帰りなき道
プロローグ
=墓地=
墓、死者が眠る場所。今御統家之墓と書かれた墓に一人の女性の遺骨が納められた。
「ユリカ…」
遺骨を納めたミスマル コウイチロウが墓に話し掛ける。
その顔に元気はなく、全てを失った老人のように老いていた。
「アユミは行ったよ。アキトくんとルリくんに会いに…」
そう言って口をつむぐ。
「…ユリカ。本当にこれで良かったのか、あの三人を会わせて…」
墓から答えが返ってくるはずもなく、ただセミの音が鳴り響く。
そして十分ほどして…
「……………………」
コウイチロウは立ち上がり、空を見る。
空は、五年前のあの日と同じ空模様をしていた。
=ネルガル 月工場=
今、一体の機体がボソンジャンプしていった。
5年前、史上最悪のテロリストにして黒の王子、テンカワ アキトが乗った機体の後継機が…
「行ったわね、アユミちゃん」
機体があった場所を見ながらエリナ キンジョウ ウォンが呟く。
「そうだね…」
アカツキ ナガレが相槌を打つ。
その表情はいつものふざけたものではなく、どこか子供を見送る親を思わせた。
「…アキトくんに会えるかしら」
「もちろん、なにしろあの二人の子供だよ、例え100%無理だとしても奇跡を起こすよ
それに…」
「それに?」
「あの子は、僕達、旧ナデシコクルーみんなの子供じゃないか」
震えるエリナの肩にそっと手をかける。
「そうね………ねえ、会長」
「ん?なんだい」
「そろそろ、あの件の返事くれない」
「あの件かい…いいよ、結婚しよう」
「ええ…」
二人はキスを交わした。
(テンカワくん、君はあの時逃げた。
でも今回は逃げられない。
なにしろ彼女は君とユリカくんの娘なのだから)
黒の王子と妖精の元に、一人の娘が現れる時
一つの物語が幕を開ける。
それが、悲劇であるか、喜劇であるかは誰も知らない。
ただ、関係者にとって試練になることだけは間違いない。
あとがき
どうも彰吾です。
新作です。ちなみにこの作品はナデひなの世界観で行きます。
父が戦争の英雄となり、二桁の恋人がいると聞いた時、彼女はどう思うでしょうか。
そしてどうするでしょうか。
次回 帰りなき道 第一話 漆黒の戦神と呼ばれる父
「私の世界ではテロリストが、この世界では英雄…滑稽だわ」
見てください。
代理人の感想
をを、時ナデの矛盾点を鋭く抉り込む問題作・・・・・・・になればいいなぁ(爆)。
いや、結構期待できる出だしなんでその期待を裏切らないで欲しいところですが。