ナデシコブリッジ

「すまないが少し借りるぞ」

そう言うとアキトはメグミの席に座り通信コードを打ちこんでいく。

「何処に繋げてるんでしょう？」

「さあ」

メグミは側にいるミナトに声をかけるが、そのミナトもわけが解らずアキトを眺めているだけだった。

「・・・・・・・ああ、俺だ。」

「繋がったみたいですね」

「そうね」

興味津々と言った感じで二人はじっと耳をそばだてている。

「・・・・・ああ、そうだ・・・・・・・・・・・・軍のほうに圧力を・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・できるか？・・・・・・そうか、たのむ。・・・・・・・・・・
・・・・・それでタイミングを・・・・・・・・・・」

「な、なんか凄い所に繋がっているみたいですね」

「そ、そうね」

「無理を言ってすまなかったな・・・・・・・・・・・ああ、今度酒でも飲もう」

そう言うとアキトは通信を切りメグミに軽く頭を下げて行った。

それに対してメグミはぎごちなく肯く事しか出来なかった。

この時、メグミとミナトの心を表すのなら「テンカワ副提督って、何物？」という事になる。

「さて、軍はどう出るかな」

ブリッジを出るときのアキトの一言。

何処か期待するようなこの呟きを聴いていたのは心が繋がっているルリだけだった。











地球連合軍幕僚会議

「戦艦ナデシコは接収命令を無視、現在も防衛ラインを突破しつつ宇宙へ向けて上昇中である」

大会議場で議長役の参謀総長がうめく様に言うと、周囲は唸り声や怒号に満たされた。

ナデシコに好意的な声は一つも無い。

叛乱の後逃亡したナデシコの処置が話し合われている。

「総長、通信が入っております」

演壇の脇、副官などが控えているところから囁き声が聞こえてくる。

「通信？こんな時にどこからだ？」

「いや・・・それが・・・・ナデシコです」

「ナデシコ！？・・・・メインのモニターに回せ」

幾多の軍人が見守るメインモニターに映ったのは、ナデシコのブリッジ。

そして、振袖姿のユリカだった。

しばし呆然となる総長。


《明けましておめでとうございまーす！》

ナデシコ艦長ミスマル・ユリカ・・・・・・・・・・・・・・・二十歳。

「一体何の真似だ？」

《えっとぉ・・・・ナデシコは火星に行きたいのでビックバリアを解いていただきたんですー》

真面目に言っているのだろうが、これでもかと言うほど相手の神経を逆なでする。

《ユリカ、俺と代われ》

ユリカを押しのける様にアキトが現れる。

「君は？」

《ネルガル重工所属戦艦ナデシコ副提督テンカワ・アキト》

「ではテンカワ副提督、ナデシコが軍に帰属する様に艦長を説得してくれないかね」

《断る》

「・・・・・・・なに？」

《ナデシコは民間船だ、法的根拠がない限り軍の命令に従う義務はない》

「くっ・・・ナデシコは地球連合に反逆した、よって軍が艦を預かる！！」

《反逆？何の事だ、ナデシコは海賊行為を働いたムネタケ准将を拘束し、交渉に訪れたミスマル中将に引き渡しただけだ》

「ぐぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ！！」

《さて、ビックバリアを解除していただけるかな？》

「断る！！！！」

断固とした拒絶、にもかかわらずアキトは軽く唇を歪ませた。

《それはどうかな》

「なんだと！！」

激怒する参謀総長の袖を軽く引き副官が何事か囁く。

「・・・・・・・・なっ！・・・繋げろ」

参謀総長はアキトを一瞥すると別の通信を開いた。

「はい私です・・・・・・・・・・・・・・・・・ですが・・・・・・・・・・・軍の立場が・・・・・・・・くっ・・・・・・・・・・・・他の者に示しが・・・・・・」

アキトはその様子を僅かな笑みと共に見詰ている。
会議場にいる他の軍人達も参謀総長の相手がよほど地位の高い人物なのだと漠然とだが察し始めていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・了解しました・・・・・・・・・・・・・・それでは失礼します」

《よろしいかな？》

悠然と構えたアキトを参謀総長は睨みつける。

「・・・・・・・・・解った」

《協力感謝します・・・・・それでは》

アキトの通信が途絶えると後には唖然とした幕僚達と不自然なほど無表情な参謀総長が残された。














ナデシコブリッジ

ブリッジクルーのほとんどが目を丸くして今の会話を聴いていた。

圧倒的な戦闘力を持った副提督が今度は悠然と軍をあしらって見せたのだ。

話題の副提督は通信が終わった後、フクベ提督の隣りで紅茶を飲みながら一言。

「ふむ、権力ってのはなかなか良いもんだな」

テンカワ・アキトナデシコ副提督

前歴　テロリスト・・・・・・・・・・・・・




















地球連合軍幕僚会議

通信の後参謀総長が副官を呼びつける。

「ナデシコを沈めろ」

「よ、よろしいのですか？」

「構わん。システムの誤作動だ」

「か、閣下」

「弾道弾を使っても構わん」

副官を睨みつける。

「ナデシコめ、ただでは済まさんぞ」














第３防衛ライン　デルフィニウム基地

「ナデシコを沈める？！・・・・・・・・・・本気ですか？」

画面に映るミスマル提督が重々しく肯く。

「システムの誤作動を理由に第二防衛ラインのミサイルで沈める気らしい」

「くっ！！・・・・・・・・・・提督、第３防衛ラインの全戦力の指揮権を僕にください」

「アオイ君、無茶はやめたまえ｣

「確かに無茶です。テンカワ副提督相手に旧式のデルフィニウムでは相手にもならないでしょう、でも防衛ラインに配備されたデルフィニウムは40機、それだけあればナデシコのエンジンを破壊できます」

「し、しかしだな」

「ディストーションフィールドとテンカワ副提督のエステバリスが有れば、恐らく全防衛ラインの突破は可能です、でも無傷とはいかないでしょうそうなればただでさえ低い火星到達の可能性がさらに低くなります・・・・・・・・・・・・・・・・・・提督、僕は地球連合の軍人です、でもそれと同時にナデシコの副長なんです、僕には艦とクルーの安全を守る義務があります。今は軍に帰属する事がナデシコにとって最も安全で意味のある事だと信じているんです」

「そうか・・・・・・・・・・・・・・ナデシコを止める事ができなかったら君はどうする？」

ジュンはほんの少し笑って答える。

「僕はナデシコの副長です」

「・・・・・・・・貴官の勇気と行動に感謝する、全指揮権を与えよう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アオイ君、すまんな」

ミスマル提督はそう言うと敬礼をした。

ジュンは表情を引き締めると同じく敬礼をし答える。

「拝命します」

ナデシコ第3防衛ライン到達まで後30分














あとがき

どもｔｏｈｏｏです。

ギャグにならなかった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
次回作は多分北斗の短編になる予定。
男と女の間で揺れながらも戦士として生きる姿を書いてみたい。
北斗には「美しい」よりも「凛々しい」という表現が合うと思うのは私だけでしょうか？
追伸　私はイネス派です。
追追伸　狂牛病が・・・・・・・・・・・・我が家は焼肉屋。