人生という名の盤上で 二話
出た目:4

「某漫画の主人公な体質になる。五マス進んで三マス戻る」





「今回もいつもと同じ場所からのスタートか……」

アキトにとっては毎度の場所、ナデシコが隠されてあるサセボのドック付近の公園にアキトは姿を現した。

「さて、今回の設定がなんだか分からんが、とりあえず、ナデシコに乗らなきゃ話は進まないな」

アキトは長い間、逆行生活を行い続けてきたせいか、独り言が多くなっている。

『アキト! アキト!!』

と、ここでラピスからの電波が届く。

しかし、アキトは落ち着き払ってナノマシンを起動させる。

長い人生生きてきたせいか、たかがIFS用のナノマシンでもマシンチャイルド並みの能力を引き出せるほど使いこなせる。

それを利用して、頭の中の記憶を引っ張り出す。

引っ張り出すのは、いまや思い出深い第一回目の逆行。

そのときのラピスとの会話だ。

ズルするなよと思うかもしれないが、一回、ラピスに「実は俺、この時代をループしてんだ」とあっさり言ってみたことがある。

あっさり信用してくれたのはありがたかったが、問題はその後。

毎度おなじみお世話係、ハーリー君にあっさり教えて、それルートでルリちゃんに情報が渡る。

そのあとは同情されて、心配されたのはちょっとうれしかった。

でも、その後、お仕置きのときにオモイカネ+イネスさんタッグの力で俺の記憶を引き出された後は恐ろしかった。

というか、そのときの逆行はその後の出来事のせいで終わってしまったからな。

それ以降、逆行後の最初の会話イベント、「ラピスの説得&説明」ではこれを毎回利用している。

結構楽だし、なにより、変なイベントのフラグにならない。これ重要。

そんなわけで、ラピスはある種の一人芝居を演じる羽目になる。

まぁ、いまさらそんなこと気にしていたら、アキトはとっくの当に精神が粉砕されているだろう。

今思い起こすと結構早い段階で壊れたのはよかったのかもしれない……常識が。

(悲しくなってくる。今でもノーマルだぞノーマル。節度を保って女性とも付き合うし……)

一時期、男に手を出そうと思った奴の台詞ではない。

(後ろから刺されたくないしね)

過去の思い出を振り返って、鳥肌を立たしているうちにラピスとの通信が切れる。

これでラピスは今のところ変化無しか。

「そうと決まれば、ユリカに会わなきゃいけないよな?」

『はい』『いいえ』

ついでに言うと、何時からかは分からないが、こういう風に行動を決めようとすると頭に選択肢が現れるようにもなっている。

→『はい』『いいえ』

「いくか……」

そういうと、アキトは地面に転がっている荷物を拾い上げ、自転車にまたがり公園を出て行った。

注意しておくが、口に出すといっても、それはとても小さな声で自分にしか聞こえないぐらいでしゃべっているから、今まで誰かに迷惑かけたことはない。

まぁ、ばれても別にいいのだが、今回は記念ともなる一万回目の逆行。

それなりのHAPPY、もしくはTRUE ENDを選択したい。










「どわーーー!!」

すっかり、おなじみとなった光景、自動車のトランクから零れ落ちてくるスーツケースに体当たりされるアキト。

しかし、派手に吹っ飛んでいるように見えても、実際はノーダメージ。

晃気なんか使わなくても、軽くナデシコをスクラップにできるほどの力を持った人外アキト(一歩手前)にとって、これぐらいの衝撃を吸収することなど、朝飯前どころか起床前である。

一回、このときに失神してみたら、気づいた時にはエステバリスのコックピットに放り込まれていたときは驚いた。

(いったい誰がやったのだろうか? ルリちゃんに聞いても教えてくれないし……)

ついでに言っておくが、オモイカネのデータにも残ってなかった。

「大丈夫ですか!?」

いつも通りにユリカが車から出てくる。

大分前に、ちょいと悪ふざけして、「おんどれ!! 骨折してもうたやないか!! 治療費よこさんかい!!」とわめいたら、五百円を渡された。

さすがにこのときは自分の元妻の感性を疑ったものである。

いや、手料理を食べた時から疑っていたのかもしれない。

「大丈夫ですよ。でも、荷物が……」

無論、飛んでいたスーツケースの中から既に写真は抜き取っている。

このシーンでは大体五割の確率で、ユリカが写真を持っていくことが判明している。

最初のころはどうやってナデシコに乗ろうかと悩んだものだった。

「何やってるんだよ、ユリカ。遅れちゃうよ」

何度逆行を繰り返しても、何度設定が変わっても、なぜかジュンだけは影が薄いのがオフィシャルである。

実際、アキトががんばって、ジュンが前面に出るようにがんばってみたら、あっさり戦死してしまったときは驚いた。

なにかしらの謎のパワーが働いているのだろうか?

パワーといえば、ゴートさんはあれ以来ずっとあーだ。あれはパワーというより自然の摂理のようだ。

せっせと、ユリカとジュンが荷物をまとめているのを手伝ってる不利をしながらアキトは今回の設定は何なのか考え始める。

(性別転換ものではなさそうだな……俺の触手が働かないからな)

いろいろと不思議な体験を繰り返してきたせいか、アキトの感覚はえらいことになっている。

半径百キロ以内の人間の性別・体形・年齢・体温・改造されているか否か・処女か否か好みの体位ぐらいは軽く判断できるようになっている。

(まぁ、一話限りのキャラが出てこない限り、全員知っているんだけどね)

ナデシコにかかわる女性全てを食ったことがあるアキトにとって、この力はあまり意味がなかったりする。

たまに、過去が違ってたりして、処女じゃなかったり、好きな体位が違ってたりとするが……

(大体、いつもと同じメンバーのようだ。特に変化は無し・・・・・と)

現時点ではいったい如何なる設定チェンジが起きているかは分からない。

しかし、油断は禁物である。

ある時なんかは、何を考えてかナデシコが合体ロボだったときがある。

アカツキは何を考えていたのだろうか? いや、遺跡か。

と、アキトがロケットパンチを発射する真ナデシコMkUの勇姿を思い浮かべていたら、いつの間にか片付けは終わっていた。

「すいませんが……何処かであった事あります?」

何回か、「会ったもなにも、火星で隣にいたアキトだよ」といったことがあるが、約97%の確率でユリカルートを選択させられる。

何度ルート変更しようとしても無理なんだよな。あれも不思議だ。だから、今回ももちろん……

「いえ、知りませんけど……」

「すいません、変なこと聞いちゃって」

「いいんですよ。ほら、お連れの方が待ってますよ」

ユリカの後ろではジュンがトランクにスーツケースをつめ終わっていた。

「いろいろとすみませんでした」

そういって、頭を下げたユリカはジュンとともに車で去っていった。

それをぼんやりと眺めながらアキトはつぶやいた。

「よし、今度はプロスさんだ」









実のところ、プロスを強敵だと「最初」は思っていた。

どんな演技を見抜くし、嘘ついても即効でばれる。

だけど、アキトには必殺技がある。

そう、「ラピスの説得&説明」の時に使ったメモリープレイバック(命名、先輩)である。

これはただ単に、過去の自分の行った事を繰り返して行うことではない。

アキトの脳内にはこれまでの膨大な逆行生活で培ってきた大量の情報と経験が存在する。

そんなアキトからみれば、プロスさんなんて子供みたいなもんである。

だますのなんてお茶の子さいさい。

それらの情報と経験の中からベストの会話、動作、表情の出し方を選出して、完璧なノーマルアキトを生み出すことができるのだ。

だから、変な言い訳なんて考えなくてもいい。

自分はいろいろと起きる出来事に対してアドリブで行動し、誰かを説得させたきゃこれを使えばいいのである。

ただし、女性を落とすときはこれを使わない。

あくまで自分のテクで勝負する漢である。








そんなんだから、アキトは目の前でDNA判定の結果待ちをしているプロスを見てもヒヤヒヤどころかドキドキもしてなかった。

「おや? 全滅した火星から、どうやってこの地球に来られたんですか?」

何時も通りのプロスの出だしの言葉を聞いて、アキトはメモリープレイバックを発動させる。

たいていは一回目、もしくは二回目の逆行、そして、逆行してない正真正銘の一回目の人生のときの会話が混ざって話を進める。

アキト自身はこのメモリープレイバックをかなり信頼している。

いままでの説得成功率100%は伊達じゃない。

そんなんだから、アキトはメモリープレイバックを発動させたら、のんびりと今後の展開を予測したり過去の思い出を振り返ったりしているのである。

(そういえば……プロスさんの本名って何だっけ……)

ここまで一万回の逆行を繰り返してきたアキト。年数で表すと何年たっているかはまったく分からない。

そのまま、大往生したり、逆行した途端死んだこともあった。

そんなこんなで、かなりの長寿であるアキトだが、いまだにプロスの本名は分かっていない。

たまに知ることはあるのだが、なぜか次の逆行の時には忘れているのである。

どうやら遺跡がなんか仕掛けているらしいが、別段困ったことはないのでほっといている。

(なんで、わすれさせられるんだろう……)

よっぽど面白い名前なのか、かなり秘密盛りだくさん、伏線てんこ盛りの名前なのか、実は本名なのか?

遺跡は何を考えて、プロスの本名をひた隠しにするのだろうか?

実際のところ、謎は謎のままのほうが面白いと思っているからだけなのかもしれない。

「それではこちらにどうぞ」

じっくりとアキトがナデシコ七不思議のひとつ、プロスペクターの本名を考えていたら、どうやら話はついたようだ。

今回もいつものと同じように、コックとして働くことになったアキト。

実際はコックだろうが、整備班だろうが、医療班だろうが、オペレーター、艦長、軍事アドバイザー、清掃班にネルガル会長となんでもござれなのだが……

「はい」

そういいつつ、ナデシコに案内するといったプロスの後にアキトはついていく。

長い人生生きてきたが、料理はずっと趣味だったりする。

料理に終わりはない。

万人の舌を唸らせる料理を作り出すのが、さりげないアキトの人生目標だったりする。

某料理アニメのように、鍋のふたを開けたら虹色の竜が飛び出る料理なんかも作れるようになったアキトだが、そういうアクションではなく舌で勝負するのが、アキトの漢なとこである。









「こんにちわ、プロスさん」

ちょっと、ナデシコが合体ロボでなかったことになんとなく残念な気持ちになっていたアキトに、いつものごとく声がかけられる。

「おや、ルリさんどうしてデッキなどにおられるのですか?」

言っておくが、ルリはこのループには巻き込まれていない。

ずーーーと、第一回目の逆行。すなわち、アキトだけが一回目の逆行した世界に戻っているだけだ。

ルリにしてみれば、一回目の逆行。アキトにしてみれば。一万回目の逆行。

何回か、このループに巻き込ませたことがあるが、たいていがルリルートにつながる。

というか、繋がらせなきゃ殺される。

実際、この一万回の逆行のうち、女性に殺された回数は千を超えるアキト。

アキトは不思議でたまらない。

(なんで、彼女たちは俺に気配を悟らせないで、俺の背後に立てるのだろうか?
ついでに言うと、常に晃気で体をガードしているのに、たかが包丁で刺されるのだろうか?
ガードインパクトされた感じはしない。防御不可技か?)

アキトが格闘ゲーム……いや、人生について考えていたら、

「こんにちわ・・・アキトさん」

と、問いかけられた。

慌てふためいて、ぼろを出すようなことはしない。

それは六回目で十分に堪能した。

(ルリちゃんのあの目は怖かった。なんか、心の底どころか未来過去まで見透かされてるような気がして……)

ちょいとしたことで知り合った、神様の一人だと呼ばれる女性がそんな目を百個辺りもってると聞いたことがある。

実際アキトは聞いてみた。自分の目を与えたことがあるのは一人だけなので心配しなくてもいいのねー、と言われた。

じゃあ、ルリのあの目は自前のものか? アキトは知らない間にルリが人外になっていることにむせび泣いたものである。

自分のことは棚に上げて……

と、のんびり……じゃなくて、じっくり人生を考え直していたら、

ビィーービィーービィーー

と、警告音的なものが流れた。

「それじゃあ、私はブリッジへ!!」

と、走ってルリがブリッジに向かう。

(失敗した……メモリープレイバック発動させたまんまだった)

メモリープレイバッグの弱点は今までにない経験をするとバグることである。

アドリブには向いていない。パチスロはできないタイプである。

今回はバグらなかったようだが、かわりに時間を考えずルリと話し込んだようである。

「しまった……まぁ、いっか。とりあえず、格納庫にでも向かうか……」











と、格納庫に着いたアキトだが、当然、エステバリスに乗り込……まない。

「ただのコックが乗れるわけないよな」

と、先輩の世界で出会った髭めがねの笑いを忠実に再現した笑いをする。

何回か、こんな風に遅れて(ガイに呼び止められなかったり、今回と同じようにタイミングずらしたり)バッタが来たときにエステバリスに乗っていなかったことが何回かある。

そんなときに、無理やりエステに乗り込んだことがある。

(あん時は罰金払わされたんだよな……)

まぁ、その気になれば世界を掌握することなぞ簡単なのだから、たかだ一億や二億の修理費、安いものである。

(でも、めんどくさいし、変にマークされるし……)

そんなんだから、アキトはエステに乗り遅れた場合、じっくりと待つことにしている。

(たいていは……というか十中八九ルリちゃんが……)

そう思っていると、目の前にルリの顔のドアップが映し出される。

「すいませんが、頼みごとがあるんですが?」

「わっ!! どうしたんだよ、ルリちゃん?」

二人が知人であることはプロス経由で知らされるだろう。

だからといって、

『アキトさん、エステに乗って敵と戦ってください』

『まかせろ!!』

なんてことできるわけがない。

仕方無しに、プロスさんを呼び出して、契約の見直しを約束させると同時に、囮になることを承諾する。

囮どころか、右腕一本で全滅もできるし、素手でもできる。

しかし、この世界の設定が分からないうちは変に目立ったらやばいことになるので、アキトは目立たないようと、思いながらエステに乗り込む。










「アキト!! アキト、アキト!! アキトなんでしょう!!」

囮の真っ最中。モニター全部を占領してユリカの顔面度アップが映し出される。

一度だけ、これに驚いて死んでしまったことがある。

さすがにいまではそんな馬鹿な真似は起こさないアキトだが……

「……おぉ、ミスマルユリカ……か?」

「うん、アキトなんだね!! でも、何でこんなとこにいるの?」

いやいや、さっきプロスさんとの会話とか聞いてないのかよ。

(何度やってもこいつは「これ」だ。くそ〜、前回の鬱憤晴らしで酷い目あわしたろか)

ちょっくら、アキトがダークなことを考えていたりしていたが、ユリカはそんなことお構い無しに、

「やっぱり、アキトは私の王子様だね!」発言を連発している。

(そうだ、艦長から引き摺り下ろして)

「ねぇ、アキト。アキトはやっぱし私を助けるためにきてくれたの?」

(いやいや、いっそのこと、付き合うと約束した後、手酷く別れるか?)

「やっぱし、アキトは私の王子様!! いっつも白馬に乗って助けてくれるの」

(いや……いっそのことこのサイトに掲載できないレベルの展開にしちまおうか)

完全に話の温度差が出ている。台風が起きるレベルの気圧差だ。

しかし、このサイトに掲載できないレベルの展開とはどんなことなのだろうか?

「がんばってね、アキト!!」

(指の一本一本ずつ×■××■■×■×■!!!)

両者の温度差が変わらぬまま、テンカワ機はバッタの群れに突っ込んでいく。









いつもどおりに囮がすんで、アキトはエステの中で考え込んでいた。

「さて……どうするか」

今現在、アキトの頭にある選択肢はやたらある。

『ユリカルート』『ルリルート』『メグミルート』『プレイバックルート』『ダークヒーロールート』『外道ルート』『鬼畜ルート』etc etc

なして、メグミルートが存在するかといえば、それはアキトのこだわりとしかいえない。

「早い時点でメグミちゃん落としを決意しなければ、某同盟の策謀が従来通りになってしまう」

某同盟の恐ろしさが身をもって知ってる。というか、いまだに怖い。

一万回も逆行したが、何時だって、某同盟はアキトの予想の上を行く。

よって、アキトの能力の半分以上が某同盟対策に費やされている。

それに、ルートといってもその全てがいかに自分が楽できるか、が焦点となっている。

今のアキトにとって、真実の愛なんて言葉、反吐が出てしまう。

何回やっても、相手は忘れてしまう。いくら苦労しても全てが元に戻ってしまう。

それに、自分が何をしたら相手がどう反応するかも完璧に分かってしまっている。

まぁ、アキトもいい加減に悟りきってしまい、どうやれば、俺の知らない展開が起こるか! を調べることが生きがいとなっている。

最初の五十回前後は悩んだものである。

「しかたない……今回の設定が分からないうちは変なルート選択はやめておこう」

そういいつつ、頭のカーソルは、

『ユリカルート』『ルリルート』『メグミルート』→『プレイバックルート』『ダークヒーロールート』『外道ルート』『鬼畜ルート』etc etc

を選択する。

これが一番無難なルート設定である。このルートは名の通り、常にメモリープレイバックを行うルートである。

よっしゃっ、と気合をいれ、アキトはエステから降りる。






「アキト!! 良かった無事だったのね!!」

今回も同じく、ユリカが待っている。

しかし、アキトは慌てず騒がず、メモリープレイバックを始動する。

このときは会話時間は短いので、昔の思い出なんかにふけってる暇などない。

「あんな体験初めてなんだぞ。ちょっと調子が悪いから、医務室行って来るよ」

と、メモリープレイバックが言うのと同時に、医務室に向かって歩き出す。

変にタイミングずらすと、ユリカがついてくる。

こういうのはタイミングが大事だ。







そんなんで、医務室に向かう途中、

機会音と同時に、目の前にコミュニケのモニターが開かれる。

(タイミングドンピシャ。コンマ一秒のずれもない。さすがはルリちゃん)

こんなこと考えているのは内緒である。

「アキトさん・・・」

と、ルリちゃんの台詞と同時にメモリープレイバックを始動する。

すると、アキトの口が勝手に動き出して、ルリちゃんとの会話が進み始める。

しかし、この説得や会話にたいしてかなり効率のいいメモリープレイバック。

問題がないわけではない。

相手がいなければ意味がない。(会話する相手がいないのに使ってどうする)

相手のしゃべったことに対する返答しかできない。(後の先の戦術である)

こっちからの提案を告げるときは解除しなけばならない。(あくまで相手の言動に対するリアクションしかできない)

解除する前と解除した後ではキャラが変わる可能性が高い。(決まった行動しかできないメモリープレイバックのときと、素のときはかなり受ける感じが違う)

とまぁ、ほかにもいろいろと難点はあるのだが……

と、ちょっと使いどころを選ぶ機能なのである。

まぁ、序盤のただのコック野郎だと思われているときは特にマークされていないので大丈夫だが……

(ルリちゃんやラピスは俺のこと信じきってるからいいんだけど、後半は疑い深くなるからなぁ)

無論、某同盟に関することだとはアキトは既に知っている。

(っと、そろそろプレイバックを切らなきゃ……)

一回目と同じような作戦やら裏工作するのもいいのだが、それでは面白くない。というか、いろいろ問題がおきたりする。

(一回目と同じようなことしても、ほかの人が同じ事するとは限らないし、なにより今回の設定が分からん)

「そうだ!! 早速だけど相談があるんだ」

と、アキトの口が動いた瞬間、プレイバックを切る。

「何でしょう?」

「実は……」

と、今回のアキト計画をルリに伝える。

これはさっきの囮中に考えていたことである。

とある路地裏に住まう錬金術師から習った分割思考はかなり使える。

まぁ、未来予測はする気はないのだが……というより、某同盟は常に未来予測を裏切る恐ろしさを持っている。

アキトはルリに、ラピスが帰ってきてることと、アキトの○秘計画を告げる。

この際に、ハーリー君も帰ってきてるんだろ、といってみたら、かなり驚かれたのだが、その反応もアキトは既に見ている。

こんなふうに、こっちがこういったら、あっちがこうするというのが完璧に分かっているため、アキトは悟っちゃってる。

「というわけなんだ」

「解りました・・・それではまたブリッジで」

「ああ、ブリッジで会おう」

そういって、アキトとルリは別れる。










「さて……ブリッジでの挨拶も済んだ事だし……冷たいシャワーでも浴びるか」

キノコの反乱まで時間はある。まぁ、特に変なフラグは立てていないのでその辺の変化はないであろう。

「さて……俺の部屋は……と」

コミュニケを見ながら、ナデシコをさまよう。

部屋割りは常にランダムだ。

ガイとの相部屋は実は片手で数える程度しかない。

やっとこさ、たどり着いた部屋は一人部屋。

「まぁ、一人の方が楽なんだけどな」

長い逆行生活。よくよく、過去を振り返ったりして、酷いときには一時間以上じーっとしているときもある。

そんなときに、ルームメイトがいたらいろいろと心配される。

(ルリちゃんと相部屋になったとき、物思いにふけっていたら、裸にされていたからなぁ)

男としては悲しい思い出である。

「さて、シャワーでも浴びるか」

着の身着のまま。持ってきたのは自転車と愛用の調理道具。それとちょっとした雑貨類と着替えぐらいしかもって来てないため、部屋はかなり殺風景である。

「いろいろと買っとかなきゃな」

インテリアを考えながら、服を脱ぐ。

この段階なら別に大丈夫だが、もうすこししたら、常に監視されるようになってしまう。

(まぁ、ごまかせるんだけどね)

シャワー室に入りながら、今日の夕飯を考える。

「ラーメン……いや、丼物にするかな」

そして、蛇口をひねる。

















「なんじゃこりゃーーーーーーーーー!!!」



と、それなりの生活防音がなされているナデシコのある一角でなぞの女性の叫び声があがった。

その叫び声に対して、最初に反応したのはたまたま叫び声が上がった部屋の前を歩いていた、整備班の一人、タケヤマタクヤ(32)だった。

別に整備班だから、というわけではなく、男だったら突然女性の叫び声が聞こえたら心配するに決まっている。

「おい、どーした!」

「だだだだだ大丈夫!! なんでもないわ!!

「そうか……」

(やたら、あせっているようだけど……大丈夫みたいだな)

心配ないと思い、タケヤマタクヤはそのまま自室に向かっていった。

(後でウリバタケ班長に教えとこう)






一方、叫び声を上げた人物はというと……

「何で……」

なにやら茫然自失としている。

その人物はシャワー室で、頭から水を滴らせながらじーっと、備え付けの鏡を見つめていた。

鏡にはその人物の姿が包み隠さず映っている。

肩の辺りまで伸びたきれいな黒髪。

どちらかというと、スレンダーな体形。

年齢はおそらく16前後。

身長は150センチメートル前後。

顔は、きれいというより、まずかわいらしいという言葉が浮かび上がる。

百人の特殊な趣味の人がいたらその百人全てを萌え落とさせる美少女だ。

ネコミミよりかはイヌミミをつけたいタイプ。

そんな美少女が何ゆえ、色気のない叫び声をあげたのか?

その理由はひとつ。

この部屋はその少女の部屋ではなく、テンカワアキトの部屋。

そんでもって、そのシャワー室で少女の前にシャワーを浴びようとしていたのはテンカワアキト。

そして、テンカワアキトが消えて、代わりに現れたのがこのなぞの少女。












そう、その少女はテンカワアキトだった。

「……今回はこんな設定かよ」









後書き(代弁者:如月龍次)
うへぇ、某漫画の主人公の体質ってら○まかよ。
これには驚いた。そこだけは褒めとこう、わが愚弟よ。
しかし、今回も卑怯だな。
メモリープレイバックの連発。会話シーンの殆どをそれでごまかしてやがる。
何時までもそれが通用すると思うなよ。
代理人さんが言ってるみたいに一発ネタにしといたほうがよかったんじゃないか?
せめて、一万回の逆行のどれかをピックアップする短編集的なものにするとか……
まぁ、いまさら遅いか。はじめたからには、完結させろよ。

 

 

 

代理人の感想

む〜。

最初の数回はともかく、この手のはネタが尽きたときが最後ですからねぇ。

あっさり止まるか、次から次へと新しいネタを考え出す、血を吐きながらの哀しいマラソンのどっちかしかありえません。

つーわけで、死ぬまで走れ。(何!?)