「ボース粒子……チューリップが送り込まれて来ている……?」

 ヴァイサーガのコクピットの中で、アキトは考えていた。
 今の日付が分からないため、『地球圏で観測されたボース粒子』が『誰の仕業なのか』がわからない。
 ナデシコ就航前なら木連の先遣部隊のもの。
 ナデシコ就航後なら火星から帰還したナデシコのものかもしれない。
 更に、それよりも後の時代ならヒサゴプランによるジャンプで発生したもの。
 あるいは、アキトが知らないまったく別のもの。
 様々な可能性が考えられる。
 何にせよ、判断できる材料がないため、ここで考えていても詮ないことではあるのだ。

「百聞は一見に如かず……確認しないとな」

 そう言っているうちに、ヴァイサーガの索敵センサーが目標地点の状況を察知した。
 1機のシャトルを取り囲んでいる7機の機動兵器。
 シャトルにも機動兵器たちにも目立った動きが見られない。

「間に合わなかったのか!?」

 何かに急かされるようにアキトはヴァイサーガを加速する。
 そして、光学センサーで目視できるようになったその光景を見て、アキトの全身に震えが走った。
 同系統の6機と、それを後ろに控えさせている赤い1機の機動兵器……。
 アキトが吼える。

「そうか、そういうことか……そういうことなんだな、そうなんだなぁっ!!!」

 言葉が意味を成していない。
 息が荒くなる。
 両の手に力がこもる。
 獣じみた呼気を押さえきれない。
 そして、声を上げたところで届かないことなど分かりきっているはずのアキトが、じっと前を見据えて、押し殺しきれない声でつぶやいた。

「こんなところで何をやっている……
答えろ、北辰!!」

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