二人の鼓動

第一話






(オギャァ、オギャァ)


「お子さんも、奥さんも元気ですよ。」


(オギャァ、オギャァ)


「いやぁー、男の子か・・・はははっ!」


父親と思われる男が、母親から赤ん坊を受け取る。


「あなた、名前はあの通りで、いいわね?」


(オギャァ、オギャァ)


「当然だ、この名の通りに育ってくれそうじゃないか!」


(オギャァ、オギャァ)


父親は、赤ん坊を片手で抱え、懐から何かが書いてある紙を取り出した。


(オギャァ、オギャァ)


「おおー、よしよし。これはお前の名前だぞ〜?わかるか〜?」


(オギャァ、オギャァ)

その紙には「明人」と書かれていた。





明るい人・・・そういう人間に育って欲しい。

両親はそれを願った。

途中までは、その通りに育ったかもしれない。

そのままであれば、二人の願いは聞き入れられた、と言える筈であった。

だが、その二人の早すぎる死───────

そこから彼の人生は、少しずつ、少しずつ、狂い始めたのだった。






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真空、暗黒。

宇宙空間。


見る人が見れば、地獄と言いそうな場所。

辺りには、多数の小惑星が鏤められている。

生命の存在など微塵も感じる事が出来ない世界。

そこは、唯々静寂を生み出していた。





しかし、その静寂は突如として破られた。






グォォォォォン・・・


                         バチ・・チヂチヂチヂ・・・・



                   ヂ
                         ヂ
                              ヂ
                                 ヂ
                                  
                                   ヂヂヂ
                                   
                                    ヂヂヂヂヂヂヂヂ!!


         ドォォォォォォォン!!!!





小惑星のみが遊んでいた空間に、突如、人工的な物体が乱入してきた。


どこか昆虫を思わせ、黄色く、所々に穴が開いている機械。

青く塗られ、とてつもなく大きな横穴を穿たれた戦艦。

そして───────


その物体群の中心辺りに、漆黒の人影が佇んでいた。

電流が流れ、いたるところに傷が見られた。




しばらくすると、その人影から炎が噴出し、その場に百合を思わせる火花を咲かせた。






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(・・・)

(・・・)


黒い、黒い、黒い場所。

彼は一人で立っていた。


(・・・ユリカ?)

(・・・ルリちゃん?)

(ラピス?)


彼の前に現れた、無表情の三人。

彼女らは、彼を見つめ、しばらくすると、背中を向け歩いていってしまう。


(みんな、どこに行くんだ?)


誰も振り返らず、距離は離れていく。


(待ってくれよ、俺も・・・

    ・・・!?)


追いかけようとしたが、足が地面に張り付いて離れない。


─────違った。


何かが足をがっしりと捉えているのだった。


少しずつ、暗闇の中から姿を現してくる。


黒い泥の中から、少しずつ、数え切れない手が。


その全てが、腐っているか、完全な骨となっていた。


自分に群がってくる。


アキトは、目を見開いた。


「あ、あ、ああっ、ああああああああ!!!!!!」






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「・・・!」


目を覚ますアキト。


自責の念が生み出す悪夢。

今までこの夢を何度見てきたことか・・・


―――――― 仕方がない。これは報いであり、自分を戒める楔なんだ ――――――


フッ・・・と、自嘲気味の笑いを漏らす。


(さて、と・・・)


一通りの思考を終え、頭を落ち着かせる。


(先ずは状況確認だ、な。)


薄暗い。窓から差し込む月明かりの微かな光を頼りに周りを見渡す。

自らの上に乗っている白いもの。どうやら布団のようだ。

カーテンが自分の眠っていた空間を覆っている。

独特な匂い。

患者用の服を着ている自分。




どうやら、自分は病院の中にいるらしい。



(・・・・・・・・・へ?)


バッ、と飛び起きるアキト。


身元確認のために、眠っている間に遺伝子調査をされた可能性は十分にある。

公表されてないとはいえ、自分はコロニー襲撃犯である。

そんな自分が病院にいる――――――


連合軍に連絡され捕らえられるかもしれない、いや、すでに捕らえられている!?

もう一度、辺りを警戒する。しかし――――――そんな様子はない。


(ならば・・・)





数分後、その病院にけたたましい警報音が鳴り響いた。









アキトは、病院から少し離れた通りを歩いていた。

幸い、マント、バイザーは部屋の中においてあり、すぐに脱出することができた。


(さて、これからどうするか・・・)


・・・・・・・・・・・


白み始めた空の下、まだ静かな通りを一人で歩き続けるアキト。



(まず、ここが何処なのか、だな。)



―――記憶が確かであれば、俺は月面上で戦闘中だったはずだ・・・

しかし、ここはどうみても地球だ。

ボソンジャンプ?いや・・・そんなことをした覚えはない。

確か・・・―――



―――思い出せない。


(戦闘中にエリナから、逃げろ、と言われた・・・そこまでは覚えている・・・。その後、何が起きた?)


歩き続ける。


・・・・・・・・・


しかし、いつまで経っても結論は出なかった。


(仕方ない、一度ネルガルに戻るか・・・)


周囲に誰もいないことを確認し、裏路地に入っていった。


(・・・ジャンプ)


眩い光を発し、その場からアキトは消えた。





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「これがND-001、通称『ナデシコ』です。」


機嫌のいいプロスペクターが軍服を着た金髪の美女に話す。


「へぇ・・・従来の形とは全然違うのね。」


女性はそう言い、自分の後ろにいる男に聞く。


「ね、ウォンはどう思う?」


辺りに緊迫感を漂わせる、ウォンと呼ばれた男はナデシコを見上げたまま、何の反応も示さなかった。


「ははは、気に入っていただけましたか。」


ナデシコに見入っていると解釈したのか、プロスペクターはさも嬉しそうに笑い、女性のほうに向き直る。


「相転移エンジン、格納庫の大きさなどを考えますと、この形にならざるを得なかったんですよ。」


「ん?別に悪いとは言ってないわよ?綺麗で、名前もいいじゃない。気に入ったわ」


「そーですか!!いやはや、軍の二大エース、グレイスさん、ウォンさんに気に入ってもらえるとは正に光栄の至りです。」


「ははは」


グレイスと呼ばれた女性は、愛想笑いで返し、もう一度ナデシコを見上げた。


「……に似てる」


「?何かおっしゃいましたか?」


ハッハッハ、と笑いながら聞くプロス。


「へ?私何か言いました?」


「?いえ、私の空耳ですね。では、どうぞご自由にご見学ください。一時間ほどしたら迎えをよこしますので」


深々とおじぎをし、その場を去っていく。


その背中をしばらく見ていたグレイスは、真面目な顔になり、ウォンに話しかける。


「何か覚えてるの?」


ウォンは顔をグレイスに向ける。


「そう・・・」


二人して、ナデシコを見る。


「・・・覚えてるのは・・・『アキト』でしょ?何かわかるかな?」


グレイスの顔を見るだけのウォン。


「そうよね。わかるわよね・・・」


しばらく、何の音もしない時間が流れる。


「神様は・・・『負の遺産』である私を・・・こんな所に連れてきて、どうするつもりなのかな?」




ネルガルの迎えが来るまでの約一時間、その場は沈黙に包まれていた。






















作者のあとがき


第一話、いかがだったでしょうか。

プロローグは、まぁ意図的といえば意図的に短くしたんですが、やっぱりちょっと短すぎでしょうか・・・

これも、ちょっとまだ短いかな?まあ、本編に入ってるわけじゃないし・・・(オイ)


ブラックサレナ、爆発しちゃいました。

いやあ、あまりにも強い兵器が味方、というか主人公機になっちゃうと、やっぱり敵にも強い兵器出さなきゃいけない。

そーすると、夜天光を出すことになってしまう。

あんまり出したくないんです。

あまりにも急激な(技術面での)成長って現実味を帯びてないような気がしまして。


だからといって、原作通りの兵器しか出さないと言ったらそれは違います。

オリジナルになると思いますが、二、三機は出すつもりでいます。

あくまでも、その時間軸での限界の機体、といった所になると思いますが。



あと、自分で書いといてなんですが、「百合を思わせる火花」ってどんな火花でしょうね。(笑)

 

代理人の感想

・・・・・・短い。その上ツッコミどころ多数。

前回公文書偽造までしてナデシコに乗り込んだのに「神様が連れてきた」発言、

バイザーも感覚リンクもないのに普通に行動できてしかもそれを疑問に思わないアキト、

軍や警察のそれでもなさそうなのに患者が逃げ出しただけで警報が鳴る病院(怪しすぎる!)。

 

とにかく読者に対する説明が不十分です。

作者の頭の中だけで完結しないで、読者に必要な情報を与えることに留意して書く必要があります。