「地斬疾空刀! いけえっ!!」
「イリュージョンアロー、発射」

 深い青の鎧武者……ヴァイサーガの実剣から繰り出された衝撃波と、白銀の戦乙女……アンジュルグの弓から打ち出された光の矢が、マグアナック隊の迎撃を免れたバッタをことごとく打ち落とした。

「ラミア、俺が突っ込むから撃ち漏らしを片っ端から落としてくれ。頼んだぞ」

 ヴァイサーガのコクピットで、テンカワ・アキトはアンジュルグのラミア・ラブレスにそう告げた。
 モニターに映るバッタの群れを見据えて、アキトのまなじりに力がこもる。

「機械そのものに罪はない。そこにあるのは、機械を使う者の罪だ!」

 ヴァイサーガの剣とアンジュルグの細剣(レイピア)がバッタをディストーションフィールドごと切り裂く。
 ホバリングとジャンプを繰り返すマグアナック隊の隙を、飛行可能なヴァイサーガとアンジュルグが効果的に埋めた形になった。

「ナデシコはまだ発進できないのか……仕方がない」

 剣を翻しまた1機バッタを切り伏せたアキトは、オープン回線で呼びかけた。

「迎撃に出ている機動兵器部隊のリーダー、俺はガッツィ・ジオイド・ガード嘱託のテンカワ・アキトという。応答してくれ」
「こちら、ガンダムサンドロックのカトル・ラバーバ・ウィナーです。援護感謝します」

 通信ウインドウが開いて、答えたカトルが少年であることを見て取り、アキトは一瞬ひるむ。だが、ナデシコにルリがいて、ユーチャリスではラピスがいたのだ。少年兵がパイロットをやっていてもおかしくはないだろう、と自分を納得させた。

「空を飛べる機体が来てくれて本当に助かりました。サポートに回りますので迎撃をお願いしてもよろしいですか?」

 丁寧なカトルの物言いに、アキトは小さく苦笑する。

「了解した。同行した機体は俺の仲間だ。ラミア!」

 呼ばれてラミアも通信ウインドウを開く。

「よろしくお願いいたしますでございます」

 ラミアの短い返答にアキトが違和感を抱く。
 だが、アキトもラミアもカトルも戦闘中だ。小さなことに拘泥していては命が危うい。

「ナデシコは、落とさせない!!」

 迷いを振り切るように吼えて、アキトはヴァイサーガの実剣を大きく振るった。

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