第八話 準備
そろそろテツヤを本格的に叩かなくてはいけないんだろうな。
俺はそんな事を考えながらナオさんに話しかけた。
「ナオさん、ナオさんの仕事って軍内外で俺に親しい人を守る事と、怪しい人をチェックする事でしたよね?
なにかその線で引っかかってきた人いないんですか?」
テツヤを倒すにしても情報がない限り何もできやしない。
それに若しもテツヤの手が軍の内部にまで入り込んでいるのなら、先にそれを炙り出してからじゃないと、
テツヤを追い詰める事なんて出来やしないだろうからな。
まあ、俺が基地にいることをテツヤが知らなかったって言うんだから、スパイがいたって大した事ない気はするが。
「う〜〜ん、それなんだが、怪しい奴はいないんだよな〜。
なんかみんなアキトの味方ばっかりでさ…」
ナオさんの手元にもそれらしい情報はないらしい。
クリムゾンが余程優秀な人間を送り込んでいるのか、はたまたナオさんが実は優秀じゃないだけなのか…
でも、あのテツヤの様子を聞く限り、クリムゾンが優秀な工作員を送り込んでいる可能性は物凄く低い気がするんだけどな〜。
それを考えると、ナオさんがたぶん駄目なんだろうな。
ま、好意的に解釈してあげれば、まだ日数が足りてないということなんだろうけど。
いくら優秀でもこの短期間に成果を挙げることは無理だったと。
「ただ、一人だけなんか引っかかる奴はいたんだけど……」
訂正しよう、ナオさんは凄く優秀だった、と。
短時間の間に目星はつけていたらしい、それでこそ闇の世界に名前の知れ渡ったヤガミ・ナオだ。
「一人、確定じゃないですか。
何で野放しにしてるんですか?」
「いや、そいつがアキトの事を良くなく思っているのは間違いないんだけど、
それだけなのか、それ以外にも何かあるのかが見分けがつかなくて。
それにアキトがここにいる事をテツヤは知らなかったってことは、実はスパイはいないのかなって思えて。」
ふむ、ナオさんも俺と同じ結論に達していたのか。
これはやはり工作員はいないという事なんだろうか?
「まあ良いです。
取り合えず、その人の名前だけでも教えて下さい。」
「名前か?
確か、サイトウ・タダシって言ったぞ。」
サイトウ・タダシ。
どっかで聞いた事があるな前だな………どこでだったかな?
「サイトウ・タダシ、サイトウ・タダシ、……
う〜〜ん、誰かから聞いた事あるんだけど…」
「そうなのか?
なんでもそいつの彼女がお前とよく話してたそうなんだが。」
彼女……と言う事は、俺がこの基地で落としていない女性で、尚且つよく話してる人、か。
そんな人いたっけ?
………
……
「思い出した!!
オペレーターのベルガさんの彼氏だ!!」
オペレーターのベルガさん……サラちゃんを色々と教育しようとした時に手伝ってもらったんだよな〜。
途中からベルガさんが自分の趣味に走ったとしか思えないような事をサラちゃんに吹き込んでた気もするけど……
結局アリサちゃんが来ちゃったのと、社会常識だけは持っていたので上手くできなかったけど。
でもあれもいい思い出だよな。
「ベルガさんの彼氏のサイトウさんが、余りにもベルガさんが俺と喋りすぎるって怒ってるの?」
「そこが分からない所なんだよな〜。
サイトウは確かにお前に嫉妬してるんだけど、それがどの程度のものなのかは…」
「ふ〜ん、最近はサラちゃんの事もなくなったから、余り話してないんですけどね。
まあ、遊撃隊になったからこの基地自体に近付いていないだけかもしれないけど。
ベルガさんにサイトウさんがどこか変わった所がないか聞いてみましょうか。
ナオさんも一緒にいれば、怒らないでしょ。」
俺とナオさんはベルガさんに話を聞く為に移動する事にした。
◆ ◆
「おい、ライザ。
あのサイトウって奴と連絡取れ。」
テツヤが偉そうに命令している。
その言葉を受けたのは長い金髪をした美女だった。
「また電話するの?
あの男と話したって何にも情報得られないわよ。
何時電話しても、彼女………ベルガだっけ、ベルガの愚痴ばっか。
折角こんな綺麗な美女が電話してきてあげてるのに、面白くないったらありゃしない。」
電話越しに話しているだけじゃ、向うからは美女かどうかは分からないと思うのだが。
「いいから電話しろ。
今度こそ何か手がかりがあるかもしれない。
そうすれば、今度こそあいつらに一泡かかせてやれる。
あいつらをケチョンケチョンにしてやる。
そうだな、その時にはついでだから………」
テツヤはライザの言葉を跳ね除けて、電話するよう強要する。
ついでに上手くいった後のことを色々考えているらしい、口元がだらしなくにやけている。
そんな様子のテツヤに対してライザは呆れたような顔をしながらも、諦めて電話をかける事にしたようだ。
トゥルルル――――、トゥルルル――――
ガチャ!
「もしもし、タダシさん?
お久しぶり、ライザだけど今大丈夫?」
今まで電話するのを渋っていたとは思えないほど、華やいだ声を出す。
やはりこれくらいの事は出来ないと工作員としては失格だろう。
『いえ、全然大丈夫ですよ、ライザさん。
それどころかこっちからかけようとしてたんですよ。』
受話器から漏れてくる声はとても嬉しそうな声をしている。
「あらそうなの。
じゃあちょうどいいタイミングだったのかしら♪〜」
心にもないことを、さも嬉しそうに話すライザ。
『ええ、聞いて下さいよ。
ベルガの奴ったら、最近テンカワがサラちゃんをからかうのに手を貸してくれないとか、
サラちゃんも大分世間慣れしてきてテンカワとの間を画策しようとしても乗ってきてくれないとか、
テンカワに纏わる事ばかり。』
これを聞いて、また始まったと思いつつもライザはこのような場合の対処法を習っていたはずだった。
そう、ライザの上司も又自分の世界に篭って話すのが好きな人間なのだから。
その下で働いているライザにしてみればそうなった場合は何を言っても無駄と言うのを骨の髄まで知り抜いている。
相槌を打たなくてもいいのだからある意味楽だとさえ思えるようにまで訓練(?)されている。
しかしこの相手は上司と違い相槌を頻繁に求めてくるのだ。
そう、彼は別に自分の世界に篭っているわけではないのだった。
従って、相槌を求められた際に返事をしないと、また同じ所を一生懸命に説明してくれるという傍迷惑な人間であった。
流石に上司で慣れたはずのライザも一回目、二回目は情報を得るためと割り切って連絡していたのだが、
そのような傍迷惑な人間だと知ってからはなるべく連絡しないで済まそうとしていた。
最近ではテツヤに目の前で命令された時ぐらいしか電話をしないまでになってしまっていたからな。
……だからテツヤ達は基地内部の情報を知ることが出来ないんだが。
それでも連絡があった時には嬉々とした様子を見せて会話するのだから立派なものだろう。
最近見ないようになった、職業にプライドをもった人間だな、ライザは。
「また始まっちゃたわよ。
話題はやはりベルガの事。こうなると長いのなんのって。」
後ろを振り向いてテツヤに話しかけようとしたが、テツヤは未だあっちの世界にいっていた。
「そうすれば、あいつらだって何も出来やしないに決まってる。
その時に俺が颯爽と出ていって、………」
思わずため息をついてしまうライザ。
「ハ〜〜〜。」
しかしそのため息はテツヤには聞こえなくとも、サイトウには聞こえているのだった。
『大丈夫ですか?
ため息なんかついて、聞いてます?』
「えっ、大丈夫よ、きちんと聞いてるから。
うん、うん、それでどうなったの?」
『そうですか?
ならいいんですけど。
ベルガったらテンカワが遊撃隊に入って基地からいなくなってもテンカワ、テンカワ。
それも彼氏の俺にですよ!?
そのくせ俺が他の女の子の事話題にするのは駄目だし。』
今回は何とか危機を逃れられたが、あれで応えられなかったりしたらまた最初から話しが始まるからな。
心の休まる時がない。
ライザが電話をするのを嫌がるのも無理はないだろう。
◇ ◇
「あっ、あの人がベルガさんです。
お〜〜い、ベルガさんちょっと待って〜〜。」
俺はナオさんとやっとベルガさんを見つける事が出来た。
オペレーター室にいるとばかり思ってたら、そこにいないんだもんな。
慌てて探したけど良く見つけられたものだ。
「あれがあいつの彼女のベルガさんか……
取り合えずあいつは彼女持ちなんだよな、良いよな〜〜。
ああ、なんでいきなりミリアさんは冷たくなったんだろ?」
隣で何か言っているが無視しておこう。
ミリアさんはもうナオさんに向き直ることは有り得ないだろうし。
それにおじさんがミリアさんに何と言ったのかも知らないみたいだからな。
余計な事を言って波風立てるのは良くないことだ、うん。
「こんにちは、ベルガさん。
久しぶりだね。」
ナオさんをおいて先にベルガさんに追いついて挨拶をする。
一時期とても親しかったからな〜。
「ほら、ナオさん。
こちらがサイトウさんの彼女のベルガさんです、ベルガさん、こちらがナオさん。
ナオさんは何て紹介すればいいのか良く分からないけど、まあ噂ぐらいは聞いた事あるでしょ?」
俺は二人を紹介しつつ、近くにあるベンチに座るよう促す。
「でね、ベルガさん。
今日のお話しって言うのは、」
俺がそこまで言うと、ベルガさんは目を輝かして叫んだ。
「また、サラちゃんに何かするの!?」
いや、話は最後まできちんと聞こうよ、ベルガさん。
サラちゃんに対して色々教えるように頼んだのは確かに俺だけど、それはあの時期だから出来たことで、
今はもうサラちゃんの傍にアリサちゃんがいるから無理だろうってそんな話をしに来たんじゃないんだよね。
…………
……
ナオさん、その目はなんですか。
いらない事言ったりしたら、また酷く苛めてやりますからね。
「えっと、最後まで話は聞こうね。
今日の話は違うんだ。
最近サイトウさんの様子ってどうかなと思って。」
ベルガさんには色々とお世話になったし、ストレートに聞いてみることにした。
若しもサイトウさんが何やら良からぬ事を画策していても、ベルガさんには関係ないんだし。
「タダシ?
何かやったの、あいつ?」
俺はその問いに対しては、ナオさんを見る事で答えとした。
ナオさんは俺の目線に一瞬嫌な顔をしたが、それはやはりナオさんが答えるべき質問だろう。
実際にサイトウさんを怪しいと睨んだのはナオさんなんだし。
「え〜と、こんにちはベルガさん。
早速なんだが、今の問いに対する答えってのは実際にはない。
この間から俺は基地内部の反アキトを探そうとしてるんだが、一人も見つけられなくてね。
それで彼が少しアキトに対して隔意を持ってたのを思い出したので、彼女の貴女に確認してみようと思ってね。」
ベルガさんはナオさんの台詞を聞いて何やら思い当たる節があるらしい。
納得をしているようだった。
「あ〜あ〜、一時期あいつとのデートでもアキトさんとサラちゃんの話題ばかりしてたら怒っちゃってね。
あいつも私も話し好きだから、二人の時には大体交互に話してたんだけどあの時は私ばっか喋ってたのも悪かったかな〜。
でもサラちゃんに色々吹き込むのが面白くってね〜。
ついついアキトさん達のことばかり、一方的に……」
それ位ならただの嫉妬だろうな。
俺だって自分の彼女が俺以外の男の事を楽しそうに話してたら怒るもんな。
まあ、そんなことは起きるはずもないのだが。
やはりただの嫉妬心だけなのかと思ったのだが、そこでベルガさんは気になる事を言った。
「でもね、ちょっと最近はあいつも変みたい。
近頃は私も悪かったかな〜って、あいつの話を聞こうとはしてるんだけど、今度はあいつが余り喋んないのよね〜。
あいつが水を向けても話さないなんて有り得ない筈だから、どっかで喋り捲ってるんだと思うけど。」
俺とナオさんは目配せをし合った。
話をする相手が内部にいなければ、外部の誰かということになる。
至急サイトウの周囲で彼の話に付き合っている人間がいないか確認しないといけない。
「ベルガさん、それってサイトウさんが落ち着いてきたとか、話題がなかったとかそう言う事はないの?」
「そんな事あるはずないでしょ。
あいつに話題がなくなるという事があったとしたら、それは地球が滅びた時ぐらいじゃない。
でもその時も滅びた事を話題にしてるか…
要するに、あいつが話題に詰まるなんて事は有り得ないわよ。」
これで周囲の人間も聞かされていなかったら黒だな。
電話の交信記録や外出記録をチェックできるように頼んでおかなくてはいけないかもしれない。
◆ ◆
「ねえ、タダシさん。
ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかな?」
既に電話開始から二時間は経過しようとしている。
その間休む間もなくずっと喋り続けている。
しかも話題は変わらずベルガのことばかり。
良くぞそこまで一つの話題だけで持たせられるものである、ある意味尊敬に値するものである。
……それをずっと相槌を打ちながら聞いているライザもだが。
しかし、ちょっと途切れた所でライザが話題を自分のものにしようと遂に動いた!
『ちょっと待って下さい、
後ちょっとで区切りになりますから。』
簡単にサイトウは切り捨てると更に言葉を続ける。
ライザの話しになどまったく興味がないようだ。
しかし、今日のライザはいつもと違い諦めようとはしなかった。
再度自分から仕掛ける。
「えっ、でもね。」
「ちょっといいかしら。」
「あのね、」
が、あえなく敗退。
相手は更に嵩にかかって攻撃を仕掛けてきた……そんな表現がピッタリ当てはまりそうである。
結局サイトウが話し終わったのは更に一時間ほど経過した後だった。
『そう言う訳だったんですよ。
あっと、そろそろ整備士の集合時間に間に合わなくなっちゃうや。
あっ、何か今度大きな荷物が届くとか言う事で忙しいんですよ。
じゃ、そう言う事で、ライザさんまた何かあったら連絡下さい。』
「あっ、ちょっと待って、ねえ、ちょっと。」
ガチャ!
ツーーー ツーーー ツーーー
ライザが引き止めようとしても既にサイトウは電話を切った後。
無情にも受話器から聞こえてくるのは機械音だけ……
またもやライザは何の情報も得ることなく、サイトウとの電話が終わってしまった。
ライザが行った事の結果は、電話料金を消費する事とサイトウを気分良く仕事に向かわせる事をもたらしたのだろう。
ライザ本人には耐え難い苦痛を強いていても。
「どうだ、ライザ何か新しい事が分かったか?」
そんな事とは露知らないテツヤ。
そしてテツヤの期待に満ちた目を見ると何も得られませんでしたとは言えなくなってしまうライザ。
仕方がないので最後に得た事だけでも伝えておく。
「何でも大掛かりな仕事があるとかで、整備士が大変忙しいみたい。
それが一体何なのかは分からなかったけど。」
嘘は言っていない……
嘘は言っていないが、そんな事で良いのかクリムゾン。
「整備士が大忙しか…
まあ、何はともあれ情報は引き出せたじゃないか、これからも奴と連絡取り合え。」
その程度のものを引き出せたと言って良いものかどうか…
そうか、撒き餌を充分与えておいて、もう暫くしてから重要な情報をつり上げるのだな、たぶんそうに違いない。
と言う事は、ライザの苦労はもう少しの間続くという事だろう。
「まだ連絡するって、
結局あいつはろくな情報持っちゃいないと思うんだけどな。」
その呟きは決して聞こえる事がない。
何故なら彼女の上司はそんな声は聞こえない耳をしているのだから。
「ラピス、アレをテンカワさんの所へ送ったんだって?」
少年が少女に話しかけている。
「ああ、ハーリーか………
うん、アキトが送って欲しいって言ったから。」
それに対しての言葉は少し悲しみが混じっているようだったのは気の使いすぎだろうか。
「でも、アレはまだ、最終調整が終わってないよ。
それに、アレに使われている技術ってネルガルの企業秘密が結構あるんでしょ。
連合の基地に送っちゃったら、色々と不味いんじゃないのかな?
もしもばれたら困るようなものもあると思うんだけど。
艦長にも知らせないで、勝手な事して怒られるとしたら僕なんだろうな。
でも、送れって言ってきたのはテンカワさんみたいだし………」
少年ハーリーのまだまだ続きそうな愚痴のようなものを止めたのは、少女ラピスの眼差しと共に放った次の一言だった。
「…ハーリー うるさい。」
抑揚のないその呟くような一言は、ハーリーを一瞬の間だけ凍りつかせた。
と、次の瞬間には、
「うわ〜〜〜〜ん、どうせ、どうせ、僕なんか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
ドップラー効果を発生させつつ、姿をあっという間に点と変えてしまうハーリー。
そんなハーリーを見て、ラピスはもう一言。
「やっぱり、ハーリー うるさい。」
◇ ◇
「そう言えばアキト、
今度お前宛に大きな荷物が届くんだって?」
ナオさんが急に話題を変えて振ってくる。
俺達はサイトウさんの身辺調査と言うか、周りの人から最近の様子を聞いてきた帰りである。
サイトウさんは、やはりこの頃は少し会話する量が減っているらしい。
まあ、一日平均三時間だったものが一時間半になったぐらいのものらしいが。
しかし、彼女にも周りの人にも話さなくなったという事は、外部の人間に話をしているのは間違いないだろう。
「急に変な話題を振りますね…。
ええ、まだ試験的な運用になりますが、とても大事なものが届きますがそれが何か?」
そう、今度届くのは相転移エンジンを積んだエステバリス用オプション。
ラピスはまだテスト段階だから稼働時間は限られるし、ジュネレーターはいかれ易いしで、
実戦に投入できる段階じゃあないって言ってたんだけど、俺が頼んで送ってもらう事にした。
別に今の機体でも余裕を持って撃退できるのだが、少し今の機体に慣れすぎてしまっている感じが最近してるんだよな。
やはり自分を鍛える為には最高の機体を何時でも操るようにしないとだれてくる危険性があるからな。
只でさえ敵の襲撃回数が減って暇なのに、これ以上遊び呆けているわけにもいかないだろう。
何てったってこの辺の女性は全て落としたはずだからな。
そろそろ違う地域に行かないと、美女が待ちくたびれてるかもしれない。
「なら、その届け物の内容をわざと違うものをみんなに教えておいて、
それをテツヤが知っているかどうかでサイトウの裏切り行為を見極めるってのは?」
「なるほど、昔っからある手を使うんですね。
簡単に言えば………手下のゴロツキに彼女を襲わして、危なくなったら飛び出てお嬢さん大丈夫でしたか?ってやつですね。」
俺が的確に要点を短く纏めてコメントをしたところ、ナオさんが転んだ。
ズルッ!!
そのまま床から俺に向かって大声で叫んでくる。
煩い人だ。
「ど、どこが簡単にしたんだよ!
俺が言ったのと丸っきり違うじゃないか!!」
「あれ、違いました?
まあ、そんな事はどうでも良しとしましょう。
まったく、そんなどうでも良い事は覚えておかなくてもいいのに。」
そんなさらっと流すべき所をしつこく覚えていると、そのうち禿げますよナオさん。
ま、ナオさんの髪の毛なんて心配する必要性ないし、気にする女性もいないだろうし、別にいっか。
「どうでも良い事って……」
未だ言いますか、ナオさん。
貴方がそんなにしつこい人だとは思いませんでしたよ。
これは、後で何かしてあげないといけないかな。
「はいはいそれで、ナオさん。
みんなに何て言うのか既に考えてあるんでしょ?」
「あ、ああ、新型のエステバリスが届く、なんていうのはどうだ?」
ナオさんの答えは俺を満足させるものとは程遠かった。
大体、クリムゾンが俺のエステバリスが新しくなったというのを知ったって、何が出きるというのか?
それに、技術が流失してしまうのはやはり不味いから、潜入されないように手を打たなくてはいけなくなる。
しかし新型がきたと知らせたら、クリムゾンも少々の無理をしてでもその情報を得ようとするだろう。
結果、俺の暇な時間が少なくなってしまう。
それは何にもまして許されない事の一つである。
「う〜ん、今回届くのは、エステバリスにくっ付けるものなんですけど、
事実上新型のエステバリスと言っても過言ではないですから、全然嘘情報になりませんよ?」
それに言葉を付け加える為に、俺は口を開く。
「今回は既に整備班は届くものがあるっていうのを知ってますよ……まあ、どんなものかっていう内容は言ってませんが。
そうなると、整備班が仕事をするもので、尚且つクリムゾンを喰いつかせる事が出来る設定を考えなければいけません。
でもそんな整合性のある話しなんて直ぐに思いつかないし、その情報でここが襲われるのも面倒だし……
今回は見送りましょう。
裏切っているかどうかという事だって、俺がテア家に居ない事すら知らなかったんだから大したことは引き出せてないんですよ、
それに、サイトウさんの行動を監視したり、電話を盗聴することよりも、テツヤを黙らせる事の方が簡単そうだし。
まあ、どうしてもやるんなら俺が遊撃隊の仕事でまた他の基地を転々としているという情報を流しておいて、
実はこの辺の家―――テア家等―――に隠れる位しかないでしょうが、そうした所で大した意味なさそうですし。
やっぱり、テツヤの隠れ家を急襲してしまえばそれで終わりなんですから。」
「しかしテツヤの隠れ家を知るためにも、サイトウの元に電話してくる奴を特定して、そこから辿るしか手はないぞ、アキト。
結局同じぐらいの手間がかかると思うぞ。」
普通の人ならその通りなのだろう。
相手の場所を特定するには、逆探などで電話場所を見付けてそれから、というものらしい。
だが、俺にはそんな事をする必要がまったくない。
勿論、それはルリちゃんのお陰であり、ラピスのお陰である。
今はルリちゃんもナデシコで精一杯だろうから、ラピスに頼んでおけば大丈夫だろう。
クリムゾングループの中からテツヤという名前を探していけばそれで十分なのだから。
「それぐらいは俺の方で手を回しておきますよ。
ちょっと当てがあるもので。」
考えてみれば、最初にテツヤが襲撃してきた時に既にこの方法は取れたんだがな。
無意識の内にミリアさん達と楽しく過ごすのを選んでいたんだろうか?
一度も頭に浮かばなかったな……………何故だろう?
浮かんでいても実行はしなかったのは確実だが。
言い訳
ライザを出す為と二章を終わらせる為だけのお話です(爆)
そろそろ終わりですし、纏めないとと思いまして…
サイトウは最初は無視しようかとも考えたんですが、一度書いているし、ライザを出す上でも必要かなと思いましたので(笑)
あと彼は、『人の話を聞かない、話し好き』というただの一般人です。
彼女役のベルガはサラの所で何度か出てたオペレーターですが誰も覚えてなかったでしょうね(汗)
代理人の「まてやコラアキト」のコーナー(爆)
なんか最近、アキトよりむしろテツヤに突っ込みたくなってきたなぁ(爆)。
ライザも可哀相に(笑)。