婚姻 

結婚すること。夫婦となること。社会的に承認されて、男性が夫として、女性が妻として両性が結合すること。
法律上、一組の男女が合意に基づいて婚姻届を提出し、夫婦となること。両者が婚姻適齢にあること、重婚や近親婚でないこと、女性が離婚したあと一定の期間以上経過していることなどを要件とする。




2199年6月10日

今日この日、テンカワ・アキトとミスマル・ユリカの結婚式が執り行われる。





新郎控え室

この部屋で白のタキシードを纏ったアキトとシックなドレスに身を包んだイネスが取り留めのない話に興じていた。

ナデシコでの航海

火星での出来事

地球での転戦

木連との出会い

和平後の様々な出来事

そのどれもが鮮明な記憶として二人の間に蘇っていた。








「そろそろ時間ね」

「あっ、そうですね」

部屋を出ようとしたアキトに近づき、そっと背中から抱きしめるようにイネスはアキトにしがみ付いた。

イネスの声が変わった。

幼い少女のような声。

「お兄ちゃん、また貴方に逢えて良かった。長い長い闇の時がはらわれて、貴方と出会った暖かい時が戻ってきた・・・・・・・・・・・・」

「イネスさん・・・・」

「黙って!お願いもう少し、もう少しだけ私を「アイちゃん」でいさせて。私にほんの少しだけ優しい夢を見させて・・・・・・・」

「・・・・・・・・アイちゃん。君が居たから、君の思い出が俺の中にあったから、俺は俺に成れたんだ。ありがとう・・・・・・・・・それを言いたかったんだ」

「お兄ちゃん・・・・・」

イネスはアキトの肩に頭を預け、囁いた。

イネスの重みが限り無い愛おしさをアキトに与えた。

「ずっと愛していた・・・・・最初に出会ったときから。ああ、如何して、如何して忘れてしまったんだろう」

慟哭とでも言うべきだろうか、イネスは溢れ出す想いを止める事が出来なかった。













静寂と静かな興奮に包まれた空間。

真紅の絨毯を父の腕に掴まり歩く。

それを見つめる人々の中から人知れず溜息がもれた。

彼女、ミスマル・ユリカが美人なのは周知の事実だった。

だが今の彼女は彼らの知っているユリカではなかった。

生来の明るさ、子供のような無邪気さはそこには無く、ベールに包まれたその顔からは何も読み取ることができなかった。

だがそこには言葉には出来ない何か神聖なものがあった。















教会の最後尾。

そこに二人の女性がいた。

「いいの? 席、空いてるわよ」

シックなスーツに身を包んだエリナがイネスに問い掛けた。

「ん、・・・此処でいいわ」

「・・・・そう・・・・」

「ええ」














天なる神よ


我々は、御前に集い


立会人の前でこの二人の婚姻の式を執り行う


この結婚に異議ある者は


今、名乗るか永遠に口を閉じよ


テンカワ・アキト。あなたはこの女を妻として迎え共に暮らすか?


彼女を愛し、慰め、人格を重んじ


生ある限り誠を尽くすことを誓うか?


はい。誓います


ミスマル・ユリカ。あなたはこの男を夫として迎え共に暮らすか?


彼を愛し、慰め、人格を重んじ


生ある限り誠を尽くすことを誓うか?


…誓います


では、誓いの接吻を




















アキトの手がベールに伸び、ゆっくりと彼女の顔をあらわにしていった。

参列者から再び溜息が漏れた。

薄っすらと紅く色づいた頬。

艶やかな唇。

そして、毅然と夫となる人だけを映した瞳。

魂の奥底から溢れ出んばかりの輝き。

それらが完全に調和しミスマル・ユリカという人間を形作っていた。

その姿はまるで一枚の宗教画のように荘厳で、見る者に一つの言葉を思わせた。





花嫁





純白のドレスに身を包んだ姿は、その言葉を美しく可憐に彩っていた。











その姿を眺めながらイネスは穏やかに微笑んだ。

自分の中で想いがその形を変えるのが解る。

より純粋に、より神聖に。

イネス・フレサンジュという女の根幹を成す物として。

「・・・・いいの」

隣に立つエリナがそう訊ねる。

どこか憮然としながらもその口元には同じように微笑んでいた。

「ええ・・・・・貴方は?」

「あんな姿を見せられちゃね」

そういってエリナは軽く肩をすくめた。











幼いときに出会い、そして別れた

永き時の旅路

現実と幻想の狭間で

失った記憶の中に残る貴方の面影

貴方の声、貴方の笑顔

それが私を支え続けた

貴方が私を生かし、今の私を作った

だから私は胸を張ってこう言える




NICE TO MEET YOU, AKITO! !

貴方に、会えてよかった、アキト!! 












あとがき(いいわけ)

バレンタイン エリナ・キンジョウ・ウォンにおいて濡れ場があると書きましたが・・・・裏行きに成りそうだったので第3話に繰り越しました。

 

 

 

代理人の感想

・・・・・・・・・・・・・まぁ、書く事もないですねぇ・・・・・・・・・・・

短いし(爆)。