人生という名の盤上で 一話
出た目:1
「ルーレットを回して、出た目の数のアイテム(設定)を手に入れ、先に進む」
ここはダリの絵の中。
分かる人にはわかり、分からない人にはまったくもっと理解できない絵の中。
そこに二人の人物が酒盛りをしている。
驚くべきことに、二人はまったく同じ人物。まったく同じ格好。
遺跡とアキトだ。
ふと、ここで不思議に思うかもしれない。
アキトにとって、遺跡とは鬼門中の鬼門。
どこぞの修行場の門の前で突っ立っている使い物にならない二人組の門番とは違う。
これのせいで、両親は殺され、自分は戦争に巻き込まれ、自分の元奥さんは組み込まれるわ、改造されるわ……
遺跡がなかったらアキトの人生。それなりにまともだったのかもしれない。
なして、そんなものと一緒に酒盛りなんぞしとるのか?
というより、遺跡って人だったの?
「どうだった? 今回」
芋焼酎をワイングラスに注ぎながら、アキトがアキトに問いかける。
どっちがどっちかぜんぜん分からない。しかたないので、アキト甲とアキト乙と分けて書いていこう。
芋焼酎をワイングラスに注ぎながら、アキト甲がアキト乙に問いかける。
「ちょっと失敗したな。いつもなら、あと腐れなく出るつもりだったんだけどな」
唐揚げをつまみながらアキト乙はぼんやりと思い出していた。
「まさか、ユリカの料理がまずかったなんて……」
ミスマルユリカの料理がまずいことはオフィシャル設定である。
というより、アキト(どっちがアキトかは不明)自身、それの被害者ではなかっただろうか。
「ここ、五、六回は美味かったからなぁ」
「まぁ、そういう風に設定したからな」
「つい、今回も美味いと思ってたからなぁ……」
「だからといって、冷凍食品にして売り物にするのは間違ってると思うんだけど……」
アキト甲がどこかを見ながら苦笑いを浮かべた。
どうやら、アキト乙の方はユリカの料理(オフィシャル設定)のことを知っているようだ。
肌に浮かんでいる鳥肌がそれを証明する。
「いや、試食品は美味かったんだ……ユリカじゃなくてホウメイさんが作ったものだけど」
「まぁ、同じ設定が続いたからといって、それが今回も続くと思った君の失敗だな」
「お前……狙ってやったろ? 遺跡」
どうやら、アキト甲の方が遺跡のようだ。というわけで、これからはアキト甲は遺跡、アキト乙はそのままアキトと呼称する。
「ふふん、ここ数百回、君の生活がそれなりに順調だからね。ここらで失敗の一つや二つ積み重ねなきゃ」
数百回?
「まぁな、この逆行生活も慣れてきたからな。たいていの設定は網羅している」
逆行生活? 設定?
「しかし、そう考えると君も長いこと生きているねぇ。今何歳だっけ?」
「えーと、五千過ぎてからは数えてないな」
五千!?
「でもまぁ、おめでとう。今回で逆行生活一万周年だよ」
逆行生活一万周年!?!?
「あっ、そうだっけ?」
「うん、君の先輩からのメッセージ、読みまーす」
遺跡の方はいい加減酔ってきてるようだ。
「『アキト君へ、逆行生活一万周年おめでとう。僕の方はそろそろこちらの世界が飽きてきたので、そちらの方へ行こうと思ってます。君よりは遅れるかもしれないけど、待ってってくださいね。』」
「こっちに来るんだ?」
「『追伸、友達が二人ぐらい来るかもしれません。こっちでは何回か会ったと思いますが、そっちに行くのは初めての二人なのでよろしく』」
「二人………あぁ、あの二人も来るんだ。懐かしいなぁ」
「しかし、君も長いこと生きてるねぇ」
「そうだなぁ……」
アキトはふと、こんな生活が始まったときのことを思い出していた。
が、全部紹介すると軽く百科辞典レベルになるのでダイジェストで紹介していきます。
逆行生活:一回目
普通に頑張った。「時ナデ参照」
二回目
もっと頑張った。でも、ランダムジャンプ。
三回目
何回やっても元に戻るので自堕落になる。
そのせいか、ちょっと精神を病んでしまい、ナデシコを降ろされる。
ほかの逆行者、というか、ルリちゃんの助けを得てもう一回ナデシコに乗る。
立場が微妙。また、ランダムジャンプ。
四回目
前回の失敗を挽回しようと思う。
もっと全力を出せば、このループから逃れられるかもしれない。
一回目と二回目を混ぜて三乗したぐらいにがんばる。でも、ランダムジャンプ。
五回目
頑張ったのに失敗したので、茫然自失としていたら、ナデシコが落ちる。
失敗したことはくよくよせず、そのまま、地球で暮らす。大往生。
六回目
逆行したときの最初の台詞「死んでもやり直しかよ!!」
死んでもやり直しかなと思いながら、戦っていたら、ジョロに撃墜されて戦死。
ちょっと屈辱を感じた。
七回目
自殺してみた。といっても、手首を掻っ切ったわけではない。
北辰にちょっかいを出して殺されただけ。
八回目
やっぱし死んでも戻ってきた。テンションが結構落ちる。
仕方なしに一回目の逆行と同じように行く。
このころから、自然な死に方、自然なランダムジャンプに移行することがうまくなる。
先を知っているのはつまらないなぁ、このときから感じ始める。
九回目
逆行時最初の台詞「やっぱ、男の夢はハーレムだよな」
このときから壊れ始める。
十回目
主要メンバーの全落しに成功。
次は恋人有り、婚約者有りのキャラも落とそうと決意。死因は腹上死。
十二回目
決まった相手のいるキャラも全員落とす。
「次は……ホウメイさんだ!!」
十五回目
苦労の末、ホウメイさんを落とす。
しかし、ハーレムにはならず。
「今度こそ、全キャラハーレムじゃ!!!」
程よく壊れる。
二十一回目
登場する……というか、出会う女の人、すべてを落とすことに成功。
「人類が誕生してから最強のテクを身につけている俺に不可能はない!!」
ただし、何のテクかは不明。
しかし、このころから肉欲の生活に飽き始める。
二十二回目
「ハーレムよりやっぱ、特定の相手、LOVEだとLOVE」
手始めにルリちゃんとのLOVE生活。砂を吐きたおす展開となる。そのまま、大往生。
五十七回目
全キャラとのHAPPYEND、TRUEENDを全部網羅。
しまいには、「女も飽きたな……」
五十八回目
男に手を出す。が、途中で自殺。
「俺はノーマルだ!!!」
五十九回目
前回の汚れを落とすために仏門に下る。
六十回目
遺跡と初めて出会う。
「一桁台の逆行のときにあっていたら、多分、俺はこいつを殺していただろう」アキト談
「だから、ここまで粘ったんだよ」遺跡談
六十一回目
このときから遺跡による設定換えが始まる。
このときの設定、「もし、アキトが女だったら」
それなりに有意義な生活を送る。
「女同士ってのは凄いな……」
何が凄いかは不明。
六十五回目
この逆行生活に先輩がいることが判明。
その人物とコンタクト。
この逆行生活において楽しむコツを伝授。
「五回に一回は失敗して、十回に一回は本筋とは関係のない生活を送るべし」
六十六回目
先輩の言葉を信じ、本筋とは関係なしに地球でのんびりと恋人を作り結婚してそのまま大往生
「魂の充電ってみたいなものかな」先輩談
六十七回目
前回の魂の充電のおかげか、かなり気が楽になる。
「結構ストレスがたまっていたんだなぁ」
七十回目
先輩に誘われて、先輩の世界に行ってみる。
結構ハードな世界だとしる。
「先輩、凄いですね。ウルトラマンみたいな世界ですね」アキト談
「ウルトラマンの方が良いよ。だって、あっちは人踏み潰したり、家壊しても文句言われないし」先輩談
「なんだったら、この化け物、アキトの世界に送り込もうか?」遺跡談
七十一回目
遺跡の悪ふざけ発動。
第三から第十六までの全ての化け物が現れる。
手に負えず、アキト死亡。
七十二回目
先輩と稽古。
「手加減せずにお願いします!」アキト談
「別に良いよ」先輩談
特訓開始、五秒でアキト死す。
八十九回目
やっと、先輩の動きを目で追えるようになる。
「なんで、光よりも早く動けるんだ!!」アキト談
「ATフィールドって便利だよね」先輩談
百二十五回目
それなりに(びっくりするぐらい手加減した)先輩とまともに戦えるようになる。
さり気に人外一歩手前になっていることに気づかない。
晃気を利用した念体を得意とする。
百二十六回目
リベンジ成功。一番の強敵は爆雷型化け物。
「触ったら爆発なんてなしだろ!!!」アキト談
最後の化け物、16番は原作に従って自爆で倒す。
ちょっとした男のロマンを感じる。ライ○ーマンみたいな感じ?
二百五十七回目
魔術を習得。
「メラよりファイアの方がかっこいいな」アキト談
三百五十七回目
先輩伝授の格闘技を多数習得。
「やっぱ流派東方不敗だよな」アキト談
五百七十九回目
ガイの女性版と出会う。
かなりのデカルチャー。
「ガイがそのままの格好で性別が女になっただけかよ!!!」
もっとお約束な展開の方を望むと遺跡に陳情。
五百八十回目
「だからといって、ムネタケ女版かよ!!」
最近三村ツッコミばっかだなと反省。
千六百七十九回目
しばらく、先輩と世界を交換。
それなりに新鮮な感じになる。
四千七百六十一回目
先輩の世界も完璧のコンプ。
「女性キャラが少ないなぁ」アキト談
「畜生! なんでこっちの方が女性が多いんだ!!」先輩談
どうやら、両者ともに女性に弱いという弱点を克服したようだ。
四千七百六十二回目
「よっしゃ、こっちの世界完璧にしてやる!!」
アキト、ある種のゲーマー魂に目覚める。
七千百二十一回目
完璧コンプ、本格的に飽きが来る。
「どうしよう…………」アキト談
「だったら、楽しませてやるよ」遺跡談
「僕も協力するよ」先輩談
七千百二十二回目
俗に言うクロスものになる。
「ウル○ラマンとゴ○ラとガ○ガイ○ーと仮○ライダーア○ゾンとペル○ナ罪のクロスかよ!!」
かなりの節操なしの世界となる。
なお、設定はごちゃ混ぜ。矛盾しまくりである。
八千九十五回目
遺跡の提案。
「これからの設定と自分の生き方、ダーツで決めない?」
結構ナイスアイデアと思う。
八千九十六回目
実は自分がダーツが苦手だったことを知る。
設定:全キャラの性別が反転
生き方:木連側のみのハーレムを目指す。
北辰女バージョンはガイ女バージョンよりも恐ろしかった。
ダーツの腕を磨こうと決意。
九千一回目
それなりにダーツで狙えるようになる。
設定:アキトがもう一人いる。
生き方:ダークヒーローまっしぐら。
「これ前にやったことあるぞ」
九千二回目
ダーツの的が回転し始める。
秒間五億回転。
「加減ってものを考えろ!!」アキト談
「遺跡ですから」遺跡談
どこからともなく、なぞの攻撃を受け、遺跡沈没。
九千三回目
遺跡が沈没した成果、遺跡というものがない設定になっていた。
ものすごく普通の展開。
「逆に新鮮だったな」アキト談
「カペゴキャガリガリガリペペゴギャボヒャーーー!!」遺跡談
九千四回目
遺跡が暴走。
全キャラが逆行するという珍事件。
楽に行けるかなと思ったが、だいたいが六百七十一回目と同じ。
「なんだ……つまらん」
九千五回目
遺跡復帰。ついでに新機能搭載。
「望んだ相手を逆行に巻き込むことができるぞ」遺跡談
これからは面白くなりそうだ。
九千四百五十回目
何度も試した結果、一番一緒に逆行して楽な人物がジュン、もしくはガイだということに判明。
「ジュンは逆行しても逆行しなくてもあんま変わらないし、ガイもあんま変わらないから楽だ」アキト談
そして、一万回目の逆行の開始。
「というわけで、今回の設定決めルーレットだ!!」
「わー、ぱちぱちぱち」
やる気があるのかないのかまったく持って分からない。
「今回は決まった設定をアキトには教えません!!」
「おっ、それいいな」
「というわけで、さっさとダーツを投げる」
そういうと、虚空から一本のダーツを取り出す。
そのさいにどこからともなく「投影開始」という言葉が聞こえた気がするが気のせいだろう。
「さぁ、パジェロパジェロパジェロ」
掛け声とともに、ルーレットが勢いよくまわり始まる。
冗談でもなんでもなくパジェロはルーレットの中に存在する。
事実、アキトは今までに、米五表、ダイアのネックレス三個、海外旅行四セット、パジェロ七台、たわしを千百二十五個を手に入れている。
「すぅーーーー……………はっ!!」
アキトの気迫とともに、ダーツはまっしぐらにルーレットに向かって突き進む。
そんでもって、突き刺さる!!
それと同時にアキトが消える!!
「えーと、今回の設定はと………おっ、これは初体験だよアキト君」
遺跡は慈愛に満ちた笑顔とともに、コップに入った酒を一気飲みした。
コップの中身はウォッカだった。
後書き 代弁者:如月龍次(作者の兄)
…………ループもの? それでギャグ?
たしかに、ナデシコのループ+ギャグは見たことがないと思うが……
しかし、卑怯だな。こういうのだと、とんでもない設定でも許されると思っているからな、こいつ(鉄鎖)
まぁ、今回の書き方も卑怯だな。中盤全部あんな書き方で行を埋めてやがる。
ダイジェストというか箇条書きだな。
というか、プライス更新しろ!!!
代理人の感想
うーむ。どっちかっつーと一発ネタのほうが良かったかなぁ、これw