同時刻。
さすがの万丈もギャプランを相手にしてマッハアタッカーでは逃げ回ることしかできずにいた。
「こっちが勝ってるのは旋回半径だけか。普通の人間が乗ってるにしてはかなり無茶な挙動してるし」
スポーツカーが変形して飛行形態になるマッハアタッカーも、その形状の割りにかなり高い運動性能を示すのだが、そんなアドバンテージがまったく意味を成さない。
ムーバルシールドのバーニアを使った力技で、急角度の上昇下降や空中での心地旋回を行うなどただの戦闘機には不可能だ。
「厄介だねえ、オーガスタの強化人間も保護するつもりだったんだけど、先越されちゃったかな?」
余裕の態度を崩さない万丈に対して、ロザミアのほうはさほど余裕があったわけではなかった。
「ええい、たかが小型戦闘機1機、なんで落とせない!?」
端的に言えばメガノイドを相手に実戦を経験している万丈と、訓練と強化実験のみで実戦を経験していないロザミアの経験の差が、ここに現れている。
才能と経験。
それが組み合わさってこその総合力なのだ。
「とはいえ、これじゃ千日手だなあ」
操縦桿から右手を離して万丈が頭をかく。おおよそドッグファイト中にする態度ではない。
「仕方がない。奥の手、使いましょうか」
そのまま、万丈はマッハアタッカーを呼んだときと同じように胸のバッヂを右手で掲げ、声高に叫んだ。
「ダイターンっ、カームヒヤァーっ!!」
真東にマッハアタッカーが飛ぶ。
それを追いかけようとしたロザミアの目に、昇り始めた太陽の朝日が飛び込んでくる。
「太陽光に向かって逃げようというのか、そうは……なにぃっ!?」
光に目がくらんだのはまさに一瞬。
その光をさえぎるようにその巨体は現れた。
右脇を掠めるように悠然と旋回するのは、ギャプランより数倍大きい超大型戦闘爆撃機であった。