いには誰もいなくなってしまった。
引き返して左の道へといってみた。
こっちはさっきと比べると、幾分か人が増えたように思える。
だが、メインストリートと比べてしまえば、其処までのものだ。
――――――何処の町でも、寂れた所はあるって事だな。
暫くそうやって周囲を見回していた。
―――――――――――待て。
何か大事な事を忘れている。
確か、あの店主は「刀剣類の店には近づくな」と言っていた。
つまり、この町のどこかに、刀剣類の店もあるということだ。
だが、今まで見てきた所に、そんなものは無かった。
「じゃあ、一体何処にあるんだ?」
…何かある。
考えすぎなのかもしれない。
でも、経験からくる勘は信用しても良いと思う。
今までだって、それで生き延びて来れたんだ。
周囲を探索してみた。
…駄目だ、どこにも無い。
こうなったら、手当たり次第に訊きまくってみるか。
「すいません。」
「はい?なんじゃろか。」
「あの・・・。この町に、刀剣類が売ってある店ってありませんかね?」
「…。」
な、なんだ。この沈黙は?
「わ、わたしゃ、なんも知らん。」
―――――は?
あ、走り去っていった。
あれじゃ、『ワタシ、知ってます』って言っているようなもんじゃないか。
――――――――――どうやら、何かあるのは間違いなさそうだな。
ああ、疲れた。
散々尋ねまくって、辿り着いたのは…、
「結局元の場所かよ…。」
そう。
答えは出発点に有った。
―――――まさか、町の入り口にあった民家の中に入り口があったなんて。
その…なんだ。
まるで、Z●Gみたいだな。
…まあ、それはともかくとして。
ドアをノックする。
木製のドアならではの、乾いた音が、2,3回鳴り響いた。
『祖は汝の礼にして興国の基也。』
内側から声が聞こえてきた。
「応えよ。さらば魂とともに鉄を打とう。」
教えられたとおりの合言葉を言う。
『…入れ。』
ノブが回り、ドアが外側に向かって開かれた。
顔を出したのは、若い男。
良く日焼けした、さっきの商人とは対照的に引き締まった身体付きをしている。
「ここが…入り口で良いんですよね?」
「ああ、そうだ。さっさと入んな。」
男は、黄色い歯を剥き出しにするように、にかっと笑いかけてきた。
「併し、お前さんみたいな坊主に合うような剣があるかねぇ?
大体お前さん、剣なんか使えるのか?」
そりゃ、こんな格好じゃぁな。
「まあ、じっくり捜してみますよ。これでも、力には自信があるんで。」
「おう。気をつけていけよ!」
気持ち良い。
実に、そんな言葉の良く似合う笑い方だった。
階段を下りて、まず目に入ってきたのは、天井に取り付けられた照明。
灰色の天井には実に似つかわしい、色気もそっけもない、錆びれたランプが一つ、吊り下げられているだけだ。
それと同じような部屋が、いくつか連なってできているらしく、奥の方にも薄暗い明かりが見て取れる。
俺の居たトコでいえば、安アパートの個室より酷い。
昔の防空壕よりはマシだろうが。
「で、だ。坊主。ここの事、誰から聞いた?」
奥の部屋に辿り着くなり、真っ先にそう訊かれた。
部屋が暗くて、相手の表情どころか、顔すら判らない。
ただ、低くぶっきらぼうな声と、がっしりとした体付きからして、男で、しかも職人気質な人だということは見て取れた。
まだ30半ばであろうか、目元には歳月が憑いている。
「別に・・・、町の入り口で通行人に片っ端から訊きまくっただけです。」
正直に言った。
嘘は言ってない。
最終的に、裏路地に引きずり込んで、自発的に喋るようにした事は、言わないほうが良さそうだ。
併し男は、それを聞くなり肩を落とした。
「なんてこった。」
「え?」
思わず訊き返す。
客が尋ねてきたのに、嬉しくないのだろうか?
「この店の場所は、絶対に知られちゃあならなかった。」
「…なんで?」
そんな馬鹿な話が、あってたまるか。
客を避ける店なんて、聞いたことが無い。
「知らんのか?」
「いや、そんな事を言われても…あ、もしかして。」
一つだけ心当たりが無い事も無い。
男は面倒くさそうに右手を軽く振ると、続きを促した。
「ここに来る前に、他の店の店主から『刀剣類の店には行くな』と言われましたが。
…何か、関係が有るんですか?」
「ったく、あいつらそんなこといってんのか。
おう。有りも有り。大有りよぉ。
って、坊主。本当に何も知らねえみたいだな…まあ、座れや。
しゃあねえ。どうせ暇だしな。
教えてやんよ。奴等と、俺ら職人の因縁って奴を。
・・・どうした。遠慮なんかしてねえでさっさと座れ。
――――――いつまでも自分より背が低い奴に見下ろされていたんじゃ、気味が悪くなってくるってぇもんだ。」
「あ、はい。すいません。」
「さて、どこから話したら良いもんかね。」
「すいません。何も知らないもんで…。」
「ま、いいって事よ。
・・・お前さん、『リナ・インバース』って知っているか?」
「…いいえ。」
嘘じゃない。
確かに、ここにくるまでの間そう言う風な名は、何度か聞いたことは有る。
が、当人の事については、全く何にも知らないと言うのが現状だ。
だから、知らないと言うのは真実だ。
「おいおい…。お前さん、本当にこの世界の人間かい?
ま、その歳で知らないってのもいかがなものとは思うが。」
「・・・・。」
何も、言い返せなかった。
確かに、俺はこの世界の常識に疎い。
と言うよりは寧ろ、エルの奴が俺の元に情報が入らないようにしているのでは…?
ふと、そんな考えが頭の片隅をよぎった。
――――――――――――――馬鹿馬鹿しい。
そんな事をして、一体アイツに何の得があるって言うんだ?
いいさ。帰ったら教えを乞おう。
「…まあいい。兎に角彼女は、遥か昔の大魔道師でな。
『デモンスレイヤー』という名で広く知られている。」
「…『デモンスレイヤー』?」
『魔を滅する者』と言うことだろうか?
「彼女は強大な魔力と、優れた知力を以ってして魔族をも屠ったらしい…あくまで噂だが、魔王の欠片をも消滅させたとか。」
…魔王を?
いや、疑う訳ではないけど、『魔王』っていったらあれだよな?
使い古され、併し未だに王道とされるRPGのボスキャラ!!
しかし、其れを女性がね・・・?
「それで?そのリナさんがどう関係してくるんです?」
「まあ、そう急くな。
で、だ。そのリナ=インバースは、齢20ぐらいまで存命していたらしいのだが、ある時を境に忽然と姿を消してしまったらしい。
様々な説が浮かんだらしいぞ?
曰く、魔族に倒された。
曰く、実は魔王の欠片の持ち主だったために、今では魔族側についている。
…諸説は省くとだ、結局原因は分かった。」
「原因?」
「何、どっからの情報かは知らんが、『魔族との戦いに敗れて封印されている。』とかなんとか。」
「何故?殺したほうが向こうにとって都合がいいはずでは?」
男は、何かを嘲るかのような調子で、続けた。
「簡単な話さ。何やら向こうさんも、封印したは良いが、それを仲間同士で奪い合っているうちに、どこかへと消えてしまっただけの事。
そもそも奴等は、人間に対して、彼女を操り人形に仕立て上げ、こっちを混乱させようとしていたらしいが、それを忌み嫌うやつらも居たというだけの事だ。
結局、彼女の身体は今に至っても見つかっていない。」
男は、一呼吸おくと
「で、ここからが問題なんだがな。
彼女と、同行していた恋人が居なくなったことにより、魔族はいよいよ攻勢を強めだした。
当然、人間側も応戦しようとする訳だが、如何せん相手は精神生命体。
通常の剣は通じるわけもねえ。
結果、人間側は新たな武器を作成する必要に迫られたって訳だ。
・・・・・・・・・・・・・・・もう分かるだろ?その武器が。」
返答の代わりに頷く。
つまりは、必要に迫られて魔銃が作られたって訳だな。
「しかし、だ。
魔銃を使うのには何の訓練も要らねえ。
そこで普及し始めたのは良いんだが、やはり其処は金が掛かっちまう。
当然、商売は大掛かりとなり、終いには作成権利を4つの商会が共同で寡占状態に持ち込みやがった。
まだ、そこまでなら良かったんだが、管理価格に市民が不満を覚え始めちまった。
そして、その期待に応えたのが、裏の人間どもだ。
奴等、悪性な模造品を…まぁ、中にはきちんとしたものを作っていた奴等も居たらしいが…、市場に流しやがった。
結果、魔力の暴発による事故が多発。」
何かに耐えるかのように、首を振る。
「4商会のやつらはそろいもそろって、保安機構と手を組み、取締りを実施しやがった。
・・・・努力の甲斐あって・・・・って言うんだろうなきっと。模造品は殆ど市場には出回らなくなったらしい。
が、この事件以降、やつらの力は急速に強くなっていってな?
市場をしつづけた挙句、次に選んだターゲットが、剣を使う奴等だ。
―――――――――――――――分かるだろ?
俺たちみたいな鍛冶屋や、刀剣類を扱う商店は、やつらから眼の敵にされてんだよ。
しかも悪い事に、客はどんどんあっちのほうに流れていっちまってる。
・・・・けっ。ただ魔力を打ち出すしか出来ない玩具に何が出来るってんだ。
使えたって、初級と中級の間ぐらいが良い所じゃねえか。
剣だって、魔力を付加すれば、ちゃんと切れるのによ?
剣はいいぞ?剣は。
まず、重さがある!喩え魔族のものであろうとも、『命』を奪う『重さ』が直に感じられる!!
重さの無い武器なんぞ、ただの危険な道具にしか過ぎん!!
武器は、制御できて初めて武器となりうる!!!
皆、魔術師と商会の奴等に踊らされているだけだ!!!!!!」
最後のほうは、殆ど絶叫と言ってもよかった。
狭い部屋に、僅かに木霊して消えていく。
「あの、そんなに叫んだら・・・・。」
「あ・・・・、いや、すまねえ。」
男は、まるで今までそのことを忘れてたかのように、呆けた声をだすと、暫く黙り込んだ後、すっくと立ち上がった。
「ま、大体は理解できたろ?」
「はい。そりゃもう。」
いやと言うほどに。
「あ・・・・と、剣が欲しかったんだよな。
着いて来い。
・・・・・・・・・・・・・・・ま、あるかどうかは分からんが。」
男はそう言うと、部屋の隅の床にあった金属製の取っ手を掴むと、勢い良く引き上げた。
重々しい音がして、その横に地下へと続くらしい階段が現れた。
奈落の底まで続いているような闇が、原初の恐怖を呼び起こす。
「行くぞ。足元に気をつけてな。」
軽く頷いて、男の後に着いて行く。
一段一段、踏みしめながら思った。
(違う…。)
そう、違うのだ。
今までとは空気が、まるで別の世界のように違う。
それだけ下に下りたのかと思い、打ち消す。
あれから然程、地を踏みしめた訳ではない。
ならば、何故?
些細な違和感を振り払い、長い階段を進む。
ただ、これだけは言わせてくれ。
―――――――――――幾らなんでも長すぎやしないか?この階段。不必要なまでに。
結局目的地に着いたのは、それからかなりの時間が過ぎた頃だった。
「ここだ。」
最下層には、なにやら古めかしい鉄扉が威圧するように立っていた。
「…なんか、やけに重々しいですね。」
「当然だ。元々、此処の土地にあったものでな。 …隠れ家として使うには、とても都合がよかったからな。」
…併し、この禍々しさは・・・・何だ?
「まあ、取り敢えず親方に会ってみな。話はそれからだ。」
「誰だっ!!」
「親方、客だよ客。
―――まあ、見ての通りちびっこだけどな。」
「ちびっこ言うな!!…ってお前は…!!」
「あぁん?」
―――――――――――――――――その日、俺はまたしても奴の掌の上で踊っている事を実感させられた。
To Be Continued …
後書き
まず、一言。
ごめんなさい。
遅筆な私は、今回も遅れに遅れ、徐々にプロットから外れ始めた話を組み立てなおすのに必死です。
…何がいいたいかというと。
極一部の読者の人(多分いない)、見捨てないでっ!!(←更新してから言えよ)
…結局、焦りに焦った末に、話を中途半端なところで切ってしまったし…またPart 2を書くか・・・。
因みに、この話は、第5話の『起承転結』の『起』にあたります…。
一先ず、何よりも完成を目指し、(そして何より伏線にもなっていない伏線の回収もして)やっていきたいと思います。
…すいません。結局まとまり無いですよね…。
ではでは、代理人さん(若しくは管理人さん)お願いします。
代理人の感想
えーい、読みにくいっ!
あのですね、白黒反転ならまだしも、背景と文字フォントが同系色だったり、
明度が近かったりすると非常に読みにくいわけですよ。目にも悪いし。
黒と青はかなり相性が悪いので、どうしても青系統の色を使いたいならせめてこれくらいの色にするべきかと。
背景がどピンクで文字色が赤(実在)というのも凄まじく目に悪いですが、
読みにくいということではこれも結構なものですよ?