「さて、私たちもそろそろここからお暇……」
戦闘の最中だという緊張感絶無のゴーショーグンのコクピットで、不意にレミーが口をつぐんだ。
「どうしたん?」
キリーが尋ねるが、レミーはピタっと静止したままだ。
次の瞬間、いぶかしむキリーの耳に、荘厳なフルオーケストラの演奏が飛び込んできた。
「……うあ、これは、ワルキューレの騎行……ってことは」
「こんなところにまで……何しに来てるのよブンドル!?」
レミーの叫びと同時に、木星のガスを斬り裂くようにして3隻の戦艦がゴーショーグンの元へやってきた。
どういう理屈かはわからないが、とりあえずこの戦闘宙域にワルキューレの騎行を響かせながら。
『相変わらずお美しい、マドモワゼル・レミー。その気の強さがまた素晴らしい』
「こぉらあ! 勝手にこっちの通信回線に割り込んで来るんじゃない!」
『そんな照れ隠しに大きな声を上げなくても、私にはあなたの真意が分かります。その秘められた心、今日こそは私の手に』
「決めつけるんじゃなーいっ!!!」
ぜーぜーぜー。
肩で息をするレミーを見て、キリーが肩をすくめている。
「まぁ、ブンドルのヤローがいて、戦艦3隻ってことは当然、カットナルのぢぢいもケルナグールのオヤジもいるわけだよな」
『だーれーがーぢぢいだっ! わしはまだ若……あううう、胃が、胃がーっ、トランキライザーはどこだーっ』
『ふん、惰弱なヤツめ。ゴーショーグン!
今日こそは我らが勝ーつっ!』
「うわ、相変わらず脳筋な発言だこと」
「どーでもいいが……」
キリーの目の前で、真吾が押し殺したような声を上げる。
ぎくり、と背筋を縮こまらせるが、遅かった。
「今は戦闘中なんだからな。ちょっとは集中してくれ、頼む、おねがいだから」
「うっ、すまん真吾」
火器管制やレーダー監視などはレミーやキリーが担当しているが、基本的な操縦は真吾の担当だ。
だから、正直な話、真吾がしっかりしていればゴーショーグンは動くのだが。
それにしたって戦闘に集中していない人間が近くにいては、真吾だって気が散る。
致命傷になりかねないのだ。
「では、逃げるかね」
戦闘の時にはついぞ浮かべなかった、疲れきった表情で真吾がぼそっとつぶやく。
ゴーショーグンが虹色の光につつまれ、テレポートしようとした瞬間、
『行かせるかぁっ! アンカー射出、
ゴーショーグンを捕まえろ!!』
ケルナグールの戦艦から牽引用のチェーンアンカーが打ち出され、今まさにテレポートしようとしていたゴーショーグンを直撃する。
「ぬあっ! なんだこれ!?」
「牽引アンカーの直撃? なんてことしてくれんのよあの筋肉オヤジ!」
キリーとレミーが状況を把握しようとするが、コンソールが言うことをきかない。
『ヌハハハハ!
逃がさんぞゴーショーグン!
どうだブンドル、カットナル!
ゴーショーグンを捕まえたぞ!!』
得意げに黒い巨体を引き寄せるケルナグール艦だが、それを見ていたカットナルから冷ややかな通信が返った。
『ケルナグール、貴様、自分が何をしたのかわかっているのか?』
『ゴーショーグンを捕まえたのではないか。見てわからんのか?』
『ビムラーによるテレポートの態勢に入っている、ゴーフラッシャー発射時なみに不安定なゴーショーグンに、それだけのショックを加えたらどうなるのか……』
『どうなるというのだ、カットナル?』
『ビムラーは暴走、因果律にすら介入するエネルギー体が一体この空間どころか宇宙にどんな影響を与えるのか、考えるのが恐ろしいわ』
『なななな、なぬを、いや、なにをいうのだかっとなる?』
『……自分の短慮にいまさら後悔するとは、まったく、美しくない……』
『ええいブンドル! そうやって落ち着いている場合か! どうにかしないと我々も……ううう胃が、胃がぁっ!!』
以上が、一時は世界の大半を牛耳った闇のコンツェルンの支配者たちのセリフでした。
「まぁ、制御できててもできてなくても、どこに跳ぶかはわからないわけだし、慌ててもねぇ」
キリーが両手を広げて肩をすくめるのと同時に、ゴーショーグンとブンドルたちの戦艦はそろってこの次元から姿を消した。
後に残るのは連邦軍の戦艦と、撃墜された機動兵器の残骸だけだった。
だから、真吾が最後に残したつぶやきを聞いた者は誰もいない。
「これなら、案外早く再会できるかもしれないな、アキト君」
( See you next stage!! )
長かった。
あー長かった。
やっとジャンプしましたシャドウミラー(笑)
長かったって割に分量は大したことないんですけど。
で、TAK.さんとマイ魂のブラザーからリクエストがあったのでとりあえずまるまる書き足してみました(笑)
なにげに某作品の冒頭のランダムジャンプみたいになっちまったのはご愛敬。
修飾したらなんか嫌系みたいになっちゃいましたが(笑) 特にケルナグール。
伏線は張りました。
出るかどうかは今後の展開次第ってことで(笑)
この後、インターミッションを挟んで、ゲーム世界へと跳んだアキトたちの遭遇戦が始まります。
よろしければまた、次回もお付き合いくださいませ。
追記。
NGワードのコーナーは早くもネタ切れなので今回はおやすみです(笑)
また何か思いついたら書きます。
もうちょっとヒロインが増えたら『漆黒の戦神アナザー』をやろうかとは思ってるんですけど……。
代理人の感想
「ダイターン3」と言えばギャリソン時田、「Gガンダム」と言えば東方不敗マスターアジア、
「トランスフォーマー」に航空参謀スタースクリーム(ん?)と言うように、
「ゴーショーグン」に欠かせないのがやはりこの方、悪の美学を追求するブンドル様。
何せ、メインキャラと主役ロボを印象付けるのが本来の役割であるTVのOPで
主人公やゴーショーグンより目立つ
と言う偉業を為し遂げた程の御方ですから(笑)。
ま〜、今回はちょっぴり勘違い野郎っぽいんですがそれはまぁ御愛嬌と言うことで。
でも「マドモアゼル、猛り立つあなたも美しい」のセリフがないのは減点一(爆)←何様っ!?