明日も知らぬ僕達
第五話 運命、因縁 サツキミドリ2号
Side Jun
『でも、やっぱりこれだけは伝えておきたい―――貴方が、すきで・・・』
「チハヤァァァァァァ!!!!!」
………ゆ、夢?
やはり次がサツキミドリだからなのか? こんな夢を見たのは……?
飛び起きた俺は汗まみれで荒い息を整える。否、整えようとする。
サツキミドリ、俺が『僕』から『俺』になったあの忌まわしい……
「う、うるせえ。ブリッジで居眠りなんかすんなよ……
ってどうしたんだよアオイ!!
お前顔色悪いぞ!」
今さっきブリッジに来たらしいカシワギの奴が、心配してくれているみたいだ。
「ハアハア……
いや、なんでもない。 少し夢見が悪かっただけだ。」
本当は、少しなんてものじゃないんだがな。
それをコイツに話すわけにもいかないだろう。
あの事件自体は重要な意味をもつのだろうが、彼女の……チハヤの死は、それに付随する出来事でしかなく……重要度は、低い………
「……何おっかない顔してんだよお前。
それに夢見が悪いって、どんな夢をみりゃそんな真っ青な顔になるんだ?」
お前に話すワケにはいかないよ……俺一人でどうこうできないのは分かってるけど、こんな忌まわしい出来事を、あえてここで話すこともない。
「なんでも、ないって。」
「説得力がないなんてもんじゃないぞ、それ。」
俺は少し躊躇するが、
「だろうな。」
と素直に応える。
…………さて、息も整ったところで、サツキミドリ2号を……
……あいつの1度目の人生のように、木星蜥蜴に破壊されてしまえばいいと考えている自分がいた。
あの事件でサツキミドリ2号そのものが悪いわけではなく、ましてそこにいた人達が関係しているわけでもないのに、俺は、度し難い馬鹿だ…!!
今は、そう、今は守る。その為に、俺ができる事といえば…
「なあカシワギ。
ナデシコって宇宙に出てしまえば、ほぼ無制限にエネルギーを使えるんだよな?」
「ああ、確かにそんなフレコミだったな。」
「だったら、サツキミドリ2号には最大船速でいかないか?
エネルギーの心配をしなくていいんなら、船速を速くしても問題はないと思うんだが。」
一番原始的な方法で行く事にした。
奴等の攻撃がナデシコの接近に合わせて行われた物だとするなら、逆効果ともいえるが、何しろ俺にある手札なんて未来に関する知識位のもの。 テンカワのような研ぎ澄まされた復讐の牙も、彼に付き従うマシンチャイルド達の演算能力も俺には無い。 俺にとれる手段といったら、こんな原始的な物しかない。
「…なんで急ぐ必要がある?」
「さっさと零Gフレームを積み込む為さ。
零Gフレームのない今の状態で敵に襲われたらひとたまりもない。
今の船速でのんびり航行しても、別に敵に見つかる可能性が低くなるわけじゃ無し、だったら危険な時間はなるべく減らした方がいい。」
我ながらよくもまあこんないい訳を思いついた物だ。
「なるほどな。
分かった。プロスさんに相談してみよう。
それと……アオイ、あとで医務室にいっておけ。艦長命令だぞ。」
そういってカシワギは席を立ち、ブリッジから出る。
多分、プロスさんの自室に向かうはずだ。
と、俺はそこで、メグミ君やミナトさんの視線を感じる。
そういえばチハヤの名前を絶叫したような気が……
二人ともなにかいいたげだったが、俺の様子を察してくれたのだろう。
チハヤの事を聞いてきたりはしなかった。
「ミナトさんメグミさん、副艦長にチハヤさんの事を聞きたいんじゃないんですか?」
「ルリルリ、あの副艦長の様子を見たでしょ?
単なる好奇心で触れていい話題じゃないのは、あなたにも分かるでしょう?」
「はあ、まあなんとなく……」
「だったら、聞かないであげるのが礼儀ってものよ。」
「……でも副艦長、一体なにがあったんでしょう………?
あのうなされ方は普通じゃありませんでしたよ?」
……聞こえてるよ三人とも。
この頃のルリちゃんは「あの」ルリ君とは違う。人の感情の機微に疎い、そんな感じがしたな。 この彼女を人間らしく育てたのが、ユリカであり、ミナトさんであり、テンカワだったのか……
Side Kazuki
サツキミドリ2号につくまでの間、俺達パイロット連中はシミュレータで訓練をしているんだが……
む、無茶苦茶だアキトの奴……
「おいアキト。俺、一応素人なんだけど……」
「戦場じゃいい訳にもならないな。
腕に自信が無いなら、腕を磨けばいい。簡単な理屈だろ?」
「開始5秒から20秒でやられてたら腕を上げるもクソもねえって。」
「俺相手に20秒もつなら、もう少し自信を持ってもいい。
まあ確かに、ガイくらい粘って欲しいってのが本音だけどな。」
ちなみにガイは最長35秒…秒殺なのに変わりは無い。
おまけに、腹が立つ事にアキトの奴本気を出していない。
多分本気なんか出された日には、俺もガイも1秒もつかどうかって所みたいだ。
「あとカズキ、お前無茶な機動が多くないか?
そんなんじゃ、すぐエステにガタがくるぞ。」
「無茶な機動無しにどうやってお前の攻撃をしのげってんだよ…」
俺は泣きが入る。そもそも、俺だって好き好んで無茶な機動をしているわけではない。
このシミュレーターはご丁寧にもパイロットにかかるGまでが再現される。
無茶な機動なんぞをやろうものなら、実機でそれを行った場合とほぼ同じ目にあう。
例えば、無茶な機動の結果右方向に6Gかかった次の瞬間には左後方に10Gなんてのも再現してしまう。ってか、さっきそれを身を持って体験してたし。
「でもお前、あんな機動によく耐えられるな。」
ガイが呆れた、と言わんばかりの口調でそう言う。
「へ? 別に普通じゃないのか?」
「「いや全然普通じゃないって」」
どうも耐G能力は結構高めみたいだな、俺って。
それでもアキトどころかガイにも遅れをとっているのは、やはり訓練を受けた兵士とそれがない一般人の差ってところか。
その後俺達はそれぞれ別の設定でシミュレーターの一人用モードで訓練をする事にした。 三人それぞれの腕に差がありすぎるのでこちらの方が効率がいい。
ちなみに俺はイージー、アキトはデンジャー、ガイはハード難度で訓練している。
俺がやっとの思いでイージーをクリアした横では、ガイが幾度目かのコンテニューをしていて、アキトは鼻歌交じりでデンジャーをいままさにクリアしようとしていた。おまけに、どうやら2周目のようだ。
ちなみにこのシミュレータ、アキトの話によるとイージーをクリア出来れば一端と呼ばれ、ノーマル難度でもクリアできる奴は一握りという、狂った難度設定がされているらしい。
俺も終盤での、バッタと同じノリで押し寄せてくるエステバリスとナデシコの大群には流石に引いた。
思考ルーチンがお粗末だったので、俺でさえ付け入る隙があったというのがせめてもの救いだ。
イージーでこれだもんな。どこのどいつだ、こんなシミュレータ作った奴は……
しかし、それでもガイは結構頑張ってるみたいで中盤に差し掛かっている。
アキトに至っては最「狂」難度であるデンジャーさえも歯牙にかけてないらしい。
更にノーコンテニューというおまけ付きだ。
画面ではたった1機のエステバリスに蹂躙される数個のチューリップと、それらからバッタと同じノリで吐き出されるナデシコとエステバリス。
エステの攻撃力でどうやって? と思うんだが、アキトの奴は吐き出される最中のナデシコを複数叩き落す事で大規模な爆発を生み出し、それを使ってチューリップを内側から破壊しているようだ。
無論、既に配備済みのナデシコとエステの数は尋常ではないが、それでもアキトのエステ1機相手に歯がたたない。
思考ルーチンも、イージーとは比べるのも馬鹿馬鹿しいほど洗練されているのに、だ。
アキトといい、タイシといい、ユウといい、ガイといい、スバルちゃんといい、俺の周りにいる奴ってどうなってるんだろう……
そのままあっさりクリアしてシミュレータから出てきたアキトは、俺を見て目を丸くする。
「カズキ!! お前いつまでシミュレータやってるんだよ!!」
「はあ? んなこといったらデンジャーモードを2周してるお前はどうなんだよ?」
「お前な……お前、この3日間ずっとシミュレータの中にいたんだぞ。」
「へ?」
う〜ん、確かに漫画描いている時も同じような事がしょっちゅうあったような……
そんな事を考えていると、猛烈に腹が空いた。
アキトの言う通りなら、3日間飯を抜いた事になるから、当然といえば当然だ。
おいアキト、お前何こめかみを押さえてるんだよ?
「カズキ、シミュレータはこの位にして飯食って寝ろ。」
「……ウィッス。」
とりあえずアキトの言う通りにしよう。
眠いし腹も減ってるし、今の状態じゃ訓練なんざできないだろう。
「ホウメイさんの料理って美味いんだよな〜〜」
俺はそんな事を言いながらトレーニングルームを後にした。
Side Akito
俺とガイがきりの良い所で訓練を終わらせ、まだシミュレータの中にいるカズキを残して食堂に行く途中、こんな艦内放送が聞こえてきた。
「これよりナデシコは、予定を変更し最大船速でサツキミドリ2号に向かいます。
このままいければ予定より10時間早く到着します。」
この放送を聞いて俺は内心焦った。
これは俺の「予定」外の出来事だ。
「奥の手」を使うタイミングが微妙になってくる。
「なお、早く到着した分はクルーの皆さんの自由時間とさせてもらいます。
ただし、パイロットの皆さんは3交代でアサルトピット内で待機してもらいます。」
これを聞いて俺は……俺以外にも「プリンス オブ ダークネス」を知っている人間がいると、そんな予感めいた物を感じた……
まあいずれにせよ、まだ「奥の手」を使うタイミングじゃない。
と言うワケで、俺達は今食堂にいる。
「はい、テンカワはラーメン、ヤマダ「ダイゴウジガイだ!!」は火星丼だね」
ホウメイさんの飯は本当に美味い。コックを目指していたという「プリンス オブ ダークネス」が彼女に師事したのも分かる。
彼女の後ろにいる5人組がかしましいのが少し気になるが…
考えてみれば「過去」のナデシコにおいて、「プリンス オブ ダークネス」は厨房勤務者の中で唯一人の男性だったんだな。
俺がそんな事を考えていると、後ろに感じたくも無い気配を感じ
「えへへ〜〜、だ〜〜〜れだ?」
俺の目を塞いで、そんな事をいう疫病神を黙殺してラーメンを啜る。
「ぶ〜〜〜〜」
子供かコイツは…
反応を返すと向こうの思うツボなので黙殺。
しかしホントにコイツは俺より年上なのだろうか?
「プリンス オブ ダークネス」はコイツと結婚したらしいが……俺にはどうにも理解できない。
「過去」のナデシコで一体何があったんだ??
今、俺達はサツキミドリ2号にいる。
ここに向かう途中、「奥の手」…サツキミドリ2号の警報を作動させるウィルスを使ってみたが、無人兵器共がこないで不発。
単なる小火騒ぎで済んだ、というところか。
それにしてもオモイカネめ……何が「この時代の僕とルリじゃ、このウィルスは見破れないから大丈夫だよ」だ。
使ったらバレると思って戦々恐々していた俺が馬鹿みたいじゃないか。
もっとも「早めに来る」という方法が功を奏した以上、「あの時間」に無人兵器が押し寄せてくるはずだ。
ただ、「俺」というイレギュラーがある以上、歴史があの通りに動くとは考えない方が良いかもしれない。
実際、補充のパイロットも「過去」では3人だったのが4人になっているし。
何者なんだ? この四人目のパイロット「フジタ ヒロユキ」は……
そうは言ってみても、やはり「あの時間」に敵襲がある可能性は高い、と考えた俺は、「あの時間」と重なるよう遅番を選択した。
ちなみに番手は
早番 ガイ + アマノ ヒカル 中番 カズキ + マキ イズミ 遅番 俺 + スバル リョーコ + フジタ ヒロユキ
という順番だ。中番が中々凄い事になっているような気がするが、この際無視。
さてと、そうと決まればやる事はない。
迂闊にコロニー内に繰り出して行って、さっき遊びに行ったユリカに捕獲される危険は冒したくない。
そこで俺はスキンシップと称して、遅番の他の二人を誘ってシミュレータで訓練する事にした。
ヒロユキに関する情報も欲しいところだしな、訓練中にそれとなく聞いてみるか……
Side Jun
あれは……まさか、「あの時」ルリ君が流したウィルスか? だが、ルリちゃんは「あの」ルリ君ではないし……一体誰がウィルスを使ったんだ?
Side Kazuki
「ふ〜やれやれ。まさかあの「テンノヒカリ」がパイロットで、しかもナデシコに乗艦するだなんてな……」
俺のようなポっと出の同人作家ではなく、ユウと同じ位のベテラン作家。
ジャンルは、レイコちゃん達と同じ「やおい」だ。
以前、レイコちゃんの紹介であった事があるが、全然パイロットという感じではなかったもんな…
それにしても、俺の事を「先生」付けで呼ばないで欲しかったよ。
更に言うなら、あの根も葉もない「千堂かずき15股疑惑」を、さも事実のように言ったりするのもやめて欲しかった。
おかげで、ウリバタケさん達の視線が痛い事痛い事。
まったく、何をどうすれば俺が、ミズキとユウとエイミとミナミさんとアヤちゃんとスバルちゃんとチサちゃんとアサヒちゃんとレイコちゃん達とイクミちゃんと編集長と運送屋さん(スズカさんというらしい)が付き合っているように見えるんだろう?
独り者が傷を舐めあってるだけなのになぁ。
まあミズキやユウ、エイミはおいとくとして、他の皆が独り者なのは何故だろうと思う事はあるけど……
テンノヒカリ、いやアマノ ヒカルちゃんか……恨むよ、まったく。
俺がそんな事を考えながら艦内を歩いていると、トレーニングルームから声が聞こえてきた。
どうやらアキトの奴が補充のパイロット達を絞りあげているらしい。
手加減するならもっと手加減してやれよな。
俺がそう思った次の瞬間!!
「警報? もしかして、敵か!?」
Side Jun
「アオイ!!
コロニーに繰り出してるパイロット達を呼び戻せ!!
エステバリス隊を先行させるぞ!!」
「艦長、コロニーに繰り出しているパイロットはいません。
全員艦内にいます。
現時点でヤマダさん、アマノヒカルさん、マキイズミさんの三名が出撃できる体勢になっています。」
『艦長、いつでも出られるぜ』『いっけまっすよ〜〜』
『行ける、いける、花をいける。く、くくくくく……』
一瞬ブリッジが凍りつくが、俺には耐性がある!
「では、あなた達三人で先行してください。
残りの四人にも出撃体勢が整い次第、出撃してもらいます!」
「「「了解!!」」」
三機のエステバリスは勢い良く出撃していった。
その間にカシワギ達も正気に戻ったようだ。またブリッジが慌しくなる。
「ルリちゃん、敵の陣形はどうなってる?」
「チューリップを護衛する艦船中心の部隊と、こちらを攻撃してくるバッタ中心の部隊に分かれているようです。
詳しい陣形は今ディスプレイに表示します。」
「結構な大軍だな。…エステは7機そろうまで突出するな。
アオイ、戻ってきているクルーはどのくらいだ?」
「今……9割、いや8割7分だ。
後、プロスさんやホウメイさん、ユリカが戻っていない。」
「分かった。」
『テンカワアキト、出撃準備終了した。』
『フジタヒロユキ、以下同文っス!』
『ブリッジ、センドウカズキいつでも行けます!!』
『スバルリョーコ、いつでもいけるぜ!』
「おっし、じゃあ行ってもらおうか!」
『『『『おう!!』』』』
「アオイ!! 残留組の回収はとりあえず後回しだ!」
「!?」
「くさい匂いは元から断つ! チューリップを速攻で叩き落してから、残りを始末するぞ!!
アキト、カズキ!! お前等はナデシコの護衛だ、ついて来い!!
残りはサツキミドリの防衛だ!
まだプロスさんやホウメイさんが残ってるんだ、落させるんじゃねえぞ!!」
『『『『『『『了解!!』』』』』』』
……凄い指揮能力だ……俺って本当にコイツをおさえて次席についたのか?
それとも紙の試験ではこういう能力が評価されないのか……
戦場ではヤマダ、フジタ、リョーコ君、ヒカル君、イズミ君がサツキミドリ2号の守備隊に混じって奮闘している。
流石に全員スキャバレリプロジェクトに採用されるだけあって、守備隊のパイロット達より遥かに強い。
特にフジタの強さはかなり突出している。
前々回で戦争を終わらせた頃のテンカワくらいの実力があるな、あれは。
翻って、ナデシコの周りに目を転じると、テンカワの圧倒的な強さが目に付く。 「この」テンカワには「前歴と異名」という強い味方がいるから、少しくらい非常識な強さを発揮しても怪しがられないという強みがある。 確かに「あの」テンカワほどでは無さそうだが、まあこの戦争を2度に渡って潜りぬけ、闇の底の底でひたすら復讐の牙を研ぎ続けた事もあるアイツと比べては酷という物だろう。
カズキもサツキミドリにつく2、3日の間に随分と腕を上げたみたいだが、流石にテンカワの横にいては目立ちようがない。 地味にいい仕事をしてくれているのは、ナデシコまで到達できた攻撃が皆無に近い事からも明らかなんだが……
「目標、有効射程内に捕らえました!!」
「グラビディブラスト発射!!」
と、グラビディブラストでチューリップは殲滅され、増援を断つ事は出来たが、既に出て来ている敵の数も結構な物だ。
サツキミドリ2号は無事なんだろうか……?
ふう、やれやれ。今回の戦闘の結果、サツキミドリ2号は修復不能になったが、人的被害はなし。
サツキミドリ2号の廃棄も決定し、俺にとっては最良といっていい結果になった。
その後で、プロスさんが
「どうせ廃棄してしまうなら、使えそうな資材を見繕って運び出してしまいましょう。」
と言って、エステバリス隊による火事場泥棒が始まった。
恐らくは、この途中でデビルエステバリスと遭遇する事になるだろう。
俺はそんな事を考えながら、カシワギの奴に断って格納庫に向かっている。
ウリバタケさんにDFSを作ってもらう為だ。 ナデシコを守る為には「多少の」パワーアップがあった方がいい。
あくまで「多少」だ。
正直、俺は前回のテンカワは「やりすぎた」と思う。
余程、前々回ユリカを守る力が無かったのが悔しいと見えて、前回のテンカワはとにかく力を欲した。
その結果がDFSであり、5年早く作られたブラックサレナであり、その後継機ブローディアだ。
だが、その結果「北斗の出現」や「ダリア」「神皇シリーズ」「ブーステッドヒューマン」といった木連やクリムゾンの強大化を促し、事態はパワーゲームの様相を呈した。
それを踏まえて考えた、俺達が楽になり、なおかつ敵の強大化を防げるギリギリの戦力強化策がDFSだ。 これなら使える人間は限られ、機体性能を引き上げるワケでもないのでダリアや神皇シリーズの出現は防げるだろう。 それに、チューリップを相手にしなければならない地球側は良いとしても、木連にとってDFSがつかいでのある武器だとは思えない。 地球の艦船など従来の武装で充分落せるし、DFSには「防御力低下」という欠陥がある。好き好んで使おうとはしない筈だ。
「ウリバタケさん、ちょっといいですか?」
格納庫に着いた俺は、ウリバタケさんにそう話しかけた。
「なんだよ?」
「テンカワ達って、敵を殴りつける時、拳にディストーションフィールドを集中させますよね?」
「ああ、そうした方が攻撃力が高いし、拳への負担も軽くなるからな。」
「だったら、ディストーションフィールドを剣状に収束させることって出来ませんか?」
「う〜〜ん、理論上は出来るだろうな。
エステバリス単体じゃなくて、それ用の装置が必要だとは思うが。
でも、なんでそんな必要があるんだ?」
「剣状に収束させた方が、収束率が良くなって攻撃力が高くなると思って…
それに……」
俺は、対ウリバタケさん及びヤマダ用の最終兵器とも言うべき一言を紡いだ。
「肉を切らせて骨を絶つ必殺剣、って言ったらなんかかっこよくありませんか?」
「うんうん、燃えるな〜〜そのシチュエーション!!
しかも、攻撃力も俺の予想通りなら、まさしく必殺剣に相応しいとんでもない物になる筈だ。
分かった。副艦長、俺に任せろ。
必殺の剣にして諸刃の刃、ディストーションフィールドソード、このウリバタケが必ず形にしてやる!!」
う〜〜〜ん、効き過ぎたようだ……
サツキミドリ2号内部に潜っていたエステバリス隊は、予想通りデビルエステバリスに遭遇したが、アッサリ撃退、結構な量の物資を抱えて帰って来た。
それにしてもフジタヒロユキ、アイツは一体何者なんだろう……
第六話「火星への旅路」に続く
あとがき
さて、アキトとジュンがそれぞれで策謀していますが、そろそろお互いの存在に気付き始めているようです。
更に二人にとっては全くのイレギュラーであるフジタヒロユキの登場(セリフ無いけど)(カズキは「1度目のテンカワアキトをトレースする存在」と認識されています)と、結構な早さで物語が進み始めた今回でした。
さて、ホウメイさんは今回初登場で、セリフも1回ですが、味が出せたと思うんですがどうでしょう? |