遺跡の被害者達



第一話 一年ぶりの再会




人には絶対勝てない人がいる。

俺にとってそれは同い年の姉だったりする。





「ふ〜ん、中々いい戦艦だな」


確かにプロスさんが言う通り、いい戦艦だと思う。

ちょっと見ただけだが、昔火星から地球に来る時に乗った、旧型の戦艦に比べて設備が充実している。

いや、充実しすぎていると言うべきか。

そこら辺は、民間企業が造った戦艦だなと思う。

まあ、この艦の目的地を考えるとこれでも少ないか。

何しろ目的地に着くだけで最低一ヶ月はかかるからな。


「さて…これからどうするかな」


当初の予定だと、この後プロスさんの案内で春海の仕事場に行くはずだったのだが

プロスさんは用事ができたと言ってどこかに行ってしまったし、プロスさんが行ってしまった後で気付いたことなのだが春海がなんの仕事をしているか聞いてないんだよね俺って。

梢がエステバリスのパイロットなのは聞いてたんけどな…


「ポリポリ…困った」


もしこのまま春海に挨拶しないものなら………俺は修行という名の地獄に突き落とされてしまう。

しかし挨拶に行こうにも春海の居場所が分からないと来た。


「お助けしましょうか」


困り果てた俺の耳に聞き覚えがある声が聞える。


「ああ、頼む」


そう答えて後を向く…そこには長めに伸ばした紫色の髪をポニーテールに束ね
ちょっと大きめな金色の目で俺を見る、少女がいた。



「久しぶりです、幸助さん」


あいつの義理の妹にして、俺の家族の一員。

そして…狂気の被害者。

俺の記憶にある姿に比べて、幾分か大きくなった少女に向けて俺は言った。



「…久しぶり、サフィちゃん」


と。






久しぶりに会った幸助さんは、どこか人生に疲れている感じがしました。

やはり、まだあのことに対する、悲しみや自分に対する怒りが幸助さんの心を占めているのでしょう。

仕方がないのかもしれません。幸助さんにとって彼女達は誰よりも大切な人達ですから。


…でも


「私のことも少しは考えて欲しいです」


「ん?何か言った」


「いえ、別に…」


溜め息もでません。はぁ〜


「ならいいが…なあ、春海は何の仕事をしているんだ?」


「なんだと思います」


「う〜ん、コックはまず違うとして…保安クルーか?」


保安クルー…確かに春海姉に似合いすぎるの仕事ですね。でも違うんですよ、これが。


「…メカニックです」


「なるほど、メカニックか…メカニックだと!!」


幸助さんが私の方を向いてそのまま固まります。

まあ、春海姉の二つ名を知る人は誰もが驚くでしょうね。

何しろ、あれですから。


「はい」


「…嘘だろう」


「本当です…まあ、詳しいことは本人に聞いてください」


後の話は本人にしてもらいましょう。うっかり余計な事を言ってまたあのお花畑を見たくありませんし。


「えっ!?…!!」


幸助さんが前を向きます。

そして再び固まります。


「あら、久しぶり幸助」


幸助さんの姿に気付いた春海さんが言います。


「…ハハハ、久しぶり春海」


乾いた笑みを浮かべながら幸助さんが言葉を返します。相変わらず固まっていますが。

それにしても春海姉…なんて格好してるんですか!

水色のちょっと大きめの作業着を着腰ぐらいにある黒髪を適当にゴムで束ね

何故かグリグリ眼鏡を掛けています。

確か春海姉の視力は6.0で眼鏡なんか必要なかったはずですけど…

その前にその…胸…見えてますよ(真っ赤)


「あれ?サフィちゃん、お顔真っ赤にして、何かあったの?」


見せないでください。私まだ、14歳の少女ですよ。


「…春海、胸隠せ」


「胸って…あららいつの間に…どおりで、師匠が涙を流していたわけね、謎が解けたわ」


…やはり自覚なしですか…ありでやられたらもっと困りますけど。

それにしても、その師匠って人、整備班班長のウリバタケさんですよね。

奥さんと子供さんが二人もいるのに何やってるんだか。


「お前本当にメカニックに…」


「そうよ…幸助が姿を眩ました後でね。お仕事辞めて、師匠…ああ、幸助は知らないんだよね。ウリバタケ セイヤさん。ナデシコの整備班の班長で、元は違法改造屋でね。その人の元で半年ほど修行していたのよ。そしたらプロスさんとあのごつくって無口のおっさん、え〜と、サフィちゃん誰だっけ?」


「ゴート ホーリーさん」


…元上司の名前ぐらい忘れないでください。


「それそれゴートさん、その二人が師匠のスカウトに来てね。師匠がオリエさんに、オリエさんは師匠の奥さんね無断で契約書にサインしちゃって、師匠の監視と自分の修行の為に私もナデシコに乗ったのよ。それから」


「もういい、大体のことは分かった。つまりSS辞めて、今は違法改造屋の弟子になっているんだろう」


幸助さん、ナイスです!


「プ〜、まあそんな所」


「…相変わらず、気まぐれな人生を送ってるな」


「突然姿を眩ます弟に言われたくありません」


瞳に涙を浮かべながら春海姉。

これに男性は騙されるですよね。この思わず抱きしめてあげたくなる表情に。


「悪う御座いましたね、不良な弟で…それよりその引きずってる男は誰だ?」


「ああ、これね、師匠の話のよるとエステのパイロットの山田次郎さん」


山田さんをまるで猫を持ち上げるように上げて私達に見せる。

何かいかにも熱そうな人ですね。この人。


「その山田次郎がどうしてお前に引きずられているんだ?」


「この人がね、人が整備していたエステに乗りこもうとしていたのを見つけたのよ。
それでね、注意したのよ。でもまったく聞いてくれなくて…」


命知らずの人ですね。


「ちょっと腹が立って顔面にハイキックをお見舞いした」


「そう言うこと、テヘ」


なるほどだからこの人の顔面に足跡がついている訳ですか。納得しました。


「…一度こいつの脳の構造調べてみたいよ」


その気持ち解かります。


「そろそろ行くね。さっさとこの人を医務室に運んで、エステの整備再開しないといけないから」


「あっ、ああ」


「じゃあね。幸助、サフィちゃん」


春海姉が去っていきました。

途中、山田さんにトドメを刺していましたが、まあ見なかったことにしましょう。

幸助さんもしらんぷりしていることですし。


「…行こうか」


「はい」


再び歩こうとしたその時。


ビィー!! ビィー!! ビィー!!


廊下中にエマージェンシーコールが鳴り響きました。





「テンカワ アキト君でいいよね」


画面に見慣れない女性が映る。


「ええ…あなたは?」


「私?私は田中春海、整備班の副班長よ」


田中春海、ルリちゃんが言っていた。前回は乗っていなかったクルーの一人。


「…なんの用ですか」


「あなたに一つ忠告しておこうと思って」


忠告だと。


「何ですか?」


「あなたが乗っているエステね。動いて五分だから」


「へっ!?」


なんだと。


「だから、五分以内に安全な所に逃げ込むか。敵を全滅させてね、後私のエステに傷付けたら」


「傷付けたら…」


「お仕置きだからね♪」


そういい残して通信が切れる。


「お仕置き…」


お仕置きって言葉を聞いた瞬間、全身に悪寒が走ったような。


何故だ?



ドカァァァン!!



「今は敵の全滅が先か」


こういうことは後で考えよう。それに後四分しかエステのエネルギーも持たないらしいしな。


「行くぞ!!」





結局ナデシコの出番もなく、敵は全滅した。

俺が知っている過去とは違う結果、そして過去には乗っていなかった人達の乗艦。

どうやらこの世界は俺が知っている過去とは違う世界らしい。

だが…俺は負ける訳には行かない。

もうあんな過去はごめんだ。

明るい未来の為に俺は足掻き続ける。

ルリちゃんや、ラピス、ナデシコに乗る人々、そして自分自身の為に。

俺の挑戦は始まったばかりだ。















「あの動き、やはり彼は…」






あとがき

作者が二度目のインパクトのラスボスに挑戦しに向かったので代打を勤めます、エリスです。

えっ?エリスって誰だって…私は一応この物語のヒロインです。守護者の時からまだ一度も出してもらっていませんけど(涙)

えっ、そんなことどうでもいい。エ〜ン(泣)

…グスン、キリがありませんね。さて第一話…幸助の影が薄いですね。

春海が一人で活躍していますし…作者は何を書きたいんでしょう。本当に。

さて、感想ばかり述べていても仕方がありません。

私は、作者に渡された紙でも読みますか。

まず、第一話で出てきたオリキャラの年齢は。

田中 幸助(19)

サファイア・ディスケンス(14)

田中 春海(19)

田中 梢(19)

春海と幸助と梢の年齢が同じなのは、三つ子だからです。

春海は一番上で長女、幸助が二番目で長男、梢が三番目で次女です。

次みんなの職業は、幸助がコック、サフィちゃんがサブオペレータ

春海がメカニック。梢はエステのパイロットです。


最後に次回予告 次回 遺跡の被害者達 第二話 焦げたホットケーキ

見てやってください。

 

代理人の感想

む〜、出してもらえないヒロインですが………ややきつい事を言うと、

ころころ設定が変わるのは書く前に十分に練ってないからであると言えます。

構想がもやもやとしたままで見切り発車すると、得てしてこう言う事になる物のようですね。

極端な話、ラストシーンさえはっきりと考えて置けば

途中経過が違ってもわざわざ書きなおしをする必要はなくなるんじゃないかなと。