ナデシコ"逆行物"二次創作 プロローグ1
『"彼ら"のプロローグ』
――"私"は今、何をしているのであろう。
と"彼"は一人、虚空の中で呟く。
しかし、その言葉を聞く者は、"此処"には存在しない。
――"あれ"から、どれだけ"時が流れ"たのだろう。
その問いかけもまた、意味を成すことは無い。
"此処"は、"時の流れ"の外、"刻の狭間"なのだから。
しかし、別の"彼"が呟く。
――この、"因果の鎖"を断ち切るために。
"彼ら"は、今、その時を待ち続ける。
――この、"漆黒の鎧"と共に。
『刻の狭間』
『"彼ら"と"彼女ら"のプロローグ』
――"俺"は今、何をしているのだろう。
と、心の中で、"彼"は一人狭いコクピットの中で呟く。
黒鳥の様に姿を変えた"漆黒の鎧"は、孤立した『積尸気』を翻弄し、その命を"刈り取る"。
周りには、『火星の後継者』の残党が駆る無機質であるが人に似た機動兵器。
その数、約30機。
『積尸気』,『ステルンクーゲル』が銃口を向け、『六連』は、執拗に此方に肉薄しようとし、
残りの『ジン』は、その鈍重な機体で手をこまねいているようである。
それに対し、此方は一機。
しかし、"彼"は優位に立っている。
"彼"の"漆黒の鎧"は、対『北辰』、対夜天光・六連、対傀儡舞仕様に作られた機体であり、
対機動兵器戦に特化した機体である。
両肩と両脚の大型高性能スラスターによる機動力は、他機の追順を許さず、
高機動ユニットと、重装の騎士を思わせる追加装甲は、細かな弾幕を弾き返している。
それを操る"彼"は、自らの復讐と妻の救護、二つの信念を糧に、地獄の底から這い上がった幽鬼。
自らの目的のために茨の道を歩み、血みどろな足跡を残す殺戮者。
そして…
――…ジャンプ!!
A級ジャンパーとしての能力をフルに発揮し、漆黒の戦場を駆け、消え、現れる。
"彼"は、『火星の後継者』残党艦隊に肉薄するのと同時に跳躍、
敵陣中央の旗艦、ゆめみづき級後期型木連式戦艦『きんれんか』の戦闘ブリッジにディストーションフィールドを纏い特攻、
動力炉にハンドカノンを撃ち込み、護衛艦を巻き込み轟沈させ、指揮系統を文字どうり"粉砕"した。
浮き足立った敵を各個撃破し、その半数を無力化した。
敵は今だ、混乱と恐慌に陥っている。
しかし、その優位も長くは続かない。
今、被弾した高機動ユニットを切り離した。
人型に近づき、機動力が落ち、跳躍を封じられる。
何時もは、後ろに控え"彼"を援護するユーチャリス級機動戦艦『ユーチャリス』は、もういない。
そのため機体には、載せられるだけの追加バッテリーを積んでいるが、
戦闘時間は15分を過ぎ、タイムリミットが刻一刻と近づく。
――もって、あと残り5分か…。
今はD・Fの使用を制限し、稼動時間を延ばそうとするが、両手のハンドカノンのエネルギーも後僅か。
最後の武器は、D・Fと装甲と…
――残るは、"拳"のみ…。
肩部追加装甲兼大型スラスターを装備しているため腕の稼動範囲が狭く、
白兵戦,格闘戦を行うことは容易ではない。
しかし…
――まだ、終わる訳には……
弾薬が尽きたハンドカノンを切り離し、
対フィールド仕様のナックルガードを覆った右の"拳"を限界まで振り被る。
忍び寄る死神を振り払うように、必死にレールガンの銃口を向けようとする『ステルンクーゲル』に"肉薄"。
右下から左上に交差する同時に、"拳"を軽いジョブのように突き出す。
派手ではないが、トップ・スピードで繰り出される一撃は、D・Fと装甲に守られたコクピットを、
表情を恐怖で塗り固められたパイロットごと"押し潰す"。
――止まるにはいかない!!
"彼"は、その僅かな命を燃やし尽くそうとしている。
奴等と、自らの黒き"欲望"を道連れに。
そして、終わりに近づいていく。
残りが、"彼"と二機の『六連』と一機の『ジン』となり、
周囲が、数え切れない残骸に覆われたころ。
"漆黒の鎧"は、両の手も吹き飛び、装甲も見る影もなくボロボロになっている。
牙をがれた漆黒の鎧に、『六連』は、左右から錫杖を手に挟撃し、
『ジン』は、それらを巻き込む覚悟で重力波砲をチャージする。
――お前たちを…
バッテリーの僅かな残りを・・・
―― 一機でも、一人でも多く…
D・Fと生き残ったスラスターに注ぎ込み、
―― 道づれに!!!
左右の『六連』を薙ぎ倒し、『ジン』の発射寸前の重力波砲に頭部から突っ込む。
極限まで収束された重力波砲に捨て身の特攻が喰い込み、その超重力の放流は出口を失い荒れ狂う。
それは『ジン』を飲み込み、"漆黒の鎧"と無力化された二機の『六連』を巻き込んで……
"崩壊"した。
漆黒の宇宙が、静寂を取り戻したころ。
突然、淡い光を放ちながら、半壊した桃色の機動兵器
―――ネルガルが開発し、以前は地球連合軍主力兵器の座にあった、
人型汎用機動兵器『エステバリス』。
その後継機を、"彼"専用にカスタマイズされた、『エステバリス2カスタム』
通称、『テンカワspl』―――
が、その痛ましい身を晒しながら出現した。
――また、生き残ったか・・・。
本来、『ジャンプ装置』は、"漆黒の鎧"に措いて最外装となる高機動ユニットに取り付けられている。
それを失った以上、"漆黒の鎧"は跳躍することは出来ない・・・筈である。
しかし、追加装甲に収納され、C・クリスタルを内包する『テンカワspl』は跳躍可能である。
身を守る鎧を切り捨てる事になるため、普段は使用せず、
それを失った際の切り札として残されていた方法である。
――死ぬと判っているのにな・・・。
特攻の際、跳躍する気は無かった。
しかし、寸前で"死"ではなく"生きる"ことを選択をしてしまったらしい。
――大量殺人者の俺が、"死"ぬことを恐れているのか・・・。
"彼"は、自分の浅ましい生存本能を呪った。
――どうせ、早いか遅いか、爆死か病死か窒息死の違いだと言うのに・・・。
"彼"は、どうしようもなく死に掛けている。
機体が生き残ったしても、バッテリーは後僅か。
サバイバル・モードに切り替えたところで、生命維持装置はすぐに止まるだろう。
それに・・・
――身体も、そろそろ限界か・・・。
"彼"を虫食むナノマシンと言う病巣は、内臓の重要部を侵食し、手の施しようの無い状態となっている。
――アイちゃんに診てもらった時から、覚悟していたのにな・・・。
"彼"が、『火星の後継者』の研究所から救出された際、その身体は死人の様になっていた。
現在に存在する最高の科学者のひとりであり、何故か医者としても優秀である
希代の天才、イネス・フレサンジュ博士が診立てた結果。
「あと、もって・・・」
何時もは冷静で、客観的な物言いをする彼女が、一瞬躊躇うようにその口を開き、
"彼"に、遠くない"死"を宣告した。
しかし、彼女は最後まで諦める事はなかった。
彼女にとって、"彼"は初恋の相手であり、自分が心を許せる数少ない人だから。
現実主義者で無神論者である彼女が、それこそ祈る様に治療に打ち込んだ。
だが、寿命が多少伸ばすことが出来たとしても、"彼"の"死"は刻々と近づいていった。
"彼"が、残り少ない命で望んだことは、
自分の妻、囚われの恋人テンカワ
ユリカの救出。
そして・・・。
「奴を、奴等を、此の世から根絶やす力が欲しい・・・」
その日、皆が知る『テンカワ
アキト』は、此の世から消えた。
あれから一年以上経つ。
"彼"は、幸せの絶頂だった新婚旅行を、絶望のモルモット生活に変えた"外道"北辰を討ち取り、
演算ユニットと融合させられていたテンカワ
ユリカも、かつての"仲間"に無事保護された。
しかし、"彼"は、今だ"漆黒の戦場"を駆けていた。
"彼"の望む復讐はまだ終わっていなかった。
奴等を、『火星の後継者』をこの世から抹殺する事を…。
その後も、相棒のマシンチャイルド、ラピス・ラズリと、
ナデシコ級機動戦艦『ユーチャリス』の超高性能AIである『ダッシュ』と共に、
今だ燻る『火星の後継者』残党の拠点を"撲滅"している。
それも、ここで最後となる。
最後の戦いに、必死について来ようとするラピスを預け、事後処理を依頼した時、
ネルガル会長 アカツキ
ナガレは、あまり見せた事のない真剣な顔を向け、
会長秘書 エリナ キンジョ
ウォンは、泣き顔を何もない床に向けていた。
「本当に、彼女を連れて行かないのかい?」
アカツキが、無理を承知で問い掛けてくる。
「ああ…、ラピスを俺のような男と心中させる訳にはいかない」
それは、偽善なのだろう。
自らの復讐のために、父のように慕う12,3の少女を戦場に駆り出し、
今の今まで利用し続けて来たのだから。
――それでも、その方が良いに決まってる。
「馬鹿げてる…。」
その時、今までずっと無言を続けていたエリナが、裏返りかけた声で"彼"を糾弾する。
「馬鹿げてるわよ!!
母艦も援護も無しで攻略なんて、死にに行くようなものじゃない!!」
現在稼動している6m級人型汎用機動兵器全てが、エンジンは積まれていない。
例外は、『木連』の30m級の強襲用大型機動兵器『ジン』シリーズや、
かつて、ネルガルが開発していた、10mを超える『月面フレーム』等の試作機ぐらいだろう。
無論、"彼"の乗る機体『テンカワspl』もまた、外部エネルギー供給に頼っている。
外部エネルギー供給は、母艦である『ユーチャリス』の相転移炉で賄われている。
しかし、ラピスを置いて行く以上、『ユーチャリス』は運用できない。
『ユーチャリス』の操艦は、完全な『ワンマンオペレーションシステム』となっているため、
運用する為には『マシンチャイルド』が必要である。
超高性能AIである『ダッシュ』に操艦させる手があるが、
戦場では、柔軟な状況判断を要求されるため、発展途上の『ダッシュ』では困難である。
なにより、"彼"はもう、何かを守りながら戦う余裕は、無い。
母艦の援助が無い以上、積めるだけのバッテリーと、限られた弾薬で戦い、
独力で撤退や帰還をする必要がある。
しかし、"彼"はもう、此処に帰ってくる積もりは、無い。
"彼"が戦場で散ることは、明白である。
"彼"は、一人、漆黒のコクピットで唯一灯った、残りバッテリーを表示する画面を見詰る。
その、霞んで薄ぼんやりと見えるメーターは、一つ一つ確実に減っていく。
――自分の命の、カウントダウンか…。
問答無用に殺される人間と、死ぬことが分かっている人間。
どちらが、幸運で、どちらが不幸と言えるのだろう。
…少なくとも、即死しないだけ、窒息死や病死の方が苦しむ事になる。
しかし、"彼"は、自殺をする考えは思いつかない。
何万人もの人間を殺めてきておいて、楽な死に方を望む事への自責の念もあるが、
何より、"彼"にはこの世に未練が多く残している。
――皆は、如何しているだろう…。
自らの復讐に手を貸してくれた人々。
最後に愛した人。娘のような人。
戦友。親友。ライバル。
かつての、青臭くも一番幸せだった"あの頃"の仲間たち。
――皆、恨んでいるだろうか…。
助けられなかった者。自ら殺めた者。
――ガイ、九十九、其方には逝けそうもない。北辰は、俺を笑うのだろうか…。
死のカウントダウンは、あと僅か。
――戻れたらな…。
バイザーで隠した無表情が、初めて崩れた。
「戻れるなら、"あの時"に戻りたい…」
初めて、その固く閉ざしていた口を開く。
しかし、時間は確実に前に進んでいる。
その時…。
今まで減る一方だったメーターが、突然回復しだした。
――どういう事だ!?
今までOFFされていた、その他のディスプレイが回復する。
其処には、ボース粒子反応と、一つの戦艦の出現が表示されていた。
――ナデシコ…。
突然の事で、動揺を隠せない"彼"の目の前に、何所か美しさを見せる白き戦艦、
地球連合宇宙軍第四艦隊実験部隊所属 ナデシコ級機動戦艦『ナデシコC』が、
『電子の妖精』を内包し現れた。
――何故、こんな所に…。
混乱する頭で、その疑問を考える。
その時、戦艦を隠すように、通信ウィンドが開かれた。
其処には、白銀の髪を左右に結び、美しくも華奢な身体に軍服を纏い、
味方からは『電子の妖精』と、敵からは『電界の堕天使』等の二つ名で呼ばれる、
連合宇宙軍第四艦隊実験部隊所属 ホシノ
ルリ少佐が映し出される。
「――アキトさん」
"彼女"が、誰かを呼んでいる
――呼ばれたのは、俺なのか…。
"彼"、テンカワ アキトは、"彼女"、ホシノ
ルリについて考えた。
「間に合いましたね。アキトさん」
"彼女"、ホシノ ルリは、"彼"、テンカワ
アキトを見て安堵した。
切っ掛けは匿名のメールだった。
指名手配中のテロリスト テンカワ
アキトの所在。
その情報が、ルリのコミュニケに送られてきたのである。
連合宇宙軍月面基地で、『ナデシコC』の補給をしていた彼女は、
10分後、文字通り、跳んで来た。
勿論、ボソンジャンプである。
本来、B級ジャンパーである彼女は、単独で長距離、それも戦艦ごと跳躍する事は不可能である。
しかし…。
「わたしに無断で逝くなんて許さないわよ。アキト君」
ルリの隣で彼女、アイちゃんこと、イネス・フレサンジュは、跳躍の疲れを隠すように、
大人の口調で"彼"を糾弾する。
ルリが、取る物取らずに戦艦格納庫に急ぎ、
コミュニケで信頼できる二人の部下を呼び出してるとき、
アキトが出撃した事を知らされず、偶然にも此方に顔を出しに来たイネスに衝突し、
『説め…』もとい、理由を告げ、協力を申し込んだ。
状況を理解し、即「了承」した彼女は、自分のA級ジャンパーとしての能力を使い、
匿名情報――ラピス・ラズリの"彼"を思う故のリーク――
に示された『火星の後継者』の残党の最後の拠点に戦艦ごと跳躍したのである。
「うわ、全壊寸前ですね…」
ルリの為だけに付いて来たハーリー君こと、マキビ
ハリ少尉は、
ウィンドに映された『テンカワspl』を見て、思わず呟いた。
「敵影無し、…ていう事は、本当に一人でヤリやがったのか?」
何時でも出撃できる様、彼専用の機動兵器『Sエステバリス』に搭乗し、
コミュニケのウィンドに映し出されている高杉
三郎太大尉は、
軽い口調ながら、同じパイロットとして驚きを隠せない様子である。
戦場での単独行動は死を意味する。そのエステバリスライダーの常識を、
目の前の男は覆したのである。
「艦長、取り敢えず回収しますか?」
タカスギが、発進許可を求めてくる。
「お願いします。」
ルリが"彼"に目を逸らすことなく、"お願い"をする。
"彼女"等四人は、無断で戦艦を運航し、あまつさえ重犯罪者と接触している。
これは、立派な軍規違反、軍法会議モノである。
責任者の艦長ルリ少佐は勿論、副官高杉大尉、副官補佐ハリ少尉も免れない。
それを承知で、ルリは"お願い"し、高杉は"お願い"されている。
それが、ここに来る時の、高杉が出した"条件"だったから。
「本当に良いんですか、艦長。こんな事しちゃって?」
今回の行動を否定的なハーリーは、弱々しい声で呟く。
ルリは、その言葉を聞き流し、自らカタパルト発進の用意を行う。
その時…
「何故…」
"彼"、テンカワ
アキトは、頭を下げながら初めて口を開いた。
「何故、君たちは此処にいる…」
「貴方を、迎えに来ました。」
すぐに答えるルリに、アキトは声を荒げて投げ返す。
「俺は重犯罪の指名手配者だぞ! 下手に俺に関われば、君たちも…」
「それを承知で来たんだよ、艦長は」
高杉は、機体をカタパルトに乗せながら、軽い口調ながら、真剣な表情で答える。
「俺等は、艦長に"お願い"されたからだけどな。なぁ、ハーリー少尉。」
「僕だって、艦長の"お願い"じゃなければこんな事は…」
「私は、お兄ちゃんの為だけど。」
三人のやり取りを何処吹く風に、ルリは"彼"に言葉を投げ掛ける。
「…アキトさん、帰って来て下さい。」
その少女の願いに、"彼"、アキトの心を動く。
しかし、
「…駄目だよ、ルリちゃん。今から帰れば、まだ間に合う。
俺の様な死に損ないのために、君の人生を棒に振る様な事はできない。」
そう、弱々しくながら拒絶する。
「あんた! 艦長の気持ちを…」
「私にとって、アキトさんとユリカさんは憧れの人でした。」
ルリが、高杉の怒声を遮り、小さいながらハッキリと告げる。
「"自分の居場所は、自分で勝ち取る"。その事教えられました。」
そして、少し声を大きし、告げた。
「アキトさん。貴方の"居場所"はまだ、あんたを待ってます。
私を含めて…。」
"彼"、アキトは、その暖かい言葉を受け、その頭を上げる。
しかし、その時…。
「ボース粒子の増大反応!? 戦艦クラス、数三つです!!」
「何!?」
『ナデシコC』の前方、『テンカワspl』の後方に、ボースの光が浮かび上がる。
その中には…。
「ほぅ。撫子の『電界の堕天使』と『復讐者』が一緒か…。
これは、我等『火星の後継者』の復活の兆しとなろう。」
「新庄 有朋…。」
『火星の後継者』No2であり、草壁
春樹が投獄されている今、
事実上、『火星の後継者』残党の纏め役が、通信ウィンドに映し出される。
「貴様…!! まだ生きていたか!!!」
"彼"の敵の一人。
その敵が、最悪のタイミングで出現した。
「確かに、私は『きんれんか』に乗合わす予定だった。
しかし、野に下っていた我が『火星の後継者』の勇士との接触に成功し、
単身そちらに向かっていた所だったのだよ。」
奴等が乗る艦艇は、元統合宇宙軍 リアトリス級最新鋭機動戦艦『ルドペキア』と、
護衛艦が二つ、合わせて三つの艦隊。
こちらが最新鋭の『ナデシコC』とは言え、相手の積載している機動兵器の数を考えると、
此方が断然不利な状況である。
「貴方達は、どうやって跳躍したのです?」
ルリは冷静な口調で、疑問を投げかける。
「我々には、多くの"協力者"がいるのだよ。我々の"再興"を願う者がね。」
「A級ジャンパーのですか?」
ルリは更に問い掛ける。
「僕らだって、跳躍技術の研究は進めているのですよ。"人工"のA級ジャンパーのね。
貴方は役に立ちましたよ。ねぇ、テンカワ
アキト君?」
「山崎!! 貴様!!!」
新庄の隣の、薄ら笑みを浮かべた白衣の男、山崎
義男を見て、"彼"は猛る。
「"協力者"のおかげで、あの時よりも研究が進んでね〜。
本当、何者か知らないけど助かってるんだよね。」
「"協力者"とは…、誰です。」
ルリは、横を何か気にしながら、再度、問い掛ける。
「う〜ん。"冥土の土産"と言うのも良いけどね。
あと、隣の僕、"進入"しようとしても無駄だよ。」
会話の隙に相手のシステムに侵入、出来れば掌握を試みていたハーリーが、
幼い顔を蒼白にし思わず叫ぶ。
「駄目です!!! 進入しようとしても、すぐに跳ね返されちゃいます!!!!」
「…!?」
ルリも、自らが鍛え、自分程ではないにしろ、オモイカネとの親和性が高く、
システム掌握に長けたM・チャイルドのハーリーが、侵入すら敵わない事実に驚きを隠せない。
ルリも自ら、オモイカネを遣って進入を試みるが、侵入すれど跳ね返されるを繰り返すばかりである。
「"これ"も、"協力者"のおかげでねぇ〜。
本当、何者なんだろ? "彼ら"は?」
逆に疑問を投げ返すように、山崎は答える。
その時、今までただ漂っていた『テンカワspl』が残された両足のスラスターで、
『ナデシコC』を遮るように進み出る。
そして、"彼"は、ルリに悲しい決断を告げた。
「ルリちゃん…。此処は脱出してくれ。」
「アキトさん!? 無茶です!! そんな機体では!!!」
「無茶でも遣らなきゃいかないだろ!!!」
"彼"の無謀な行動に、ルリは言葉を返すが、"彼"はその思いを告げる。
「"あの時"はユリカを守る事が出来なかった…。
だけど、今回だけは、君を守らしてくれ…。」
「…それしか、無いわね。」
その言葉に、今まで、この状況の打開案を思案していたイネスが、苦渋ながら答える。
「イネスさん…!!」
「ルリちゃん…。頼む…。」
諦め切れないルリに、"彼"は、ルリに願う。
「俺の命は、いつ燃え尽きるか分からない…。
でも、君等を助ける為なら、その残り少ない命、存分に遣いたいと思う。
頼む…。死ぬ前に後悔する様な事には成りたくはないんだ…。」
「アキトさん…。」
「その意見に乗ったぜ、アキトの旦那。」
その時、カタパルトで発進準備を行っていた高杉が、自力で発進し、"彼"の隣に立つ。
「男なら、一度は女のために…。てのも悪くないかな。」
高杉は、躊躇いを見せず、かつての同胞に銃を向ける。
「…二人とも、本当にバカです。」
「その言葉、久しぶりだね。」
「男は、時としてバカに成らなきゃなならいってね。」
"彼"は、懐かしみながら、高杉は何時の笑みを浮かべながら、ルリに言葉を返す。
「イネスさん、否、アイちゃん。頼ってばかりだったけど、ルリちゃんと、
…ユリカを頼みます。」
「…さよならは、言わないわよ。」
「私も、言うつもりはありません。」
"彼"の表情は、初めて笑みを浮かべた。
「"…また、何処かで"。」
だが、まだ"終わり"ではなかった。
[・・・我は、間違いを起こす者・・・]
その時、その場の全ての者に、謎の通信が届く。
「ほぅ、貴方も見に来たのですかな、"協力者"殿。」
新庄と山崎は相手を知っているのか、皆が戸惑う中、余裕の表情を見せている。
「発信源…、特定できません!?
それどころか、システムが一部掌握されてます!!!」
ハーリーが、周囲のウィンドが消えるのをを見ながら叫ぶ。
「貴方が…、"協力者"?」
ルリが逸早く混乱から脱し、謎の介入者に問いかける。
[・・・我は、過ちを犯すもの・・・我が名は・・・]
介入者がそこまで告げると、突如、『火星の後継者』の二つの護衛艦が爆発を起こし始める。
「っ!?
貴様!! 我等を裏切るのか!?」
護衛艦との通信が途切れ、新庄は、此処で初めて動揺を見せ、激昂する。
そして…
[我が名は・・・我が名は『デュミナス』・・・]
何の前触れもなく、新庄、山崎等が乗る戦艦『ルドペキア』が、突如大爆発を起こし、
文字通り、消滅した。
ルリは爆発の衝撃に耐えながら、突如浮かび上がったウィンドに目を向ける。
「ジャンプ装置が暴走…!? アキトさん!! 逃げて!!!」
「何!?」
"彼"と高杉は咄嗟に、ルリ達の居るブリッジに向かう。
――今から、ブリッジを確保すれば、まだ間に合う…!!
しかし…、
右側に殺気を感じ、咄嗟に回避運動を取る。
しかし、機体の頭部に、光線、否、光の剣の様な物が突き刺さる。
大した爆発は起きなかったが、機体の制御コンピューターが破壊され、
完全にガラクタに成り下がった。
一瞬見えた、高杉機も、同様に射抜かれた様である。
「ルリちゃん!! 脱出しろ!!!」
聞こえなくなった通信機に、彼の絶叫が響く。
そして、"漆黒の鎧"と機動戦艦『ナデシコC』は、その搭乗者と共に、
この"時空"から消息を絶った。
"間違いを犯すもの" 『デュミナス』と共に。
後書き。
侵入者です。ハイ。
初投稿です。ハイ。
ナデシコ逆行物×SRW的な奴です。ハイ。
よろしくです。ハイ。
代理人の感想
文章のてにをはがなってません。
誤字が多いです。
日本語がしょっちゅう間違えてます。
あと、「"」を使いすぎかと。
上手く使えばもちろん演出効果を得ることが出来ますが、現在のところ闇雲に使ってるだけのように見えます。
こっちも含めて精進せいよっ!
気になった誤字他
ステンクーゲン→ステルンクーゲル
木蓮→木連
道ずれ→道づれ
"彼"の望む復讐はまだ終えていなかった→「終わっていなかった」、または「彼は(自らの)望んだ復讐をまだ終えていなかった」
取る物取らず→取る物も取りあえず