_今回は、取材に応じてくださって有り難う御座います。
「たいしたことではないわ。」
_では、早速ですがお名前の方をお聞かせ下さい。
「私は、カリーノ・ソレッタ。
イタリア貴族よ。」
漆黒の戦神 アナザー
カリーノ・ソレッタの場合
_あの〜、大変失礼ですが、御歳のほうは?
「あら、淑女に歳を聞くなんて、許されるとでも?」
_は、はい、すみません。
…然しながら、御子様を御持ちの方には、どうしても見えなかったもので。
「ま、褒め言葉として受け取っておくわ。
但し、二度目は許さないわよ。」
_…で、では、本題の方へ入らさせて頂きます。
いきなりですが、どちらで「彼」と御知り合いになられたのでしょうか?
「初めてアキトと出逢ったのは、宮殿でだったな。」
_きゅ、宮殿ですか?
それはまた、ドラマティックな出会いですが…
宮殿には、「彼」も貴女もどのような御用件で?
「あの時の舞踏会は、西欧戦線の安定化と兵士の慰労の為に行われたものであったからな。
アキトがその場に呼ばれるのは、当然だ。」
_なるほど、「彼」が西欧戦線を安定化させた立て役者ですからね。
そうしますと、貴女は?
「私は、親戚に連れられ仕方なくな。」
_仕方なくですか…
しかし、あの英雄に会えるかもと、胸弾ませて参加したのではありませんか?
「いや、本当に仕方なくだったのだ、あの時は…
…先程少し触れたが、私には娘がいる。
しかし私は結婚していない。」
_と言いますと…
「そうだ、未婚の母ということになる。
勿論、娘の父親はいるし、彼と結婚するつもりで付き合っていた…」
_立ち入ったことを御聞き致しますが、何故結婚なされなかったのでしょうか?
「…身分だ。
私はイタリアの貴族の中でも、名門中の名門『赤い貴族』のソレッタ家の息女。
私が愛したのは、日本の貧乏絵師。
そんな二人の結婚が許される筈もなく、彼は日本へ帰っていった。」
_ズズズッ……悲しいお話ですね。
「…ああ、しかし私は彼の事を諦め切れずにな、ずっと待っていたのだ。
そんな私を親戚一同はどうにかしようと、色々な舞踏会やら演劇やらに連れ出そうとしてな。
いつもは断固として断っていたのだが、なぜかあの日だけは少しぐらいならという気持ちになってな。」
_そこで、「彼」と出会ったと…
本当にドラマティックな出会いをされたのですね。
では、舞踏会場では「彼」はどのような様子でしたか?
「いや、私はアキトと舞踏会場で出逢っていない。」
_?そうしますと、一体どちらで?
「私は久しぶりの社交界だったこともあり、男性陣が放って置いてくれなくてな、
それがいい加減鬱陶しく思えて、舞踏会場から一人抜け出したのだ。」
_それはまた、大胆な。
それで、舞踏会場を抜け出られた後はどうなされたのですか?
「その日は、月の綺麗な夜であったのでな、
月夜の散歩をしてみるつもりになって、庭園の方へ向かって行ったのだ。
そこにアキトがいてな。」
_やっと、「彼」と出会えましたね。
それでその後は?
「そう急くな。
時に、記者はアキトと会ったことがあるのか?」
_いいえ、残念なことに未だ…
「そうか、それでは解らないかもしれないが、
私はアキトと初めて出逢った時、何故こんな若者がこの場に紛れ込んでいるのかと思ってしまったのだよ。」
_「彼」は英雄ですが?
「まあ、その通りなんだが…
何と言うか、外見や雰囲気からは全くそうは見えないのだよ、アキトは。」
_はあ、そうなんですか…
「うむ、そうなんだ。
そういう訳で、私はアキトが何故宮殿にいるのか解らなかったが、自分なりの答えを導いた。」
_どのような答えになったのですか?
「遠い異国から、右も左も解らない西欧にやって来て、
仕方なく軍人になったら、偶々手柄を立ててしまいこの宮殿に招かれたのだが、
宮殿の荘厳さと華麗さの前に気後れしてしまい、中に入れないでいるかわいそうな若者。」
_(………実は物書きになれるんじゃないか、この人。)
「そう思った私は、アキトを連れて中に入ったとしても、
アキトにとって別世界で居心地が悪いだろうと思って、私と庭園を散歩しようと誘ったのよ。」
_「彼」はどうされました?
「アキトも舞踏会場には入りたくなさそうだったらしく、二つ返事で承諾してくれたわ。」
_珍しいですね、女性の誘いを受け入れるなんて。
「後で聞いた話なのだけど、舞踏会ではアキトの周りは凄かったらしいから、その為だろう。」
_凄かった、と言いますと?
「娘のいる人達や、娘がいない人は養女や孫娘をアキトにくっ付け様と押しかけ、
女性陣も一度だけでもお話ししたい踊りたい、あわよくば結ばれたいって、
アキトの周りだけ物凄く込み合っていたそうだから。
それから逃げだしたかったんだろう。」
_「彼」と縁戚関係に…
「それで、私とアキトは庭園をゆっくり散歩していたんだが、その内に…」
_その内に、(ゴクッ)
「何を期待しているのだか(ギロッ)
少し歩き疲れた時に東屋があったのでな、そこで少し休むことにした。
それまでは、アキトの顔を真正面からは見ていなかったのだが、その時初めて見てな、
アキトが東洋系の、それも日本人の血を引いているのではないかと思ってしまい、
一生懸命日本の事を知ろうとしたのだが、アキトも良く知らなかったらしく、
要領を得ないので、私がアキトを怒鳴りつけてしまったのだ。」
_「彼」に対して、怒鳴りつけたのですか!?
よくそれでご無事でしたね。
「淑女に手をあげるような輩ではないぞ、アキトは。
ただ、アキトは何故そんなに日本の事を知りたがるのか聞いてきてな、
私にもいきなり怒鳴った引け目があったので、先程話した内容をアキトにもしたのだ。」
_「彼」はどのような反応をみせたのですか?
「まず私の境遇を悲しんでくれ、身分違いだ等と言う親戚に非難の矛先を向け、
その後、娘の父親に対して怒りをぶつけていた。」
_…親戚は解るのですが、父親に対しても、ですか?
「ああ、私も最初は何故親戚にだけ怒りが向くのではないのか解らなくて、アキトに聞いたのだ。
そうしたらアキトはこう答えたの。
『カリーノさんが何と言おうと、その人は逃げたんだ。
自分から去った等格好いい事を言っても、それで残された人間はどう思う。
今のカリーノさんのように、ずっと待ち続け忘れられなくなってしまう。
それこそ、心を鎖で縛り付けるかのように…
もしも彼が本当にカリーノさんを愛していたのなら、
たとえ全てを失っても離さないという気持ちをみせるべきだった。』と。」
_…成る程、一理ありますね。
ただそれを世界中の女性から逃げている「彼」に言われても、と言う気もしますが
…
記者など無視して…
「それを聞いた私は目の覚める思いがしてな。
確かに彼は何も言わずに立ち去ってしまった。
彼は本当に私を愛してくれていたのか、愛してくれていたなら何故未だ迎えに来てくれないのか、と考えるようになった。」
_私の言う事聞こえていますか?(汗)
「そして、私は理解できた。
彼は確かに私を愛してくれていた、だが最後には私の為と言いながら、自分の為に身を引いたのだと。」
_もしも〜し(汗)
「それが理解できた時には、私は愕然とした思いであった。
そうであろう?」
_は、はい!
「今迄ずっと彼を待ち続けていたのに、実は彼はあの時に私達を捨てていたということなのだ。
私が今迄過ごして来た歳月を考えると…」
_あ、あの、カリーノさん?(汗)
「そこで私は、青春の日々を取り戻すことにした。
幸い目の前には真剣な目で私を見守ってくれているアキトがいたし、
アキトは顔は少し幼く見えるが整っているし、
宮殿に呼ばれるのだから歴戦の勇者か物凄い戦果を挙げているかのどちらか。
それに、そのような考え方の持ち主ならば、絶対私を幸せにしてくれるはずと。」
_カリーノさん!!
ハッ!
_お気づきになられましたか(汗)…では、続けさせていただきます。
貴女は何時、「彼」があの漆黒の戦神だと気付かれたのですか?
「…私とアキトは結構永い事東屋に居たらしく、
私達が宮殿に帰り着くと、出席者達が三々五々帰る時間帯になってしまっていてな、
ソレッタ家の一員として、ゴシップ紙に載る訳にはいかなかったので私は近くの生け垣に隠れたのだ。
そうしたら、アキトの顔を知っていた人間がいたらしく、
アキトを囲んでキャーキャー言い出してたので、その時に知った。」
_「彼」が漆黒の戦神だと知って、どう思われましたか?
「良かった、と。」
_?良かった、ですか?
「ああ、アキトならソレッタ家の誰も反対できないから、私達の未来は明るいな、と感じた。」
_…未来ですか(汗)
この後聞くのが怖くなってきましたが、最後の締めですし、
カリーノさん、最後に「彼」に一言伝えるとしたら何と?
「私の娘に何と呼ばれたいか?
お義父さん、お義父様、パパ、それとも名前でアキトにするか?
どれがいいか決めておいてくれ。
それと待つのはもう止めた、今から追いかけていくからアキトが待っていろ。」
_あ、有り難う御座いました。
代理人の「ちょっと待ていアキト!」コーナー番外編(笑)
さて、アキトのあのセリフですが
一、劇場版のラストでユリカを置いて去ったことに対する後悔の現れ
二、自覚のない女たらしの無責任なセリフ
三、近親憎悪(核爆)
さてどれでしょう(笑)。