極楽大作戦!!

第弐話 ルシオラ復活計画!!(前夜・ベスパの告白)



 「……ふぅむ、あいつらの記憶を見る限り、結構信用できそうな連中だな。」

 俺は、雪之丞とベスパが連れて来た協力者二人との打ち合わせの後、ベスパにこう漏らした。

 「記」「憶」「夢」の文殊で他人の記憶を見たのは、あの二人だけじゃない。
 俺達の方も、彼等の記憶を覗いて、本当に信用してしまっても良いのか? また、信用できたとして戦力になるかどうかを調べていたのだ。

 結果、北斗ちゃ……枝織ちゃん? ややこしいな、女の子の方はやや微妙な感じだったけど、アキトっつったっけ、こいつの方は全面的に信用してしまっても良い、という結論になった。
 実力の方も充分……ってえか、この二人、ホントに人間なのか?
 なんか、小龍姫さまでも瞬殺されそうなほど出鱈目な強さなんですけど……

 「まあ、確かに信用もできるし、実力もあるけど……
 あたしは、あのテンカワって男、嫌いだね。」
 「ああ、気に食わねえよなあ、あんな無茶苦茶なモテっぷ……りって…………」

 モテる奴の事が気に入らないのは、モテない男の性。
 つまり、女のベスパには関係のないはずの話なんだが……

 何故か、ベスパが俺の事をジト目で見ている。

 「あんたね……まあ、らしい、っちゃらしいけど。
 あたしが気に入らないのはそこじゃない。
 あいつの生き方……時を遡った後の生き方が嫌いなんだよ。」
 「生き方?」
 「ああ、そうさ。かつて自分達が体験した未来の事を、過去に縛られない、これからは前向きに生きる、だかなんだか都合の良いことを言って、臭い物には蓋、ってしてさ。
 そのくせ、女を口説く時には、昔こんな大変な目にあった、って……都合がよすぎるってんだよ。
 あたしは奥さんが気の毒でならないよ。
 すっかり、女を落す為だけの道具にされて、墓参りの一つもしてもらえない。完全に「昔の女」扱いで……」

 俺は、ベスパの言葉に強烈な共感と……それを拒否しなければならない、という気持ちが湧き上がって来た。

 「……でも、どこかでそうしないと……ぶっ壊れちまうぜ。
 人間だろうと、神族や魔族だろうと……」
 「そんなこと言ったってっ!!」
 「…………例えばさ、俺なんかの場合は、今回みたいな反則技があるけど……
 もし、ルシオラが普通に死んじまってさ、霊破片もくそもなかった場合は……俺は一生ルシオラの事を引きずっていかなくちゃならないんだぜ。
 そんな事してたら、俺自身どっかで潰れちまうだろうし……あいつが喜ぶはずがねえだろう……!!」
 「……それは……そうかもしれない。
 でも、少なくともあんたは姉さんを出汁にして女を口説いた事はないだろう?」
 「あーはっはっはっ!!
 最近気付いた事なんだけどさ、俺って女を口説くのが致命的に下手らしくってなっ!!
 そんな、「昔、好きな人がいてさ」なんて言って、女を口説くだなんて器用な真似できねえって!!」

 俺は、わざと明るく答えた。
 そうしたほうが、良いように思えたからだ。

 「あいつは……姉さんの事を出汁にして、手当たり次第に女を落としまくってるあんたみたいなもんさ。
 あたしには……それが、重大な裏切りに思えてならないんだよ…………」

 そのベスパの言葉は、妙に耳に残った。
 ルシオラの事を出汁にして、手当たり次第に女を落としまくってる俺、か……

 翌朝。

 朝食を食い終わった俺は、皆の前でベスパにこう切り出した。
 前々から話そうと思っていた事だ。しょうもない事なんだけどな。

 「なあベスパ、俺ってさ、お前の事をずっと……」
 「……笑えない冗談だね。」

 ま、ここまでだったらそんな反応が返ってきて当然だよな。

 「お前の事、ずっと、お前等姉妹の一番上だと思ってたんだよ。」
 「……へ?」

 その瞬間、ベスパがギャグ顔になる。
 パピリオは、珍しげに彼女の顔を見、雪之丞やアキト達もそれに習う。

 「こ、ここまで極端なベスパちゃんのギャグ顔、初めてみたでちゅ。」
 「ほう、珍しいんだな。妹のお前をして初めてと言わしめるとは……」
 「横島の記憶じゃあ、南極の時に一度なってたと思うけど……」
 「ああ、あんときは俺もいたけど、こんな近くじゃなかったからな。」
 「……あんた達、なにジロジロ見てんだい?
 で、なんであたしが一番上なんだい?」

 ベスパが俺に向き直って、聞き返して来た。

 「いや、だってさ、お前よくパピリオの世話とかしてただろ?
 だから、世話焼きなお姉さんって印象があってさ。」
 「……姉さんは?」
 「ルシオラは、まあ、俺の事好きになってくれて、そのまんま暴走してお前と姉妹喧嘩してた印象が強くてよ。
 「恋に暴走する次女と、それを諌める長女」って構図が浮かんじまったんだよ。
 いやあ、ずっと後になって、お前の方が妹って聞いて、正直すげえ驚いたんだぜ。」

 それを聞いて、ため息をもらすベスパ。

 「なんていうか……苦労人なんだな、彼女。」
 「成る程、氷室や千沙に近い匂いを感じたのはそれか。」

 ベスパは、アキトと北斗の台詞を聞いてへなへなと脱力してしまった。

 「こ、これから、気をひきしめなけりゃならないって時に、あんたは……」

 結局、ベスパのモチベーションが回復するのに、1時間もかかってしまった。

 「……ポチ、お前のその余計な一言、どうにかならないんでちゅか?」
 「いやあ、性分なもんで、直せねえと思うぞ。」
 「それが出来るほど器用な奴だったら、とっくの昔に美神の旦那の虐待は止んでると思うぜ。」
 「それもそうでちゅね。」
 「お前等な……」

あとがき

 ルシオラ復活計画前夜、極楽サイドの話です。
 妙に短いですが、これはこれで1話にする事にしました。

 この話のコンセプトは、「時ナデアキトに嫌悪感を抱く女性がいたっていいじゃないか」です。
 よく、クロスオーバーではヒロインがアキトに落されたりしますが、ベスパに関してはそれはないと思って、書いてみました。
 おかげで、某夜華には投稿できない内容になってしまいましたが、まあそれはそれとして。

 復活計画の戦闘シーンは思いきって飛ばすつもりです。
 かなり激しい戦いになりますが、マトモに描写する筆力がなさそうですんで。

 またいつか更新する時もくるとおもいますので、それまで気長にまっていてください。
 あくまで、こっちの話は「明日も知らぬ僕達」のガス抜きなんで。

 それでは。

 

代理人の感想

・・・オチてないよぉ(爆)。