魔法少女リリカル☆なのは 二次創作

魔法少女!Σ(゚Д゚) アブサード◇フラット A’s

第6話 「混沌を制するモノ」 後編

 

 

 ◇ なのは ◇

 

 半壊したビルの屋上で沢山のバインドや結界で雁字搦めに拘束されている巨大なカタマリ。

強いて言うなら以前アリサちゃんがやっていたRPGのボスキャラ最終形態って感じです。
これで上半身だけの人型が上部にニョっきり生えてきたら完璧かなーと思います。

そんなラスボス(仮)さんを離れて監視している私とヴィータちゃんとシグナムさん。
他の皆は全力でラスボス(仮)さんをバインドと結界で拘束中。

万が一、バインドと結界を引き剥がされた時は私達が攻撃して皆が逃げる時間稼ぎをする事になってます。
でも、倒せるんだったらそのまま倒しちゃっても良いよね?

ちなみに隣に佇むシグナムさんは冷静に状況を見守ってますが、
ヴィータちゃんは夜天の書の主だというはやてちゃんという子の事が心配でしょうがないみたいです。

「よぉシグナム。
テメェ、なんでそこまで平静でいられるんだ?
まさか、はやての事が心配じゃないってんじゃねぇだろうな?」

待っている事に我慢出来なくなったみたいなヴィータちゃんがシグナムさんに文句を言い始めました。

「まさか、
私とて心配している。
だが、ヴォルケンリッターの将として、一介の剣士として、
感情に流され、状況を見失いたくないだけだ。
それにな……」

「?
……なんだよ」

「夜天の書の中には、私が認めたフェイトとフラットも居る。
彼女等があれしきの事で倒れるはずが無い。
生きているのならば、
かならず、我等が主と共に脱出する事だろう」

シグナムさんが口元に微笑みを浮かべて断言します。

「……ちっ、
金髪はともかく、銀髪の方はヤバいぜ。
なんせ、非武装のはやてにデバイスを突き付けるような奴なんだからなっ!」

忌々しそうにヴィータちゃんが言います。

あ、ひょっとして私達が荒地の惑星でリンカーコアを抜かれちゃった時の話かな。
私は本局のベッドの上でフラットちゃんが話してくれた、豪胆な車椅子の女の子の事を思い出しました。

「アルギュロスの威力を見ている癖に、デバイス突き付けられても平然と俺と会話しやがった」と遠回りに褒めてたっけ。

「う〜〜ん、
確かにフラットちゃんは何をするか判らない所があるけれど、
フラットちゃんは、フラットちゃんなりに道理が通らない事は嫌ってるはずだよ?
多分フラットちゃんは、その話の一件ではやてちゃんを認めただろうから、
いきなり傷つけるような真似はしないと思うの」

私が会話に加わると、途端に嫌な顔をするヴィータちゃん。
ちょっとショック。

「……ふんっ!
今は協力しなきゃなんねーから戦わないだけで、
管理局の奴の言う事なんか信用しないんだからなっ」

そう行ってそっぽを向くヴィータちゃん。

ん〜〜、
ヴィータちゃんは、フラットちゃんと比べると色々判りやすいなぁ。

「ふふふ、
ヴィータちゃんは本当に、はやてちゃんの事が大切なんだね」

「っ!?
……ふ、ふんっ。
はやてはアタシ等の主だかんなっ!
ほ、ほ、褒めたって、態度を変える気なんかねぇぞ!!
勘違いすんなよっ!」

顔を真っ赤にしてそっぽを向くヴィータちゃん。
シグナムさんはそんなヴィータちゃんに苦笑しながら、ふと何かに気が付いた様子です。

「……しかし、
何故『闇の書の暴走体』をこうして封じ込めて居られるのだ?
アレは、一度暴走したら手の付けられない代物だと、例のデータには記されていたのだが……」

「きっと、はやてが中で頑張ってるんだ。
だから暴走体も本調子になれないんだ……きっと。
そういや、
あのデータの最後の交戦記録じゃ、
次元航行艦一隻を乗っ取られて、僚艦のアルカンシェルでフッ飛ばしたんだっけ。
……あの時の主、無事なのかな。
記録じゃ、『夜天の書』とのリンクを切り離して、隔離したってなってるけど……」

「……どうだろうな、
今も後手に回っている管理局が、そう簡単に『夜天の書』の術式に干渉出来るとは思えんが。
なんにせよ、
あの御方は、主はやてと違った形で道理の通った方だった。
我等を道具として扱っていたが、無礼な真似はしなかったからな。
願わくば、生き残っていて欲しいものだ」

「ふーん、シグナムはあの時の主みたいなのがタイプなのか?」

二マニマとヴィータちゃんがシグナムさんを見やると、シグナムさんの血相がいきなり変わりました。

「ヴィータッ!!」

「なんだよ、
怒る事無いじゃねーかよぅ」

「違う!
前を見ろっ!!
暴走体の内部で異常な魔力の高まりが起こっている!」

シグナムさんの言葉に私もラスボス(仮)さんへ目を向けると、
確かに異常な魔力を発散しているのが見て取れました。

「レイジング・ハート、
何時でも全力で行けるように準備してっ!」

【All right.
Exelion Mode Get set!】

カートリッジをパンと炸裂させて一発消費。
今回は前回みたいな急場での強引な変形じゃないのでちょっと安心。

変形したレイジング・ハートの鋭い切っ先をラスボス(仮)さんへ向け、いつでも状況に対応出来るように心の準備をします。

私の隣では、それぞれデバイスを構えたシグナムさんとヴィータちゃん。
二人ともデバイスを変形させてないのは、大技は私に任せて自分達は即応性を重視したからみたいです。
なんだか頼られているみたいで嬉しいな。

と、唐突に通信用の魔法陣が私達の側に浮かび上がりました。

『こちらエイミィっ!
今、夜天の書暴走体から次元震の兆候が検知されたよっ!!
暴走体の今の保有魔力じゃありえない現象なんだけど、最悪の事態は覚悟しておいてっ!
……って、嘘っ!?
この魔力波形って、まさか……次元航行用の魔力炉っ!?
夜天の書ってこんな事も出来るの?
って、あれ?
安定して無いよ、この波形……皆、魔力炉の暴発に気を付けてっ!!』

エイミィさんの慌てた通信が私達の元に届くと同時に、ラスボス(仮)さんが苦しそうに身じろぎしました。

更にラスボス(仮)さんの上空に剣十字をあしらった三角形の巨大魔法陣が展開されました。

「アレは、ヴィータちゃん達のベルカ式魔法陣!?」

拘束を壊しかねない勢いで暴れるラスボス(仮)さん。

ベルカ式魔法陣の上に3人の人影が現れると、
ラスボス(仮)さんは、内部で何かが爆発した様に膨れ上がり、ついに拘束の一部を破壊してしまいました。

本来なら、これから破滅的な暴走を再開するだろうラスボス(仮)さんに集中しているべきだったのでしょう。

でも、
私達はベルカ式魔法陣の上に現れた3人の人影に意識を奪われてしまいました。

「フェイトちゃん!
フラットちゃんっ!!」

「はやてっ!!」

人影が誰かを認識した瞬間、飛び出した私とヴィータちゃん。

はやてちゃんを真ん中に、背中合わせで周囲を警戒していたフェイトちゃんとフラットちゃんが私達に気が付きます。

まず、ヴィータちゃんがはやてちゃんに抱き付きました。

「はやてっ、はやてぇっ!
無事で……無事で良かったっ!
はやてに二度と会えなくなると思ったら、アタシっ……!!」

「うん、
心配かけてゴメンなヴィータ。
でも、お蔭で私、正式な夜天の書の主になれたんやで?」

ヴィータちゃんとはやてちゃんの感動的な再会シーン。

よし、
次は私の番っ!

「フェイトちゃんっ!
フラットちゃー……」

「いいかげんにしないかっ!
今は戦闘中だぞっ!!」


……感動の一瞬を邪魔したのはクロノ君の怒鳴り声でした。

もうっ!
クロノ君ったら情緒無さ過ぎっ!!

クロノ君に文句を言おうと振り返ったら、足元から凄まじい声が響き渡りました。

「アァ……ア゛ア゛ア゛ァ゛ァァぁ……ッー!!」

皆が足元……ラスボス(仮)さんを見つめます。

すると、ラスボス(仮)さんから女の人の上半身がズルリと現れました。
車のフィギュアヘッドみたいな印象の女の人の上半身から、先ほどの悲しみに満ちた絶叫が響き渡りました。

あぅ、
ラスボス(仮)さんが、本当にラスボス(真)さんになっちゃった。

と、
呆気に取られていた私へ、拘束を一部振り払ったラスボス(真)さんの触手が襲い掛かりました。

あ……間に合わない!?

咄嗟にレイジング・ハートを盾に目をつぶろうとした私の側で、ぶっきらぼうながらも可憐な声が響きます。

「引き裂けっ!
フリーホイール・バーニングッ!!」

次の瞬間、銀の光輪が触手達を斬り飛ばしました。

「あ、ありがとう、フラットちゃん!」

「ふんっ、
目の前で死なれたらフェイトの教育に悪いからな。
それよりも、とっととココから移動するぞ。
……っつぅか、あのゲテモノは何なんだ?」

やっぱりフラットちゃんのツンデレ具合は一味違うの。

夜天の書に捕らわれていた所為で、その後の顛末が良く分かって居ない3人とヴィータちゃんを連れて、
とりあえず、クロノ君の側に皆で移動しました。

「……アレが僕達が危惧してきた夜天の書の暴走状態だ」

簡潔で明快なクロノ君の説明。
でもクロノ君本人は「なんで僕はいつも状況説明ばかりさせられているんだ」と額を押さえています。

「対策は?」

フラットちゃんの的確な疑問。

「……アルカンシェルで吹き飛ばす以外の明確な対策は無い。
現在、アースラの全力で情報解析させている。
対策が出来上がるまで、目標を暴れさせない事が現在の目的だ」

額を押さえたままでも、クロノ君の状況説明は完璧です。

あ、
クロノ君の話で思い出した。
例のラスボス(真)さんが拘束を一部振り払っちゃってるんだった。

慌てて、
レイジング・ハートをラスボス(真)さんに向けると、

沢山の触手を振り回しているけど、身動きは相変わらず出来ないラスボス(真)さんの姿がありました。
ラスボス(真)さんの慟哭の声も、どこか切ない感じです。

私の挙動に釣られてその場に居た皆の目がラスボス(真)さんに向きました。

「……結構、何とかなってるんだね」

「限界ギリギリ……だがな。
現在のアレは本調子では無いらしい。
だが、放置すれば大規模次元震を起こすのは変わらないようだ……」

フェイトちゃんの言葉に、冷や汗を流しながら答えるのはザフィーラさん。
良く見れば、ザフィーラさんの拘束魔法がラスボス(真)さんに一番多く巻き付いているのが判りました。

「って事は、このまま行動を起こさなかったらヤバい事なるんは確実なんやね」

発言と共に皆の注目を浴びたのは、決意を決めた瞳のはやてちゃん。
今回の騒動の中心人物だけど、私は彼女とお話した事はないの。

……だから、

「初めまして!
私は高町 なのはと言います♪
この子はレイジング・ハート!
さっきの口ぶりだと、なにかアイディアがありそうなんだけど、どうなのかな?」

まずは挨拶!
レイジング・ハートも【Nice to meet you】と私に同調してくれました。

「おお、丁寧な挨拶、おおきに♪
私は八神 はやて言います。
そんでこの子が夜天の書の管制人格リインフォースです!」

【私はリインフォース。
現在、主とユニゾンしている為、実体化出来ないが御容赦願いたい】

ペコリと頭を下げたはやてちゃんが掲げた本から声が聞こえました。
硬い口調の子だけど、性根は素直そうな感じがします。

「そんで、事態解決へのアイディアなんやけど……」

「ちょっと待った!!
今、夜天の書の管制人格と言ったかっ!?」

はやてちゃんが口を開いた瞬間、体ごと話に割り込んだのはクロノ君。

はやてちゃんはクロノ君のいきなりの行動に驚いて首を縦に振るばかり。

「ではアレは何だ!?
何故、夜天の書がここにあるのにアレが稼動を続けているっ!」

【……アレは夜天の書の防衛プログラム。
主幹システムから破綻し、暴走しているアレの侵食から主を守る為、
夜天の書から防衛プログラムを切り離した結果、防衛プログラムが独立稼動している状態になっている】

「なんだって!?
……エイミィ!
今の言葉の信憑性はっ!?」

『……ちょっ!?
クロノぉ〜、
いくら私達でも今日ようやく解析できるようになったばかりのベルカ式魔法が、そう簡単に判る訳が無いじゃないっ!!
でも、例の暴走体……夜天の書が言うところの防衛プログラムは確かに独立した存在みたいだねぇ〜。
……って、何これっ!?』

リインフォースさんの話を聞いたクロノ君が、即座にアースラへ通信を繋げてエイミィさんと相談です。

でも、
何か今の状況に急変があったみたい。
エイミィさんが血相を変えて声を張り上げました。

『たっ……たたた、大変だよっ!!
さっき、暴走体の中で爆発したっぽい魔力炉が何故か活動を再開!
安定した魔力供給を受けた暴走体の保有魔力量がグングン上がってる!
このままじゃ拘束を振り切るどころか、大規模次元震引き起こすのもあっと言う間だよっ!
ど、どうしよ、クロノ〜〜っ!?』

「ええいっ!
分析官が焦るんじゃないっ!!」

エイミィさんを諌めようとするクロノ君もどこか焦ってます。

と、その時、フェイトちゃんがポツリと呟きました。

「……ヒュードラを、再構成したの……?」

「何ッ!
まさか、あの魔力反応はヒュードラの魔力炉なのか!?」

『……事実みたいだね。
検出された例の魔力波形がヒュードラのソレと完璧に一致したよ』

「くっ、なんだってこうも状況が悪化する方向にばかり進むんだっ!!」

クロノ君が怒りを吐き出すと同時に左手の杖、S2Uを足場に叩き付けました。
その音に何人かがビクリと体を振るわせます。

「あ、あの……フェイトちゃんを怒らんたって欲しいんや。
あの時はヒュードラを使わんと、防衛プログラムん中から脱出出来へんかったんやし……」

ソワソワと、はやてちゃんがクロノ君に言うと、クロノ君はキョトンとして返事を返しました。

「ん?
なんでフェイトを怒らないといけないんだ?
僕が苛立たしいのは、原因がわかっても有効な方策一つ上げられない僕の無能さだ。
くそっ、
エイミィ……タイムリミットはどのくらいだっ!!」

『えっと、最短で5分!』

「ちっ、アルカンシェルを使うしかないのか!?
くそっ、何か手立てが……っ」

歯軋りするクロノ君。

『そんな簡単に思いつく訳無いよぅ!』

涙目で叫ぶエイミィさん。

「……」

眉間にしわを寄せて黙るフラットちゃん。
困った顔でラスボス(真)さんを見つめるフェイトちゃん。
ユーノ君もアルフさんもアイディアが出せずに口を閉じて居ます。
守護騎士の4人はそれぞれ俯いていました。

私もなんとかしたいけど、どうすればいいのか判らない。

……なんだかとっても、悔しい。

その時、はやてちゃんが口を開きました。

「リインフォース。
この状況、如何にか出来る手段があるんやろ?」

【はい、我が主よ。
アレは私の分身に等しい。
ならば、対夜天の書用封滅術式『ギャラルホルン』が使用可能です】

「「「「「ギャラルホルン!?」」」」」

「馬鹿なっ!
夜天の書の最大の脅威は、自己再生と転生能力だ!!
封じて滅するなんて出来る訳が無い!
あるのなら、何故今まで使わなかった!
そもそも、自分自身を殺すための術式を何故、持っている!!」

皆が驚く中、クロノ君がリインフォースに噛み付きました。

【私とて、破壊と殺戮を好んでいる訳ではない。
壊れ、修理も許されず、暴走し続けるしかない以上、自己を葬り去ろうと考えるのは当然の話だ。
そして、この術式を展開する為には私が完全起動する必要があった。
……なにより道具存在である私は自発的に自己を破壊する事が出来ない。
主はやての御命令で、ようやく私は自分を終わらせられる切っ掛けを得たのだ】

「……」

リインフォースの重い言葉に皆が沈黙します。

『リミットまで、あと4分だよ』

沈黙を打ち消すようにエイミィさんが発言しました。

「……ちっ、
その『ギャラルホルン』……使えるんだろうな?」

【術式チェックは万全だ。
しかし、今まで一度も使った事が無い以上、断言は出来ない】

「……この期に及んで半丁博打か……」

クロノ君が肩を落として呟きます。

「いいんじゃねぇか?
少なくとも、この博打、イカサマはし放題だからな」

対照的にニヤリと笑うフラットちゃん。
ハッパをかけるように両手を打ち鳴らして言います。

「さあっ、
何をすりゃいいんだ、リインフォース?
逡巡する時間は無いぜっ!!」

フラットちゃんの言葉に皆が顔を上げます。

【うむ。
私と主はやては『ギャラルホルン』の展開準備に掛かる。
ヴォルケン・リッターの四人はその術式サポートと防衛プログラムの攻撃から守ってくれ。
そして管理局の面々には、ある意味最重要な仕事がある】

「それは何?」

リインフォースさんの言葉に疑問の声を上げたのは私。

【防衛プログラムの4つの障壁を撃ち砕いて欲しい。
障壁があると『ギャラルホルン』の効きが弱くなってしまう。
最悪の場合『ギャラルホルン』の対抗術式を編み出してしまう可能性すらある。
アレもまた夜天の書ではあるのだから……】

『リミットまで後、3分!』

「くっ、本当に時間が無くなって来たかっ!
リインフォース!
こうなった以上、トドメは君達に任せる!!
だから、……しくじるな!」

真っ直ぐと、はやてちゃんとリインフォースを見つめるクロノ君。
返答はリインフォースさんじゃなくて、はやてちゃんでした。

「大丈夫や!
八神家総出でやるんや。
これで出来ん事なんか無いっ!!
……やから、リインフォース。
リインフォースが消える必要なんか無いんやからな……」

夜天の書を抱く様に抱えて最後の言葉を呟く、はやてちゃん。

「……、君達は直ちに術式展開を始めろ。
僕達は全力で目標の障壁を潰す。
……、
武装隊!
強装結界解除!!
これより目標へ一斉攻撃を仕掛ける!
一層目は僕達。
二層目と三層目はフェイトとフラット!
四層目は、なのはが攻撃しろっ!!
アルフとユーノは状況に応じて、適時サポートしてくれ!」

「「「了解!」」」

「わかった」

「うんっ!!」

「まかせなっ!」

「まかせてっ!」

武装隊の皆が、フェイトちゃんが、私が、アルフさんとユーノ君が一斉に答えます。
フラットちゃんはニヤリと笑っただけでしたが。

「武装隊、前進!
次元世界を、この星を全力で守るぞっ!!」

「「「「「GUNG’HOーーーー!!」」」」」

クロノ君を先頭に武装隊の皆が飛び立ちました。

「……っと、そうだ。
フラット、君のアルギュロスだよ」

クロノ君達を見送っていたユーノ君が、ふと気付いた表情でフラットちゃんへ抱えていたアルギュロスを差し出しました。

「お、すまねぇな。
腕ごと置き去りにしちまったから、あの中じゃ苦労してたんだ」

「状態は万全か、アルギュロス?」と問い掛けながら、フルドライブ状態のストライク・フォームのアルギュロスを右腕に装着するフラットちゃん。

【バッチリッス!
修正パッチを作ったから、ラム・イット・ダウンも問題無く使えるようになったッスよ!!】

フラットちゃんの言葉が聞こえたシャマルさんの顔が引きつります。

「……ほら、シャマル。
やった事、気にするんは後やでっ!?
今は私等に任された事に集中しぃっ!
暴走プログラムの直上で術式展開するから、その間、私を守ってなっ!!」

「「「「Jawohl!!!」」」」

はやてちゃんを先頭に守護騎士の皆も飛び立ちました。

そのまま戦場へ向き直ると、
拘束が解かれたラスボス(真)さんが迎え撃つ様に触手の群れと魔法弾を放っていました。

触手を避け、
切り裂き、
魔法弾を撃ち落として前進する皆の中で、誰よりも鋭く動いていたクロノ君が声を上げました。

「さあデュランダル!
お前の真価を見せてみろ!!」

【O.K.Boss!
Eternal Coffin】

突き出したクロノ君の右手に握られた白い短槍から魔法陣が走ると、ラスボス(真)さんを周囲の建物ごと氷漬けにしてしまいました。

でも、
即座に再生がはじまっているのか、ラスボス(真)さんからピシピシと罅割れる音が聞こえてきます。

「魔力が尽きても撃ちまくれぇーーーっ!!」

左手のS2Uから青い魔力弾を撃ちながらクロノ君が叫びます。
クロノ君に続く様に、武装隊の皆からも色とりどりの魔力弾が放たれました。

でも、その全てはラスボス(真)さんを覆う障壁に阻まれて打ち消されてしまいます。

それでも皆は諦める事無く攻撃の手を緩めません。

弾かれた魔力弾が氷漬けになった触手を砕き、周囲のビルを傷つけます。

「喰らえっ、僕の最後の魔力だ!
スティンガーブレイドっ!
エクスキューション・シフトォーーーッ!!」

クロノ君がS2Uを掲げると、周囲に大量の蒼い光剣が浮かび上がりました。

「いっけぇーーーーっ!!」

かつて時の庭園で見た時よりも多い剣群が障壁目掛けて飛び出します。

でも、空に浮かぶ魔力すら消費したクロノ君は地面目掛けて落下を始めました。

「あっ、クロノ君!
いけないっ!!」

慌てて私は飛び出そうとしましたが、その時、既にクロノ君はデバイスを持った腕を掴まれて、掴んだ人ごと宙に浮かんでいました。

「……くっ、
君に助けられる時が来るとはな」

「そりゃまた御挨拶だね。
でも僕は、君の言葉通りに『状況に応じて適時サポート』しただけだからね」

「…………ふんっ」

憎まれ口を叩き合うクロノ君とユーノ君の背後で、大量の剣群が突き刺さった箇所に集中砲火を受け、ついに一枚目の障壁が砕けました。

でも、その衝撃でラスボス(真)さんを覆っていた氷が壊れてしまいました。

『あと2分!!』

「……じゃ、
次は私達だね、フラット」

「出遅れるなよ、フェイト」

エイミィさんの言葉に、目を合わせて頷くフェイトちゃんとフラットちゃん。
バリアジャケットを展開したフラットちゃんが飛び出し、フェイトちゃんは短距離転移を行ないました。

そのまま、ラスボス(真)さんの前に飛んで言ったフラットちゃん。
ラスボス(真)さんを挟んだ反対側にフェイトちゃんが転移しました。

アルギュロスを右手に装着したフラットちゃんが左手を、
ザンバー・フォームのバルディッシュを右手に持ったフェイトちゃんが左手を掲げると二人の足元に巨大な魔法陣が展開しました。

「「アルカス・クルタス・エイギアス」」

目を閉じた二人がまったくの同時に呪文を唱え始めます。

「「疾風なりし天神、今導きの元、撃ち掛かれ
バルエル・ザルエル・ブラウゼル」」


二人の周りに無数の射撃魔法陣が形成されました。

そんな二人に向けて、大量の触手が放たれます。

「フェイトちゃん!
フラットちゃん!!」

私が叫ぶと同時に二人が目を見開き、左手を前へ振り下ろしました。

「「フォトンランサー・ファランクスシフト!
撃ち砕け!
ファイアーーーッ!!」」


金と銀の魔弾が雨のように触手へと降り注ぎます。

あっというまに、襲い掛かる触手は粉々になり、そのまま障壁に襲い掛かりました。
でも、弾雨は障壁に当たると、傘に弾かれる雨のように散らされてしまいました。

「……ふんっ、
所詮はフォトンランサー、障壁を貫くほどの火力は望めんか」

「でも道は開けた。
私から行くよっ!!」

射撃を終了した二人。
最初に動いたのは、フェイトちゃんです。

僅かに生き残った触手の攻撃をアルフさんの援護を受けて掻い潜り、
あっと言う間に障壁の前に辿り着いたフェイトちゃんがバルディッシュを大きく振り上げました。

「コレだけ硬くても、至近距離からならっ!
駆けろっ、雷神!!」

【Jet Zamber!】

長大化したバルディッシュの光刃がラスボス(真)さんの障壁の上を走り抜けます。

その一瞬、周囲から音が消えました。

次の瞬間、聞こえた音はガラスの罅割れるような音。
目に飛び込んできた光景は、魔力障壁が砕ける事も無く、真っ二つに滑り落ちる光景でした。

「……フェイトちゃん、すごい……」

魔力で構成された物を魔力で攻撃したら、砕けるのが普通。
なのに、切り裂いても形を維持したままなんて、魔力をよっぽど収束させないと無理なの。
あの巨大な光刃で、それだけの魔力収束が出来るなんて、流石フェイトちゃん!

そして、落ちた障壁が地面で砕ける中、
三番手のフラットちゃんが飛び出しました。

「一気にブチかますぞ、アルギュロス!!」

【修正パッチ『リボルビング・ステーク』ロード!
今回はカートリッジ一発づつの五回攻撃ッス!!】

フラットちゃんが右手を振り上げると、重い機械の音を響かせて長い杭が限界まで後退します。

「ブッ潰せっ!
Ram it Domn・First Bullet!!」

【Impact!】

障壁の前に立ったフラットちゃんが右手のアルギュロスで殴りつけると、大きな爆発音と共に杭が前進しました。

工事現場で聞くような甲高い激突音が鳴り響き、叩き付けられた杭が跳ね返されました。

「もう一丁っっ、
Second Bullet!!」

【Impact!】

即座に攻撃態勢に戻って、再び叩き付けるフラットちゃん。
またもや跳ね返された杭を再度振り上げます。

「まだまだぁっっ!
Third Bullet!!」

【Impact!】

またまた響く甲高い音に混じって、何かが罅割れる音が聞こえました。

「うおおおおっっ!!
Fourth Bullet!!」

【Impact!】

今度は更に大きく罅割れる音が聞こえました。
良く見ると、障壁に亀裂が大きく走っています。

「よっしゃ、喰らえぇぇっっ!!
殲・滅・のっ!
Last Bulletーーーーッ!!!」


【Impact!!】

最後の一撃はまるでビルが崩壊するような轟音でした。
轟音の中、三枚目の魔力障壁が粉々に砕けていきます。

……普通はガラスが割れるような音になるのに、やっぱりフラットちゃんも普通じゃないの。

『あと一分切ったよっ!!』

再び、エイミィさんのカウントダウン。

「……よし、
じゃあ私達も行こうか、レイジング・ハート!」

【Yes,my master.
程良い魔力濃度です。
これならば、障壁を貫く事など造作有りません】

レイジング・ハートの言葉に頷いて空に浮かび上がった私は、慣れ親しんだ魔法を展開します。

足元には巨大な魔法陣。

環状魔法陣を三つ展開したレイジング・ハートの穂先に、今までの戦闘で濃密に飛び散った魔力が集められます。

集まった桜色の魔力がグングン成長し、私の身長を越えても大きくなり続けます。
凝縮される凄まじいまでの魔力にレイジング・ハートとそれぞれの魔法陣がビリビリ震えました。

でも、
もっと集める!!

「制御魔法陣を追加展開!」

【All right】

暴れだす魔力球を押さえつけるように、環状魔法陣を展開させます。
同時に砲身としてつかう環状魔法陣も展開開始。

「……いっくよぉっ!
全・力・全・開っ!!
スターライトォーーーッ、ブレイカーーーーーッ!!
バーストォォーーーーーッ!!!!!」


推定直径5mオーバーの巨光がラスボス(真)さんの障壁に衝突すると同時に周囲が跡形無く吹き飛んじゃいました。

「……おいおい、
俺達の攻撃が霞むな、フェイト」

「……そうだね……、
丸ごと全部、消し飛ばすなんて、
流石、なのはだね……」

ちょっとやり過ぎちゃったかな?と思ってるとフラットちゃんとフェイトちゃんの声が聞こえてきました。

……その気になれば二人とも私と同じ位の攻撃は出来るのに、驚きすぎだと思うの。

「おいっ!
まだ目標は健在だ!!
気を抜くなっ!!」

と、下の方から声が聞こえてきました。
ビルの屋上に降りたクロノ君です。

クロノ君の言葉に従いラスボス(真)さんへ向き直ると、大きな声が聞こえてきました。

「アア゛ア゛ア゛、アアァ゛ア゛ァァ゛ァ゛ァ゛ッッーーー!!!」

叫び声と共にスターライト・ブレイカーが巻き上げた煙が払われました。

更地になった中心地には、ボロボロのラスボス(真)さんの姿。
さっそく、損傷の修復が始まっていました。
さらに大きさが増している様な感じがします。

と、

「よっしゃぁ〜〜っ!
皆、お待たせやっ!!
シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ!
始めるでっ!!」

はやてちゃんの言葉に守護騎士の四人がラスボス(真)さんを中心に四方を囲みます。

直上に居る、はやてちゃんが杖を振り下ろすと、
ラスボス(真)さんを中心に三角形の巨大なベルカ式魔法陣が展開しました。

守護騎士の四人がそれぞれ立っている地点で構えを取ると、
巨大な剣十字が四人を先端に展開します。

「なのはちゃん、フェイトちゃん、フラットちゃん!
3人も手伝ってっ!!」

はやてちゃんの言葉に、ゆっくり回転していた三角形の魔法陣が動きを止めました。
同時に、三角形の頂点の円形魔法陣が力を発しているのが見えます。

「なるほど、
あそこに立ってサポートすればいいんだね!!」

頷きと共に飛び出す私を追うように、
「あ、なのは!」とフェイトちゃん、「やれやれだぜ」とフラットちゃんも飛び出しました。

私達が配置に着くと同時に『後、30秒!!』とエイミィさんの警告が聞こえます。

私達がデバイスの指示に従ってラスボス(真)さんへデバイスを構えると、はやてちゃんの声が朗々と周囲に響き渡りました。

「……無窮は牢獄、
……有限は福音。
破滅は、終わりにして始まり。
星が砕け、新しき星の種が生まれるが如く……。
……、
鳴り響け、終わりを知らせる角笛よ!
死を知らぬ神々に、安息の意味を知らしめよ!!」


はやてちゃんが詠唱を始めると共に、私達が立つ魔法陣から緩やかな振動が発生するのが感じ取れました。

その振動は、昔テレビで見た角笛の音のような地響きじみた音を放ち始めます。

『後、20秒!!
急いでっ!!』

逼迫したエイミィさんの声をも飲み込んでいく魔法陣の音色が緩やかに大きくなっていきます。

「……ギリギリ、間に合う……かな?」

思わず、そう口にした私。
既に術式が発動した以上、もう焦る心配は無いという根拠の無い安堵が私を包みました。

でも、それは間違いだったのでした。

 

 

 ◇ はやて ◇

 

 眼下に広がる巨大な魔法陣。

その各基点にはヴォルケンリッターの皆と、なのはちゃん、フェイトちゃん、フラットちゃんの7人が立ってる。

さあ、この騒動に私がトドメを指すんや。
それこそが、夜天の主たる私の責任。

「行くで、リインフォース!
これで悲しいお話も終了や!
明日からは楽しい毎日が待っとるんやからなっ!!」

【御意。
それが我が主の御意思ならば】

ラグナロク(神々の黄昏)を告げる角笛よ!!
轟けっ!!
ギャラル
……っ!?」

「ア゛ア゛アあ゛ああ゛ッあア゛ァッッーーー!!!」

私の呪文を遮るように響き渡る防衛プログラムの叫び声。

(……我ハ……書ヲ……守ル……)

「え!?」

叫び声に混じって、なんか声が聞こえた。

【どうかされましたか、主?】

「う、うん。
なんか、急に誰かの声が……」

「ア゛ア゛ア゛ァァーーーーーーー!!!!」

(我ハ……夜天ノ書、守ル……)

「!?
またやっ!!」

【?
はて、私には聞こえませんが……】

戸惑いの声を発するリインフォースを他所にまた、防衛プログラムが咆哮を上げた。

「ア゛ッーーーーーーーー!!!」

(……ナノニ、何故……オ前等……邪魔スル……ッ……!)

『あと15秒!!』

防衛プログラムの咆哮に混じって、エイミィと名乗った管理局の人が叫ぶ。
でも、私は彼女の言葉を意識的に無視した。

「聞こえた!
まさか、この声は防衛プログラムの声なんかっ!!」

【まさか!?
そんな事は起こり得ません!
アレは意思も無い、唯のプログラムに過ぎないのですから!!】

「でも、聞こえるんや!
夜天の書を守る邪魔をするなって!!」

【!?
……しかし、それは……】

「嗚呼ア゛ア゛あッーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

(何故……夜天ノ主……我ノ……邪魔スル……ッ!!)

『後、10秒!!
お願いっ!!
早くトドメを刺してっ、はやてちゃん!!』

突然聞こえた声に驚く私達へ、エイミィさんが懇願する。

「でっ、でも!
あの子、心を持っとるっ!!
私、人殺しなんて出来へんっ!!!」

「「「「『【!!??】』」」」」」

次の瞬間、皆の表情が凍りついた。

まさか、暴走するだけの防衛プログラムに心があるなんて誰が想像しただろう。
こんなん、悪い冗談やろ?

【……しかし、
それでも、我が最良の主よ。
防衛プログラムは殺さなくてはいけません。
貴女が、この町とこの場に居る者達を守りたいと願うのならば】

知りたくなかった事実に戸惑う私へ、リインフォースが悲しそうな声で諭す。

「その通りだっ!
君に殺しをさせる状況になってしまった事には、謝罪の言葉も無いっ!!
だが、
この作戦を提示したのは、君とリインフォースだ!!
それしか手が無かったとはいえ、君には、コレを完遂させる義務があるっ!!!」

なのはちゃんがクロノ君と呼んでいた黒服の少年が私へ鋭い言葉を向けた。
でも、
申し訳なさそうな顔で言うたら脅しにならへんで。

……、
皆の言いたい事は判る。

でも、もう一回、フラットちゃんの時の気持ちを味わうんは嫌や。

でも、その為に皆を犠牲にするんは間違ってる。

でも、だからと言って、殺して御仕舞いってのも違うと思う。

『後、5秒!!』

エイミィさんが叫ぶ。

「ええいっ!!
俺に術式の制御権を寄越せェッッ!!!
殺しがなんだっ!!
生き残る為なら、なんだって殺してやらぁっ!!!
アルギュロスっ!!
術式を乗っ取れっ!
とっとと終わりにするぞっ!!!」

【むっ、無理ッス〜〜!?
いきなりベルカ式魔法を乗っ取るなんて、ウルトラCッス!!
火力最優先インテリジェント・デバイスにそんな芸当求めないで下さいッスーー!!】

「ああんっ!?
テメェ、【多少の無茶は叶えるッス〜♪】と抜かしてただろうがっ!!!」

【多少の範疇、越えてるッスーーー!!】

フラットちゃんとデバイスが騒いでいるのが聞こえた。

……私がフラットちゃんなら、躊躇う事は無かったんやろうな。
彼女は、あの『箱庭』で見たお兄さんのままや。
恐いけど、強い人。
私は……そんな風には………なれない。

『あと4秒!!』

『エイミィ!
皆を転移させなさい!!
アルカンシェルを使うわ!!!』

『でっ、でも艦長!!!
……3秒!!』

『2秒!!
……お願い、はやてちゃん……』

『1秒!!!
……強制転移、スタンバイ……御免なさい、海鳴市っ……』

決断出来なかった自分の弱さに、
いつも偉そうな事を言ってた癖に、いざと言う時責任を取れなかった自分の情けなさに、
なにより、
沢山の悲しみを背負ってきただろう足元の防衛プログラムを助けてあげられなかった悲しさに、
石田先生や、すずかちゃんを始めとした沢山の命を奪ってしまう恐ろしさに、

私の瞳から涙が零れた。

次の瞬間……、

『タイムリミット!!
強制転移開……しっ!?
……、
……、
……、
……あれっ!?
暴走体の魔力反応が急に安定したよっ!?!?
なんでっ!?
どうしてっ!?』

驚くエイミィさん。

そして、足元から今までと違った雰囲気で声が響いた。

「アアアァーーーーッ」

(主、我……要ラナイ……?)

「なっ!?
ち、違うんや!!
そんな訳無いっ!!
ちょっと壊れてるだけで、君も私の家族なんやからっ!!!」

そうや。
だから、私はトドメをさせなかった。
家族を殺すなんて、私には出来んから……。

私の言葉を聞いた防衛プログラムは、
どこかリインフォースに似た顔を私に向けると、ぎこちなく笑った。

「……ア、あ、嗚……アリガとウ……。
ソノ言葉……我……満足……。
ダカラ……、
……、
……轟ケ、『ギャラルホルン』ッ!!!」

いきなり、ギャラルホルンの制御を奪われた。
リインフォースが言っていた「アレも夜天の書」ってのはこういう事なんか!?

でも、ギャラルホルンは正常に稼動し、
……防衛プログラムを分解し始めた。

『そんなっ!?
唯のシステムが自己破壊を選ぶなんてっ!?』

「なっ!?
待ってぇっ!!
死んだらアカンっ!!
生きてれば、なんとかなるンや!!
調子悪いんやったら、治したらええんや!
だから……、
逝かんといてぇっっ!!!」

止め処無く流れる涙。
私の叫ぶ声も、ギャラルホルンの駆動する咆哮にかき消されてしまう。

涙に歪む視界の中、
あっと言う間に大半が消滅した防衛プログラムは……、

最後に、ニッコリと笑って虚空に消えた。

……、

嘘や。

……こんなん、

嘘や。

心を通わせられたのに……二度と会えへんなんて、嘘や。

「……、
……こんなん、嘘やぁっーーーー!!!」

 

 

 ◇ フラット ◇

 

 空の上で、ボロボロと大泣きするはやて。

いつの間にか、俺の周りに集まっていたフェイトとなのはも貰い泣きしている。

「はぁ、やれやれ。
どうにか一段落したか……。
もう、動けネェ……」

そして俺は疲れ果て、地面に座りこんだ。
考えて見りゃ、
守護騎士の連中と遣り合った後、リンカーコアにされて夜天の書の内部でゴタゴタに巻き込まれ、
どうにか外に出られたら、防衛プログラムとの戦争だ。

ギャラルホルン起動時に最後の魔力を持ってかれたし、
もう、魔力の一欠片もねぇや。

……なんか、時の庭園の最後の時を思い出すな。
あん時は、庭園の崩壊に巻き込まれて危うく潰される所だったんだが……。

ま、今回はそんなオチにはならんだろう。

「……?
あ、……ふ、フラットちゃん!
か、体っ!!
体、光ってるっ!!」

泣き顔でヒデェ面になっているなのはが驚いた顔で俺を見た。
同じくフェイトも俺を見て驚いている。

「……あん?」

何の気無しに左手を目線まで上げて見る。

……手が光ってた。

身体を見下ろすと、肌が露出してる所は全て銀色に光っている。

「なっ!?
なんじゃ、こりゃぁっーーー!!!」

なんとなく、体が縮んでいる気がする。

……と、
次の瞬間、猛烈な光と共に訪れた倦怠感が俺の意識を刈り取った。

























第6話 完





















  あとがき


はい、またもや大変にお待たせしてしまいました。

TANKです。

その分のお詫びって訳じゃないんですが、ついに文章が100KB越えしました。

正直、上下巻って感じに分けた方がいいかもって予感。

自分は別に気にする性質じゃないんですが、大容量の文を投稿される方々やBen御大は分けてらっしゃるのでそうした方が良いのであれば再考します。

とりあえず、次の話でA’s編は終了です。

今回は、とある感想を参考にJamプロジェクトを四六時中鳴らしながらの創作活動でした。

気合がギンギンに入るのは良かったのですが、入りすぎて話がグダグダになる罠。

個人的に、はやてとリインフォースコンビは「Divine love」もしくは「めぐり逢えた奇跡」。

フェイトには「Rising Force」。

フラットには「Dead or Alive」。

そして我等が、なのは嬢には「SKILL」か「Break out」もしくは「VICTORY」が一押し(笑

魔力チャージ中に『motto!motto−!』とか『百万倍!百万倍!!』とか『ゴングを鳴らせっ!!』とかBGMとして流れそうな雰囲気です。

でも、真面目に考えたら「Name〜君の名は〜」かな。

そういや、水樹女史の「Dancing in the velent moon」も聴きましたが、普通に歌ウメェーー!!

スゲェぜ、水樹女史!

これで吸血鬼と恋の歌じゃなければ、フラットのテーマソングに決定だったのですがw


今回のお話は長丁場になるので、出来るだけ色んなネタを投入しようと頑張って見ました。

書いてる自分がダレてくるからネタで気力回復してる部分もありますが(汗

「ランページ・ゴースト」モドキはフェイト&フラットでやってみました。

二人とも近接戦を主力にしてるのでちょっと可変式?

「ランページ・ゴースト」も弾ばら撒いて近接して目標タコ殴りだから良いかな。

追加パッチ「リボルビング・ステーク」もスパロボから。

でも、攻撃時の掛け声はスクライドの人から……。

ラスボス戦が駆け足になっちゃったのは、自分の技量不足です。

もうちょっと肉付けするべきなのかもですけど、時間が足らない切迫感も欲しかったし……。

物語を書くのは難しいです。

このラスボス戦の大半がその場での思いつきなのが最大の敗因な気がしますが。

最後のはやての絶叫は、とある感想に対する回答です。

ある意味、原作通りに進むより酷い結果な気がしてます。

正直、はやて嬢は既に家族を失う悲しみは十二分に味わっているので今更別れを演出する必要は無いかな〜と最初は思ってましたが。

でも、自分の行動が引き起こす結末って奴を叩き付けられないと次の話で世界を変革しようと望む小狸さんは生まれ得ないかも……と言う事で。


クリスマスまでに投稿出来たらカッコ良いよなぁと思ってましたが、こんな形になってしまってトホホです。

でも、次の最終話はクリスマス当日の話なんだ(爆


ところで今、スパロボZを買おうか迷ってます。

話が面白いのは間違い無さそう。

でも、戦略シミュレーションは壊滅的に苦手なんだよなぁ(トホホ

スパロボMXでもAIが動かす守るべきユニットに勝手に突撃されて勝手に撃破され、即ゲームオーバーというループに疲れてしまったへタレです。


追記 文章の三分割化と誤字修正を行ないました。

 







感想代理人プロフィール

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代理人の感想
膨大な魔力容量と魔道知識を兼ね備え、でもエアリード機能は実装してない夜天の書はまさに無敵(爆)。
願わくば、原作通りでなく彼女には生き延びて貰いたい物ですが・・・。
何と言ってもあのノリの良さは死なせるには惜しい(そこかい)。


それは置いといても、いつの間にかトリーズナーになってるフラットがアレだなぁ。
いや最初からドチンピラだから、元からじゃないかと言えばそうなんですけど。w


ところでふと思い出したドイツ語豆知識。
ドイツ語は形容詞と名詞の間にハイフンやスペースを入れません。
どういう事かというと例えばヴォルケンリッターは「放浪の騎士」「遍歴の騎士」といった意味であり(実は「守護する騎士」ではなかったり)、これを英語にすると「Wondering Knight」とか「Knight-Errant」とかになるかと思います(実際には違うかもしれませんがご容赦)。
だからドイツ語も「Wolken(さまよえる、湧く)」と「Ritter(騎士)」とで「Wolken Ritter」とか「Wolken-Ritter」などと書くのかと思いきや、そうではないんですね。
ドイツ語だとこういう場合「Wolkenritter」と、二つの単語をくっつけちゃうんです。間にスペースやハイフンを入れないで、一つの独立した単語になる。ドイツ語で時々やたら長ったらしい単語があるのもこれが理由です。
だから日本語でも「ヴォルケン・リッター」とか「クラール・ヴィント」と表記するよりも「ヴォルケンリッター」「クラールヴィント」と表記する方がドイツ語っぽいんですねー。(確か公式でも「・」は入っていません)
ドイツ語っぽい表記を使う際は覚えておいても損はない豆知識です。大して得もしないけど。w

・・・まぁドイツ語じゃなくてベルカ語だ(あるいはドイツ語じゃなくて帝国公用語とかw)と言われればそれまでなんですが、それはそれってことで(爆)。


>イギリスの料理は大雑把で酷いらしいが、朝食とサーロインステーキだけは美味いらしい。
後ローストビーフとスコーンに塗るクリーム(あえてスコーンとは言わない)。
もっとも、「イギリス料理」なる物が出来たのは実は第二次世界大戦以降という話もあるのですが。
・・それまではどんなだったんだろう?

>スパロボ
今回は難易度さえ上げなければかなり簡単・・・だとは思いますが、MXで苦労してるようだとさすがにおすすめするのにも二の足を踏みますかねぇ。w
EASYなら難易度自体は多分MXより低いし、今回は護衛ミッションも少ない(人工太陽シナリオのルビーナは戦艦を落とせば自動的に離脱してくれるし)んですけど、ね。

>分割
そうですね。装飾などは少ないとは言え、この容量ですと表示に時間がかかる方もいらっしゃるでしょうし。
50kb程度で分割しておくのも悪くはないかと思います。


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