食事の後、ケンは台所で後かたづけをしている。
エプロンに縫いつけられた熊がまた何ともいえず・・・・・・・・・・・

「ラピス、お風呂に入っておいで」

「・・・・・・・・・ウン」

ケンの言葉にラピスは少し躊躇いながらうなずく。

パタパタパタ

スリッパの音を鳴らしながらラピスはリビングから出ていく。

フンフ〜フフン♪

ケンは鼻歌を歌いながら洗い物を続けている。

・・・・・・・妙にエプロン姿が似合っている。

ナガヒロ・ケン 職業 大学生兼シークレットサービス

2〜30分後

「あっ! ラピスの服を出さなきゃ」

今日のために同僚や大学の知人に頼んで子供服を見立ててもらったのだ。

一瞬、にやけるとケンはいそいそと台所からでていく。










「ラピス。着替えを置いておくよ」

浴室の外からケンが声をかける。

「ラピス・・・・・・・・ラピス、開けるよ」

返事がなかったことを不審に思ったケンは取っ手に手をかけると横引きに扉を開けた。

湯気の立ちこめる浴室にラピスはいた。

流れ出るシャワーを浴びながら、蹲り自分の細い腕で体を抱きしめていた。

「ラピス!!」

ケンはラピスの異常に気づくと彼女に駆け寄った。

ラピスはケンに肩を掴まれると導かれるようにそのしっかりとした体に抱きついた。

「ラ、ラピス・・・・・・・・・水が怖いのかい?」

ラピスに抱きつかれ一瞬ドギマギしたケンだがラピスの様子に我に返った。

その小さな体が震えていた。

脳裏にラピスに関する報告書が浮かぶ。

トラウマ

幼いにも関わらずラピスは様々な人体実験を受けてきた。
そのせいかラピスは助けられた後にも幾度となく悪夢にうなされていた。

腹が立った。

クリムゾンの研究者に。

そして何より、浮かれていてそんな大切なことを忘れていた自分に。

ケンは後ろから包み込むようにラピスを抱きしめた。

「大丈夫」

優しく耳元で囁く。

「そばにいるよ」

震えが収まっていく。

ラピスは強張っていた体から力を抜くとケンに体を預けるようにもたれ掛かり、静かに瞳
を閉じると小さく頷いた。









ラピスの寝室

浴室から出た後ケンはラピスにパジャマを着せると彼女を抱き上げてここにつれてきた。

マンボー柄のパジャマを着たラピス。
折り返した袖から「ちょこん」とのぞく指がかわいらしい。

「今日はもうお休み」

ケンはラピスをベッドに横たえると優しく語りかける。

ラピスは立ち上がりかけたケンの服を掴む。

物言いたげな視線がケンに注がれる。

「・・・・・・・・そうだったね」

それはトラウマの事か、「そばにいる」という約束のことか。

ケンは服を掴んだラピスの手を外すとその小さな手を握りしめた。

「そばにいるよ」

今一度紡がれる誓いの言葉。

ラピスは嬉しそうに笑うと目を閉じた。

もう悪夢はみなかった。











あとがき

伏線です。
今回のお話は今後オリキャラを出すための伏線なのです。
壊れていないラピスが好きです。
あの儚さがたまらない。


 

代理人の感想

ドギマギするな成人男子(爆)。

 

ペ○は石もて追われるのだぞ〜。