-堕天使と妖精の物語- TOM-X ACT6:堕天使と妖精の平穏な日常 〜AC196/10 L4コロニー群:秘密工場〜 ヒイロが、ミナトの家に居候してから二ヶ月経ったある日、L4コロニー群の一角でアキトの訓練が行われていた。 「はぁぁぁぁあ!」 「テンカワ、左が甘いぞ!」 「ちぃ、そこだ!」 「まだまだ、攻めが甘いぞ!」 元一郎の指導の元、アキトは着々と格闘技術を身につけていた。 それを見ていた、カトル、デュオ、イネスの三人は今後の対応を相談していた。 「あいつ、かなり力をつけたな。」 「思いが強ければ、強くなりますよ。」 「そうね、アキト君は艦長を救いたい一心で修行しているからね。」 「ところでイネスさん、アキトさんの五感のほうはどうなんです。」 「味覚以外はなんとかなりそうよ。H教授だったっけ、あの人の残したレポートのおかげで…。」 「…味覚はだめなんですか?」 「…だめって言うわけじゃないけど、そうとうひどくやられているから…。」 「正常な感覚を取り戻すのに時間がかかるって訳だな。」 「ええ、デュオ君の言うとうりよ。」 「…そうですか。」 人体実験により、アキトの細胞はボロボロになっていたが、H教授が残したレポートを読んだイネスは、 正常な感覚を取り戻せると断言する。 ただ、完全に失った味覚に関してはそうとう時間がかかると言った。 「どちらにしても、すぐには回復しないわね。それに、どれも相当のリハビリが必要よ。」 「…そうだな。」 「…にしても、ヤマサキって科学者、そうとうきてるわね。」 「ええ、そうですね。」 「ところで、あの機体のほうはどうなっています?」 「進行状況二十パーセント程度ね、あと四ヶ月もあればテスト可能よ。」 「…それまでは、《エステバリス・カスタム》のみで訓練するしかないんですね。」 「擬似プログラムによるシミュレータ訓練は可能だけど…。」 「所詮プログラムはプログラム、例外が起きたとき対処が出来ない、て事だな。」 「ええ、そうね。…ところで、今日のデュオ君妙にさえてない?」 「そうか?」 カトルは、アキトの専用エステバリスに装着する高起動ユニットの開発状況をイネスに聞き、 イネスは順調に進んでいると答える。 ついでに、イネスはデュオをからかう。 デュオは、何か思い出したようにカトルに話し掛ける。 「そういやカトル…。」 「…なんですか、デュオ。」 デュオの不気味な笑みを見て、後ずさりさながらも答えるカトル。 「最近、妙に姫さんと仲が言いじゃん?」 「な、何をいきなり、僕はただ、リリーナさんとは仕事で付き合っているだけですよ。」 「顔を真っ赤にしても、説得力が無いんだがな〜♪」 デュオの爆弾発言にカトルは、弁明をする。 だが、その弁明に説得力は無かった…。 デュオは内心、(カトルってからかいがいがあるよな、 ヒイロだったら顔面に鉄拳ぶち込んでくるもんな。)などと思っていたりする。 だが、そんな考えもカトルの不気味な微笑みに吹っ飛んでしまった。 「…ふっふっふ、デュオ…この前の事、懲りていませんね。…そんなに給料要りませんか?」 「ひ、卑怯だぞカトル、俺が貧乏だって事知っていて…。」 「ええ、知ってますとも、そして、ヒルデさんの世話になっていることも…。」 「げ、なぜ…。」 「ヒルデさんがこの事を知ったらどうなりますかねぇ〜♪ふっふっふ。」 「か、カトル!俺が悪かった、だからあいつには…。」 「ふっふっふ、どうしましょうかね〜♪」 「か、カトルゥゥゥ!」 デュオは、カトルに言った事を心底後悔した。 だが、切れたカトルは容赦が無かった…。 完全に墓穴を掘ったデュオ。 このときデュオは思った、カトルを怒らすのはもうやめようと…。 そんな二人を眺めていたイネスは、苦笑いを浮かべていた。 〜AC196/10 オオイソシティー:ミナト宅〜 すでに、新学期が始まっていた。 ヒイロと出会ってからのルリは、ずいぶん明るくなった。 とういより、完全に立ち直っていたと言った方が正しいかもしれない。 そんな、いつもの朝の時間…。 「ミナトさん、行ってきま〜す。」 「ミナトさん、行ってきます。」 「ミナト、行ってくる。」 「じゃ、俺も一緒に行きますんで。」 ユキナ、ルリ、ヒイロ、三郎太の順でミナトに言う。 「みんな、気をつけてね〜。私もすぐ行くから。」 そう言って、言葉を返すミナト。 そして、四人はミナト宅を出て学校にいった。 「そう言えば、ヒイロ君って頭良かったんだ。」 「何だ、突然。」 「だって、ヒイロ君の言っている学校って、ここら辺では超有名な進学校だよ。」 「そうなのか、俺は担任に勧められただけだが?」 ユキナは突然何を思い出したのかヒイロに言う。 ヒイロはいきなり言われて戸惑う。 そうなヒイロにユキナは有名な進学校だと言う。 ヒイロは、興味なさそうに答える。 ヒイロ自身、学校には興味は無い。 現在一六歳という年齢層が一番多くいる所を選んだだけだった。 実際、ヒイロはかなりの知識を有している。 二人の会話を聞いて微笑むルリ。 そんなルリを見て、ユキナは絡む。 「ルリも、学年トップだもんねぇ〜。」 「でも、運動はまったく出来ませんよ♪」 ルリは笑いながらあっさりユキナに返す。 「ぶ〜、どうせあたしは運動だけの女ですよ〜だ。」 そう言って拗ねるユキナ。 そんな三人を見ていた三郎太は、(この平和が、いつまでも続けば良いんだがな。)と思っていた。 ここ最近は、彼らを狙ってくる組織は少なくなっていた。 まあ、ヒイロと三郎太のコンビにボコボコにやっつけられたのが原因だが。 ヒイロも、彼女達と同居してから少しずつだが変化していた。 昔の人を寄せ付けない雰囲気はすでに無くなっていた。 彼らの服装は、ルリとユキナは紺色のブレザーの制服、 ヒイロは青色のジージャンにジーパン、三郎太は白の薄手のジャンバーに黒のジーパンをきている。 彼らはそんな平和な一時を楽しんでいた。 〜AC196/10 北欧・サンクキングダムキャッスル(庭園):〜 リリーナは久々の休暇を使って故郷であるサンクキングダムに戻っていた。 そのリリーナの話し相手は、かつて勉学を共にし考えの違いから敵対した友、ドロシー・カタロニアである。 「あ久しぶりですね、リリーナ様。」 「ええ、久しぶりね、ドロシー。」 二人は笑顔で再会を喜んでいた。 「リリーナ様、相変わらずお急がしいですわね。」 「ええ、とっても。ですが、平和のためには仕方有りませんよ。」 「その割には、顔色が優れませんね、リリーナ様。」 「ええ。」 だが、久々の再会にもリリーナは顔色が優れなかった。 「…草壁の一味のことですか?」 「…わかりましたか、ドロシー。」 「ええ、この地球圏で平和を望んでいないもの、いえ、自分の都合の良い世界を作ろうとする組織と言ったら、 草壁一味とクリムゾングループ、そしてデキム・バートンが率いるバートン財団の二つぐらいなものですからね。」 「…ですから、再び争いが起こる事に危機感を抱いているのです。」 「…すでに起こっていますよ、水面下で…。」 「…そうですね。」 「問題は、いつ表に出てくるか、そうですねリリーナ様。」 「ええ、そうです。」 再び争いが起これば、また人が亡くなっていく…。 そんな考えがリリーナの顔色を悪くさせていた。 「…ですが、この状況を使って統合軍を滅ぼす気でしょ、リリーナ様。」 「…ばれていました、ドロシー。」 「最近のリリーナ様ったら、そういう駆け引きがうまくなっているんですもの。」 「…それ誉めているのですか?ドロシー。」 「ええ、もちろんですわ。」 そんなリリーナを励ますつもりで、ドロシーは憎まれ口をたたいた。 リリーナは苦笑いして答えた。 そして、二人は紅茶を一口飲む。 「…ところで、リリーナ様。」 「…なに、ドロシー?」 「最近、カトル君と仲良くありません。」 「ただの、友人ですよ。…にしても、その問いいいかげんあきました。」 「…耐性できていたんですね、つまんないですわ。」 「ふ〜ん、ではドロシーは私にどんなリアクションをしろと言うのです。」 「…いえ、それは、その〜、何でも無いです、はい。」 「よろしい。」 ドロシーはリリーナに睨まれてトーンを落とした。 その行動に満足したのか、リリーナは微笑んで一口紅茶を飲む。 (カトル君は悪くは無いんですけどね。ただ、今は…解決すべき問題が山ほどありますから…。) 内心リリーナはそう思っていた。 「リリーナ様?」 「なに、ドロシー?」 「ヒイロ君のことは、どう思っていたのですか。」 「ヒイロねえ、大切な友人、いえ、平和を求める大切な同志ですか。そんなところです。」 「…好きなのではなかったのですか?」 「…どう言う意味で、”好き”って聞いてます?」 「それは、その〜。」 「人物としては好きですよ、彼は。ただ、”好き”イコール”愛している”ではありません。」 「…そうですか。」 ドロシーは心底残念そうにつぶやく。 (ルリさんと出会わなければ、どうなったかわかりませんがね…。) 内心リリーナは思っていた。 「ところで、ドロシー。」 「何でしょう、リリーナ様?」 「…相変わらず、ハデですね。」 「…ハデで、毒舌が私の信条ですから。」 「…そうですか。」 リリーナはあきれていた。 黄金のメッキが施された車を見て。 そんな、リリーナを見て高笑いをするドロシー。 今のサンクキングダムは平和だった。 〜AC196/10 オオイソシティー・ハイスクール(教室):〜 ヒイロは授業を受けていた。 いや、受けているふりをしていた。 教師の話は、今のヒイロには興味無かった。 この学校では、ノートパソコンを個人に配布されている。 そのパソコンを使って、依頼されたプログラムを作っていた(アルバイトをしていた)。 「今日はここまで、でわ、皆さん、また明日。」 「起立、礼、着席。」 今の授業が終わった。 「お〜い、ヒイロ、飯行こうぜ、食い終わったらバスケだ。」 「…ああ、今行く。」 男子のクラスメートに声をかけられたヒイロは、彼らと一緒に教室を出て行く。 その学校には食堂があった。 ほとんどの学生は、そこで昼食を済ませる。 「…なあ、ヒイロ。」 「なんだ。」 「今日、下駄箱に何通入っていた。」 「…五拾通ぐらいか。」 「あいかわらず、モテモテだな。」 「ほ〜、そんなに”死にたい”のか?」 「いえいえ、滅相もありません。」 「で、その”ラブレター”は、”ごみ箱”行きか?」 「いや、”リサイクル・ボックス”行きだ。」 「…さいですか。」 「何も知らない女生徒は哀れだな…。」 「…にしても、お前って固いよな、そう言う恋愛関係…。」 「興味が無い。」 「あっそ。」 「…世の中って理不尽だよな、こんな酷いやつがモテるなんて…。」 「…まあ、そうひがむなって。」 「お前、…こいつほどではないが、自分がモテているからって、くそ、世の中酷いもんだ。」 「…馬鹿はほっておけ、食事が冷める。」 「ああ、ヒイロの言うとうりだな。」 「ああ、そうしよう。早く食わんと、場所が取れないからな。」 「き、貴様ら〜〜!!。」 そう言いながらも、ヒイロはこういった日常的な会話を楽しんでいた。 (今思えば、デュオと一緒に行動したとき…目立っていたのはどう考えても俺のほうだな…。) そして、昔の自分を思い出し内心苦笑いする。 「なあ、ヒイロ。」 「なんだ。」 「お前って、本当に真面目だよな。」 「そうそう、おまけに学年トップだしな〜。」 「…別に、たいした事はしていない。」 そう言いながら、内心(俺の授業中している事を知ったら、そんな事は言えないな。)などと思っていたりする。 「それに、居候先の保護者、えらい美人だしな。」 「へ〜、そうなのか?」 「ああ、この前の三者面談のとき見たんだ。順番、こいつの前だったから。」 「あ〜、俺も見た。たしか、この近くの中学校の教師をしている人だったはず。」 「知っているのか?」 「俺の妹がその中学に行っているんだ。その妹が言っていたから。」 「…ホントに、うらやましいぞ、お前。」 「それに、こいつが居候している先、他にも可愛い娘が二人もいるんだ。ついでに、ナンパな兄さんも…。」 「…なぜ、知っている。」 「だって、今日お前が登校している所、見たもんだからな。」 「…そうか。」 「ホント、うらやましすぎるぞ。」 「もしかして、ここの女生徒に興味が無いの、その三人が絡んでいるのか。」 「なぜ、そうなる。」 「いや〜、べっつに〜…。」 他にも言いたそうな彼だったが、ヒイロの据わった目を見たため沈黙する。 そして、彼らは食事を終えてグランドに向かった。 〜AC196/10 オオイソシティー・中学校(教室):〜 ルリは、ユキナと女生徒の友人数名と食事をしていた。 「…そういえばルリ、下駄箱に何通届いていたの?」 「そうですね〜、参拾通ぐらいですか。」 「へ〜、モテモテね、ルリルリ。」 「で、その”ラブレター”どうしたの?」 「紙がもったいないので、”リサイクル・ボックス”にいれておきました♪」 「……は〜、何も知らない男どもは不幸ね〜。」 「ほんと、ルリはガードが固いんだから。」 「違うわよ、ルリには本命がいるもんね♪」 「ゆ、ユキナさん!!」 「あらあら、顔真っ赤にして、ほんと、ウブなんだから♪」 「へ〜、そうなんだユキナ。で、ルリの彼ってどんな人。」 「外見は、そんじょそこらの男子どもと比べられないぐらいかっこいい人よ、ね、ルリ♪」 「…ユキナさ〜ん……。」 「で、肝心の中身は…。」 「私が感じたのは、無口、無愛想って所かな。」 「ホントなの、ルリ。」 「……不器用なんですが、やさしい人ですよ。」 「へ〜、そうなんだ、で、付き合って何時ぐらいなの。」 「…私の一方的な片思いです。」 そう言って、あっさり自分の気持ちを言ってしまったルリ。 だが、友人は聞き流していた。 「そうなんだ〜。で、その彼、どこに住んでいるの。」 「家よ。」 「本当なの、ユキナ。」 「うそ言ってどうなるのよ、ミナトさんが居候させるって言ったもんだからね。」 「じゃあ、ルリルリは四六時中彼と一緒にいられるわけね。」 「…残念だけど、その彼中学生じゃないわよ。」 「へっ、そうなんだ。じゃあ、年上?」 「うん、そうだよ。それも、この近くの高校に通っているよ。」 「って事は、かなり頭が良いって事?」 「うん、そうだよ。それも、学年トップ。」 「で、ルリも彼に勉強教えてもらっているんだね。だから、連続学年トップ取れるんだ〜。」 「ま、まあ、そう言う事です…。」 「…ユキナも教えたもらったら、彼に、一緒に住んでいるんでしょ?」 「う、うるさい!!どうせ私は、馬鹿ですよ〜だ。」 「まあ、そう怒らないでユキナ。運動だけならあなたが一番なんだから。」 「どうせあたしは、運動しか出来ない能無しですよ〜だ。」 「…火に油を注いでしまったわね。」 彼女達は、会話を楽しんでいた。 ルリは、ヒイロのことを言われて、顔が真っ赤になっていた。 「…そう言えば、あの学校って学園祭十二月だったよね。」 「ええ、そうだったわ。」 「じゃあ、学園祭のときルリの彼を見に行きますか。」 「さんせ〜い。」 「み、みんな〜。」 「それに、あそこの男子ってレベルが高いもんね。」 「そうね〜、良い彼が見つかるといいわね〜♪」 「ははは…。」 すでに、トリップしている学友を見て、空笑いするしかなかったルリであった。 「そう言えば、ユキナ、あなたは何通入っていたのよ?」 「あ、あたし〜、ルリより少ないわよ。」 「でも、あんたももてるわね〜。」 「へっへ〜、うらやましいでしょ。」 「そんな事はどうでも良いわよ!!…で、それはどうしたの?」 「そんなに怒んないでよ〜、ただの冗談なんだから〜。…で、あれはズタズタに引き裂いてごみ箱行きよ♪」 「…あんたのほうが、よっぽど酷いわ…。」 「外見だけに惑わされている男子は哀れね〜♪」 「ど〜ゆ〜意味よ!」 「そのまんまのい・み・よ。ユキナって性格悪いもんねぇ〜。」 「と、言うより、トラブルメーカーってとこかしら?」 「ユキナさんは、良い人ですよ。」 「ルリだけだよ、あたしをわかってくれているのは〜。」 「まあ、トラブルメーカーは否定できませんが。」 「…前言撤回、ルリもあたしのことわかっていないよ〜。」 そういって、滝涙を流すユキナ。 日ごろの行いがものを言うとはこの事である。 「…ところで、ユキナは好きな人いるの。」 「あ、あたしは…。」 「いますよ、年上ですがね。」 「本当なの、ルリ。」 「ええ、宇宙軍の中佐で名前はアオイ・ジュンっていいますよ。」 「る、ルリ、なんて事を言うのよ…。」 「さっきのお返しです、ユキナさん♪」 そう言って、一杯お茶を飲む。 ユキナは、真っ赤に顔が染まっていた。 「へ〜、ユキナも隅に置けないわね〜。」 「そんなんじゃないよ、ただの友達。」 「…というより、玩具(オモチャ)ですか。」 「……ルリも、結構酷い事言うわね〜。」 「事実ですよ。」 アオイ・ジュン…優秀な人物なのだが……ものの見事に、ユキナの尻に引かれていた…。 そして、彼女達の楽しい一時は終わり、授業(地獄)が始まる。 〜AC196/10 ロッポンギシティー:ネルガル本社(会長室)〜 会長室には、会長であるアカツキと秘書のエリナ、プロスペクター、ゴートの四人がいた。 「テンカワ君の状態はどうだい?」 「彼の状況は、味覚以外の感覚は回復のめどがたちました。」 「…味覚は?」 「ドクターの話によると、回復にはそうとう時間がかかるようです。それも、人並みですが。」 「…料理人としては絶望的ね。」 「まだ、そう決まったわけではないようです。ドクターが何かたくらんでいましたから。」 「…そうか。で、修行のほうはどうなんだい?」 「生身の訓練は順調だと、月臣から聞いております。」 「パイロットのほうは、あれが完成するまでは無理です。」 「なら、順調だね。」 「ええ、そうね。」 アカツキは、アキトの状況を聞き連絡係であるゴートが答える。 顔にはださないが、アキトの五感がおおむね回復すると聞いて安堵するアカツキ。 いや、アカツキだけではなくそこにいる全員が安堵した。 アカツキは思い出したかのように、プロスに話し掛ける。 「プロス君、ナデシコの状況は?」 「あれですか、そうですね〜、来年の七月までには完成するでしょう。」 「そうか。で、オペレータは決まったのかい?」 「第一候補としては、ルリさんが適任かと。」 「彼女以外は?」 「マキビ・ハリ君ですが、彼の能力では彼女に足元にも及びません。それに…。」 「まだ、子供か?」 「はい、そうです。」 「…まったく、あの親父は、負の遺産ばかり押し付けやがって…。」 「ですが、あの子達がいないと百パーセント発揮できないのも事実です。」 アカツキにしては珍しく愚痴を言った。 昔のアカツキならそんな事はしなかっただろう。 「…で、彼女を説得するのは何時ぐらいにするんだ。」 「そうですな、完成まじかぐらいがよろしいかと。思兼もルリさんを待っているみたいですし。」 「そうか、後は任せる。ところで、彼女の周辺はどうなんだい?」 「いたって平和ですな。彼らが同居してからですが…。」 「ああ、それにあの少年…私よりはるかに実力ありますから…。」 「ゴート君が誉めるということは、相当な実力者だね、彼。」 「…前に、フォーク投げられたの忘れたの?」 「ははは〜。」 そして、アカツキはルリの近況報告を聞いた。 そして、エリナの激しいツッコミに乾いた笑いを浮かべていた。 「…ところで、もう一人は見つかったのかい?」 「…申し訳ありません、まだ、発見されていません。」 「そうか、…引き続き捜索を頼む。」 「は!!」 最後にアカツキは、もう一人行方不明のマシン・チャイルドの行方を聞いた。 だが、ゴートは苦い顔をしながら答えた。 堕天使と妖精は平穏を楽しんでいる頃、世界は静かに動き出していた。 〈後書〉 TOM-X :「毎度どうも、ご無沙汰しております。TOM-Xです。」 ルリ :「お久しぶりです、ホシノ・ルリです。」 ヒイロ :「久しぶりだな、ヒイロ・ユイだ。」 TOM-X :「予想外の展開が起きた。」 ヒイロ :「ああ、あいつが出てきたな。」 ルリ :「ええ、そうですね。説明おばさんと声が似ている人が。」 ヒイロ :「だが、早くないのか。」 TOM-X :「だから、意外な事が起きたって言ってるではないか。」 ルリ :「プロットでは第三部の人ですよね〜。」 TOM-X :「電波だ〜、電波が悪いのだぁぁ〜!!」 ヒイロ :「お約束が出たな。」 ルリ :「ええ、でましたね。多くの作家の言い訳が!」 ヒイロ :「ということは、意外なやつが意外な形で出てくる可能性があるな。」 ルリ :「そうですね。」 TOM-X :「…否定できない私が悲しい。」 ルリ :「ところで、ヒイロさんとの同居って何時まで続くんです♪」 TOM-X :「お前が、ナデシコBに戻るまでだ。」 ルリ :「そうですか。でも、アキトさんと違って浮気性ではないようですから♪」 TOM-X :「有る意味、大変だと思うぞ。」 ルリ :「へっ?」 ヒイロ :「自分で言うのもなんだが、俺そう言った感情わからんからな〜。」 ルリ :「そ、そんなぁ〜。」 TOM-X :「まっ、そこらへんもテーマの一部だからな、あきらめろ。」 ルリ :「しくしく。」 ヒイロ :「ま、ここのルリはおとなしいほうだな。他のところのルリだと…お前殺されているぞ。」 TOM-X :「ご忠告ありがとう。」 ルリ :「こんなところで、悲しむのも馬鹿らしいですし…いつものやつをしますか。」 ヒイロ :「ああ、そうだな。ところで、作者。」 TOM-X :「なんだ、ヒイロ?」 ヒイロ :「完全にカトルXリリーナになっているな。」 TOM-X :「うっ、い、痛いところを…。」 ルリ :「でも、良いじゃありませんか。周りの反響も良いみたいですし。」 TOM-X :「それが、気がかりだったんだよな〜。」 ヒイロ :「だが、今回本当は一年飛ばすはずでは無かったのか?」 TOM-X :「ある人の、感想の一文からヒントを得たもんだから。」 ルリ :「で、電波でかいてしまったと、いうわけですか。」 TOM-X :「そうです、はい。」 ヒイロ :「ところで、話変わるが…しっかり読まれているんだな、この駄文。」 ルリ :「そうですね。しっかり、リピータもついておられるようですし。」 TOM-X :「作家としてうれしいかぎりだ。みんな、ありがとう。」 ヒイロ :「…ところで、こんなカップル思いつくやつお前しかおらんな、多分。」 ルリ :「しっかり、違和感有りって言われていますものね。」 TOM-X :「ど〜せ、私は気違いですよ。」 ルリ :「作者さん、行っちゃいましたね。」 ヒイロ :「お前な〜、まあ、その後しっかりフォローが入っているがな。」 ルリ :「そうですね。」 ヒイロ :「ところで、アキトがこの状況でダークにならないのは、これが初めてなのか?」 ルリ :「さあ、私には。でも、さがせば見つかると思いますよ。」 ヒイロ :「だが、一番多いのは《ユーチャリス》と《ナデシコB(C)》によるおっかけっこによる、 ランダム・ジャンプの逆行物だな。」 ルリ :「そうですね。それが、《ルリXアキト》作品が書きやすいのかもしれませんね。」 ヒイロ :「…なあ、俺達が逆行できたらどうなるかな?」 ルリ :「それは、わかりませんよ。某作品みたいに無茶苦茶強くなるかもしれませんし…。」 ヒイロ :「…その前に、俺がジャンプに耐えられんな。」 ルリ :「そんな事は、無いでしょ。一度、命失っているんですから♪」 ヒイロ :「…あの時は、死ぬほど痛かったな…。」 ルリ :「ヒイロさん終わりにしますか?」 ヒイロ :「そうだな。」 ヒイロ&ルリ :「それでは、次回をお楽しみに。」 |