ナデナロク
第３話＜運命と、出会い、再び＞
―――１―――
湿地地帯で戦う一人の男。
１０体の下級の魔物、リザードマンに囲まれながら、がむしゃらに剣を振るっている。
いつもなら、リザードマンの２０体や、１００体は軽いのだが、
悪魔に変身した後のアキトの体の動きは鈍い。
剣だけでなく、銃も使いながら攻撃するアキトには余裕の表情がない。
６発の銃弾を撃ち尽くし、残り２匹となる。
しかし、それが油断を招いた。
リザードマンの口から水が飛び出てくる。
リザードマンの気管で水を高圧縮し、それを放つ技だ。
アキトの足を貫き、動きが鈍った所で、後ろから迫るリザードマンが爪をなびかせる。
アキトは、銃でそれを受け止め反対の剣で、リザードマンのどうを断ち切る。
最後の一匹は近づかず、もう一度水を噴出そうとするが、喉から水がこぼれる。
そこには、一本の剣。そう、アキトが投げた剣が、リザードマンの喉へと突き刺さり、
水を圧縮出来ずに絶命する。
そして、アキトは力尽きたように倒れた。
ここで、自己紹介しよう。
私は、リザードマンの喉に突き刺さっている剣であり、
腐れ縁でそこで倒れている男の相棒をやっているサレナである。
最近、扱いが雑なのは気のせいか？
―――２―――
アキトは、現在南の王都、エクバードにいる。
ここでは蒸気機関による工業が発達し、車が行きかう。
しかし、車は一部の貴族や大富豪にしか手に入らない、非常に高価な物である。
この都市にはそんな貴族や大富豪を狙う悪党と、それを守る傭兵が多い。
また、少し北上した所には湿地があり、そこには大量のリザードマンがひしめく。
残りの旅費が少ないアキトは、ここで食い扶持を繋ぐために、稼ぎを考えていた。
そんな中請け負ったのが、リザードマンの駆逐。
リザードマン達は、商人の馬車を襲い、産業を緩慢にさせる。
農業都市ならば、それで自足自給を出来るが、工業都市であるエクバードには
産業の緩慢は、看過できない重大な問題であった。
また、エクバードの傭兵ギルドが調べ上げた、この付近にいるリザードマンの数は、
１００体を優に超え、本来なら数人で行うところを、アキトは稼ぎが減るの一点張りで、一人で行っている。
いつものアキトなら、心配ないが、悪魔化の影響が残る今となっては、心配の種である。
しかし、しっかり全部倒してから、倒れるのだから、生存本能は凄いものがある。
まぁ、いざとなったら、私が助けるので良しとするか。
リザードマンをしっかりと駆逐してきたアキトは、ギルドへと戻る。
本来なら、S級の給料として、破格の賃金が支払われるはずなのだが、
現在はフリーの傭兵なので、その費用は驚くべきほど安い。
それは、ギルドが傭兵のフリー化を嫌っての事だった。
しかし、アキトはそんな事も気にせず、ようは数をこなすだけだと、ギルドへ戻る事を頑なに拒んでいる。
一体何がそうさせたのであろう？ギルドを止めたのは、私と出会う前なので詳しい事は判らない。
まぁ、過去を話したがらない男だ。細かい事は気にしないでおこう。
夕日が傾き、宿へと戻り、剣を立てかける。と、同時にベッドへと倒れこむ。
アキトは余程疲れていたのであろう、シャワーをも浴びずに真っ先にベッドへ行く事が証明している。
数秒後、アキトは呻く。
何事か？と私は意識をアキトへ向けると、アキトの胸には冷たい鋼の切っ先が当てられていた。
「いきなり夜這いに来たのかい？凍える血の女の、ユリカ。」
そう、そこには獣並の感覚を持つアキトにさえ気付かせない動きで、扉から進入してきた、美女。
ユリカと呼ばれた女性が立っていた。
ユリカは、細身のナイフをアキトの胸へと少し食い込ませる。
そこから、赤い滴がこぼれるが、アキトは何も言わない。
「笑えない冗談ね。このまま心臓を貫いて上げましょうか？」
ほほえんだ、いや、凍れるほど冷たい微笑だ。月の光に溶け込み、妖艶な表情を露にする。
「冗談は置いておいて、何をしに来たんだ？
俺を殺すためか？」
ユリカと、アキトにはお互い冷たい感覚がある。
それも、私と出会う前に何か一事件があったせいだと、アキトから聞かされた。
「それも・・・良いかもね。でも、今回は止めてあげる。
その代わり、正式な依頼を持ってきたわ。資金不足なんでしょ？」
「お前の依頼は、どれも最悪な物ばっかりだからな・・・
出来れば断りたいが・・・、断ったら胸の切っ先が、突き抜けるんだろ？」
アキトは感情も込めずに言い放つ。
しかし、それよりも更に無感情な表情のユリカは、ただ言葉をつむぐだけだった。
「報酬はちゃんと支払うわ。依頼は、私の妹ルリの奪還よ。
今回の仕事は私一人でも出来るけど、ちょっと大変なのよ。」
ユリカは枕元へと、大量の金貨の詰まった袋を置く。
ユリカは超一流の暗殺者であり、依頼の遂行率もダントツだ。
これくらいの金額を持っていても不思議ではない。
「依頼の内容は簡単よ。ただ、暴れるだけ。
貴方の十八番でしょ？」
確かにこの男にはこれ以上ないと言うほどの、ピッタリな役目だ。
それでもアキトはまだ黙している。ただ、眼の奥の双眸だけは、ギンギンに黒光っている。
「進入するのは、明後日の深夜。そうね・・・、３時くらい。」
深夜の警備はもっとも頑丈だ。３時と言うのは、交代の朝方にかけて、まだ暗く、しかも、一番集中力の落ちる時間である。
「それで、一番肝心な、場所は・・・、この国の城よ。」
「はっ？」
今まで沈黙してきたアキトも、流石にこの言葉を聞いて、変な声を上げる。
「俺に、お尋ね者になれと？」
「ふふふっ。」
返ってきた答えは、微笑だった。
「そうなると面白いのだけど、この国の王にはしっかりと言っておくから大丈夫よ。」
「どういう事なんだ？」
切っ先は胸元から、瞬時に首へと伸び、首の薄皮一枚を裂く。
「貴方は事情なんて知らなくて良いの。ただ、黙って踊らされていれば。」
憮然とした表情のまま、アキトは黙ってしまった。
凍える血の女のユリカは、もし喋っていたら、何の感情もなくただ、アキトの喉を裂く。
それを想像することは容易だった。
ユリカは、音もなく飛び起きると、２階の窓から飛び降りる。
「じゃぁ、よろしくね。失敗したら・・・貴方の命はないわよ。」
ただ一言を残して・・・。
―――３―――
アキトは、昼間になってもまだ寝ている。
朝食を食べた後、また更に寝ているのだ。
それも、昨日依頼してきたユリカの仕事の為だ。
深夜活動するために、今のうち少しでも寝て、
体力の温存と、体調の回復を果たさねばならなかったからだ。
しかし、突然アキトは飛び起きる。
そして、剣の柄、私を掴むと、目の前の扉へと張り付く。
一呼吸置いた後、アキトは扉を蹴破り、横へ一閃。
返す刃で、更に一閃を加える。
反応は、鈍い音と、甲高い音だった。
目の前に居たのは、黒ずくめの男。二人組み。
近距離専用の一人は首を断ち切られ、倒れていて、
もう一人は、遠距離専用のクナイを持った黒ずくめだ。
私の相棒も、相手に劣らずの黒ぶりなのだが、こちらの男は、黒装束の、アサッシンと呼ばれる者達だ。
「この装束は・・・伊賀の者か。」
姿の見えぬ者からの言葉に、アサッシンは動揺する気配が見られるが、姿を現さないと見ると喋りだす。
「この件から手を引け。さもなくば命はない。」
辺りの気配を探りながら話すアサッシン。アキトは困り果てたように言う。
「うーん。やらなきゃ死ぬし、やっても死ぬってのは理不尽じゃないのか？」
確かにそうだろう。しかし、それが出来る奴と出来ない奴の区別はしっかりついているようで、
「んまぁ、お前等が相手じゃ、死ぬ事はないから、大人しくお前が死ね。」
アサッシンは、アキトの返事を聞き、一歩踏み出すアキトに向かってクナイを投げ、素早く立ち去る。
「追わなくて良いのか？」
私がそう聞くと、相棒は、
「ん？まぁ、外の番犬が何とかしてくれるだろうよ。」
返って来た答えは、外から聞こえるアサッシンの絶叫だった。
「とんだ、番犬だな。」
私は苦笑した声で答える。
「あぁ、全くだ。でも、折角起きたんだし、昼飯でも食ってから寝るか。」
と、言うと、下の階へと降りていく。
アキトは、夕暮れと共に起き、夜飯を食べて、筋トレを始めていた。
今のうち体をほぐしておくようだ。
いつもなら絶対しないであろうが、今回の失敗すると、今後の運命が、死へと繋がる。
見えて立ち向かってくる相手や、気配が感じられる相手には、アキトは不敗だ。
しかし、ユリカのようなアキトでさえも気配を感じさせずに、接近する者を相手にする事は非常に恐ろしい。
常に全身全霊の気を、辺りに配らねばならないからだ。もちろん、そんな事は無理だと思うが・・・。
夜も大分更けてきた・・・。そろそろ結構する時が近い。
アキトは、２階から降りてきて、１階の酒場できつめの酒を飲み干す。
これがいつも重要な仕事の前の、決め事であった。
まぁ、いつでも、強い酒を飲んでいるのだが・・・。
「さぁ、行こうか。」
アキトは一人つぶやくと、酒場を後にする。
辺りの民家の殆どは光が灯っておらず、街路を照らす街灯が、不気味な輝きを残す。
すると、相棒は突然走り出した。遅刻しそうな為・・・ではない。
アキトも、闇夜に紛れて移動する者の気配を捉えた為だ。
街灯の光に沿って、黒い影が動いているのが良く判る。
どうやら、この暗殺者達も３流のようだ。
アキトは、細い街路路に入り、両脇の建物を蹴って、屋上へと上がる。
「準備運動にぴったりだな。」
そう一言残し、一番近くに居た二人組みへと斬りかかる。
アキトは、飛び交うクナイを避け、避けきれないものは剣で叩き落す。
体調が万全なアキトなら、全て避けきったはずだ。
どうやらまだ本調子ではないらしい。私の見た目では・・・７割と言ったところか。
しかし、それでもこの男を相手にするには、アサッシンの技量は少なすぎた。
アサッシンの一人に切りかかり、心臓を一突き、その返す柄で後ろの男の喉へと突き刺さる。
柄は、喉を貫通し、貫いたと言うよりは、粉砕したに近い。
全く非常識な男だ。
私のセンサーには、残り８人の暗殺者がこの場を立ち去り、城の方へ向かう気配を掴む。
「アキト、あいつらは・・・」
「あぁ、判っている。」
相変わらず人の話を聞かない男だ。
すぐさま３階建ての屋上から飛び降り、ユリカ程ではないが、少量の音を残し着地し、
城へ向かって駆け出す。
城は、静けさを保っていた。
特に何か起きたと言う気配はない。
アキトは堂々と、城の門番の方へ近づき、顔が照らされる直前、風となる。
わけも判らぬうちに、二人の門番の首に手刀を叩き込む。
「進入成功。」
流石に、何も知らない善良な兵士を殺すつもりはないようだ。
「馬鹿が・・・、普通裏口から進入するぞ？」
「ん？思う存分暴れていいんだろ？」
やっぱり、私は選ぶべき相棒を間違えてしまったのであろうか。
門を抜けると、兵舎小屋があった。
そこへ銃弾を一発放り込む。
すると、慌てて兵士達が飛び出てくる。
もう、勝手にしてくれ・・・。
バラックだけではなく、城の中からも兵士が駆けつけ、中には黒装束、アサッシンの姿もあった。
「やっと本業さんのお出ましか。」
アキトは、壮絶なる笑みを浮かべる。
戦闘は一方的であった。
迫り来る兵士を相手の間合いに入れないうちに叩き伏せる。
その中で、暗闇に飛来する、クナイだけでなく、銃弾すらも打ち払っているのは驚愕に値する。
風を相手にする兵士達は、恐れて近づきすらしない。
そして、アキトは暗闇の中、命を狙っているアサッシンの数だけが、減少している事に気付く。
一通り片付いたと思うと、アサッシン達を屠った正体が飛び降りてくる。
ユリカの相棒のジュンだ。
体長は２ｍを超え、普通の狼の２倍はありそうな巨躯だ。
伝説の狼と称されている。
その巨躯から見れば、その膂力も想像出来ぬほど強力であろう。
「アサッシンが紛れ込んでいるとは済まない。
気付いていたとは思うが、そちらは僕が倒した。」
「ジュン、気にするな。どーせ大した事ない連中だ。」
フェンリルの種族は、知能の発達と共ない言葉を喋る事が出来る。
「それより、少々困った事になった。ルリのいる部屋に凄腕の傭兵がいるんだ。
ここは私が引き受けるので、あの塔へ、助けに行って欲しい。
本来なら僕が行くべきなのだが・・・、この体ではあの狭い場所の戦闘は・・・。」
「気にするな。俺とお前の仲だろ？」
アキトは笑いかけると、ジュンは苦笑いを浮かべた表情をする。
そして、けたたましい咆哮を上げる。
兵士が慄いた瞬間を狙い、黒き風はその塔へ向けて走り出す。
兵士達は、巨躯の狼に睨まれて、動けないでいた。
誰もついてこない事を感じ取り、塔へと侵入する。
殆どが中庭に集結していたのであろう、塔の警備は薄かった。
中には少量の兵士がいるが、どれも一撃で気絶させる。
一人たりとも殺したりはしない。そうすれば、いくら話をつけようが、お尋ね者になってしまう。
アキトは屋上まですぐさま上りあがると、体の所々に血が吹き出ているユリカを見る。
一応、全ての急所は外しているが、圧倒的不利に変わりはない。
そして、そのユリカの相手とは・・・。
「よう、アキト。久しぶりだな。」
軽い会話とは正反対に、暗く語りかけてくる。
「アキト、知り合いか？」
私が小声でつぶやくと、アキトはそれに答えず、
「ガイ。どうしてこんな所に・・・。」
哀しみ・・・悲しみ・・・否、そのどちらとも取れぬ表情をアキトは浮かべていた。
私は些か困惑し、この二人が良い分かれ方をしていない事を悟る。
「単なる仕事だ。気にするなよ。」
男はアキトの表情もさして気にした様子がなく返答する。
ユリカは黙って成り行き・・・否、隙をうかがっているようだ。
二人は暫く硬直し、アキトは何かを吹っ切るようにつぶやく。
「そこを・・・どいてくれないか？」
搾り出すようなアキトの声。
しかし返って来た返答は、陰険な物だった。
「そいつぁ、出来ない相談だ、アキト。
俺はさっさと仕事を終わらせて、熱いシャワー浴びたいんだ。
さっさとケリつけようぜ？」
一歩進む。そして、アキトは一歩後退する。
いつものアキトのような覇気がない。
アキトは外の敵には強いが、内の敵には弱い。
昔の知り合いを斬りつけられるような奴ではないのだ。
「ガイ急用だ。お前は直ぐ本社へ戻れ。一刻を争う。」
声は後ろからかけられた。
「ここは俺が相手をする。」
「チッ、シンジョウか。
わかった、わかった。んじゃ、後頼む。」
ガイはそういうと、アキトの脇を抜けて階段を下りていく。
それと同時にユリカはすかさずマナの部屋へと入ろうとするが、扉は開かない。
「その扉は我がクリムゾン社の特別製でね。ちょっとやそっとじゃ、開かないよ。」
そういうと、懐から鍵をだす。力ずくで取れということらしい。
ユリカは無感情にその鍵を見詰める。
「ようはお前をぶったおす。それだけだ。」
さっきとは違い、元気を取り戻すが如く、突き進む。
シンジョウは、右手を上げる。その先端には丸い穴が開いていた。
銃弾の回避なら余裕で出来ると思い、アキトは構わずに突っ込む。
刹那、目の前を炎が覆う。
どうやら、火炎放射型のようだ。
しかし、炎はアキトの目の前で何かの壁がある如く、止まる。
私がプログラム赤を起動させ、火炎防御のシールドを張ったのだ。
無事なアキトを見て動揺するシンジョウ。
「ちっ、サレナ。お前は、余計な事はするな。
何とかできた。」
アキトは私の力を使うことを犬猿する。
しかし、命を救った今回くらいは、お礼くらい言っても罰は当たるまい・・・。
「すまない。邪魔が入ったな。」
アキトがそういうと、何か納得したように頷く。
「ラグナロク・・・」
今度、驚愕したのは私のほうだった。
何故この男がラグナロクの存在を知っている・・・。
それに良く見れば、シンジョウが手にしている武器。
それはイグリーズの遺産のブレイズだ。その先端からは、数千度の温度が飛び出るといわれている。
「何故お前がそれを！」
私は、怒鳴り声を上げていた。
「ほぉ、喋る剣か・・・面白いな。」
「それより何故、それを持っているのか答えろ！
そして、どうやって起動した！！」
「喋る剣ってのは五月蝿いだけで、面白くも何ともないぞ？」
「アキトは黙っていろ！」
アキトは憮然とした表情を浮かべる。
「まぁ、教えちゃくれなそうだ。聞くだけ無駄ってやつだ。」
そういうと、またも突き進む。
そして、炎が目の前に迫りると同時に強く足元を蹴りつける。
飛び上がり、天井を切り取り上の階へと着地し、シンジョウの後ろ辺りへと行き、床を鋭く蹴る。
床が陥没し、破片と共に、アキトは飛び一閃する。
それは、ブレイズの先端に触れ激しい共振が起こる。
イグリスの遺産も、ラグナロクと同じ物質で出来ていて、斬る事は出来ない。
しかし、その衝撃をまともに受け、後ずさる所に更に一閃。
今度は受ける事が出来ずに、ブレイズとは反対の肩口を切り裂かれる。
鋭く舌打ちしつつもブレイズをアキトの顔へと覆う。
アキトはしまったと言う顔をするが、一向に炎は襲ってはこない。
硬直していると、いつの間にやらユリカがシンジョウの後ろへと接近し、頭を突き刺していたからだ。
古代文明の武器は、人の精神と共鳴させ動作する。
人の脳波が途絶えると同時に、その武器も動作しなくなるのだ。
「礼は言わないぜ。」
アキトは少し憮然とした表情で言う。
「そう。」
ユリカの返答は余りにも呆気ない。
シンジョウの懐から鍵を取り出し、よろけながら部屋へと向かう。
そして、何時からいたのかジュンが後ろにいた。
「命を助けられたな。」
と言い笑う。
「あれは余裕で避けれたね。」
子供の反論じゃあるまいし・・・。
そう言うとジュンはユリカの方へ行き、ユリカが抱擁していたルリを背中に乗せる。
そして二人を乗せると、
「世話になったな。」
と一言残し去っていった。
―――４―――
辺りには、赤い垂れ幕、豪勢な装飾品、赤い絨毯・・・
そして、大勢の兵士と重鎮そして、女王が座っていた。
アキトは責め続けられていた。
「で、お前は何で暴れていたんだ？」
女王の双眸が鋭く突き刺さる。
アキトは、小さくなり、下を向く。
「あ、あの、・・・ユリカの妹を助けるため・・・。」
「そんな娘、知らないな。夢でも見てたんじゃないのか？」
意地悪い表情を浮かべる女王。
下を向いて動揺している、アキトは全く気付かない。
「この始末どう付ける気だ？」
「そ、それは・・・。」
「よし、私の娘の婿になる事で許してやろう。
お前程の器の男はそうとはいないからな。」
女王は、アキトの知り合いで、女王に気に入られていた。
そして、何とか舞踏会や城への招待を受けていたのだが、頑なに拒んでいた。
この男は、女難続きで、女運が全くないのだ。
トリス・ユリカ・女王等が３大災難とされている。
「そ、それは勘弁を・・・、せめて舞踏会への参加で・・・。」
この男はこの一言が、自爆への一歩と言う事が知らない・・・。
「よし、取引は成立だ。
では、これらの事件は、突然の訓練としておくので気にするな。
反論や、五月蝿い奴がいたら・・・」
ニヤリと笑う女王・・・どうなるかは誰も聞くことがなかった。
ようやく開放され、城の外へと出たアキトだったが、女王の笑みを思い出し、身震いをさせて宿へと戻る。
あの女王、下手な魔王よりも強いのではないだろうか・・・。
〜あとがき〜
次回は、本編じゃなくてベトレイヤーでも書こうかな。
アキトとガイの関係はいかに！
（小説とほぼ同じ内容になる為に、ベトレイヤー等のEXはこちらでは公開しません。
私のHPにUPし、小説を持っている方のみが判る暗号にしたいと思います。
（私の感想みたいな少ないフレーズが付くだけです。）
暗号はベトレイヤーの一番最後のページ数の番号。
まぁ、あとがきの一番最後のページの数字です。それを、
http://members.jcom.home.ne.jp/syuu3/○○○/
この○○○に入れて訪れてください。