遺跡の被害者達



プロローグ





もし願いが叶うなら…




一つだけ叶うなら…




俺は…何を願うだろう。





「…よく、俺をスカウトする気になったな」


ソファーに座る二人組に向けて俺は言う。


「優秀な人材をスカウトするのが私の仕事ですから」


細い方プロスペクタ−が答える。


「優秀な人材ね…大切な連中さえ守れない奴が…優秀な人材ね
…クックック、これは傑作だ」


自虐な笑みがこみ上げてくる。

もしこんな笑みをあいつらが見たらなんて言うかな、怒るか。それとも…

…バカバカしい、今更そんなことを考えて何になる。あいつらはもう帰ってこないんだ。


「貴様!いつまで腐っているつもりだ!!」


ごつい方ゴート ホーリーが俺の胸元を掴む。


「…何するんですか」


「いつまで腐っているつもりだと聞いている!!」


「さあね…死ぬまでじゃないんじゃないですか…それより離してくれません
こんな安い服でも貧乏な俺にとっては大切なものなので」


「離しなさいゴート」


「っく」


ゴートが俺の胸元を離す。

あのゴートにしては珍しいことがあるもんだ。あんな大声をあげるなんて。まあ、俺には関係ないことだが。


「…さて話がずれてしまいましたね、返事は」


「パス、パスだ…なんで俺がお前らが造った戦艦なんかに乗らなきゃいけない」


それにもう俺は、ネルガルには関わりたくない。

関わってろくな目に会った事がないからな。

特にあの遺跡関係のことでな…。


「春海さんと梢さんもナデシコに乗ると言われもですか」


「…何が言いたい」


「何たいした意味じゃないですよ」


よくしげしげと言いやがる、この男は。

しかし、春海は仕事上予想していたが梢までナデシコに乗るとはな…とすると。


「二人だな…俺をナデシコに乗せるようにあんた達に働きかけたのは」


そう考えれば、俺なんかをスカウトする理由も理解できる。


「彼女達も頑固でしたね。あなたが乗らないと自分達も乗らないと言い張って困ってますよ、はい」


そりゃあ、さぞかし胃が痛いことで。


「…同情するよ」


「いやいや、生まれた時からあの二人の相手をしているあなたにはかないませんよ。
…どうします。乗ります。それとも止められます」


「…乗るよ、もし断ったら…フッ…俺はあいつらに殺されるよ」


マジで俺を抹殺に現れるからな。あの二人は。

何よりあいつらの心遣いがうれしいしな。


「そうでしょうね…では、この書類にサインを」


プロスペクタ−が鞄から書類を取り出して俺に渡す。


その書類に目を通しながら俺は考えていた。


いつまでも絶望していても仕方がない…あいつらの為にもそしてなにより自分自身の
為にも歩き出す時期なのかもしれない。



例えそれが苦難の道だとしても。



例えそれが悲しい道だとしても。



もう後悔しない為に…



数分後、俺は書類にサインをした。





もし一つだけ願いがかなうなら




俺は…何を願うだろう。




分からない…だから今は保留しておこうと思う。





そして見つけて行こうと思う。








これから乗るMS−001ナデシコで…。








あとがき

どうもお久しぶりです。彰吾です。
主人公の名前が田中幸助ということから分かると思いますが、
この作品は守護者の書き直しです。
といっても話はまったく違います。
幸助の設定と性格も違いますし、新たなキャラクターも出てきます(消えるキャラもいますが)
今回名前だけ出てきた、春海と梢がそうです。
彼女達の正体はそのうち公開するとして、この作品のテーマは題名から分かるとおり遺跡です。
何故、遺跡なのかも後々公開していくとして、少しでも読みやすいSSを書けるように
日々努力して行きたいと思っています。

さて次回 遺跡の被害者達 第一話 一年ぶりの再会(仮)
なるべくはやく投稿できるように頑張りたいと思っています。
それでは。


追伸
帰りなき道ですが、もう少し待ってください。

 

代理人の感想

あ、書き直しですか・・・また新連載かと思いました(爆)。

 

それはともかくとしてプロスがゴートに頭ごなしに命令してるのはちょっと珍しいですね。

普通は部下に対しても丁寧語を使う人ですし、さんづけ君付けは欠かさないのですが。

あと、「しげしげと言いやがる」というのは「しゃあしゃあと」の間違いでしょうか?