遺跡の被害者達



第二話 焦げたホットケーキ




焦げたホットケーキ…それは二度と食べる事ができないかもしれない。幻の一品。






「ユリカ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」



通信がつながった瞬間、サリーちゃんのパパのヘアースタイルで有名な

ミスマル提督の大声がブリッジに木霊します。


「お父様!!」


さすが親子。提督の声によってナデシコクルーの半分位が意識を手放しかけているのに、
ケロっとしています。

それにしても迷惑な人ですね。もし今敵に襲われたらどうするつもりですか。

あなた本当に提督ですか。まったく。


「ルリちゃん。大丈夫?」


本能的に危険を感じたのでしょうか、とっさに耳を塞いだので、被害の少ないルリちゃんに聞きます。


「大丈夫です…サファイアさんは大丈夫なんですか?」


「私は、大丈夫。慣れているから、それに私のことはサフィーと呼んでって言わなかったっけ?」


「すいません」


「別に謝らなくてもいいんだけどな(苦笑)」


なんかこの子、私に似ている気がします。同じマシンチャイルドであるだけではなく…

多分あのことかな。


「………あのう、一つ聞いていいですか」


「ん。うん、何?」


「サフィーさんは…その…幸助さんのこと……好きなんですか?」


「好きだよ…でもね」


狂いそうになるほど好き、でも。


「でも?」


「…ねえ、ルリちゃん。もし自分が好きになってしまった人が
自分のお姉さんの恋人だったら、どうする?」


「!…それは」


ルリちゃんの顔が驚きで染まります。

結構有り触れた話だけど、直接聞くとショックなことだからかな。


「告白なんかできる訳ないよね。それが義理の姉で命の恩人ならなおさら…」


それに告白した所で幸助さんが自分の物になるわけないし。

それ以前に私には告白する権利はない。

私にできることは…幸助さんの助けになること。

春海姉が言う、幸助さんが歴史の表舞台に出る時に、今はいないエリス姉に代わって


「…サフィーさん」


「ハハハ、なんか暗い話になったね、話も終わったらしいし、ここにいてもすることがないから
御飯食べ終えたら春海姉の所にでも行こうかな」


どうやら私達が話している間に話はまとまったらしく、艦長がマスターキーを抜いて

プロスさんと副長のアオイさんと共にブリッジを出て行きました。


「そう言えば春海さん、ムネタケ副提督を何処に連れて行ったんですか?」


ルリちゃんが残りのチキンライスを食べるべくスプーンを持ちながら聞いてきます。

さっきムネタケ副提督が叛乱を起こしましたが、
叛乱を起こす事を知っていた私とプロスさん、ゴートさんそして春海姉によって、失敗に終わっています。

そしてムネタケ副提督とその部下達は春海姉によって例の場所に連れていかれました。


「お仕置き部屋だよ、モグモグ」


ホットケーキを一口サイズに切り口に入れながら私は答えます。

お仕置き部屋…私と春海姉の二人で造った部屋で、二つあります。

一つ目は主に今回の事件などに使い、

二つ目は主に幸助さんなどの女垂らしに対して使います。


ちなみにネルガルの許可はとってあります。


「お仕置き部屋ですか?」


「ルリちゃんお仕置き部屋のこと知らなかったの?」


これは意外、オペレータなら知っているとばかり。


「はい」


「ならルリちゃんも行く、多分…」


「後でルリちゃんも使うことになるからね」


一度言葉を切ってルリちゃんの耳元に顔を持っていって小言で呟きます。


「?どう言うことですか」


「そのうち分かるよ」


チラッと横で何か考えことをしているテンカワさんを見ます。

あの人は幸助さんと同じで女垂らしでしょう、それも天然の。

好きなルリちゃんも苦労するでしょうね。

そして何度注意しても直らないテンカワに怒りを感じお仕置きしだすでしょう。

エリス姉や私がそうしたように(ニヤリ)


「はぁ〜」


「どうする、行く?行かない?」


「…行きます。少し興味があるので」


「じゃあ、これ食べてからね」


「はい」


私達は食べる事に集中した。




「やめなさい、私はこの艦の副総督なのよ」


「それが?」


「いや、そのだからそれだけは勘弁して〜!」


「嫌♪ポチとな」


「ギャ、ギャアアアアアアアアア」


「じっくり反省してね、二度と叛乱なんか起こそうなんて思わないように(ニッコリ)」




活動を停止していたチューリップが突然起動し、戦艦を二隻飲み込み

ナデシコに襲い掛かって来たが、テンカワとナデシコの活躍によってそのチューリップは破壊された。

そして今ナデシコは火星に向かう為、地球脱出を実行しようとしていた。


「しかしどうやって、バリア衛星を突破するんだ?」


カップに淹れたコーヒーを春海に渡しながら聞く。


「ありがとう。そうね…やっぱ強行突破かな、ナデシコのスペックなら簡単だし」


「へ〜、それはまた強引だな」


「他に手はある?ミスマル提督の命令に逆らった時からこうするしか道はないの」


「そんなもんかね」


宇宙軍の基地にハッキングを仕掛けるとか、違う手もあると思うが。

まっ、ただのコックが心配することじゃないか。


「そうなの…ねえさっきサフィーちゃんから聞いたんだけど、ホットケーキ作ったって本当?」


「まあ…な」


「ふ〜ん。一年前なら絶対作らなかったのに…少しは吹っ切れたの?」


「吹っ切れたどうかは分からないが、いつまでも絶望していても仕方がないと思っただけだ」


そう絶望していた所で何も変わらない。

だから俺は歩む。それがどんなに険しい道であろうとも。


「…今はそれで十分だよ」


眼鏡を取り、俺に向けて笑みを浮かべる。

姉としての笑みを。


「春海…」


「さて、幸助が淹れたコーヒーも飲んだ事だしそろそろ仕事場に戻りますか」


「…仕事頑張れよ」


「もち、命を賭けて戦うパイロット達の為に整備を怠る気はありません」


「フッ、そうだな」


「幸助、次来た時は私にもホットケーキ作ってよ」


「ああ、エリスの奴に比べて味は劣るが、作るよ」


「楽しみにしてるからね」


そういい残して春海は食堂を去っていった。


「楽しみか…」


今、思えば一年前の俺はどうにかしていた。

火星が蜥蜴の無人兵器に襲われ、エリス達が行方不明になったと聞いて気が動転していて

自分のことしか考えていなかった。

春海や梢、そしてサフィーちゃん、みんなもショックを受けていたはずだ。

特に春海は恋人が火星にいてエリス達と同じく行方不明だ。

もしかしたら生きていないかもしれない。今この時死と直面しているかもしれない。

だが春海はあいつを信じて自分の道を歩いている。梢やサフィーちゃんにしてもそうだ。

それに比べて俺は…まだ躊躇っている。

あれに乗ることを。


「…期待されているんだ。そろそろ俺も答えを出すか」


出番が来ればあれに乗ろう。


あの深緑のエステバリスに




そして戦おう。


百年前の亡霊達と。













それが親父から俺に与えられた使命なのだから。




後書き


燃え尽きました。

書き直すこと二回、ミスって消す事一回、妹が間違って消す事一回。

ようやくできました。

感無量です。

これからも日々精進して行きたいです。はい。


さて、次回、遺跡の被害者達 第三話 深緑のエステバリス

なるべくはやく投稿できるようにがんばりたいと思っています(テストも終わったことだし)

ではでは。

 

 

代理人の感想

……で、「焦げたホットケーキ」って一体なんなのよ?(爆)

 

 

 

それはそれとして。

 

>「咄嗟に耳をふさいだので、被害に少ないルリちゃん」

>「戦おう、百年前に亡霊たちと」

 

などなど、てにをはがゴーカイに間違っている所があちこちに見うけられました。

投稿作品は「他人に見せる」物である事を踏まえて、

こういった最低限の誤字脱字は投稿前にきっちりチェックして置いて頂きたいところです。