第19話 「真剣勝負
×コスプレ
×一番星コンテスト」
ナデシコ展望室
帰って来た次の日。
俺は久々に展望室でのんびりしていると
プシュ!!
「やあ、ナオさん。
歌は良いね、文化の極みだよ。」
などと、完全に壊れているアキトが入って来た。
今日は随分とさわやかに壊れているな。
「昨日はそんなに酷かったのか?」
確かに昨日は彼女達に監禁されていたが、今朝方開放された筈じゃ?
あ、そう言えばシキもラピスちゃんに呼び出されて以来見ないな・・・
『違うんです、ナオ様。』
と今度はフィリアちゃんが現れる。
『これを見てください。』
とチラシを提示する。
そこには『一番星コンテスト』と書かれていた。
「これが何か?」
『下の優勝商品の所を見てください。』
え〜と何々、
『優勝商品 テンカワ アキト の生殺与奪権』
・・・は?
俺はもう一度読み返す、が、内容に見間違えは無かった。
「マジか?」
『はい、どうやらプロス様に声質を取られていたようです。』
「そうかそりゃ災難だったな。」
「俺、北辰を倒します。
必ず倒します。」
相当キテいるようだな。
ま、そりゃそうか。
しかし、一番星コンテストか・・・
え〜っと、歌を一曲うたって、その間にコスチュームチェンジしてコスプレ審査(女性のみ水着可)
・・・コスプレ審査?女性のみ水着可って・・・
誰が提案したんだ?これ・・・
「なあ、これ、女性限定じゃないのか?」
『いえ、参加資格はクルーとAIズ全員にあります。』
バッ!!
「フィリア、それは本当か!!」
いきなり復活するアキト。
『は、はい。』
「じゃあ、俺が優勝したらどうなる?」
『それは勿論、アキト様の生殺与奪権はアキト様の物になります。』
ああ、なるほど。
プロスもちゃんと逃げ道を作ってあるじゃん。
望みは薄いけど・・・どちらかというと嫌がらせか?
「お前、優勝できんのか?」
「俺の物語、くだらない物語だったらここで終わらせてやる!!」
まだ少し壊れてるな。
タタタタ プシュ!!タタタタ・・・
そして展望室を出るアキト。
練習をする気だろ。
「しかし、面白い事になりそうだな。」
さて、アキトがどう出るか・・・
『あら、ナオ様も他人事ではないのでは?』
「え?どうして?」
『副賞の所を見てください。』
フィリアに促され、もう一度商品の欄を見る。
『副賞 カグラ シキ 及び ヤガミ ナオ の生殺与奪権』
・・・・・・・・・・・・・・・何!!!!
「フィリア、プロスに繋げてくれ。」
『かしこまりました。』
ピッ!!
『何かご用ですか?私は今舞台設定で忙しいのですが。』
「プロス、この副賞はどう言う事だ!!」
『その事ですか?何を申されると思えば。
あなたもちゃんと了解してくれたじゃないですか。』
「俺はそんな事言ってねぇぇぇ!!」
『ではこれを。』
とプロスがテープレコーダーを取り出す、そして
『いいですね、解りましたか?』
『解った、俺が悪かったって・・・』
・・・ってこれ、この前、あの不味いピザを食わされた店を全壊させた時のじゃん!!
『と、言う訳です。
それでは、私は忙しいので。』
ピッ!!
「・・・マジか?」
『はい、その様です。』
ガーーーーーン
俺の、俺の全てはミリアの為にあるんだぁぁぁぁ!!
「クソッ!!こうしちゃおれん!!」
プシュ!! タタタ・・・
そして二人がいなくなった展望室では
『さて、私も衣装のプログラムを急がないと♪』
ってお前も参加するのね・・・
こちらメティサイド
『メティ様、ご報告したい事が。』
私の前にリリスちゃんが現れる。
「え?何?今忙しいんだけど。」
私は今歌と踊りの猛特訓中。
『緊急事態なのですが・・・』
緊急事態?
「緊急事態なら、何で私なの?
アッチ(歴史に関与する事)絡みなら、お兄ちゃん達がいるし。
普通の緊急事態なら私には全くと言って良いくらい権限は無いよ?」
そう、このナデシコでは私の乗船は非公認、ナデシコに置ける権限は皆無である。
『今現在この艦で最も正常な判断が出来るのはメティ様だと判断しましたので。』
正常な判断って・・・皆、なにをしているの?
それになんでリリスが報告に来るんだろう?
「そう言えば他のAIズ、特にオモイカネは?」
『オモイカネお兄様なら・・・』
ピッ!!
『萌え!!』
と書かれたウィンドウが出現する。
「・・・何これ?」
『今現在のオモイカネお兄様の思考を占めている物です。
因みにナデシコの航行は全てミナト様とジュン様が行っています。』
・・・他のクルーは?
「はぁ・・・まあいいや。
で、何があったの?」
『サブロウタ様から通信が来ております。』
「なんですって!!
直ぐに繋げて!!」
『了解しました。』
ピッ!!
『お、やっと繋がった。
それにしても時間が掛かりましたね・・・って、
俺、艦長かアキトに繋いでって言ったのになんでメティちゃんが出てくるの?』
「タイミングが悪い事に今ナデシコ全体がたてこんでて、
二人ともまともな対応が出来ないようなので、私が代理します。」
『そう、まあいいや。
実はね、カクカクシカジカでして。』
日本語には便利な言葉?があるよね。
「そう・・・生憎私にはその事に関する決定権は在りませんので
ハッキリとした事は言えませんが、このナデシコのクルーなら問題無い筈です。
今から向かってください。」
『解った、じゃ、またね。』
ピッ!!
ふぅ・・・そうか、ここいらのチューリップは最早破片も残ってないからね。
しょうがないか
「リリス、お兄ちゃんに繋いで、非常回線で。」
『了解しました。』
とにかく、お兄ちゃんから正気に戻さないと。
で、数分後の格納庫
「離せ〜!!離してくれ〜〜!!」
非常回線で事と次第を主要メンバーに伝えて来てもらったんだけど、
「諦めろシキ。」
「そですよ、責任は取らなくちゃ。」
その中でシキさんはアキトお兄ちゃんとナオさんに両脇を掴まれて引きずれて来ている。
「アキト、お前にはいわれたくね〜!!
それに俺はカイト一筋だ〜〜!!」
と、そこへ
「良かったじゃないか、相手が見つかって。」
カイトさんがシキさんにそう告げ、また離れていく。
「待ってくれ〜カイト〜、捨てないでくれ〜〜〜!!」
・・・なにをしてるんだか。
因みに他の皆はかなり殺気立ってる。
そりゃそうよね、イベントを潰されたのだから・・・
そして、そこに
ゴォォォォォォォ・・・・
プシュゥゥゥゥゥゥ!!
私達の前に一台の連絡船が止まる。
「ども〜ご迷惑をお掛けします〜。」
お気楽なサブロウタさんを先頭に、
次々を降りてくる優華部隊のメンバー。
その中に
「シキ様〜〜〜〜〜!!」
バッ!!
「許してくれ〜〜〜〜〜〜〜!!」
ダダダダダダダダ・・・
お兄ちゃんとナオさんから脱出し、逃げ出すシキさん。
「待ってくださ〜〜〜〜い!!」
タタタタタタタタタ・・・
それを追いかける百華さん。
ま、良いんだけどね・・・
「優華部隊の指揮官をしています、舞歌です。
暫くよろしくお願いします。」
舞歌さんがユリカさんに挨拶をしている。
「はい、この艦の艦長、ミスマル ユリカです。
こうして直接お会いするのは初めてですね。」
「ええ、これから和平の為に共に頑張りましょう。」
「はい、これからもよろしくお願いします。」
和平推進派のリーダー同士の話し合いが行われている。
だけど、それよりも重要な事がある。
この連絡船にはもう一人、重要人物が乗っている筈だ。
カツカツカツ・・・
来る!!アイツが!!
カイトさんは今はいつもの髪型をしている。
女の子は髪型一つで結構違う物だから大丈夫だとは思うけど・・・
いや、カイトさんの事よりも、お兄ちゃんとどうなるか・・・
ピタッ
そして姿を現す北斗、
「アー君またあったね。」
ズガガガガ・・・<ピースランドに行ったメンバーがこける
「や、やあ北斗。」
「何ぃぃぃぃ!!」
皆の驚愕の声が響く。
私は思いっきりこけてしまった、かなり痛いよ・・・
「も〜アー君私は枝織だよ!!」
「ああ、そうだったねごめんね、枝織ちゃん。」
お兄ちゃんの記憶で見ていたけど・・・ここまでとは・・・
二重人格って恐ろしい・・・
でもよかった、アレなら雰囲気からして違うから。
今お兄ちゃんとアカツキさん、ユリカさんが優華部隊のメンバーに艦内を案内しに行った。
あれ?サブロウタさんとアキラちゃんがいない・・・
また二人で何かやってるのかな?
まあいいや、北斗の問題は何とかなりそうだし・・・これはチャンスね。
木連の和平推進のリーダーがこの艦にいる。
(ルリちゃん、やる?)
(そうですね、まずは調べてみないと。)
(じゃあ。サブロウタさんが必要だね。)
(ええ、アキトさんと合流して後で7人で一度集まりましょう。)
(うん、じゃあその前に私は舞歌さんの事を出来る範囲で調べとくね。)
(ええ、お願いします。)
私は自室に戻り、東 舞歌の情報を集める事にした。
その頃、アキラサイド
私はサブロウタを引き連れ、人気の無い廊下に来ていた。
「なんだい、アキラ?」
なんで私が引っ張ってきたか解らない様子のサブロウタ。
「ナデシコを出て数日間、何があったんですか?
暗くなってますよ。」
私の発言に驚いた様子です。
「え?俺、そんなに暗い顔してる?」
「他の人に解らなくても,私には解ります。
そんなに浅く付き合ったつもりはありませんよ。」
「はは・・・そうだったな。」
苦笑するサブロウタ。
「それで、何があったんですか?」
「それが・・・」
サブロウタは私から目を逸らす。
「私には言えない事ですか?」
私の言葉にますます表情を暗くしてしまう。
「いや・・・お前にはもうテンカワ アキトがいるからな、
話すよ。
・・・見つかったんだ、俺が昔約束を交わした女性が。」
「え?見つかったって、まさかその人・・・」
「ああ、優華部隊のメンバーの一人だった・・・」
「そうですか・・・」
今,私はどんな表情をしているだろうか・・・
自分でも解らない、複雑だから・・・
「良かったじゃないですか。」
「え?」
「私は兄さんと、貴方は思いでの女性と巡り合えた。
それで良かったじゃないですか、お互いに。」
私は今、ちゃんと笑っているだろうか?
「・・そうだな。
ありがとう,アキラ。」
「あら、私は何もしていませんよ。」
「そうだったな・・・
それじゃあアキラ、俺は優華部隊の皆と合流するから。」
「ええ、私はブリッジに戻ります。」
「それじゃあな。」
「ええ。」
私達はお互いに背を向けて歩き出す。
その時,私は振りかえったサブロウタも振りかえっているだろうか・・・などと考えてしまった。