「相転移反応、再び検知しました!
…反応、方位、距離、前回と変わらず。対象・イの反応と判断します!」

半球状の表示画面を持つ三次元電測機を操作しつつ、声を上げた電測手に白い詰襟を着た長髪の男性が答える。

「ふん、再び動き出したか。なにをしているのやら…
対象の最大出力、及び移動しているのかどうか、推測できるか?」

艦橋の中で高級士官たる証しの白い詰襟を着た男はその一人だけであり、その彼が不機嫌そうな声で電測手に問いかける。

「反応から推測するに、出力を抑えての試運転でしょう。反応は薄いのに、妙に『重い』ですから。
おそらく、最大出力は当艦<ゆめみづき>を越えますね。
目標は微動だにしていませんから、相変わらず月面都市地下の整備工場に居座っているようです。
心配ですか?副長。」

電測手の言葉に頷く白い詰襟の男。

「地球人を過小評価する訳にはいかん。
現に俺は一対多数の戦闘で、とはいえ地球人に敗れたのだ。
対象・イが当艦よりも高出力なのならば、警戒して過ぎる事は無い。」

白い詰襟の男、月臣 元一朗は自身の顔を屈辱で歪ませながら答えた。

月臣が乗艦している艦の名は<ゆめみづき>。

木連の誇る主力有人艦であり、無二の親友、白鳥 九十九の艦であり、月臣はその副長である。

地球で死を覚悟し、相転移炉の暴走による自爆を決行しようとしたが、
今まで見た事の無い次元跳躍に巻き込まれると、次の瞬間、何故か<ゆめみづき>の格納庫に立っていたのであった。

その時の格納庫に居た者の証言を聞くに確かに次元跳躍時に発生する特殊な光を見たらしい。

首を軽く振り、胸の内に巣食った敗北感を振り払うと月臣は、別の乗組員に声をかけた。

「砲雷長、いけるか?」

月臣の短すぎる言葉に、まだ若い<ゆめみづき>の兵装管理者である砲雷長が頷いた。

「砲撃諸元値は十分です。無限砲の破壊力ならお釣りが来ますね。
都市ごと粉砕できますよ。」

「ふ、宜しい。
…艦長不在であるが、千載一遇の機会を逃す訳にもいかん。
これより地球軍相転移炉艦、破壊作戦を開始する!!
無限砲展開よーい!錨を下ろせっ!!」


月臣が艦橋の真ん中で右手を振り、声を上げると<ゆめみづき>は即座に戦闘態勢に移行した。

艦橋の灯りが消え、赤い非常灯に切り替わる。

「<ゆめみづき>戦闘態勢に移行。」

「無限砲、展開準備。…掘削機構開放。」

「錨を打ち込みます。……打ち込み成功!艦は月面に固定されましたっ!!」

「こちら無限砲弾加工班。質量弾成形準備完了。これより、質量弾の作成を開始する。」

月面のスレスレに浮かんでいた<ゆめみづき>は艦の四方からワイヤーアンカーを打ち込み、巨大な砲身を伸ばす。
と同時に艦下部にある巨大なユニットが分離、月面に着陸すると四方に杭を打ち込み自身を固定。
掘削作業の準備に取り掛かる。

この分離された掘削ユニットで月面の岩盤をくり貫き、
取り出した円柱状の岩を砲弾状に成形し、
平均的な岩石に導電性など皆無な為に成形した砲弾を導電物質で包みこんで、
ユニットと母船で繋がった揚陸リフトで砲弾を母船に送り、
無限砲と言う名のレールガンで打ち出す訳だ。

次々に作業が進んでいくのを見ていた月臣はクルリと後ろを向いて、艦橋の出入り口に向かう。

と、取り立てて仕事の無い通信士が月臣に問いかける。

「おや、副長。どちらへ?」

「なに、砲撃には観測手が必要だろ?
ダイマジンがあったはずだ。俺が出る。」

ニッと笑った月臣がそのまま、艦橋から姿を消した。

艦橋から出た月臣の表情は怒りに染まっていた。

「見ていろ地球人共。屈辱は百倍にして返してやる。
この月臣 元一朗に泥を付けた事、地獄で後悔するがいい!」


 

 

機動戦艦 ナデシコ OUT・SIDE

機械仕掛けの妖精

第二十一話 「ボク達の戦争」が加速する

 

 

月の裏側、巨大なアポロ・クレーターの中にあるクレーターの一つ。

ドライデン・クレーターの内外一面に広がる雑多な構造物。

ネルガルの月面拠点、ドライデン・シティはクレータを掘り抜いた底を覆い尽くす様々な宙港関連施設、その更に地下に建設されたドックと工場、くり貫かれたクレーターの壁面に点在する居住区から成り立っている。

緊急時には重厚な装甲シャッターがクレーターを覆い、ディストーション・フィールドを展開し、シティを守る。

その装甲シャッター直下の壁面に大気を通さないが故に強力な太陽光から防御する、特殊な偏光ガラスを用いた空中公園が存在した。

『昼』は太陽光をシャットダウンし白い壁面を映す偏光ガラスも『夜』の間は360度の展望を約束される。

この公園は、満天の星空の絶景故に「天の川公園」と呼ばれている。

まばらな人影の中に歳の離れた兄妹のような二人組が居た。

「おお!?すっご〜い!地球が月みたいに欠けて見える!」

偏光ガラス手前の柵に掴まり、足をブラブラさせている少女。

「こういう場合、三日月ならぬ三日地球というのかな?」

その隣で柵にもたれ掛かりながら宇宙の芸術を眺める青年。

「風情が無いね、テンカワ。」

「悪かったな、アリスちゃん。どうせ、俺に高尚な感性なんか無いさ…。」

月の位置の関係で蒼い三日月のような地球を眺めつつ、アリスとアキトの二人組が言葉を掛け合う。

「それはそれとして、いつまで戦争を続けるんだ。
君が戦わなくとも優秀なパイロットは沢山居るじゃないか。
現に101中隊の皆はとても強いだろう?」

「……テンカワ、ボクはテンカワとは違う。」

「何を言ってるんだ!俺もアリスちゃんも同じ人間じゃないか!」

「違うよ。テンカワは自分の意思で道を決められる。
でもボクには、この道しかない。
…ボクは捨てられたくない。」

地球を見たまま、祈るような声色で言葉を発するアリス。

戦う術のみを教えられ、玩具の代わりに兵器を持たせられた少女。
それだけがアリスの全てではないが、戦う事でのみ自身の存在価値を示せると認識してしまってもおかしくは無い。
実際、戦う事を拒絶しても処分される事だけは無いだろう。
だが、今居る環境から切り離される事は、今だ幼いアリスにとって捨てられるに等しいのだ。
アリスが自分の居場所と認識したソコは戦塵渦巻く戦場(いくさば)だった。

アキトはアリスの雰囲気に声をかけられなくなる。

「………、あれ?」

不意に視界を掠めた『なにか』に疑問を持つアキト。

「?…なに?」

アキトの異変に周囲を見渡すアリス。

と、その瞬間、大地が揺れた。

<ゆめみづき>から発射された砲弾がシティの至近距離に落ちたのだ。

即座に赤い回転灯が光を発し警報が吼える中、装甲シャッターが展開してゆく。

鋼鉄の板で視界が遮られていく中、
泣きそうだった表情をイキイキとした笑顔に変えた一人の少女が駆け出す。

「アリスちゃん?
どこに行くんだ!!」

飛び出したアリスを追いかけるアキト。

「敵…、
敵だよテンカワ!
ボクの獲物だ!!」

アリスは公園の出口を飛び出し、各施設前に用意されている無人タクシー駐車場に駆け寄るとその内の一台に乗り込んだ。

運転席側に。

再び起きる振動に足を取られながらアキトもその無人タクシーの助手席側に乗り込む。

「アリスちゃん、席を替わって。
一応車の免許は持ってる。」

と、言うが運転席にはハンドルもIFSコンソールも無かった。

さらに、ダッシュボード上に展開されたウィンドウには

〔現在、非常事態発令に付き一般車両の使用を禁止〕

と大きく表示されている。

「な!?…アリスちゃん、降りよう。
何処に行くのかは知らないけど、走っていくしかない!」

アリスに向かってそう言ったアキトに、アリスがシートベルトを締めながら微笑み返した。

「大丈夫、裏技を使うから。」

アリスはポケットに入っていたIFS対応情報端末を取り出すと無人タクシーの汎用ジャックに端末から伸ばしたプラグを差し込む。

即座に右手のIFSが煌き、無人タクシーのウィンドウから警告文が消える。

〔コード承認。当車を緊急車両に設定します。〕

「すげぇ、一瞬で。」

驚くアキトを他所に、急発進するタクシー。

「わわっ!?何処にいくんだ!?」

「ドックだよ。トライデントならどんな事態にだって対応できるもの。」

涼しい顔でドリフトを決めながら、タクシーをぶん回すアリス。

緊急事態と言う事で情報端末越しのマニュアル操作。

普段なら発揮される事の無いタクシーの能力の限界を駆使して、がら空きの道路を駆け抜ける。

アキトは慌ててシートベルトを締めつつ周囲を見渡すと、歩道にはシェルターへ逃げ惑う人々の姿が。

「…木星蜥蜴め。
あいつ等はいつも、力の無い人達から大切な物を奪っていく。」

アキトが歯軋りしながら怒りを募らせていると、タクシーの唐突な蛇行運転に頭を振られる。

「つっ、何が?」

「天井の構造物が落下してきた。
…急ぐよ。」

更に加速させながらアリスが答える。

下手をすれば、トライデントに乗り込む前にドックごとトライデントを破壊されてしまうかもしれない。

WILLの事だから、いざとなったら独自に行動してくれるはずだけど…

と、WILLの事に思い至った時、簡単な事実に気付いた。

コミニュケでWILLと通信回線を開く。

「WILL、聞こえる?」

〔YES・アリス。〕

「今、ドックの方に向かってるけど、敵の攻撃は油断出来ない。
迎えに来て。」

〔無理ダヨ・アリス。現在、トライデント・ノ三機・ハ・主機換装作業中・ダカラ・動ケナイ。〕

「は?…何で!?」

〔グルーバー大尉・ノ・指示デ・ナデシコ・到着マデニ・改良作業・ヲ・終エテオコウト…。〕

「ちっ、いつもの効率主義が裏目に出ちゃったのか。
WILL、ドックの責任者を出して!」

〔少シ・待ッテテ。〕

WILLが繋ぎを付ける間にドライデン・コロニーのメインシステムにアクセス。

現在の防衛状況を複数のウィンドウに表示する。

「…これは…、撃たれっ放しじゃないか!コロニーの防衛隊はどうしたんだ!!」

ウィンドウを見て、腹を立てるアキト。
自分より幼い少女に車の運転をさせている事は忘却。
これでもエステで戦って来た分、腕に自信はあるのだが、アリスの方が運転が上手いのだから仕様が無い。

『…耳が痛いな。
だが、当コロニーの防衛隊は他の拠点へ支援に向かっているものでね。戦力が残っていないのだよ。』

金髪をオールバックしたスーツの中年男性が新しく浮かんだウィンドウに現れた。

「貴方は?」

いきなり現れた男に聞くアキト。

『私が当ドックの責任者だ。話があるとか?』

「ボク達はIFSを持ってるパイロット。
でも、今使える機体が無いから、そちらで余ってる機体を貸して欲しいんだ。
出来れば火力の強い奴。」

『む、君は一週間前に来たというマシンチャイルドの子だな。
機体に関しては了解だ。月面フレームが余っている。
だが、整備されている機体は一機のみだ。マシンチャイルドの君には別の物を操縦してもらいたいのだが。』

「…それって強いの?」

『ん?…ああ、火力という面だけで考えたら最強の部類に入るだろうな。』

ドックの責任者の言葉に微笑みながら、タクシーをスピンターン。
貨物用エレベーターに乗り込み、停車。
ドックの有る階層まで、IFS経由の無線操作でエレベーターを動かしながら答えるアリス。

「OK、交渉成立。もうすぐドックに着くよ。」

『了解だ。…おい!十二番機を動かせるようにしろっ!パイロットが来るぞ!!
手隙の者から四番艦に退避!
そこっ!それの取り付けは諦めろ!!
そんな事をするくらいなら………』

通信を切る間も惜しいと、矢継ぎ早に指示を出す男。抑揚に乏しいのに良く通る声をしていた。

稼動中のエレベーターに乗っていても響く振動に冷や汗を垂らすアキト。

「だ、大丈夫なのか?」

「う〜〜ん、今の所はダイジョウブ。
って、ちょっと待って、今、ヤなのが見えた。」

コロニー周辺を映し出しているウィンドウの一つを手前に持ってきて、気になる画像を拡大する。

「なっ!?コイツは地球で暴れてた紺色の奴!?」

「細部とサイズが違うみたいだけど、同型だね。
アキト、コイツの相手…出来る?」

「ヤるしかないだろ。
コイツ等にはいい加減、腹が立ってるんだ!」

アキトが闘志をむき出しにした顔でアリスに答えた時、エレベーターが目的の階に着いた。

扉が開くと同時にホイールスピン&ダッシュ。

飛び出した先は広大な整備工場。ナデシコ級が楽に二隻以上入りそうだ。
現に一隻、ナデシコ級の艦が整備を受けていた。

と、通常のエステの3倍以上大きな暗い青色の機体の側に先ほどコミュニケで会話していた男が立っていた。

「あれだね。」

認識するが早いか方向転換。
あっと言う間に、機体の前でフルブレーキ。

「テンカワ、時間を稼いで。」

「任せろアリスちゃん。君が出るまでに片をつけるさ。」

タクシーから降りたアキトが先の男の指示を受ける。

「私の名はアルフレッド・ロスコー。ここの責任者だ。
一応、連合軍に救援要請はしたが君が時間を稼げなければ、このコロニーは崩壊するだろう。」

ロスコーはスーツを着こなした、明らかにエリートな雰囲気の持ち主。
なおかつ、抑揚に乏しく冷酷に聞こえる声。

アキトはロスコーに答えつつ着ている服を脱ぎ、ナノマシン・スーツに着替えるが早いか、巨大な機体に駆け寄る。。

「俺はテンカワ・アキト。
大丈夫。ナデシコで戦ってたから時間稼ぎくらいお手の物ッス。
それにこれ以上、木星蜥蜴共に好き勝手させたくないんス。」

慣れた動作で機体のコクピットに納まるアキトを見上げてロスコーが説明をする。

「そうか、ならば、よろしく頼む。
その機体は<月面フレーム>。
相転移炉を搭載しスタンド・アローン機能を備えているが、その分、機動性に欠ける。
レールガンや対艦ミサイル等を上手く活用して火力で制してくれ。」

コクピットハッチを閉じ、機体を起動させたアキトが月面フレームの右手でサムズアップ。

側に控えていた作業員達が出撃準備を整えると側の貨物エレベーターに乗って姿を消した。

それを見届けたロスコーはタクシーに飛び乗る。

「で、ボク達はどこに行くのかな?」

「あの艦だ。」

ロスコーが指し示す先には白亜の艦が身を横たえていた。

 

「喰らえっ!
正義と熱血の熱きほとばしりをっ!!
ゲキガーン・パンチ!!」

巨大人型兵器、ダイ・マジンから右腕が切り離される。

切り離された右腕は炎を吐き出して、月面都市の空間歪曲場発生施設目掛けて飛翔する。

そして、空間歪曲場を無視するように潜り抜け、歪曲場発生施設の中枢を穿ち、施設ごと爆発した。

「はははっ!
コレが正義だ!!
しかし、ダイ・マジンは良い機体だな。攻撃力は上昇しているし、反応も良い。
なにより、ゲキガンガーが両側の画面で鑑賞できるのがたまらない!
は〜っはっは!最高だぜ!!」

ダイ・マジンの操縦席で高笑いするのは木連正式採用の軟式宇宙服二式に身を包んだ月臣 元一朗。

彼の風貌も手伝ってゲキガンガーの登場人物、海燕ジョーそっくりである。
口調に気を使って、三枚目な雰囲気を除去すれば本当にそっくりである。

ちなみに一式が天空ケン。三式が大地アキラとなっているが、三式は人気が無い。
木連一般将兵の軍服ソックリだからだ。という通説だが、
「あんなモブキャラの格好したくない」というのが事実であろう。

一応、竜崎テツヤの四式や、国分寺ナナコの五式もある。
だが、無難?な四式はともかく、五式は使用者皆無。
木連にも女性兵は居るが後方支援で戦場に立つことは無いし男達が許さない。
さらにゲキガンガーに燃えるのは基本的に男ばかりだった。

ともかく、月臣の両サイドの画面ではゲキガンガー絶賛放映中。

燃え上がるテンションの命じるままに、重力波砲を撃ちまくる。
胸部の重力波砲と両肩の小型重力波砲が絶え間無く闇の閃光を放ち、周囲の施設を手当たり次第に瓦礫に変える。

当初は<ゆめみづき>の無限砲の着弾修正の為の観測員として月面都市の周辺に潜んでいたのだが、その都市が生意気にも空間歪曲場で防御を始めると居てもたってもいられずに飛び出してきたのだ。

<ゆめみづき>から放たれる砲弾は月臣の誘導の甲斐あって、寸分の狂いも無く都市の中心部上空に突き刺さる。
が、そこで空間歪曲場に逸らされ、何も無い所に落とされる。

質量弾に弱いとされる空間歪曲場で質量弾のあり方を追求したような無限砲を防ぎきる都市相手に、月臣が激情するのは当然の帰結だった。

と、破壊行為にふける月臣の正面の地面が正方形に開いた。

 

 地上まで繋がる貨物エレベータに乗機である月面フレームを乗せたアキトであるが、エレベータの遅さにキレて月面フレームのスラスターで垂直上昇。

幸運にも貨物エレベータのセンサーが急速上昇する月面フレームを認識したお蔭で、地表のエレベータ・ハッチが開放。
アキトはハッチに機体をぶつけて、戦う前に自滅するというトホホな結果から逃れられた。

が、当のアキトはそんな幸運を意にも介さず、暴れ続ける巨人をサーチ&ロック。

飛び出した勢いで空中に滞空したままの機体、その両肩に一基づづ搭載された大型対艦ミサイルを一発放つ。

「この街はっ!
俺が守るっ!!」

大見得を切って月面に着地。

爆風に包まれながらもディストーション・フィールドで無傷な目標目掛けてレールガンを展開。
砲撃を開始する。

と、アキトの攻撃に防御一辺倒となってしまった目標、紺色の巨人からの通信を受信した。

「く、不意打ちとは卑怯なりっ!
正々堂々と戦わんかっ!!」

「…いきなり何の宣告も無くこの街を攻撃しておいて言う事か〜っ!!」

唐突な月臣の言葉に思わず怒鳴り返すアキト。
攻撃の手もアキトの怒りに合わせて激しくなる。

「くっ、減らず口を。」

いきなり繋がった通信に若干驚きながらも月臣は回避運動に集中する。
攻撃の合間を縫って、超短距離ボソン・ジャンプで完全な回避に成功。

精神的な余裕が出来た月臣が改めて反論する。

「俺達のは戦術的奇襲って奴だ!
お前達、悪の地球人と一緒にするなっ!」

「何が違うって言うんだ!
火星も同じ手で全てを灰にしたくせにっ!!
自分がされたくない事は、人にしちゃいけないって習わなかったのかっ!!」

アキトの怒りに呼応するように月面フレームから小型ミサイルが大量にばら撒かれる。

「ぐぬっ、悪の地球人の癖に。」

正面の地球人の機体から投げ付けられる言葉にマトモな返事が出来ない月臣。

それもしかたあるまい。なにせ珍しく、アキトが正論を吐いているのだから。

そして、月臣。
彼は見かけに反して、とても口下手で討論が苦手だった。

「え〜っと、こういう時は…。」

いつも手元にあるゲキガンガー台詞集から使えそうな台詞を検索する。

と、そこでアキトが始めて敵と思われる機体に人が乗っている事に気付く。

「って言うか。アンタ、誰だ。
アンタも人間の癖になんで『地球人め』なんて言いながら木星蜥蜴の兵器に乗ってるんだ?」

「俺をお前達と一緒にするな!
俺は誇りある木連人だ!愚劣な地球人と一緒にする事は許さん!
そして、この機体は木連が誇る優人部隊専用決戦兵器、ダイ・マジン!!
木星蜥蜴などという名前ではない!!」

「はぁ!?
木連人?優人部隊?
つまり、木星蜥蜴は人間だって事か?」

「だっから!
俺を!
木星蜥蜴と呼ぶな〜〜っ!!」

今度は月臣が逆ギレして、その勢いのまま重力波砲を放つ。

闇の閃光は月面フレームに直撃するが、ディストーション・フィールドが攻撃を反らす。

と、反らしきれなかった一部が右肩を直撃。

レールガンごと爆発した衝撃で吹っ飛ばされる月面フレーム。
二転三転しつつ右腕を根元から失い、無様に尻を突いた状態で動きを止める。

そこに近寄るダイ・マジン。

「ふっふっふ、正義は勝つ!
この勝負、俺が勝ったからして、
俺が正義なのだ!!」

シンプルな三段論法で自己を正当化する月臣。
力こそ正義なり、である。

「いくぞ、止め!」

ダイ・マジンに残された左腕のパイルバンカーを起動させ、大きく振りかぶる。

その時、月面フレームの後方、月面都市ドライデン・シティで大きな爆発が起こった。

月臣に中途半端に破壊されたディストーション・フィールド発生施設群が絶え間なく降り注ぐ質量弾に耐え切れず全壊し、都市の守りが崩壊したのだ。

「待て、木星に人が住んでるのか!?」

「ふ、悪は滅びるが必定!
貴様とは生まれる場所が違えば、友と呼び合えたのかもしれんが…。」

と、アキトの問い掛けを無視して、先ほど台詞集を読んだ時に使いたくなった言葉を使えた事にちょっと喜びながら止めの言葉を放とうとする。

が、その言葉は更に続いた光景と愛機から放たれた警報に途切れさせられた。

遠く<ゆめみづき>から放たれる砲弾は止まることなく都市に降り注ぐ。
この都市ごと地球側の相転移炉艦を破壊する事が目的なのだから、むしろこれからが本番なのだ。

だが、本懐を果たすべき砲弾は、ディストーション・フィールドに(はじ)かれる。

見れば、都市のメインゲートが少し開いていた。
アレは確か攻撃を受けた直後に閉まっていたはず。
なにより、なぜ、空間歪曲場が?発生装置は軒並み破壊されたのに。

そして、愛機から発せられる警報は相転移炉の稼動警告だった。
予想を超える出力が都市の中央部から検出されているのだ。

「ぬわんだとっ!?」

驚きに目を見張る月臣の前で、一隻の艦が地の底から天へ舞い上がる。

 

 時間は少し戻って、都市のドック。

時間を惜しむあまり、タクシーに乗ったままで艦に乗り込むアリスとロスコー。

大型タラップを駆け上がり、格納庫の奥でスピンターン後、停車。

「良い腕だ。」

顔色一つ変えず、タクシーから降りるロスコー。

「ボクはパイロットだからね。」

不敵に笑いながらタクシーから降りるアリス。
勿論、情報端末は回収済みだ。

驚く回りの男達に次々と指示を出しながら艦橋へ向かうロスコーと、彼に付いて行くアリス。

「ねぇ、ついでにボクのトライデントも格納庫に積んどいてくれないかな?」

アリスの言葉に眉を一瞬ひそめるも、
出航には間に合うか、と頷くロスコー。

そうこうしている内に艦橋に到着。

だが、入り口が二つ。

「この艦も実験艦でな。向かって右が通常の艦橋。左が特殊仕様になっている。」

「ふ〜ん。
で、どっちに入るの?」

「今回は左だ。想定外の使い方になるが、
なに、問題あるまい。」

と言いながら、カードキーをスロットに通して、ロックを解除する。

圧搾空気の音を出しながら開かれた艦橋は過去から現在に至るまでの大型船の概念を明後日にすっ飛ばしていた。

座席が一つしかない。

半分床に埋め込まれたような形のその座席は、一つの特徴があった。

IFS対応コンソール。

「なるほど、ボクを必要とする訳だ。」

「そうだ、マシンチャイルドなくして、この艦の真価は発揮できない。
なおかつ、現在この艦を操船出来る者が居ない。」

「?
ナデシコはIFS無しでも、動かす事だけは出来なくも無いけど?」

アリスの疑問に答えるロスコー。

「優秀な人工知能が居ればな。この艦の人工知能はまだ、セットアップが終わっていない。」

「…なるほど。」

納得したアリスが座席に飛び乗る。
何故か、彼女の口元は喜びの形に歪んでいた。

「それじゃ、ボクの流儀で行くよ。」

アリス特有パターンのナノマシン発光現象が起きる。
最初から能力全開。
電子の手で触れるプログラムを片端から整理、必要な物を起動させてゆく。

と、アリスの座席を中心に艦橋自体もナノマシン発光現象を起こしていく。

「…これで、相転移炉が起動できません。なんて話にはならないよね?」

「運良く、相転移炉の始動実験中だった。
マスターキーは、挿入済みだ。」

「では私は右の艦橋で準備を整えよう」と言葉を残してロスコーは去る。

「さて、いざとなったらボクの手だけでも飛ばせそうだね。
『ワンマン・オペレーション・システム』ね…ふふん、面白いシステムだ。
トライデントの積み込みも作業員の退避も終わってないっぽいし、この艦のAIを起こしてみるかな?」

アリスの眼前に大きなウィンドウが展開する。

プログラム言語が右から左へ駆け抜ける内に、システムが整理され、調整される。
全力のアリスを前にして、音速どころか光速にも迫る勢いでAIの立ち上げ準備が整う。

「ま、基本フレームだけだけど、無いよりマシだよね。」

と、言い訳じみた言葉を吐いて、心の中でエンターキーを押す。

すると、いままでプログラム言語を表示していたウィンドウにコミカルな背景が付く。
薄い緑色に白抜きの蛇の絵。
アラハバキ。
木と蛇に纏わる神とも、製鉄に関わる神とも、守りの神、はたまた旅をする神とも呼ばれているそうだ。

〔SVC2030アラハバキ。システム・セットアップ。
おはようございます。〕

「おはよー。
ボクはアリス、これからよろしく。」

〔はい。よろしくお願いします。〕

挨拶が終了するとアリスが状況を説明する。

「目覚めて直ぐに悪いけど、今、この都市が攻撃を受けてる。
ボク達は可能な限り早く出航して、敵を迎撃しなきゃいけない。
でも、君に必要なアプリケーションがセットアップされていない以上、君単体でこの艦を操る事は出来ない。
不愉快だろうけどね。」

〔不愉快…
該当データが不足しています。正しく出力されません。〕

「そう…、
そっか、君ってまだ真っ白だもんね。
そっちの方は、追々なんとかするとして…。」

艦内通信網にアクセスして、艦の全域にウィンドウを展開する。
同時にIFSへの全力投入を停止、ナノマシン発光現象が収まる。

ポーーン

「こちら、アリス。
シャクヤクの出航準備完了。いつでも出られるよ。」

『ロスコーだ。
作業員の収容、及び、君の機体も積み終わった。
出してくれ。』

アリスの艦内放送にあわせるように、ロスコーからも通信が入る。

「OK。
それじゃ、ND−004シャクヤク、出航する!!」

アリスの宣言と共に、シャクヤクがドックから離床する。
ちなみに、Yユニットは未装着。

アリスがシャクヤクを浮上させると共に、ドックのハッチが開いてゆく。
ドックの管理システムに侵入して強制開放しているからだ。

「アラハバキ、ボクの操艦をよく見といてね♪」

〔はい、アリス。〕

重力推進でゆっくり上昇していくと、不意にシャクヤクが上昇中のシャフトが揺れる。

「ちっ、なんか壊れたっぽいね。
…全艦に告げる!異常事態発生に付き、当艦は全力機動を行なう!!
各自、身体をどっかに固定しとかないと痛い目みるよー!」


艦内通信で言うが早いか、シャクヤクの艦首が上を向く。
一応、艦内は重力制御で傾きとは無縁だが。

シャクヤクが垂直に立った瞬間、アリスは推進機関に蹴りを入れる。

シャクヤク後方に発生する膨大なプラズマ。

シャクヤクが、ミサイルじみた速度で急上昇する。
急加速で座席に押し付けられるアリス。
当然、艦内に乗り合わせた全員も同じ状況である。

どうもアリス、いつものトライデントのノリで操艦する気らしい。

教育モードでアリスの行動を学習中のアラハバキがこの操艦でどういう成長をするのか。
行く末が恐ろしくもある。

と、ドック経由でドライデン・シティ状況を探ったアリスの表情が変わる。

「なるほど、フィールド・ジェネレーターが壊れたのか。
ますます、のんびりしてらんないね。」

微笑んだアリスが、シャクヤクを更に加速させる。

シャフトのハッチを次々に開放。
同時に閉じられたコロニーのクレーターを覆う装甲シャッターにも開放指示を出す。

凄まじい勢いでドライデン・シティのクレーター内部に飛び出すシャクヤク。
そのまま、僅かに開いたばかりの装甲シャッター目掛けて突入する。

「ディストーション・フィールド展開。」

ギリギリ空けられた空間を異常な速度でシャクヤクが潜り抜けようとした瞬間、
虚空から飛来した質量弾がシャクヤクのディストーション・フィールドに叩き付けられた。

シャクヤクの加速力を叩きつけられた形の質量弾は明後日の方向に消し飛び、
シャクヤクは勢いを少し削られたまま、月面にその身を現した。

 

 目的地のドライデン・シティで戦闘が始まって、大騒ぎのナデシコ。

なにより、一番の問題は…ナデシコの操縦士二人が揃って誘拐?された事。

ナデシコは今、オモイカネとルリの手で動かされている。

これが平時であれば問題無いのだが、これからナデシコは戦闘に入ろうとしているのだった。

「ど〜しよ!ど〜しよ!?
運転手さんが居ないとナデシコが戦えないよぉ〜〜!!
急いでドライデン・シティに行かないといけないのに〜〜。」

「落ち着いて、ユリカ。
無いものをごねても仕方ないよ。今あるモノで対処しないと。」

「う〜〜ん、でも、どうしよう?」

困り果てるユリカとジュン。

「あ、クリシュナさん達は?」

と言うユリカの質問にウィンドウが開く。

『いや、私達は機動兵器専門だ。宇宙船の操縦経験者は…居ないな。』

格納庫の愛機の中から答えるクリシュナ。戦闘態勢なのでいつでも飛び出せるようにしている。
もっとも、ナデシコのパイロット達はブリッジに居る。
彼女等のエステはノーマルなので、高加速状態のナデシコから飛び出せばそのまま置いてけぼりを食らってしまうのだ。

そこにゴートが挙手をする。

「私が操船しよう。」

「「え、出来るんですか?」」

操船席に着席しながら、ゴートが厳かに頷く。

「ああ、船も飛行機も操縦した事が有る。
大丈夫だ。」

「「「「「おお〜〜!!」」」」」

ブリッジに居た者達から驚きと感動の声が流れる。

「へぇ、見た目に寄らないんですね。」

「てっきり、格闘専門だと思ってたぜ。」

「外に出た胃………、胃外…イガイ…意外。
…プッ。」

「う〜ん、見かけによらない意外な技術。これは使えるよぉ!」

「あれ?でも、ゴートさん、操船免許持ってなかったような?」

最後のルリの言葉に反応するプロス。

「!?
そうです!貴方の免許は地球上の乗り物ばかりだったはず!!
船舶免許も航空機免許も宇宙用のは取ってないでしょう!?」

慌てるブリッジ。

そして、厳かに響く声。

「………大丈夫だ。
確かに大型艦は動かした事は無いが、なに、乗り物にどんな違いがある。
問題無い。」

「「「「「「「ちょっと待てぇ〜〜〜!!!!」」」」」」」

ブリッジ全員の意思と言葉が一致団結して発せられるが当の本人には届かなかった。

「非常時だ。
法的には問題無い。」

そう呟くと同時に、ゴートは操船席のタッチパネルに触れる。

途端に急激な挙動を示すナデシコ。

「ひ、ひゃ〜!?
み、皆さん!!ナデシコはこれより緊急機動を行ないますので、気をつけて〜!!」

かろうじて、船内放送をするメグミ。

ナデシコは戦闘機顔負けの勢いで月面に垂直降下する。

「ゴ、ゴ、ゴ、…ゴートさん!?
落ちてる、落ちてますよぉ!?」

ユリカが船長席にしがみ付きながら声を出す。

「問題無い。そのように操作しているからな。
…急がねばならんのだろう?」

十分な速度が出た所で船首を引き起こす。
だが、十分以上の加速力が付いたナデシコはそのまま、月面に降下…
もとい、墜落する。

「「「「「「「落〜ち〜る〜〜!?!?」」」」」」」

が、ギリギリの所で船のベクトルが変わり、月面スレスレを駆け抜けるナデシコ。

「…問題無い。
……そのように操作している。」

普段通りの平静な声で答えるゴート。
だがしかし、彼の額をタラリと流れる大きな汗が全てをぶち壊していた。

決死のダイブで速度を稼いだナデシコはドライデン・シティへ向けて更に加速する。

「ディストーション・フィールド、出力上昇。」

せめてもの安全策にと、ルリがフィールドを限界まで強くする。

同時に目的地が近づいてきた事を示す。

「ドライデン・シティー、光学望遠鏡で捉えました。
…戦闘中です。」

見る見る近づく、ドライデンシティ。

ナデシコと同型の船がシティ直上に浮かび、
少しはなれた場所でシリモチをついたエステらしき人型兵器と、横須賀郊外で暴れていた巨人らしき人型兵器が佇んでいる。

見る見る近づく。

近づく…

近…

「「「「「「「って近すぎぃ〜〜!?」」」」」」」

「むぅ、
…止まらん。」

と、ゴートが言葉を洩らした瞬間、巨人をナデシコが轢いた。

高速移動中、かつ全力のディストーション・フィールドに接触した巨人、ダイ・マジンはあっと言う間にお星様になった。

『ぎぇぇぇっ!?』
どこからともなく、悲鳴が聞こえた気がした。

轢いた事がきっかけになり、ドリフトしつつ急激に減速するナデシコ。

「ふむ、止まった。」

「「「「「「「止まった。……じゃな〜〜〜い!!!」」」」」」」

ブリッジに居た者達がゴートに飛び掛り、羽交い絞めにする。

数分後には縄でグルグル巻きにされたゴートがブリッジの隅に放り出されていた。
「…むぅ。」

『ナイス・タイミングだね、ナデシコ。』

唐突に開いたウィンドウから声が響く。

「アリス!?
どこから通信してるんですか?」

アリスの言葉に反射的に質問をするルリ。

『ここ、ここ。シャクヤクのブリッジだよ。』

「おや、シャクヤクを動かせたのですか。
確か、まだ調整が済んでいないはずなのですが…。」

アリスの言葉に疑問声のプロス。

『うん、調整は未完了だよ。
大人しくしてたら、身動き出来ないまま壊されそうだったからね。
とりあえず、操艦に必要なトコだけ、でっち上げた。』

「ほう、流石はアリスさん。
見れば、その席は左舷ブリッジのようですね。」

『?
ドックの責任者のお墨付きは貰ってるよ?』

「ああ、いえいえ。そういう事ではありません。」

シャクヤクの左舷ブリッジ、「ワンマン・オペレーション・システム」の稼動実験ユニット。
本来ならば、何を何処まで出来るのか?という実験の為の設備。

直接、シャクヤク全体を統括する事など想定外だった。

更に未調整のままで艦を動かしているのだ。
詳しい詳細は聞かされて無いが、アリスがとんでもない事をしている事ぐらいは判る。

シャクヤクの詳細を知っているのは、エリナとアカツキ。
片や、九十九に連れ去られ、片や、医務室で昏倒中。

肝心な時に使えない上司達にプロスは、ちょっとキレた。



「おや、そういえば、操『艦』ですか?」

『うん、ドックの責任者はシャクヤクを艦って呼んでたよ。』

「…ほう、そうですか。
なるほど。ネルガルはそうするのですね。」

『?』

一人頷くプロスに可愛く首を傾げるアリスだった。

 

 「…識別信号を受信した!
よし、これで艦に戻れる!!」

空気椅子で無理やり、テツジン頭部を操縦する九十九。

め一杯後ろに引き下げた座席に二人で座っているエリナとミナト。

ミナトが九十九に声をかける。

「ねぇ、そんな辛い体勢をしなくとも、一緒に座ればいいじゃない。
足、震えてるわよ?」

「そんな!
そんな、女性の肌と触れ合うような不埒な真似は出来ません。
これも鍛錬です!!」

「クスクス。
可っ愛い〜〜、真面目なんだ〜♪」

そう言いつつ、九十九の背中にもたれ掛かるミナト。

「わ!?
何をするんですか!?女性はもっと慎みをっ!?!?」

ミナトの柔らかい身体に瞬間的に沸騰した九十九。
手元がおろそかになり、機体が蛇行し大きく揺れる。

と、蛇行した側を大きな物体が飛び去っていく。

「あれは…、ダイ・マジン?」

形容し難いポーズでカッ飛んでいったソレは、見間違いで無ければ確かにダイ・マジンだった。
なぜか、『死んだはず』の月臣の絶叫も聞こえたような。

「?
さっきの、お知り合い?」

と更に身体を押し付けつつ、ミナトが言う。

九十九の鍛えられた背中にミナトの柔らかい二つの双丘が押し付けられ、変形する。

「あ、あ、あ、あ…
当たってます!!当たってますよ!?」

「ふふ、何が?」

「だ、だ、だ、だ… お、お、お、お、おぱ、おっぱ……。」

完全に真っ赤っかの九十九をイヂめるミナト。

「はぁ…。
いい加減にしなさい、ミナト。
彼、困ってるわよ。」

エリナは溜息を吐きつつ、ミナトの襟首を掴んで強引に引き戻す。

「ああん、もうちょっとで恥ずかしワードが聞けると思ったのにぃ。」

「なに考えてんだか。」

こめかみに指を押し付けて、もう一度溜息のエリナ。

そんなこんなをしている内に、九十九の艦<ゆめみづき>に到着するテツジン頭部。

艦と通信をしあって、格納庫に着陸する。
<ゆめみづき>の無限砲はもう、沈黙していた。

頭部のハッチを開放すると、すぐ側に<ゆめみづき>乗組員が整列しているのが見えた。
列の先頭には軟式宇宙服二式を着たままの副長の月臣の姿もあった。

月臣の身なりは乱れている。
ついでに言うなら、彼の背後にあるダイ・マジンもボロボロだった。

操縦席から飛び降りた九十九が声を上げる。

「元一朗!!
生きていたのか!?地球で逝ったとばかり思っていたぞ!!」

「おおよ!
この俺が簡単にくたばってたまるものか!!
九十九!貴様こそ、良くぞ無事だったな!!」

バンバンと互いの背中を叩きながら、お互いの生還を喜び合う。

「…そういや、さっき、空をカッ飛ぶダイ・マジンを見たんだが…。」

「…ああ、空間跳躍の事を思い出さなかったら宇宙の藻屑になってたぜ。
くそ、地球人共め。どこまでも俺をコケにしやがる。」

「ん、地球人で思い出した。
ミナトさん。エリナさん。降りてきて下さい。」

操縦席に手を差し出す九十九。

彼の手を取って、ミナトがゆっくりと格納庫に降りる。

エリナは「敵の手助けはいらない」とばかりに自分で降りようとするが、
ハッチの縁で躓き、転倒する。

「あ…。」

そのまま、頭から硬い格納庫の床に落ちようとしていたエリナを救ったのは偶々近い位置に居た月臣だった。

図らずとも、月臣の胸に抱きしめられるエリナ。

体格が良く、身長も有り、黙っていれば(・・・・・・)二枚目の月臣。
真剣な表情だったので、カッコ良さは更に倍。

月臣の表情に頬が赤くなるエリナ。
普段なら直ぐに、抱きしめられた腕を振り払ってるだろうが、不思議と空気に酔ったのか振りほどこうとしない。

月臣の顔も赤くなっていた。
キツメの顔立ちの美女が、呆然と頬を赤く染める様に、心を奪われたのだった。
ついでにエリナはナデシコの指揮官用の白い制服、胸を強調する服を着ていた。
そして、エリナはナデシコでも一二を争う巨乳の持ち主。
その胸が月臣の胸の上で変形している。

月臣は色んな意味で呆然としていた。

と、二人の思考が通常状態に復帰する。

「!?
し、失礼した!!」

「!?
わ、悪かったわね!?」

二人が磁石が反発するように離れた。

「……あ〜あ、そこは一気にキッスまで逝っとかないとぉ。」

残念そうなミナトの声。

「「「何言ってるんだっ(のよっ)!?」」」

図らずともエリナ、月臣、九十九の言葉が重なる。

「…こほん!
ともかく、…指揮権をお返しする!白鳥艦長!!」

「お受けする。月臣副長!」

ビシッと敬礼する月臣に答礼する九十九。

「諸君も俺の居ない間、よく艦を守ってくれた。」

月臣の後ろに控えていた乗組員達が敬礼し、再び九十九が答礼。

「では、任務に戻ってくれ。」との九十九の言葉で解散する。

「さて、お二人は客人ですから、当艦を案内しましょうか。」

「な?九十九!
敵に当艦を案内するのか!!」

「違う、元一朗。お二人は俺を救ってくれた。
つまり、味方だ。」

「だが、地球人だぞ。」

「地球人も一枚岩では無い。
皆が皆、悪では無い。
俺は思ったのだ。ひょっとしたら、敵とも分かり合えるのではないか…と。」

「九十九…。
いや、そうだとしても、軍事機密を簡単に明かすのは…。」

「大丈夫だ。
流石に俺も、そこまでは考えていない。」

納得したのか、出来ないままなのか判りづらい表情で頷く月臣。

「さて、お待たせしました。
コチラへどうぞ。」

ミナトとエリナを先導する九十九。
ミナトはともかく、エリナは「私はただ、巻き込まれただけなんだけど」と心の中で呟いた。

でも木星蜥蜴、もとい、木連の装備を知る事は戦略上有利なので黙って九十九の後に付いて行く。

その3人の後を、溜息を付きながら月臣も従う。


そして、艦内道場で案内は終了する。
途中で案内を代わりながら、九十九と月臣は白い詰襟に着替えている。

「どうでしたか!
我が木連の最新鋭艦の様子は!」

自信満々で感想を待ち受ける九十九。

しかし、感想を告げるべき二人の女性の顔は困り顔。

なんせ艦内はあらゆる所にモニターが埋め込まれて、ゲキガンガー絶賛放映中だったのだから。

「あ〜、え〜っと…ねぇ?」

弱ったミナトがエリナに話をふるが、エリナも言葉が詰まる。
ちらり、と九十九を見れば、目を輝かせて二人の言葉を待ち構えていた。
ついでに月臣も。

ふぅ、と溜息を吐いて気分を一新。
意思を決めてエリナが口を開いた。

いよいよ地球人から見た我々の超技術の評価が下されるのだ。
と、九十九と月臣が期待に胸を膨らます。

「…そうね。
無人機の有効活用による必要人員の削減という概念は素晴らしかったわ。
でも、どうせなら電算室の無人機は直接ネットワークに接続するくらいの効率化は図るべきよ。
あんな並列作業は無駄が多すぎる。
緊急時に他のシステムへ転用する為と言うのなら判らなくもないけれど。

あと、貴方達指揮官が前線に出るというのも良く無いわね。
貴方達は責任をどう考えてるの?
貴方達が死んだら部下は路頭に迷うのよ?下手をしたら貴方達の後を追って無駄死に。なんて事になるかもしれない。
高級指揮官が前線に出るのは、戦意高揚以外にはまったくの害悪でしかないんだから。
なにより、指揮官を養成するのには時間とお金が掛かってるのよ。自重なさい。」

九十九と月臣の表情が面白いくらい青ざめる。

美人に面と向かって説教されるとは思いもしなかったのだ。

だが、直情的な月臣が反論に入る。

「所詮は女かっ!
俺達、熱い漢の魂が判らないとはっ!!
そして俺達に無駄死などありえない!何故ならばっ、俺達は熱いゲキガン魂で結びついているからだ!!」

そこで、九十九かハッとした表情を浮かべ、月臣に答える。

「元一朗!!」

「九十九!!」

「「レッツ・ゲキガ・イン!!」」

腕を組み合い、頷く二人。
そして笑いあう。

そこに水を挿す言葉。

「ああ、あとソレね。
いい大人がなにしてるの?
はっきり言って…、恥ずかしいわ。」

白い目で二人を見るエリナ。「所詮は女」発言でこめかみに血管が浮いていた。

九十九と月臣が現実から見放された表情をする。
いや、夢はまだ有る。
女性にだってゲキガン魂は判ってもらえるはずだ。
現にもう一人、女性がこの場に居るではないか。

二人が救いを求める表情でミナトを見る。

しかし、ミナトはすまなそうに苦笑して、

「ええっと、まぁ…趣味は人それぞれだから…。」

とだけ答える。

男達は打ちのめされた。
木連の社会では普通であった事が全力で否定されたのだ。
エリナは兎も角、ミナトは消極的な賛成と取れなくも無いが、力一杯のオブラードを剥がせば、否定はしないが肯定もしないという発言になる。

重ねて言うが、木連の社会では普通だった。
軍艦の中で四六時中垂れ流して当たり前なほど普通だった。
ゆえにゲキガンガーを面と向かって否定する人、特に女性はいなかった。
九十九も月臣もそれが普通であり、女性もゲキガン魂を持っているのだ、彼女等が表面上にソレを現さないのは彼女等が奥ゆかしいからだ。
とばかり思っていた。…思い込んでいた。
…実際にはゲキガンガーが好きな女性も居るだろうし、嫌いな男性も居るのだろうが。

そういえば、妹であるユキナもゲキガンガーの話題になる度に、不思議な表情を浮かべて席を外していたが。
そうか、アレは嫌がっていたのか。
九十九は真っ白な思考の中、かろうじて思い浮かんだ事実で更に白くなる。

月臣も真っ白になってしまった。
先ほど、一目惚れと言っていいほど急接近した女性から、心の底から軽蔑した口調で断定されたのだ。
月臣の心の中でエリナの言葉が響く。

『恥ずかしいわ。…恥ずかしいわ。…恥ずかしいわ。…恥ずかしいわ。…』

あまりにもの衝撃に、膝を付く月臣。
しかし「気持ち悪い」で無かっただけマシだ。
その程度には好意的に思われているのだが、衝撃に打ちのめされている月臣には当然判らなかった。

その有様に驚くエリナ。

「ちょっと、ソコまで凹む事無いじゃない。
たかがアニメでしょ?」

エリナの何の気負いも無い言葉に月臣は更に衝撃を受ける。

『たかがアニメでしょ?…たかがアニメでしょ?…たかがアニメでしょ?…たかが…』

隣の九十九も、その余波でフラフラになる。

「大体、無闇に突撃して強引に事態を解決しようという魂胆が気に食わないわ。
『熱血』って何よ?
血と破壊に酔う様を誤魔化してるだけじゃないの。
熱い漢の魂?
精神論は嫌いよ。激昂する事が熱い魂とやらなら貴方達は軍人を名乗るべきじゃない。そもそも、馬鹿である事は威張れる事じゃないのよ?
夢は信じれば叶う?
夢は叶える為に必要な事を全てして、初めてその入り口に立てるの。
それでもその夢を叶えられる者は僅かよ。信じるだけで叶うのなら、そんな夢は価値が無いわ。

第一、ご都合主義な話って大ッ嫌い!!」

「そうかしら、私は嫌いじゃないけどな。
一応、主人公達も頭を使わない訳じゃないし、男の子って馬鹿っぽい所が可愛いじゃない?
向こう見ずなぐらいで丁度良いと思うしね。
うん、
私は好きよ。人生に『おとぎ話』って必要だと思うもの。」

九十九と月臣の姿を見て、ゲキガンガーについて言わずに居れなくなったエリナが口を開くと、
否定されたゲキガンガーをミナトが擁護する。

だが、しかし。

『おとぎ話…おとぎ話…おとぎ話…おとぎ話……』

持ち上げられた上で更に突き落とされる九十九と月臣。

九十九と月臣はお互いに顔を見合わせ、呟いた。

「「ヤック・デ・カルチャー。」」

女は魔物だ。


と、艦内道場の入り口に一人の若い士官候補生が立つ。

「失礼します!発令所から緊急報です!
電測機に反応!敵、大型艦一隻、当方へ向けての弾道曲線で接近中。
相転移反応、検出せり。
なお、該当艦は対象・イの可能性、大なり。
であります!!」

敵の接近。

この言葉で二人の士官の意識は切り替わった。

先ほどまでの醜態は何処かに消え、毅然とした態度の軍人に生まれ変わる。

「ご苦労。我々は発令所に向かう。
君も持ち場に戻りなさい。」

九十九が伝令の士官候補生に告げると、月臣がエリナとミナトに振り向いた。

「では、お二人にも俺達の戦いぶりを観戦して頂く。
…付いて来い。」

そして、二人の反応を見る事も無く先に進む。

「どうする?」と疑問の視線をエリナに向けたミナト。

エリナは「行くしかないでしょ?」と肩を竦めながら答えた。

 

 『大丈夫ですか?アリス。
その船はまだ、調整がおわってないんでしょう?囮なら私達のナデシコの方が…。』

広い艦橋に可憐な声が響く。

声の主はウィンドウの中。心配そうな声に苦笑しながら答えるのは、この艦シャクヤクの左舷艦橋、唯一の座席に座る少女。

「大丈夫だとも、ルリ。
少なくとも戦う分に不足は無いよ。ボクが居るからね♪
それより、そっちの方こそ大丈夫?操縦士抜きでやれるの?」

『それは大丈夫ですよ。
今はアオイさんが舵を握ってます。』

ウィンドウの隅に物足りなさそうな表情のゴートが一瞬、映る。

ルリの言葉には、そんな彼と対照的に安堵感が満ち溢れていた。

「そう、
んじゃ、手順の確認をしておこうか。
ボク達は敵の真正面から突撃、敵を牽制する。
その間にルリ達は…」

『私達は後方からこっそり接敵。
包囲完了後に敵へ、ミナトさんとエリナさんの解放を要求。
受け入れられない場合は、敵艦に乗り込んででも救出します。』

と、そこにシャクヤクのAIアラハバキからのメッセージが入る。

〔シャクヤク、弾道曲線の頂点に到達です。
以降、目標に向け落下します。
それと、Yユニット管制AI・サルタヒコの起動準備が整いました。〕

「うん、じゃ、サルタヒコを起こして?」

〔判りました、アリスさん。
サルタヒコ、起動信号受信を確認、起きます。〕

〔YユニットFCS(火器管制システム)サルタヒコ・起動。
索敵開始。……敵、新型艦一隻検出。
通常兵装での撃破可能と推測。PTC(相転移砲)(Phase Transition Cannon)充電中止。
Yユニット通常兵装の指揮権をアリス特尉及び、アラハバキへ移行。…移行を確認。
PTC及びサルタヒコ。サスペンド・モード実行。〕

目覚めたサルタヒコは慌ただしく周囲の確認をすると即座に眠ってしまった。

『…随分と無愛想なAIですね。』

AIは「お友達」と公言するルリが不快な顔をする。

無愛想でもまだ可愛い気のある表現だった。会話のカの字すら無く、一方的に行動し、そして眠ってしまったのだから。

新しい友達と仲良くなれるかも、と期待に胸を高鳴らせていたルリの心中は、それはもう大暴落だった。

ちなみに超余談であるが、アリスも軍に所属している兵士である以上、階級があてがわれている。
もっとも、特尉とは擬似階級で軍属の者で階級が必要な場合に与えられる仮の階級のような物なのだが。

「まぁ、サルタヒコはFCSだから。愛想の良いFCSっていうのも想像がつかないよ。」

『?
WILLは愛想の良い子ですが?』

〔YES・ルリ。私ハ・良イ戦術AIデス。〕

「まぁ、WILLは戦術AIだからね。特例だけど。」

『ですからAIは皆、良い子でなきゃいけないんです!』

「オモイカネ級のAIを基準にしても…。大抵の軍用AIは無愛想だよ?
それに昔のボクも無愛想だったろうしね。」

『それでもアリスは良い子でした!
…私だって無愛想な方ですし…。』

「有難う、ルリ。」

WILLも参加して、なんか話が逸れだしたなぁと思いながら会話が続く。

〔目標、発砲。質量弾です。〕

女の子らしく雑談に興じていると、アラハバキから被攻撃警報。

ルリとの会話の片手間にシャクヤクの向きを微調整して、ディストーション・フィールドで弾く。

〔質量弾、月面に落着。周辺に被害はありません。
続いて目標、第二射目発砲準備中。〕

「次のはグラビティ・ブラストで落とすよ。WILLからデータ貰って。
弾幕パターン、C−3、速射モード。出力10%。」

〔了解。グラビティ・ブラスト、急速チャージ。WILLからグラビティ・ブラスト砲撃用管制プログラム、ダウンロード。
弾幕パターン、C−3設定。速射モード、シフト…上下二連主砲、エネルギー出力10%です。〕

『大丈夫ですか、アリス?
初めて操縦する船をたった一人で動かして、更に飛んでくる弾を打ち落とすなんて芸当…。』

「ふふ、大丈夫だよ、ルリ。
シャクヤクの操縦系統はボクの慣れてるIFSで対応可能だし、
そもそも、曲芸じみた戦いは慣れてるよ、トライデントでね。
アラハバキにWILLも居るし♪」

アリスが微笑むとWILLとアラハバキが同時に肯定する。

『はぁ…だから心配なんですが…。』

と零すルリを他所に、アリスは戦いを始めた。


ただ真っ直ぐに弾道曲線に沿って落ちていたシャクヤクが生きてるかの様に身震いする。

Yユニットを身に付け、図体は大きくなったがソレを感じさせないような軽い足取り。

そんなシャクヤクに迫り来る大質量の砲弾。

一発だけではなく、無数に飛んでくる。

単発ではシャクヤクのディストーション・フィールドを抜けないと判断したのだろう。

だが、

シャクヤクは悠々と迫り来る砲弾に艦首を合わせ、フィールドを解除した。

シャクヤクの左舷ブリッジ。

そこに座するシャクヤクの支配者。

アリスの口元が上向きに歪むと同時にYユニットに備え付けられた二門のグラビティ・ブラストが交互に火を噴いた。

今までのナデシコの様に単発の広範囲高出力攻撃ではなく、点射の一点集中連続砲撃。

威力は低かろうが弾幕で押し潰すのだ。
それは形は違えどトライデント・グリフォンの「チャージ・オン・レギオン」であった。

次々と砕けてゆく、迫り来る砲弾。
飛来する物から即座に無数の重力弾が取り囲む。

結果、物量対物量の戦いはシャクヤクの勝利に終わった。

しかし、木連の兵器は無限砲だけではない。

〔目標、移動を開始しました。当艦から見て12時方向に後退しています。
!?
ボソン反応検知!
距離1000。12方向。仰角、俯角、0!正面です!!〕

『そこまでだ!悪しき地球人共め!!
正義の鉄槌を喰らうがいい!!』


空間が歪んだ瞬間、シャクヤクの正面に飛び出してきたダイ・マジン。
と月臣。

間髪入れずにゲキガン・パンチを放つ!

が、アリスが平然と対空ミサイルで撃墜。
哀れゲキガンパンチは志半ばで無念の涙を呑んだのだった。

『貴様っ!大技は素直に喰らうか、華麗に避けるかの二つだろうがっ!?
そんな芸の無い回避をするなど男のすることでは無い!!』

「ボク、女ー。」

ダイ・マジンの発する通信波の周波数に合わせて、アリスが気の抜けた返事を送信する。
もちろん、画像付きで。

普段なら戦闘思考優先で、こういう応対をする前に攻撃するのがアリスなのだが、
ルリと会話を続けていた為に、通常の能天気思考のままで戦闘をするという不思議な状態になっていた。
あるいはここが狭いコクピットではない広い空間なのが原因かもしれない。

『なっ、なにぃ!?
戦艦を子供が操ってるだとぉ!?』

『子供じゃありません。
少女です!』

通信回線を繋げっぱなしのルリが反論する。


月臣は一瞬、混乱した。

女は守るべき者。
女は称えるべき者。
子供であるならば、なおさらだ。

なのに何故、戦場に?

「くっ、卑劣な地球人め!
可憐な少女達を盾にするつもりかっ!!
それが貴様等の正義かっ、恥を知れーっ!!」

そして激昂する。
何気に子供から少女へ呼称が替わってる辺りが木連人。

「やっかまし〜っ!!
軍人が安易に正義を口にするんじゃねぇーーっ!!
思いっきり、胡散臭いだろーがっ!!
貴様こそ恥を知れっ!!!」

いきなり飛んできた砲弾をかろうじて空間歪曲場で反らす月臣。

と、シャクヤクのカタパルトから次々に機動兵器が飛び出す。

先の一撃もカタパルトから発進する寸前の機体から放たれたモノだった。

攻撃したのはグレッグ。
彼は木星蜥蜴の正体が人類であった事を知って軍人の立場から腹を立てている一人だった。

ちなみに木星蜥蜴の正体については、シャクヤクにYユニットを装着する合間にユリカ達が懇切丁寧に教えてくれた。

「なっ…!?
なんだとーーっ!!
貴様ぁっ!!悪の地球人の分際で俺を愚弄するのかっ!!」

「ハッ!
相手を貶める事でしか自身の優位性を保てない分際で!!」

急速接近したグレッグの重機動改はそのまま、月臣のダイ・マジンと至近距離の格闘戦を展開した。

ダイ・マジンは片腕だが36mの巨体。
重機動改は両手に剣と盾だが、10m未満の小さな体。

果敢に攻めるグレッグだが、リーチの差を越える事は出来ず決め手に欠ける。

勇猛に戦う月臣だが、手数の少なさから防戦から攻勢に移る事が出来ない。

と、戦いの流れが変わった。

「大体っ!
俺達、軍人はっ!
国に命を預けて、同属同士で殺し合うのが商売だろうがっ!!
だというのにテメエらはっ!!
何、無関係な市民を殺戮してるんだっ!
この馬鹿野朗ーーーっ!!!」

一言一言、区切るたびに振るわれるグレッグの渾身の一撃が遂にダイ・マジンへ届く。

胸部を大きく切り裂かれたダイ・マジンは全力で後退し、体勢を立て直そうとする。

が、

後退した先は101中隊の囲いの中だった。

ダイ・マジンの周囲を取り囲む重機動改と空戦改。

大砲はいつでも撃てるように構えられ、槍はいつでも突撃できるように保持されている。

「これで詰み、だ。
投降しろ。木連人。」

クリシュナが代表して月臣に降伏を迫る。

「うぬぬ、この俺が敵に背を向けねばならんとはっ!」

しかし、ダイ・マジンには窮地を脱する装備があった。

単距離跳躍装置。

ボソンの光を残して消え去るダイ・マジン。

そして、後退を続ける月臣の母艦<ゆめみづき>の側に現れる。

「ふははははっ!!
次は、ああはいかんからなっ!!」

捨て台詞を残して<ゆめみづき>と共に去る月臣。

だが。

「スト〜〜ップ!
ソコまでです!!」


<ゆめみづき>の進路上に突如現れた、もう一隻の相転移炉艦。

ナデシコは<ゆめみづき>の退路を完全に断っていた。
万が一に備え、エステバリスも全機展開済みである。

月臣のダイ・マジンと<ゆめみづき>に直通通信が繋がれる。

「こちらは連合軍所属戦艦ナデシコ艦長、ミスマルユリカです!
当船の乗組員、エリナ・キンジョウ・ウォンとハルカ・ミナトの解放を要求します!
このお願いが聞いてもらえないなら、コチラにも用意がありますからねぇ〜。」

ユリカ、プンプンですよ。とユリカが<ゆめみづき>とダイ・マジンの画面一杯に映る。

能天気な物言いとは真逆に、ナデシコの三連グラビティ・ブラストは発射準備を整えていた。

「こちら、木連戦艦<ゆめみづき>艦長、白鳥 九十九!
当方には貴殿の要求を受け入れる用意が有る!
だが、当方の安全が確立出来ない状況下での引き渡しには応じられない!!」

「およ?
白鳥さんじゃないですか!艦長さんだったんですね〜。
お話は判りました!
ルリちゃん、主砲の火を落としちゃって。ジュン君、艦首を<ゆめみづき>から逸らしてね。」

ユリカの言葉に反論するジュンの声が通信回線に乗って聞こえてきたが、ナデシコはユリカの言葉通りに動いたのだった。

ユリカの言葉を<ゆめみづき>の艦橋で聞いたエリナが嘆息する。

「はぁ…、あの能天気艦長は…。
敵の言葉を真に受けてんじゃないわよ。素直にも程があるでしょうに。」

「ん〜〜、でも、ほら。
もう一隻味方が居るから、ああいう対応に出れたんじゃない?
それにこの騒ぎ、原因は私達にもあるものねぇ。」

上空から接近しているシャクヤクを指差してのミナト。

ユリカの言葉を聞いてか、シャクヤクは適度な高度で停止していた。
いつでも襲い掛かれそうな理想的な位置だった。

「お話中、失礼。
お二人共、格納庫にいらして下さい。ナデシコへお送りします。」

艦内通信で格納庫に作業用宇宙服を二着準備させながら九十九が言う。

「…お二人とも、巻き込んでしまって申し訳ありませんでした。」

九十九が格納庫への道のりの中、先導しながら謝る。

「ん〜、気にしなくてもいいわよ?
立場が違えば、私達もこうしていたかもしれないんだし。」

「有難うございます。
…やはり、貴方はナナコさんの様に優しい方だ。」

ミナトの言葉に感激する九十九。

この期に及んで場をこじらせたくないエリナはツッコミを自粛する。
「なんで、またゲキガンガー用語なのよ。普通は『天使のようだ』でしょうが!」
と、言いたくてたまらなかったが。

対してミナトは「あはは、光栄だわ。」と答えるに留まった。

最後までそんなノリを保っていた面々だったが、格納庫に着き次第、途端に慌ただしくなる。

エリナとミナトが服の上から着れる作業用宇宙服に身を包んでいる間に九十九はダイ・テツジンの起動準備に入る。

準備が終わり格納庫にブザーが鳴ると、今まで無数の作業員で活気に満ちていた格納庫から人気が消える。

『さあ、この手の平に乗って…
失礼、腕の上に掴まってください。』

ズキョン、ズキョンと奥から歩いてきたロボット、ダイ・テツジンから九十九の声がする。
ガキョガキョ音を鳴らした両手は四本の鉤爪でソコに乗るのは、どう考えても難しそうだった。

膝を曲げ、腕を地面に下ろしたダイ・テツジンに駆け寄り、四苦八苦しながら右腕に跨る二人。

と、もう一度ブザーが鳴って格納庫の空気が抜かれだした。

『宇宙服のチェックは大丈夫ですね?
ゆっくり行きます。が、かなり揺れると思うので覚悟して下さい。』

空気が抜けきった辺りで、二人の宇宙服の通信機から九十九の声が届いた。

壁際に歩き出すダイ・テツジン。
と、壁が割れ、ゆっくりと開かれていく。

本来ジン・シリーズは格納庫に設置された小型次元門、連合名称チューリップで跳躍して戦場に赴くのだが、エリナとミナトの二人は跳躍の為の遺伝子処置を施していないので使えない。
結果、格納庫の外部ハッチから直接出るしかないのだった。

エリナが溜息と共に感想を漏らす。

「はぁ、なんだかナデシコから飛び出した時と同じような状況ね。」

「まぁまぁ、帰れるからいいじゃない。
それとも、月臣さんに一言別れの挨拶がしたかった?」

「なっ!?
そんな…、そんなバカな事ある訳無いじゃない!
なんであんなアニメオタクに…。
そうよ、アレが無ければ私だって…。」

ミナトの一言にワタワタと身体全体で否定をするエリナ。

「ふ〜〜ん、そっかー。
脈が無い訳じゃないのねぇ。」

エリナの慌てっぷりにナルホドと頷くミナト。

「違うわよっ!!」とエリナは反論するが、全く言葉に説得力が無かったりする。


キャイキャイとダイ・テツジンの腕の上で騒ぐ女性二人。

無線機で会話しているので、コクピットの九十九の元にも二人の会話は届く。

話をコッソリ聞いてる事に罪悪感を感じたが、興味がソレを上回る。

『で、そういうミナトの方こそどうなのよ?』

『う〜〜ん、白鳥さんかー。
ああいう一途な人は好きよ。子供っぽい所は構って上げたくなるし、大人っぽい所は可愛いし。
エリナの言うアニメオタクな所も許容してもいいかな〜。
もうお別れなのが残念だわ。』

ミナトの言葉に真っ赤になる九十九。

今だかつて、女性からこのような評価を受けた事が無いのだ。

なにより、見麗しい女性に好かれていると言う事だけで、天に昇るような気持ちになっていた。

が、至福の時間はえてして短いモノ。

ナデシコからの迎えがやって来た。

マリンブルーのエステバリス。

『は〜い、お嬢さん方。この手の上に乗って下さいな。』

スッと差し出されるエステの手の平に乗り移る二人。

と、二人の移動中にエステからダイ・テツジンに通信が入る。

『や、二人を解放してくれて感謝するよ。』

九十九の眼前に開かれた通信画面には、ナデシコで捕らわれていた時に銃を向けて来たあの男が居た。

「貴様!
よくも私の前にノコノコと顔を出せたなっ!!」

『その節は、深く謝罪するよ。
すまなかった。』

言葉通りに深々と頭を下げるアカツキに九十九の怒りが止まる。

『あの時はアレが最善だと思ったんだけどねぇ。
ま、お互い敵同士というのは変わらん訳だが。』

と、さっきの潔い姿は何処へ行ったのか、飄々とふてぶてしい態度を取るアカツキ。

「ふん、まぁいい。
あの船での一件は忘れよう。
だが、私と貴殿は敵だ。次に垣間見えた時は容赦しないからな。」

『望むところさ。』

と、そこで九十九はエステに乗り移った二人に通信を繋げる。

「ミナトさん。
もうお別れしなければならないと思うと私の胸は張り裂けそうだ。
ですが、これも任務。
この戦争が終結した暁には、もう一度お会いしましょう。
…さようならです。」

振り返って、母艦へ一気に飛ぶダイ・テツジン。

背中越しに「さようなら。」とミナトの声が聞こえた気がした。

先ほど出てきた格納庫のハッチに、またもや傷ついたダイ・マジンが飛び乗っていた。
九十九も一発でそのハッチの中に着陸する。

ハッチの外を振り返ると、そこには敵の機動兵器の手の平の上でコチラを見続けている二人の女性の姿。

なにか声をかけなくては、と思ったが無情な扉は九十九の逡巡を無視して閉まるのだった。

 

 エステバリスの手の平の上で<ゆめみづき>が去ってゆくのを見守るミナトとエリナ。

と、乗っているエステの頭部が周囲を見渡すと、慌てたようなアカツキの舌打ちと共に急激な旋廻。
そしてナデシコへ向かって駆け出した。

振り落とされそうになった二人。エリナが代表して操縦者であるアカツキに文句を言う。

「ちょっと、アカツキ君!!
いきなり動かないでよっ!!」

『ごめんごめん、だけどシャクヤクが攻撃準備に入ったんだ。
あのままだと飛んでくるだろう破片でキミ達が危ないからね。
乱暴なのは勘弁してくれ。』

「「攻撃準備!?」」

二人が後ろを見やるとシャクヤクが艦首を<ゆめみづき>へ向け、今にも攻撃しそうな状況だった。


「目標、敵戦艦。
上下二連グラビティ・ブラスト、出力100%。
収束率100%、交差射撃モード。
照準…良し。」

アリスが<ゆめみづき>を落とすべく準備を進める。

と、アリスの邪魔をするようにアリスの真正面にウィンドウが展開する。

『駄目だよ!アリスちゃん!!
攻撃しないって約束したんだから!!』

ユリカである。

単純に「約束は守らないといけない」という物言いだが、その言葉には戦略的視野からの警告も混じっている。

このまま彼等を見逃した場合、今後の交渉がこちらの有利に傾く可能性が有るのだ。

少なくとも前線の兵士達の間では「過度の攻撃をしない」という暗黙の了解が得られるかもしれない。

相手が同じ人間である以上、いつかは終戦協定を結ぶ日が来るだろう。

その時の為に、売れる恩は売っておくべきだ。

と言うのがユリカの考えだった。

だが…

「それはユリカの約束、ボクの約束じゃないよ。
ソレに目の前の敵を倒さずに何時、倒そうってのさ?」

「邪魔するな」と目の前に大きく開いたウィンドウを払いのけるアリス。

ユリカの考えは人の良識に偏っている。

目に付く者は皆殺し。が、木星蜥蜴の手口だ。コチラの手を緩めても、木連側は遠慮無く殺戮を続けるかもしれないのだ。

ならば、殺せる敵は殺せる時に殺すべきだ。

第一、木連側の主力兵器は無人機だ。いくらコチラが紳士的になっても手心を加えてくれはしないのだった。

そこまでアリスが考えていたか?と聞かれると答えは否。なのだが…。

だが、しかし。

ユリカの行動は無駄ではなかった。

アリスがユリカに邪魔されている間に、シャクヤクの主砲の前に一機のエステバリスが陣取った。

ピンク色のエステバリスから通信が入る。

『駄目だ、アリスちゃん!!
自分がされたくない事は人にしちゃいけないんだ!!』

アキトがアリスに叫ぶ。

またもや、自分の目の前に展開したウィンドウに嘆息するアリス。

脇に避けられたウィンドウでは『キャー!!アキト、カッコイイーー♪』とユリカが感激していた。

「何を言ってるの?アキト。
自分がされたくない事だから、効果的なんじゃないの?
これは戦争なんだよ?」

真顔で返答するアリス。

アリスの返事に絶句するアキト。

明るく快活だが、戦いに恐れを抱いていた少女というアキトの抱いていたアリス像がパキリと割れる。

『な……、
そ、それでも。それでも駄目だっ!!』

改めて、砲口の前で踏ん張るアキト。

そこに、全速力で月から離脱している<ゆめみづき>から通信が入る。

『そこの機動兵器の操縦士。
貴殿の勇気に感謝する。
願わくば、貴殿の名を知りたい。』

九十九からの通信にアキトは、

『名乗りたくない。
殺し合う敵と馴れ合う気は無いからな。』

と、返す。

その言葉に「アッハッハ、その通りだ。」と愉快そうに笑う九十九。

「ふ〜〜ん、なるほどね。
判ったよアキト、ユリカ。
二人のメンツに免じて、今回は見逃してあげるよ。」

アキトの物言いを聞いて、先ほどまでの攻撃準備を取りやめるアリス。

アキトの行動が唯の博愛主義ではなく、彼のプライドの問題だと認識したのだった。

「でも、次はブッ殺す。」

それでも獲物を掻っ攫われて不快なアリスが、九十九の映っているウィンドウにガンを飛ばす。

『…。
望むところだ、機械仕掛けの妖精。
いかに幼い少女とはいえ、戦場に出てくるのなら容赦しない。』

「では、次の戦場でな。」と通信を切る九十九。

<ゆめみづき>はもうシャクヤクの射程外だった。


「しっかし、アキトもよくやるよね。」

と、気の抜けた声で呟くアリス。

『ん?何がだい?』

アリスの呟きに反応するアキト。

「だってほら、発射間近のグラビティー・ブラストの前に仁王立ちだもの。
普通出来ないよ。」

『あ〜〜、まぁ。勢いで、かな?』

「ほんと、よくやるよ。」

ヤレヤレ、と肩をすくめるアリス。

『無理には撃たない。と、アリスちゃんを信用していたからね。』

と、極上の笑顔で微笑むアキト。

「テンカワ・スマイル」の直撃を食らったアリスの顔が、赤く染まる。

解釈出来ない不思議な感情に捕らわれたアリス。

生涯初めての感情に「あ…。」とか「う…。」とか呟くばかりだった。

そんなアリスを見て、ユリカが怒る。

『駄目だよアキト!!
アリスちゃんに色目使っちゃっ!!
それは私にだけなのっ!!私しか駄目なんだからねっ!!』

『なっ?
無茶いうなよっ!?』

ユリカとアキトが、通信回線越しに口論を始める。

何気に最初っからシャクヤクと通信回線を繋げていたルリがその状況を見て、嘆息。

そして、言い放つ。

『馬鹿ば〜〜〜っか。』



















第21話 完

















あとがき

なんとか、完成です。一月以内に完成できて良かった〜。

ナデシコ全話をこの間入手しまして「こうなっていたのか〜。」とか「こういう展開なんだな。」と感心しきりのTANKです。

って訳で今回の話はかなりTV版15話と16話に影響を受けています。

特にシャクヤク。ああいう構造だとは思いもしなかった。

だって、艦橋が二つもあるなんて、誰も書いてなかったし…。

ともかく、エリナ嬢を活躍させるべく努力してみましたが、いかがなモンでしょうか?

期待に沿った展開に出来てたら、恐悦至極です。


さて、今回の恥さらしコーナー。

前回の代理人、鋼の城さんのコメント。

>じゃすと・あ・もーめんと〜

これは前回の20話、九十九がナデシコ・ブリッジにて「お話会」をしている時、何故か月に居るアキトが会話に参加している…というトンでもミスがあったのです。


さてさて、次回の話はBen御大の「時の流れに」の設定及び、シチュエーションを一部お借りする予定です。

ガイドラインには「投稿作品ならば、使って構わない」との事でしたので、この場で報告させていただきます。

しかし、投稿を始めてすぐに思いついたネタがようやく書ける様になるまで、この話を引っ張って来れたとは感無量。

もう、一年経ったのかぁ…長かった。

そして、完結までまだ…長いっす。




感想代理人プロフィール

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代理人の感想

ジェット・ナデシコロン轢き逃げアタックっ!(違)

ナデシコSS数ありといえども、ここまで情けないやられ方をした月臣は早々いないだろうなぁ。

エリナに打ちのめされる醜態といい、今回は美味しかった。w

 

>アリス

大村益次郎だったら「君はいくさを知らぬのだ」と言いそうなw

まぁ実質六歳の女の子に戦略論だの常識だのを聞くほうが間違ってはいるのですが(爆)。

 

>あんなモブキャラ

ひでぇっ!(爆笑)

 

>なにせ珍しく、アキトが正論を吐いている

これはまったくその通りだ(笑)。