それは……ある少年の人生。 その追体験だった。

 「み、美神さ〜〜〜〜んっ!!」
 「おのれはそれしか能がないんか〜〜〜〜〜〜っ!!!」

 下心丸出しで女性に飛びかかり、ツッコミを受ける。
 そんな馬鹿な事をしながら、「彼」は幽霊退治屋「ゴーストスイーパー」のアシスタントのアルバイトをしていた。

 「彼」の名は、「横島 忠夫」。

 彼は、がめつい美女の雇い主「美神 令子」と、もう一人のアシスタントで、控えめな性格の幽霊少女「おキヌ」と共に、幾度と無く悪霊や魔物と対峙し、危機を切りぬけて行く。

 「こいつを守ろうとして襲ってきたのか。」
 「かわいそーなことしちゃいましたね。」

 普段はあまり表に出てこない、にじみ出るような優しさを抱きつつ……




 ……初めに、「それ」に気付いたのは、「小竜姫」と名乗る、若い竜神だった。

 「え? シロート!?
 ただの荷物持ち?
 ふーん…?」

 そして、「それ」はゴーストスイーパー資格試験で、

 「……そうだ! 横島さんも受けてみませんか!?」
 「「え!?」」

 小竜姫が与えたきっかけによって、

 「まさにこれは栄光をつかむ手――ッ!!
 「ハンズ・オブ・グローリー」ッ!!」

 急速に発動していく……

 「ウ…ウワサにはきいたことがある…!
 霊力を凝縮しキーワードで一定の特性を持たせて解凍する技…!
 これを使える人間か…!?」

 「それ」の名は……「力」……
 しかし、その一方で………

 「ううう…もう東京には戻れんかもな…
 億単位のギャラをフイにしよーとしてるんだ。
 あの美神さんが笑ってすますわけないよな〜〜〜」

 彼の優しさが失われる事は無かった。





 俺には、それが、ひどくまぶしく見えた……








 幾つもの出会いがあった。
 その中で、俺にとって印象的だったのは……

 「令子ちゃんがいいの〜〜!!
 令子ちゃんじゃなきゃイヤ〜〜!!」

 六道冥子との出会い。
 ………似てるんだよなぁ、状況が。
 彼女に振りまわされている美神令子と、ユリカに振りまわされていた子供の頃の俺って。
 彼女との出会いを見た時ほど、美神令子という女性に親近感を抱いた時は無かった。
 ………彼女も、苦労してんだな…………




 そして、出会いがあれば別れもある……

 「迷う事なんてないって…!!
 俺たち…何もなくしたりしないから!
 また会えばいいだけさ! だろ!?」
 「横島さん…! 私…!
 絶対思い出しますから
――――――!!
 忘れても二人のこと
―――
 すぐに
―――

 皮肉にも再生が、記憶の喪失という形の別離へと繋がる、おキヌちゃんとの別れ―――

 もっとも、彼女の場合は、再び共に歩む事ができた。






 だが
――――――――――――

 「昼と夜の一瞬のすきま…!
 短時間しか見れないからよけい美しいのね。」

 強大な敵として出会ったはずの少女、

 ―――でも、握った手は小さくてやわらかくて……―――

 蛍の魔物、ルシオラ。

 「夕焼け…好きだって、言ったろ。」
 「え。」
 「一緒に見ちまったから…あれが最後じゃ、悲しいよ。」
 「お前……」

 横島と心を通わせ、

 「敵でもいい、また一緒に夕焼けを見て……!
 ヨコシマ!」

 彼を愛した蛍の魔物は、

 「夕焼けなんか、百回でも二百回でも一緒に――――!!」

 彼女を救いたいと願う、横島の想いも虚しく、

 「ルシオラは死んだ!!
 おまえの中に大量の霊基構造を与えたためにだ!!」

 蛍の光の如く、

 「あいつは―――
 ルシオラは……俺のことが好きだって……命も惜しくないって
―――
 なのに……!! 俺、あいつに何もしてやらなかった!!
 ヤリたいのヤリたくないのって………てめえのことばっかりで
―――
 口先だけホレたのなんのって
――――――
 最後には見殺しに……!!」

 儚く――――――――――


 ルシオラを失い、自責の念に縛られた横島の力は弱く、ルシオラの仇にして彼女の主、魔神アシュタロスを倒すには至らない。が
―――

 「煩悩全開――ッ!!」
 「
―――ってイキナリそれかっ!!
 セッソーなさすぎない、あんた!?」
 「あんたがやれって言ったんじゃねーか!!
 ………
 すまん。俺は…やっぱ俺らしくしてなきゃな。
 でないとルシオラがガッカリするよな。」
 「………!
 おまえ
―――――ひと目で…?」

 ルシオラに化けてアシュタロスの弱点を知らせにきた彼女の妹、ベスパによって本調子に戻り、アシュタロスとの決戦に勝利する。





 そして、全てが終わった後に知らされた絶望。

 「結局、十分な量の霊破片はとうとう集まりませんでしたね…
 もう…あとほんのわずかなのに…!
 よそから霊体を持ってきちゃダメかしら…?」
 「バカ言え! 基本量が確保できとらんと別人になるだけだ!」
 「俺の中にルシオラの霊体は山ほどあるのに
――――!!
 なんで使えねーんだよ!?」
 「魔物ならともかく、おまえは人間だからな
――――
 そう何度も粘土みたいに、ちぎったりくっつけたりでは、魂が原型を維持できんのだ。」

 そして、提示された手段、それは―――

 「もし、転生先が横島クンの子供ならどう!?」

 横島は、それに一縷の望みを託す。









 そして、努めて、「変わらぬ自分」であろうとする。
 バカでスケベで、でも、それでもルシオラが愛した自分であろうと
――――

 だが―――時々、無性に悲しくなる。
 彼女の死の直後のように、自分を責めてしまいそうになる。

 俺も……そういうのには、身に覚えがある…………





 そんなある日、横島の友人の一人「伊達 雪之丞」が、ルシオラの二人の妹と共に横島を訪ねてくる。

 「ポチッ!! ルシオラちゃんを生き返らせる良い方法を思いついたでちゅ!!」
 「なっ…… 本当か!! 本当なのか、パビリオ!!」
 「ああ。 と言っても、思いついたのはパビリオじゃなくて俺なんだがな。」
 「……どんな、方法なんだ?」
 「横島、お前、勘九朗は覚えているか?」
 「……あの、魔族になっちまった………あっ!!」
 「そう、あいつは元・人間の魔族だ。
 あいつはどうやって魔族になった?」
 「魔装術の暴走……」
 「そうだ。そして、人間には無理でも、魔族ならできる事がいくつかある。
 その一つが、魂をちぎったりくっつけたりすることだ。」
 「つまり、俺が魔装術で魔族になり、その俺からルシオラの霊体を取り出せば……
 ルシオラが生き返る!!」
 「ああ。だが、この方法には問題がある。
 一つ。魔族になっちまったお前は、ほぼ確実に殺戮衝動の塊になっちまう事。
 二つ。そうなっちまったお前の強さは、完全にアシュタロスを超えていると思われる事。
 ……神族魔族の介入は不可避。
 下手したら、そのまんま聖書級崩壊が起きちまうだろうな。」
 「な……!」
 「けど、わたし達はそれを回避する方法を思いついたんでちゅ。」
 「!?  どんな……?」
 「平行世界、しかも神族や魔族の力がほとんどない世界に行って、そこでおまえが魔装術を使えば良いのさ。
 そうすれば、神族魔族の介入による、聖書級崩壊の発生は防げるはずだよ。」
 「平行……世界? なんだ、そりゃ?」
 「今、ここにあるこの世界とは別の可能性の世界さ。
 例えば、あの戦いがアシュ様の勝利で終わった世界とか、
 もっと離れれば、そもそもアシュ様自体が存在しない世界も……」
 「その無数にある平行世界の中には、そもそも神族や魔族が存在しない世界さえあるはずなんだ。
 俺達はお前の文殊でその世界に行く。」
 「後は、わたしとベスパちゃんが『同』『期』の文殊で合体すれば、ポチがアシュ様より強くなっても倒せるでちゅ。」
 「そして、俺がぶっ倒れている隙に、ルシオラの霊体を取り出すってワケか。」
 「そういう事だ。
 ちなみに、この話は俺たちしか知らない。
 美神の旦那とかに話すと、絶対止められそうだからな。」






 そして、俺の目は覚めた。




極楽大作戦!!

第壱話 ルシオラ復活計画!!(承前)



 「なるほどな。百の言葉を並べられるより、こちらの方が判りやすい。」

 俺の隣で、北斗がそう言う。

 「で、俺達は、ルシオラ復活計画に協力すればいいんだな?」
 「……引き受けてくれるんでちゅか?」
 「……あんな物を見せられたら、な。」
 「………礼を言う。」





 なんで俺と北斗がこんなとこ―富士樹海―にいるのか、と言うと……
 俺はひなた町で雪之丞と、北斗は木星でベスパと出会い、途方もなく強い敵との戦い、という餌に引っかかってフラフラとついてきたからだ。
 ま、北斗はどうだか知らないが、俺は人を見る目はあるつもりだ。
 雪之丞が信用に足る男だ、という事はすぐに判った。

 そして、敵の説明をする、と言って雪之丞が取り出した文殊は『記』『憶』『夢』。
 その文殊の力によって、俺と北斗はさっきまで、横島の記憶を見ていたらしい。

 「さて、と。
 人間の限界を超越しているあんたたちでも、横島がどれほどヤバイ相手なのかは、今ので判ったはずだ。」
 「ああ。『同』『期』の文殊は、ありがたく使わせてもらう。
 それでいいな、北斗?」
 「アレ以上の相手なら……しかたがない、か。
 おいアキト、文殊をよこせ。」

 俺は、そう言って手を伸ばしてきた北斗に、『同』の文殊を持たせてやった。

 「今日はもう遅い。明日の朝9時頃に作戦を始めるぞ。」

 俺達は、その雪之丞の言葉に、黙って頷いた。

 そして、翌日の朝――――



 「いくよ、ポチっ!!」
 「いつでもいいぜ……」

 「「合!!」」
 「「体!!」」




 ――――――――――――――――――――魔神との死闘が始まる。





あとがき

 どうも、平成ウルトラマン隊員軍団(仮)です。
 「明日も知らぬ僕達」はどーした、というむきもあるでしょうけど、こちらは短い話を連ねていくような形になりますので……

 さて、このActionHomePageには、ナデシコと他の物語とのクロスオーバーものが結構あります。
 が、その中で主人公や男性キャラの存在を抹殺、その代わりにアキトを放りこむ、という筋立ての物が多いように思えます。

 まあ、「ナデひな」で、景太郎が抹殺されているからだと思いますが。

 しかし、「漆黒の戦神アナザー キース=ロイヤルの場合」や逃亡者シリーズのような、アキトと他作品の主人公のやり取りも面白いと思いましたので、ここではアキトと「GS美神」の横島を共演させてみる事にしました。
 そうは言いつつ、ナデひな時系列なワケなんですが。
 まあ、それ以上に、横島以外の男にひっついている、おキヌちゃんやルシオラはあんまり見たくないってのがあるんですが。

 モロにモテまくるアキトと、さりげなく(?)モテている横島を上手く対比できないかな? と思ってます。

 PS.アキトと北斗のGS美神での強さは、大体ルシオラ達三姉妹と互角くらいに考えてます。
 (つまり、生半可な神族や魔族が相手なら、力押しで圧倒できる程度。)

 

 

 

代理人の感想

二次創作の多い作品の条件って、「面白いのにラストでへたれた物」なんですよね。

エヴァとかナデシコとか・・・・・・・・・・GS美神とか(笑)。

 

それはさておき第一回として内容については過不足ないんですが一つ。

「承前」というのは「前の続き」と言う意味なので、

二次創作として独立している当作品の場合(「原作の続き」と言う意味だと思いますが)

「承前」と言うことばを用いるのは少し違和感があるかなと思いました。