機動戦艦ナデシコ

〜時の旅人〜

 

 

 

第三話 運命を変えるもの、変えぬもの

 

 

 

宇宙ステーションサクラ

ある一室にて。

「……アオイ君、何も士官候補生である君がこんな事しなくても良いじゃないか!?」

「僕じゃなきゃナデシコを……ユリカを止められません!!」

「し、しかしだね……」

コウイチロウは必死でジュンを宥(なだ)めているが、ジュンはそれを全く聞き入れようとしない。

「ええい!!貸せ!!」

そう怒鳴りながらジュンは兵士の手からナノマシン注射器を奪い、自分の腕に注射する。

「…………………………………つっ!!」

痛覚と共にジュンの右手の甲にナノマシンの紋章が浮かび上がる。

 

 

 

 

数時間後。機動戦艦ナデシコ

艦長が地球軍に喧嘩を吹っかけている時、

テンカワアキトの部屋にて。

……相変わらず灯りを点けていない為、部屋の中は真っ暗だ。

《……もう少しで地球圏‐―ビックバリア―‐を突破しますよ》

「……疲れた」

《は?》

「俺は今まで一体何をしてきたんだ?幼い頃に両親が殺され、その死の真相に近づく為にユリカを追って成り行きでナデシコに乗ることになり、戦争が終わったと思ったら復讐に身を委ねた……そしてあの時から享楽主義の真似をし、馬鹿をやっている」

マルスは『解っていてやっていたのか』と、口に出そうとしたが、止めておいた。

「『歴史』から身を消さなければ為らなくなった今でも、

現実を受け入れようとはせず、逃げ続けている。だが……」

《……?》

「フフフ、やっと受け入れる気になったよ。

受け入れよう、運命、歴史、世界、『伝説』……その全てを

……俺が演じるのはR・P・Gで言う『村人A』。物語の『主人公』でなければ

主人公を引き立てる『脇役』でもない。ただ、其処にいるだけの存在。

『この世界の歴史』を見続ける存在………………マルス」

《は、はい!?》

「俺は『この世界の歴史』から消える」

《はひ!?》

「『村人A』が物語の主人公を勤めたところで、なんの面白味もないだろう?」

《い、いやそりゃ確かに面白くはないですけど……

ヤマダさんやナデシコ、和平のことはどうするんです?》

「……知らん。死んでしまったらそいつらに運がなかっただけのことだろう?

俺はただ『世界の歴史』を見続けるだけだ。戦って死んで逝く様を見続ける。

それに俺は歴史を変えすぎた……………………

といっても俺が『この宇宙』から離れれば『リセット』されるだろうが」

《で、ですが……》

「『この世界』のことは『この世界の住人』に、『伝説世界』のことは『伝説世界』の住人に任せれば良い。そうなるように世界はできている。『伝説世界の住人』が『この世界』を意識的に、若しくは悪意的に変えようとするなら、その事例を鎮めるのは同じ『伝説世界の住人』だ……」

《でも、だからと言って歴史をを変えないなんて可哀相ですよ……

ヤマダさんや九十九さんが……》

「山田や九十九を『死なせたくない』から歴史を変えれと……そう言っているのか?貴様は」

《え?あ、は、はい》

「……さっきも言ったが運命なんだ。それは。『理不尽』に死んでいった訳ではない。

その運命を受け入れられない、だから『歴史を変える』と言う訳にはいかない」

《…………》

「歴史を変えようとする奴は大抵、『ああ、あそこでこうしていれば奴は死ななかった』とか『何故俺はあの時こうしなかったんだ』とか思って後悔しているだけで過去の事例に縛られている人間だ。だからこそ自分の都合の良いように『過去』の事例を変えようとする……それでは駄目なんだ。過去の事例を反省材料にし、二度とあのような事が起こらないように努力し、『未来』へ進んでいけば良い…………火星の……ボソンジャンプの技術は『過去』の事例を受け入れる事ができない。『未来』を労せずに見ようとして『現在』を放棄した……そんな奴等が作った愚かな産物だ」

《自分はどんな事が有ろうとも、歴史を変えない。という事ですか?》

「そうだ……例外的なものを除けばな……それに俺は歴史を変える事ができない。

そう言う事になっている」

《『例外的なもの』………?》

「………………………………………それを話している時間はない」

《……え?》

 

 

 

一方その頃。

ナデシコ内ハンガーにて。

「くう〜〜〜〜〜やっぱり最高ダゼ!!

このゲキガンガーはよう!!」

……山田二郎はエステバリスのコックピットの中で大声を上げながらはしゃいでいる。

足の方はどうやら完治したようだ。

「お〜〜い、オタクまたエステで暴れまわるんじゃね〜ぞ。修理代だって馬鹿にならないし

正規パイロットはお前しかいね〜んだからな。今のところ」

「ハハハ、解ってますって!!博士」

「全く、本当に解っているのかね、あの男は。

俺のエステちゃんに傷をつけるよ〜な真似はするんじゃね〜ぞっちゅーか傷つけたら殺す」

……それは無理だろう。エステバリスは『兵器』だし、

何しろ操縦しているのは山田二郎だ。傷がつかないはずがない。

「あ〜あ、敵が来ねーなー、

 このダイゴウジガイ様に恐れをなして

 逃げ帰っちまったのかあー!?」

「そうだとうちら(整備班)も楽ができるんだけどな……最も戦争なんて起こらなければ俺もこんな事をしなくて済むんだがな。あ〜あ〜、何処かにいねーかなあ。こう、戦争をあっと言う間に終わらせちまうヒーローが」

「此処に居るじゃあないですか!!!博士!!!」

ウリバタケはヤマダを見、呟く。

「……フウ。そんな奴居るはずないよな。

……もし居たとしたらそいつは人間じゃねえ。人類を脅かす立派な化け物だろうな」

「どんな化け物だろうと

 この俺が相手になってやるぜえ!!」

「ハイハイ、頑張ってくださいませ。ヒーロー様」

「応ともよ…………………ムッ」

ピキーン

一瞬、山田の額辺りに白い稲妻が走った。(と、本人は思っている)

山田の表情が強張る。

「敵が……敵がくる!!」

「はあ?何いってんだお前?エマージェンシーコールはなってないぞ?」

呆れたようにウリバタケは山田に言った。

が、

ぴっ

ウリバタケと山田の前に映像が表示される。

「本艦にデルフィニュウムが接近しています!!

 ヤマダ、テンカワ両パイロットは出撃準備!!

 繰り返します……」

「…………うそ」

勿論、偶然である。ヤマダにそんな能力はない。

ピキーン

またもや山田の額辺りに白い稲妻が走った。(彼の妄想である)

「このプレッシャー、まさかジュンか!!」

「バ、馬鹿いってんじゃねえ!!副長はちゃんとナデシコに……」

(……のっていたか?このごろ見かけてないような気がするんだが……)

途中まで言って、このごろ副長を見かけていない事に気付く。

「まさか……な」

念のため副長の居場所は何処か、コミュニケで検索してみた。

ピッ

検索結果。

 

アオイジュン副長はナデシコ艦内にいません。

おそらく艦外にいると思われます。

 

 

 

 

「…………マジかよ、おい」

「ゲキガンガー、ダイゴウジいきまーす!!」

脱力しているウリバタケをよそに山田の方は、やる気まんまんだ。

「オ、おい!!ちょっと待て!!

 パイロットスーツを着ていけ!!

 酸素が切れたら死んじまうぞ!!」

ウリバタケは山田に忠告したが……

「フフフ、私はパイロットスーツを着ない主義でね……」

この調子だ。絶対他人の意見を聞き入れるはずがない。

「主義とかそういう問題じゃねえ!!

 おまえシミュレーションしかやってないだろう!!?

 シミュレーションと実戦は全然違うんだぞ!?」

「大丈夫大丈夫!!任せとけって!!」

バシュウウウウ……

『ヤマダ機、発進しました』

「俺はダイゴウジガイだあああああああぁぁぁぁ……

そう叫びながらヤマダ機は、発進していった。

「ああ、あの野郎……死んだってしらねーぞ」

 

 

 

機動戦艦ナデシコ

アキトの部屋にて。

「本艦にデルフィニュウムが接近しています!!

 各パイロットは出撃準備!!繰り返します……」

「……と言う事だ。出撃せねばならない。

歴史は『俺』と『奴』がいる為に予想のつかない方向にいくだろう。

……そして『奴』は……倒すべき敵だ。俺の場合、歴史にリセットがかかるが

『奴』は破滅的な行動しかしない。歴史根本をぶち壊そうとしている。

『可能性』を壊そうとしている。俺にとっては『可能性』を変えるもの、『可能性を壊すもの』

……つまりはリセットの効かない『異質な存在』が敵なんだ。それ以外はどうでも良い」

《それじゃあランダムジャンプに巻き込まれた人達は……》

「敵だ。……だが奴等の事は『歴史』が何とかしてくれるだろう。あの時と同じように。

そうなる『運命』にある」

《………………………》

「さっきも言ったが人類は過去に縛られず、現在を認識し、未来に進んでいけば良い。

自己満足の為に過去を変えるのは許されない」

 

 

 

『ヤマダ機、発進しました』

「……急ごうか」

 

 

 

 

ナデシコ内

ハンガーにて。

「……おお!!やっときたか!!アキト!!」

「……俺が役に立つとは思いませんが」

「今は一人でも多く援護が欲しいんだ!!ヤマダの奴が多勢に無勢で叩かれている!!」

「……わかりました」

そういってアキトはエステに乗り込む。

ピッ

乗り込んだと同時にウリバタケからの通信が入った。

「テンカワ……兵器は、いくら奇麗事をいっても人殺しの道具だ。それに乗ったからには嫌が応にも目標を殺さなければならない…………だからと言って躊躇うな!!目標をせん滅しろ!!そして生き残れ!!考える事なんざ生き残った後で幾らでも出来る!!そして生き残った後で反省し、後悔して二度とこんな事を起こさないように努力しろ!!死んだ平和論者より生きた悪党になれ!!………………これが人殺しの片棒担いでる奴のいえるただ一つの事だ……善いか、俺に全責任押し付けるような真似だけはするんじゃね〜ぞ!!」

「フフフ、了解。その点は重々承知していますよ」

「よぉし!!なら良い!!とっとと発進しろ!!」

「了解」

バシュウウウウ……

『テンカワ機、発進しました』

 

 

 

「……班長、何故あいつにあんな事を言ったんです?」

名も無き整備員が班長に尋ねる。

「ん?いや、あいつが何処か遠くに行っちまいそうな気がしてな」

「……・自分達が整備した機体で死なれると、後味悪いすからねえ」

「いや、そういう意味じゃない

おれたちが死んだって行けそうも無いところに行くような気がしたんだ」

「班長、見掛けによらず詩人ですねえ」

ガツン

整備班員は、ウリバタケの持っているスパナで思いっきり殴られた。

「一言余計だ!!

自分達で整備した機体で死なれると後味悪いと思っているんなら、ちゃんと仕事をしろ!!」

「は、はひ」

 

 

 

 

 

戦闘宙域にて

こちらではヤマダジロウの機体が数機のデルフィニュウムと格闘していた。

「くそっ!!汚いぞ!!1対多数なんて!!」

「うるさい!!僕はどんな手を使っても君たちを止めなきゃならない!!」

 

ガキン

ドン

バキ

ドドドドド………..

いつの間にやらデルフィニュウムそっちのけで、ジュンとヤマダが戦っていた。

「くう、やるな!!

 流石は俺が唯一無二のライバルと認めた男だ!!」

「僕は、お前のライバルなんかじゃない!!

 馴れ馴れしいぞ!!」

ガキィ!!

「何故、おれたちを止めようとする!!

 お前は火星の人達が心配じゃあないのか!?」

「あの男が生れた星の事なんて、

 僕には関係ない!!」

ドドドドドドドド!!

「たった……たったそれだけの理由で

 お前は火星を見捨てるというのか!?」

「僕には十分すぎる理由だ!!」

ガキィィィン!!

「追い詰めたぞ!!これでトドメだ!!」

「……ふん、忘れたのか?

 敵は僕だけじゃあ無いんだぞ!?」

「……何ぃ!?」

ドガガガガガガガ……

ヤマダのエステは残りのデルフィニュウムの攻撃を食らったが、

ディストーションフィールドのおかげで、なんとか攻撃を受けずに済んでいた。

……・だが余りにもナデシコから離れている為、エネルギー残量が減少している。

ピッ

【後三分でエネルギーが切れてしまいます。注意!!注意!!】

人工知能がエネルギー切れを告げる。

「エエイ、そんなもんは気合で乗り切れ!!

 気合だ!!気合!!」

それは幾らなんでも無理だろう。

「フフフ、もう終わりだ。

 僕の忠告を聞きいれないからそうなるんだ!!

 さあ、死ね!!」

ヤマダのエステはデルフィニュウムに囲まれ

まさに絶体絶命のピンチを迎えていた。

「……いや、まだ終わりじゃあねえ!!

 ヒーローってのは最後の最後で

 絶対勝利するもんだ!!

 ……俺の見てきたゲキガンガーだってそうだった

 ……だから!!」

ヤマダのエステバリスの右手が白く輝き始めた。

「うおおおおおお!!!!!」

「な、何だ!?エステバリスにあんな兵器があるなんて僕はきていないぞ!?」

「ガアアアアアアアイ!!!!」

「……ほう!!なかなか器用なんですね。ヤマダさんは。まあ、そうでなければスカウトしてきた意味がありませんが」

プロスが眼鏡を光らせながら呟いた。

「スウウウゥゥゥゥゥパアアアアアア!!!!」

「ばっ、馬鹿!!狙われているぞ!!退避するんだ」

ジュンが兵士に向かって叫んだ。

「ナッコオオオオオオオオオオオ!!!!」

「ム、無理です!!向こうの方が機動性が上です!!回避できません!!」

「いっけえええええええ!!!!!!」

ガキィン

エステの右手がデルフィニュウムを貫く。

それと同時に右手の光がおさまった。

「どうだ!!これがヒーローってもんだぜ!!!」

ドゴォォォォォォォン…………

「そんな……デルフィニュウムを一撃で沈めるなんて……だが、まだそちらが優勢になった訳ではない。さあ、いけ!!」

「無茶苦茶です!!奴には敵いません!!それに撤退命令が出ています!!我々はミサイルが来るまでの足止めのはずです!!」

ガチャリ

……何を思ったかジュンはエステにではなく友軍機に銃を向け、

照準をコックピットにあわせている。

「……死にたくなければ戦え。そして死ね」

「ひい!?だっ駄目です。我々は戦えません!!

隊長も速く撤退しないとミサイルにやられますよ!?」

「…………そうか、なら今死ね」

そう言いながら引鉄を引き始める。

だが……

ガキィィン!!

「馬鹿、何をやっている!?

 俺に銃を向けるならまだしも、

 友軍機に銃を向けるなんて……!!」

ヤマダが乱入してきたおかげで、照準がずれ、間一髪で兵士は撃墜されずに済んだ。

「おまえ達は早く撤退するんだ!!

 ミサイルが来るそうじゃないか!?

 巻き込まれたくはないだろ!?」

「し、しかし……」

「いいから!!コイツはいまおかしいんだ!!

 まともな判断が出来ていない!!

 こいつの為に、

 おまえ達が無駄死にする事はないはずだ!!」

「……解りました。

…………貴方のお名前をお聞きして宜しいですか?」

「……ふっ、ダイゴウジガイだ。覚えておけ!!」

「……ご武運を!!ダイゴウジ殿!!」

そういって、辺りのデルフィニュウムがエステバリスに向かって敬礼する。

…………………なかなかに奇妙な光景だ。

「……それから、おまえ達の隊長は捕獲されたんだ。

 『錯乱』した訳じゃあない。

 間違えて報告しないようにな!!」

「……了解!!」

デルフィニュウム達は再度敬礼し、宇宙ステーションサクラへ帰還していった。

 

 

 

 

「フフフ、中々に面白い奴じゃないか、ヤマダは。これから死にに行く人間にしては惜しい」

《……助けてあげないのですか?》

「……戦争中に人が死ぬ事なんて珍しい事じゃない。恨むなら「この世界」の住人に言ってくれ。

戦争など起こらなければ奴は死なずに済んだ……問題はジュンの方だな」

《え?……・そう言えば先ほどから様子がおかしいような……》

 

 

 

 

「殺す殺す殺すころす殺すコロス殺す殺す殺すころす殺すコロス

殺す殺す殺すころす殺すコロス殺す殺す殺すころす殺すコロス

殺す殺す殺すころす殺すコロス殺す殺す殺すころす殺すコロス

殺す殺す殺すころす殺すコロス殺す殺す殺すころす殺すコロス

殺す殺す殺すころす殺すコロス殺す殺す殺すころす殺すコロス

殺す殺す殺すころす殺すコロス殺す殺す殺すころす殺すコロス

殺す殺す殺すころす殺すコロス殺す殺す殺すころす殺すコロス」

……先ほどからジュンは、

まるで呪詛のように一つの単語を繰り返し呟いている。

 

ピッ

コミュニケが開き、ジュンの目の前にやたらと熱血したヤマダの姿が映った。

「どうしたんだよお前、らしくないぞ!!」

「五月蝿い!!お前にボクノ何が解るってイウんだ!!コロしてヤル!!」

 

 

 

 

 

「あ〜あ、取り込まれかけているねえ。あれは」

ヤマダとジュンのやりとりを見ながら、アキトはのんきに呟く。

《……助かる見込みは……無いのですか?》

「完全に取り込まれてなければ……まだ見込みが有るだろうけど」

《じゃあ、どうやれば助かるのですか!?》

「……クイズ。気付けに一番有効な手段はなんでしょう?」

《はい?》

「正解は……」

 

 

 

「目を覚ませ!!」

ガキィィィン!!

ヤマダは、エステバリスでデルフィニュウムを思いっきり殴りつけた。

しかも右手にディストーションフィールドを纏わせながら。

「ぐう…………!!」

ヤマダが思いっきり殴ったので、コックピットに強い衝撃が走り、

まともに対G訓練をしていない即席パイロットのジュンは、その衝撃で気絶してしまった。

 

 

 

「『強い衝撃を与える』でした」

《強すぎて気絶したみたいなんですけど……》

「……戦闘機の対G訓練中に気絶する奴は結構多いんだ。

まあ、失禁する前に気絶したんだから良かったんじゃあないのか?

……それに戦場は坊ちゃんの玩具ではないという事が、身に染みて解っただろう」

《はあ……》

「……そろそろミサイルが来る。撤退しようか」

《……全然活躍してませんねナデシコに乗ってから》

「……インだよ。それで。強すぎる力は周囲に害しかもたらさない。

俺は恐怖や憎しみが溢れている戦艦より、

愛の溢るるすんばらしい戦艦に乗っていたいと思うけどね」

《……貴方の性格、私には一生かかっても理解できないでしょうね》

「そう言うもんかね?」

首をかしげながら彼女に質問する。

《そういうもんです》

 

 

 

ヤマダ機コックピットにて。

「……フウ、ジュンの野郎、気絶しちまった……どうしよう?」

ジュンの処分に困っているヤマダにプロスからの通信が入る。

ピッ

「ヤマ………ガイさん、もう少しでミサイルがナデシコに向けて発射されます。

こちらとしても優秀なパイロットと機体を失うのは惜しいので。

そうそうに帰還してきてください」

今、ヤマダに喚(ワメ)かれるのは困るので、プロスは敢えて『ガイ』と呼んだ。

「ああ、解った……で、ジュンの奴はどうする?強く殴りすぎたから気絶しちまったぜ?」

頭をぽりぽりと掻きながら、気まずそうにプロスに尋ねた。

「……彼の契約はまだ切れおりません。ですから、そのまま引っ張ってきてください。デルフィニュウムも予備のパーツに使えるかもしれませんし。この際、使えるものは何でも利用してしまいましょう。まあ、整備班班長のおみあげ……といったところでしょうか」

「了解!!ヤマダ機、これより帰還しま〜す!!」

「……では、宜しく頼みますよ」

 

 

 

《……突破、できますかね?ビックバリアを》

「……花占いでもしてみようか?」

《人事みたいに言うのはどうかと思うんですけれど……》

「だって、人事だし。死ぬのは『コイツ』であって『俺』じゃないし」

《はあ……》

 

 

 

ビックバリア突破数十分後。

ナデシコメインブリッチにて。

「キャ〜〜〜!!さすがはアキト!!あんな奴等全然敵じゃなかったね!!」

とんでもない破壊音を上げながらアキトに抱き着く某艦長。

「おいおい、俺は何にもしちゃいないぜ?敵を駆逐したのは、ガイの方だよ」

「またまたぁ〜嘘なんかついちゃってえ〜」

「お前、戦闘データ見てないのかよ……」

呆れながらアキトは呟いた。

「……ん?そう言えばヤマダの奴は何処に行ったんだ?ユリカ、知っているか?」

辺りを見回しながら、ユリカに尋ねる。

「ん〜、はぐらかさないでぇ〜(はぁと)」

「何の話だよ。それ………………ミナトさん、知りませんか?」

「え、ああ、さっき、アニメのシールちらつかせながら、小躍りして何処かに行ったわよ?」

「そうですか……さてじゃあ俺もそろそろ行こうかな?

そんなで訳でユリカ。とっとと放せ」

「ああ〜いぢめないでえ〜(ハァト)」

何やらやばげな方向にトリップしている模様。

「……………………………」

ガゴン☆ミ

何処からか取り出した中華鍋で思いっきりぶん殴るアキト

そして気絶したユリカを無理矢理引っぺがす。

良いのか、それで。

「じゃあそんな訳ですんで後の事は宜しくぅ〜」

アキトは足早にその場を去っていった。

「ウウ〜ン、ア、キ、ト(ハァト)」

…………いるよね、現実の妄想の区別がつかない奴。

そういう奴が今日の傷害事件を引き起こしたりするんだろうなぁ。

それで大半はゲームのせいにしたりとかし(脱線禁止)

 

 

ナデシコ内

人気の無いハンガーにて。

「このゲキガンシール、何処に貼ろうかなあ〜、

やっぱりアサルトピットに貼ろうか……

 うんうん、それが良い!!良し、決定!!」

自機を前に一人悩んでいるヤマダ。

そして……

「さあ、アンタたち、今がチャンスよ!!脱出船を奪って逃げるのよ!!」

たったったった……

「ん?」

足音のする方向に振り返った。そして……

「あっ!!アンタた」

「……!!」

ドン

ドン

ドン

「ち……ぐっ!!」

ヤマダに向けて銃が発砲された。前回(アキト視点)より二発多い。

 

「あ……」

「……何をほうけているのよ!!

今のうちに逃げるわよ!!火星で死ぬなんてまっぴらごめんだわ!!」

「は、はい」

バシュウウウウ……

 

 

カッカッカッカッカ

……山田は薄れゆく意識の中でこちらに向かってくる足音を聞いた。

……何分たっているのだろう。時間の感覚が麻痺している。

カッカッカ……

足音は自分の目の前で止まった。

誰かが自分を見下している。

「……ふん。俺が好き勝手絶頂に歴史を変えすぎたのか、

それとも最初からこうなる運命だったのかは知らんが、

取り敢えずは『オメデトウ』といっておくべきかな?」

……知っている。自分が聞いた事がある声だ。

……だが、何故だろう?

どうしても思い出せない。最近聞いた事があるはずなのに。

「……ウン?さあ?俺の知った事ではないな」

どうやら誰かと話しているみたいだが、それらしい気配は感じられない。

「……あ……だれ……だ……」

ヤマダは力を振り絞って、言葉を吐いた。

「……そりゃあそうだろう。この程度で死ねるのなら人類なんぞ、とうの昔に滅びている」

「し……に……がみ?」

……自分でもなんでこんな事を言ったのか解らない。

……ただ、そんな感じがしたのだ。

「……ずいぶん安いのだな。貴様の命は。この程度で天に召されようとするとは」

「…………………………」

「残念ながら、貴様に興味はない。

生きる事を放棄して死にたいのなら、俺に迷惑掛けないように死ね」

「……たすか……の……か?」

「興味はないといったはずだ。勝手にしろ」

「………………………」

冷たい。

まるで人間なんぞ虫けら程度にしか思っていないようなきがする。

「…………………………そんな事無いさ。失礼な奴だな」

「……!!」

心を読まれたのだろうか?

ならばやはりこいつは死神か!?

「……安心しろ。俺は去る。今すぐに消える」

「…………………」

「……つぎ…………………あうと………………だろう」

ヤマダは彼の最後に言った言葉をまともに聞く事が出来なかった。

目の前が……暗くなる。

ヤマダの意識は、闇に落ちていった。

(これが……『死』なのか?)

その時はそう思った。

だが……

 

 

 

 

 

 

「……が……ガイ…………い」

……誰かが、自分の名前を必死に叫んでいる。

「ぅ……ん…此処は……天国……なのか?」

「……しろ!!しっかりするんだ!!」

ようやく意識がはっきりしてきた。

……目の前で自分の名前を呼んでいるのはアキトだ。

「ええい!!退け!!テンカワ!!気付けにゃぶん殴ってやるのが一番だ!!」

「……へ?お、俺はもう目が……」

「セイヤさん!?」

バキャ!!!!!

「ギニャアアアアアあああああああ!?」

ウリバタケの放ったスパナ攻撃をもろにくらい、吹っ飛ばされるヤマダ。

口から光る液体を飛ばしている。

「……野郎、まだ起きないのか!!こうなりゃ起きるまでぶん殴ってやる!!」

ウリバタケの眼鏡が怪しく光る。口元から笑みをこぼしているのは……まあ、気のせいだろう

「え!?あ、ちょっと!?」

ばき

どす

めきゃ

ぐしゃ

がきぃぃぃん

ばし

じゃきぃぃぃぃぃぃん

ぐにゃ

 

 

 

……この日、ハンガーから絶えず鈍い打撃音や

人のものとは思えない悲鳴が聞こえたそうな。

 

 

 

追記:翌日、某整備班長がやたら爽やかな顔で

「5127HITだ」といっていたところを整備班員は聞いたらしい。

一体何が『5127hit』なのかはいまだに謎だ。

 

 

追記弍:ヤマダジロウ、原因不明の入院。

再起可能。

銃弾は、どうやら掠っただけだったらしい。

 

 

 

 

設定資料

〜もう、なんだかなあ〜

 

 

 

ディストーションフィールドパンチ

●ディストーションフィールドを腕に収束させ、破壊力、貫通力を飛躍的に上昇させる。

勿論収束する訳だから腕部以外にフィールドが回らない。

●縮めて表記するとDFP。こうかくと非常にDFSっぽいが、

元ネタはマク■スプラスのピンポイントバリアパンチです。

●やっぱり、必勝パターンは防御(DO)狙いをつける(CA)

ディストーションフィールドパンチ(DFP)だろうか(何の話だ

●結構燃費がよさそうなのに、

アニメでは全然使われなかったような気がするのだが如何か

 

ヤマダジロウ

●自称ダイゴウジガイ。でもこのSSでは長ったらしい上使いにくいので

ヤマダジロウで統一。南無三。

●何か酷い扱いだが、次回は

正規パイロットを降ろされて、食堂の皿洗い兼雑用になる予定。AMEN。

●でも、予定は未定であって決定じゃないのはお約束。

●どうでも良いが、毎度毎度何処が設定資料だよ、自分。

 

 

 

 

 

後書き。

テンカワ(黒)が撤退してくれやがったおかげで、

中盤まで出てこないはずのテンカワ(黄)が復活。

あ〜、BMってどうやって食肉用に加工するんだろうな〜(現実逃避)

ドリアンがかけた催眠術なんじゃヨ〜(電波受信)

 

……本当に何しに乗り込んできたんでしょう?奴は。

まあ、気まぐれな奴ですから許してやってください。

 

次回の予定はナデシコの中に源一郎アンド九十九プラスグールが進入。

グール対ナデシコクルーの壮絶な戦い。

……しかしクルーは武装したグールに全員食われ、ユリカとプロスペクター以外、

あえなくグールの仲間入りに

そしてナデシコの地下でアキト(黒)対源一郎の戦い。

源一郎は善戦したが最終的には犬の餌に。

「さあどうした?まだ足が二本千切れただけだぞ?かかってこい!!」

「!!」

「使い魔達を出せ!!身体を変化させろ!!足を再構築して立ち上がれ!!銃を拾って反撃しろ!!さあ!!夜はこれからだ!!お楽しみはこれからだ!!ハリーハリーハリーハリーハリーハリー!!」

「ばっ……ば……化け物め!!」

「……!!そうか、貴様もそうなのか小僧。出来損ないのくだらない生き物め」

「ほざくな!!ネルガルの玩具め!!」

「やかましい!!……お前は犬の肉だ」

「ひっひいいいいいいいい!!!?」

ばき

ゴリ

ムシャムシャ

「所詮こんなモノか小僧……お前はまるでくそのような男だ。犬のくそになってしまえ」

お楽しみに!!(絶対やりません

 

 

 

 

 

 

すいません。

今回脳が膿んでいる状態で書いたので

後書きが支離滅裂です。

気にしないで読み飛ばしてください。(何でこーゆーのを最後に書くかな)

 

 

 

管理人の感想

 

 

U-conさんからの投稿です!!

ガイ・・・お前って、実はニュータイプだったんだな?

しかも、なんかあの有名な某氏の台詞を使ってるし(笑)

ジュンはジュンで・・・何かに乗り移られているし(爆)

う〜ん、このアキトの敵って何者なんだろう?

それ以前に、U-conさん作品には深い含蓄が見え隠れしてますね。

こう言った作品も、面白いですよね!!

 

 

それでは、U-conさん投稿有り難う御座いました!!

 

感想のメールを出す時には、この U-conさん の名前をクリックして下さいね!!

後、もしメールが事情により出せ無い方は、掲示板にでも感想をお願いします!!

出来れば、この掲示板に感想を書き込んで下さいね!!