第三話 ある秋の休日
季節の移り変わりは一時たりとも休むことはない。
それは勿論、この地方でも変わりがなく、
窓の外には、冬の厳しさを予感させるかのような、冷たい風が吹き荒れている。
老人には辛い季節がまたやってきたのである。
それは、暖炉の前で物思いに耽っているこの老人にとっても同じである…
その土地は本来、老人にとって何等関係の無い土地の筈だった。
その知らせが届くまでは。
そして、その知らせが届いた後には深い悔恨の地となった。
老人の息子夫婦がその地で死んでから…
「思えば、お前と喧嘩したのはアリサの入隊の時が最初で最後になってしまったな。」
「あの時、お前の言う通り、アリサを入隊させなければこんな事にはならなかったのかもな…
だが、もう過ぎてしまった過去の事だ…
今からやり直す事は出来はしない。
私に出来る事は……」
そう言って、老人は手元に届いた孫娘達からの手紙を読み直すのだった。
『日ましに秋も深まってまいりました。
寒い日が続きますが、御爺様にはご健勝のこととお喜び申し上げます。
さて、今回お手紙をさしあげました事には、理由があります。
一つ目の理由は、私の我侭に付き合って下さったことです。
御陰様で、私は目的の基地に配備されることができました。
これもひとえに、御爺様の御力の賜物です。
有り難うございました。
二つ目の理由は……実はこちらが本題に当たります。
それは…彼の事についてです。
彼は、今日も出撃していきました…
彼は何故か、単独行動を好みます。
基地の人間と共同作戦をしたがりません。
例外はアリサ位なものです。
どうして私達を頼ってくれないのでしょうか?
そして、何故アリサだけが隣にいても許されるのでしょうか?
勿論、アリサが「白銀の戦乙女」と呼ばれるパイロットだとは、知っています。
でもこの基地にだって、他にも優秀なパイロット達だっていっぱいいる筈です。
それでも、彼が隣にいることを許すのはアリサだけなんです……
何故彼はそんなにも軍を嫌うのでしょうか?
そして何故軍は、そんな彼に戦う事を強いるのでしょうか?
彼だって、軍が守るべき一般人の筈なのに…
私は、彼に助けられた時よりも、この基地に来てからの方が、彼の事が気になって仕方ありません。』
サラの手紙の殆んどが、アキトの事に費やされていた。
「サラも昔とは随分変わったようだな…
あの昔からは、手紙に男の事を書く日が来るなんて信じられんな。」
老人は、サラの手紙を読み終わると、そう言って笑った。
「私も老いる筈だな…
…………この手紙をお前達夫婦に見せてやりたかったな…」
そう静かに呟いた声は誰にも聞かれる事なく消えていった…
少し寂しそうに見えるのは間違いないだろう。
その沈んだ雰囲気を振り払うようにもう一通の手紙を開く。
『前略御爺様、あの時以来ですね。
私はあの時の事から漸く立ち直る事ができましたが、御爺様は大丈夫でしょうか?
御爺様に無理を言って、この部隊に配属されてから早半月。
私の人生の中で、最も充実した半月でした。
私は「白銀の戦乙女」と人に呼ばれる内に、自分でも気付かぬ内に舞い上がっていたようです。
人間的にも、エステバリスのパイロットとしても未熟なのに……
この半月でそれを思い知らされました。
それを教えてくれたのは、彼でした。
彼に逢えたこと、その事の喜びを表せる言葉を私は持っていません。
どんなに感謝の言葉を並べても、私の心は表現できないのです。
その彼なのですが…
彼は私以外のパイロットと飛び立ちません。
勿論敵の数が多いときは共同作戦を展開します。
でも、それは例外的な措置なのです。
彼は軍を信用していません。
この基地の中で信用しているのは私と姉さん、後はシュン隊長位のものです。
それでも、彼は戦い続けます。
軍の為ではなく、非力な人の為に…
彼は何時でも最前線に立っています。
そんな彼ですが、意外な趣味を発見してしまいました。
彼は、お料理が得意なんです。
趣味のレベルではなく、店を出す事もできるぐらいに。
一度彼に尋ねた事があります。
軍を辞めて、店を開こうとは思わないのかっと。
その時彼は、少し寂しそうに笑っただけでした…
彼の事を英雄として捉えていた私は、それで彼も私と同じ人なのだと本当の意味で理解できました。
最後に付け加えます。
姉さんだけアキトさんの部屋のルームキーを持っているのはずるいです。
御爺様、私にも送ってくださいね。』
アリサの手紙を読み終わった老人の口元には微苦笑が浮かんでいる。
「はてさて、一体どうやってルームキーの事を知ったのやら。
…それにしても、サラは世間知らずだから面白かろうと鍵を送ったのだが、
アリサは知っていて鍵を欲しいと言っているんだろうな…」
老人にも少しは一般常識というものを期待しても良いらしい。
「しかし、一方の孫だけを贔屓するのも良くないしな…
仕方あるまい。アリサにも送ってやるか。」
期待する方が間違いだったらしい…
それにしても孫娘の身の安全を考えんでも良いのか、祖父さん。
普通男の部屋の鍵を持つとは、そういう事だぞ。
にも拘らず、孫娘二人に一人の男の鍵を…
「さて、彼はどうするのやら。
楽しみになってきたな。
これは一度会ってみないといけないな。」
◆ ◆
まったく、朝にいきなりデートを申し込まれても困るんだよな〜
こっちにだって色々計画があるんだから。
折角の休日だから、今日は遠出しようと思ってたのにな。
この辺の女性は、大体はチェックできたからな。
「全く、起きたら隣で気持ちよさそうに寝てるんだからな〜
俺だってあれから特訓してるのに…」
ま、特訓の甲斐あってか起きている時なら、知らぬ間に近付かれるような事はなくなってきた。
でも、相変わらず寝ている時は解らないんだよな。(汗)
それにしても今朝、部屋から出るときに、
『いってらっしゃいのキス』
をねだられた時には流石に焦ったぞ。
あのオペレーターも悪乗りしてるよな…
それにしても、サラちゃんは何にも疑問に感じていないのかな?
それとも実は全部解っていてやっているとか?
「あれ?
アリサちゃん、これからお出かけ?」
待ち合わせ場所に行ってみると、アリサちゃんがおめかしして立っていた。
いつものパイロットスーツと全然違う華やいだ雰囲気をかもしだしている。
やっぱりアリサちゃんも可愛いな。
「何言ってるんですか、アキトさん。
私も姉さんと御一緒させて頂きますよ。
……もしかして姉さん何も言ってなかったとか?」
「うん、サラちゃんからは何も聞いていないけど…
でも良かった、アリサちゃんも一緒だって聞いて。」
「えっ?
どうしてですか、アキトさん。」
不思議そうな顔で聞いてくるアリサちゃん。
勿論聞き返してくれる事を期待していたんだが。
「だって、そんなに可愛いアリサちゃんが誰か他の男と会いに行くなんて聞いたら、
俺はその会いに行った男を嫉妬のあまり殺しかねないよ。」
「え〜〜、嘘ばっかり。
アキトさんって上手いんだから〜、本気にしちゃいますよ、私。」
アリサちゃんはそんな事を言い返してくるが、満更でもないのは顔を見れば一発でわかる。
それにしても、サラちゃんは何を考えているんだろう?
デートなら二人っきりの方が楽しめると思うのに…
まさかダブルデート?
もう一人男が来るとか?
そんな事はありえないな〜
う〜〜ん、サラちゃんが解らない……
それとなく、探りを入れてみるか。
「あ、そうだアリサちゃん。
今日のデートコースなんだけど、何か聞いてない?
サラちゃんが全部自分で決めるって、俺に関与させてくれないんだよね。」
サラちゃんは、どうしてだかデートコースは、誘った方が決めると思っているらしい。
お陰で俺はどんな所に行くかさえ、知らされていない。
「う〜ん、済みません、アキトさん。
私もよく知らないんですよ……あ、ただ、最後にホテルに行く事だけはずっと前から決まってましたけど。」
ピカッ!!!
ゴロゴロゴロ!!!
ドンガラガッシャーン!!!
何ですと?
ホテル?
まさか、いきなり、さ、3ピ――――ッ!!
(只今音声が飛びました事、お詫び申し上げます)
?頭の中に機械音が走ったような???
気のせいか?
それにしても、えらくあっさりと言ったなアリサちゃん。
最初っからアブノーマルを選ぶとは思わなかった…
それとも、二人が双子だからか?
サラちゃんが晩熟だからか?
ふ〜む、いくら考えても解らない…
解らなければ、聞けば良いんだよな。
「あのさ、アリサちゃん。
ちょ〜〜と、聞き『ごめ〜〜〜〜ん』」
俺がアリサちゃんに答えを求めようとした時、遠くから物凄い勢いでサラちゃんが走ってきた。
「もう、姉さん!
遅刻ですよ!!」
「ごめんごめん。
ちょっと手間取っちゃって、許してよアリサ…
っと、こんな事してる暇はないんだっけ、
さあ、行きましょアキト、アリサ!!」
「あ〜、誤魔化そうとしてるでしょう、姉さん!
そんな事で誤魔化されないんだからね、姉さん!」
二人の様子を見ると、とても嬉しそうにしている。
こんな雰囲気で先程の疑問を二人にぶつける訳にもいかない。
何となくスッキリしないものの、どうせ後で解るんだし、
そう思って俺は、双子の美しい姉妹の後を追っていった。
「さて、お美しいお姫様。
これからのご予定を私めに、御教え頂けませんか?」
俺は召使のように恭しく礼をしながらサラちゃんに問いかける。
「ふふ、アキトったら。
今日の予定は、ショッピング!
これに決定!!」
どうやら色々考えてみたものの、最後は普通に落ち着いたらしい。
考えてみれば、三人で遊園地になぞ行ったとして座席が二人掛け、なんて事になったら目もあてられない。
それを考えれば、妥当なとこに落ち着いた事を幸運に思わなくてはいけないな。
「では、参りましょうかお姫様方。」
俺は冗談めかしながら、二人をエスコートする。
内心は、女性のショッピングに付き合うのだけは勘弁して欲しかったのだが…
一時間後…
「ね〜アキト〜〜
これとこれだと、どっちの方が私に似合ってると思う?」
サラちゃんがそう言いながら、二着のドレスを見せてくる。
一方は色は濃紺で、肩から胸元まで全部露出している。
もう一方もやっぱり色は黒で、首元は隠しているのだが、背中側が大胆に開いている。
二着とも見事なイブニングドレスだ。
両方ともサラちゃんに似合うのは間違いない。
ただ、サラちゃんはそのドレスを着て、一体誰と会うつもりなんだろう。
どちらを着ていっても、サラちゃんをものにしようとする輩が大量に発生する事は想像に難くない。
一応俺とのつもりだとは解っているが、確認を取っておく必要があるな。
「サラちゃん。
そのドレスって使われる事あるの?」
「えっ?
アキトがこういうのが必要な場所にこれから連れて行ってくれるでしょ?
私正装用の服って、持ってなかったからアキトに決めてもらおうと思ったんだけど。」
ふむ、俺と一緒にいる時に着るのであれば、何の問題もない。
誰にも手出しはさせないしな。
……だが、サラちゃんの胸元まで他人に見せるのも嫌だな。
「そうだね、これからは結構必要になるかもね…
う〜ん、右手に持っている黒色のドレスの方がサラちゃんに似合うと思うな。
やっぱり、その金髪と白磁のような肌には、黒色が映えるからね。」
俺はサラちゃんにそう言って、おとなしい方を買うことにさせた。
三時間後…
「あの、アキトさん。
ちょっとよろしいですか?」
そう言いながらも、アリサちゃんは既に両手に服を持っている。
その状態で、嫌だと言える訳がない。
「何、アリサちゃん?」
俺としてはそろそろ買い物は終わりにしたいのだが、そんな事は言えない。
女性の買い物だけは、特に服の買い物は邪魔したらいけないのだ。
…何時知ったかって?
色々な特訓の成果だとだけ言っておこう。
「この二着の内、どちらかにしようと思っているんですが、
アキトさんはどちらの方が良いと思いますか?」
アリサちゃんが持っているのは、ワンピースだ。
実はアリサちゃんはエステバリスのパイロットでありながら、おとなし目の服を好むらしい。
二着とも、普通のワンピースと言っていいだろう。
違うのは、色が一方は薄紫なのと、もう一方が淡いピンクだという事位だろう。
二着とも大人の雰囲気を引き立たせる服だが、
それをアリサちゃんが着るという所が最大のポイントだろう。
いつもはパイロットスーツを着て活動的なのに、普段着ではおしとやかにみせる。
そのギャップがとてもいい感じである。
「アリサちゃんならどっちも良く似合うと思うけど。
俺はどちらかと言ったら、ピンクの方が好きかな〜。」
実際、アリサちゃんは二着とも良く似合う事は間違いない。
アリサちゃんも解っていて聞きに来たんだろう。
可愛いよな。
「そうですか?
私もそう思ってたんですよ。
じゃあ、ピンクの方を買うことにします。
有り難うございます、アキトさん。」
にこやかに笑いながら、アリサちゃんはレジに向かっていった。
五時間経過・・・
「ねえ、二人とも。
少し疲れたから、そこで休んでいかない?」
俺が提案した場所は、この辺りでも有名な喫茶店だった。
勿論、俺も何度か使った事がある。
…来た相手は、皆違う人だったが…
「う〜ん、そうね〜。
時間も少し余っちゃたことだし、時間を潰すにはちょうどいいかもね。」
「そうですね。
アキトさんも私達の買い物に付き合ってくれて疲れた事と思いますから、少し休んでいきましょう。」
サラちゃんもアリサちゃんも、俺の提案に賛成のようだ。
やっと休む事ができそうだ。
「それにしても、二人とも結構買ったね〜。
やっぱり、女性は買い物を始めると目の色が変わるね。」
この話題に関しては異星人の男との方が一致した見解がだせるだろう。
男にとって、買い物に熱中する女性陣は、永遠の謎だろうな…
異星人と言えば、木連の女性も買い物には目の色を変えるのだろうか?
木連人と言ったって、同じ地球人なんだけど向うにはあまり物がないみたいだしな〜。
木連の女性はそんなに買い物に情熱を注がないのかな?
俺の知っている木連の女性………
……
…
あ、ユキナちゃん!!
ユキナちゃんを木連の女性の基準にするのは、いろんな意味で間違っているような気がするな…
でも他の人なんて、覚えないしな…
う〜〜〜ん、
ま、実際に付き合ってみれば解ることだしな。
今は気にする必要ないか。
それにしてもユキナちゃんか〜〜。
ユキナちゃんに逢うのも楽しみだな〜。
◇ ◇
昼間は暖かくなっても、日が陰ると一気に寒くなる。
そんな所からも、秋が深まっていることが解る。
「ねえ、サラちゃん。
今日予約しているホテルって、本当にここの事?」
アキトが呆けた様に目の前の建物を見上げている。
しかしそれもしょうがないだろう。
アキトの目の前に聳え立つのは、ヨーロッパでも一・二を争う歴史と格式を誇る超高級ホテル。
その名前は、ヨーロッパどころか遠く火星にまで鳴り響いている。
アキトでさえも、子供時代に既に聞いた事がある名前である。
当然ながら、客も料金も選ぶ。
「サラちゃん。
その〜〜大丈夫なの?」
「ええ、気にしなくていいわよ、アキト。」
「こんな高級ホテルでも許されるんだ…」
一見、アキトとサラの会話は成立している。
が、しかし、アキトが気にしている事とサラが答えた事の内容は、天と地ほどの違いがあるだろう。
二人とも全然気付いていないが…
サラがフロントに行っている間、アキトは平気な顔をしながらもやはり周りが気になるらしい。
顔を動かさないようにしながらも、落ち着かないようでソワソワしている。
「ふふ、アキトさんでもそんなに緊張されるんですね。」
アキトの様子にアリサがからかうように話しかける。
「流石にね…
子供の時から聞いたことがあるホテルに、こんな形で入る事になるとは思わなかったからね〜」
アキトは苦笑いしながら答える。
そんなアキトをアリサがニコニコ笑いながら見ている。
アリサにしてみれば、英雄でない普通のアキトを見れただけで嬉しいらしい。
確かにこんなアキトは滅多に見れるもんじゃないな。
「さ、ここよ、アキト。」
サラが案内したのは最上階のスイートルーム。
「アキトさん。
お先にどうぞ。」
アリサが部屋のドアを開いて、アキトを中へ導いていく。
アキトがスイートルームに入ると、そこには…
多数の黒服に囲まれた老人が椅子に座っていた。
アキトが言葉も出せないほど驚いていると、
「「御爺様!!」」
「おお!!元気そうでなによりだ、サラ、アリサ。」
三人で久しぶりの再会を喜び合っていた。
双子の目にも、老人の目にも光るものがあった。
「何?どうなってるの?」
一人訳が分からず、ボーゼンとしているアキト。
アキトは不埒な考えでこの部屋まで来たのだから、当然か。
感動の再会など頭の片隅にも浮かばなかったに違いない。
そんなアキトに気付いたのか、サラがアキトを老人に紹介する。
「御爺様、彼がテンカワ・アキトです。
ナデシコの英雄にして、私の旦那様になる人です。」
サラが、何の気負いもなく話した為、一瞬皆が納得しかけた。
その後一番最初に変だと気付いたのは、
「姉さん!!
いい加減な事言わないで下さい!!
アキトさんと結ばれるのは、私です!!」
やはりアリサだったらしい。
ただ、アリサも暴走気味らしいが…
「ははは、二人ともまずは落ち着きなさい。
折角二人に会えたのに、怒っている様子しか見せてくれないのは寂しいからな。」
亀の甲より年の功。
女性二人の痴話喧嘩に発展する可能性さえあったのに、難なく静めてしまった。
「まずは、自己紹介をしておこうか。
私の名前はグラシス・ファー・ハーテッド。
サラとアリサの祖父にあたる。」
明らかに目上(格上)にも拘らず、自分から自己紹介をしたグラシス。
人間ができているらしい。
「あ、失礼しました。
私はテンカワ・アキトです。
只今、ネルガルから出向中の身です、どうぞ宜しくお願いします。」
アキトも完璧な礼儀作法をみせる。
実は軍人に対して礼儀を守ったのは、初めてなのではないか?
一体何がアキトを変えたのだろう?
「本日は一体どのような御用件で?」
と、思いきや、早速本題に入ろうとしている。
このホテルでの目的がグラシスとの話だと気付いた時点で、さっさと帰りたくなったらしい。
どうやら礼儀正しくして、なるべく早く話を終わらせようと思っているようだ。
「いや、なに。
最近孫の手紙の内容が君のことばかりなんでな。
実際に会って話しがしてみたくなっただけだよ。」
グラシスの発言に、顔を赤らめ下を向いてしまうサラとアリサ。
アキトもその発言に興味を持ったらしい。
しかしグラシスは、真面目そうな顔を作っているが、面白がっているのは直ぐに判るぞ。
時々孫娘とアキトを意味深長な目で見比べたりしているからな〜。
とても年頃の娘の保護者の態度ではない。
「へ〜〜、サラちゃんとアリサちゃんが…
グラシス中将、出来ましたら私の事をどのように言っていたか内容を御知らせ願えませんか?」
アキトの発言に今度は二人とも顔を上げ、凄い形相でグラシスの方を見る。
アキトにしてみても、グラシスが面白がっているのが直ぐに分かったらしいからな。
悪乗りしてみるつもりになったらしい。
「ふぉふぉふぉ。
いくらなんでもそれは教えられんな。
ただ、べた褒めだとだけ言っておこう。」
グラシスの前半の言葉に安堵したのもつかの間、
後半の言葉にまたも顔を染め、俯いてしまう美女二人。
忙しい事だ。
この部屋に入ってから何時間が経過しただろう…
テーブルの上には、空になった瓶が山となっている。
この部屋で酔っていないのはアキト一人になってしまっていた。
「うむ、アキト君。
君ならば、孫娘を任せられそうだ。
私は家族も守れなかった人間だが、君なら孫娘を全力で守ってくれるだろう。」
何時の間にか、グラシスの心まで取ってしまったらしい…
面白がっていた様子は陰を潜め、真剣な様子でアキトに熱く語っている。
対してアキトはグラシスの発言に一瞬反応しかけたが、
笑って答える代わりとしただけだった。
「よし!!決めた!!
私も全面的に協力しよう!!」
その笑顔に何か感じるものがあったのか、
突然立ち上がり、叫ぶようにグラシスが言う。
「必ずアキト君の気持ちを掴みなさい!!
いいな、サラ、アリサ!!」
「「はい!!御爺様!!」」
「アキトの心を掴んでみせます!!」
「負けませんよ、姉さん!!}
何やら家族で熱く語っているのに水を差すのも気が引けたのか、アキトが部屋を出て行く。
「ふ〜〜〜。
まだ駄目だな…あの時一瞬殺気を発してしまったな……」
ホテルの廊下から外を眺めつつそんな事を呟いている。
そんなアキトに近付く黒い影。
歩き方だけで、一流だと分かる。
にも拘らずアキトは何の気負いも見せず、不意に体をそちらに向ける。
殺気がない為、行動に移しはしないが何があっても完璧に対応できる姿勢になって
いる。
そんなアキトに向かって黒い影は気安げに話しかける。
「よっ久しぶり。
テニシアン島でお世話になったもんだけど、覚えてるか?」
「……ああ、あの時の。
何故こんなところに?」
「いや〜、色々とあってね。
取り合えず、あんたと敵になるかもしれない場所は嫌だったんであそこは出たんだ。
で、ちょうど軍がガードを募集していたんで、入ってみたって訳。」
そのままアキトの傍らまで来て、肩を叩いてて続ける。
テニシアン島で、あんな目にあったにも拘らず、何の蟠りもないように話し続ける
「それが大正解だったってね。
あんたと争わないで済むんだから。」
そんな男にアキトは不敵な笑みを浮かべて言い放つ。
「まだ軍隊が俺の味方だとは決まっていないぞ。」
アキトは男にそう言うと、またスイートルームに戻っていった。
後書き
え〜っと、何を書いたのでしょうか…(汗)
自分でも良く分かりません(汗)
実はデート編を書こうと思ったんですけど、三人で行って何が出来るか考えると、
何も思いつかなかったんです。(爆)
その結果がこの有様に……(核爆)
代理人の「まてやコラアキト」のコーナー(笑)
まさか、いきなり、さ、3ピ――――ッ!!
伏せてない、伏せてないぞ(爆笑)!
さすがは皇アキト。頭の中まで(ぴー)にできてるのかっ(超爆)!
オマケ「ちょっと待ていグラシス!」のコーナー
いや、後書きのコーナー自体オマケと言えばオマケのようなもんですが(笑)。
ともあれ今日のグラシスのツッコミどころはここ!
アリサは知っていて鍵を欲しいと言っているんだろうな…
つまり、確信犯なわけだな、このジイさん(爆笑)。