Side ???? オレハナゼ狂ッテシマワナイ…… 狂ッテシマエバ楽ニナルノニ…… オレヲ正気ニ繋ギトメル物ハナンダ…… 幼イ頃ニ死ンデシマッタ両親トノ思イ出? ……違ウ。 デモ…… 「じゃあ、あたしがデートしてあげる!!」 ソウカ…… アノ時助ケラレナカッタ、アノ子ノ 本当ハオレガ彼女ヲ守ラナケレバイケナカッタノニ…… オレハ彼女ニ、何ヲシテヤレル…… イヤ、何ヲヤルニシテモ、マズコノ地獄カラ抜ケ出サナケレバ何モデキナイ。 ……? 誰カ来タノカ? オレハ残リ少ナイ力ヲ振リ絞リ、何トカ声ヲ出ス……声ヲ出セタ筈ダ。 「誰ダ………」 「ヤマサキの人体実験に半年も付き合わされて、まだ明確な判断力があるのか? コノ声ハ女ノ子……歳ノ頃ハ大体オレト同ジ位カ。 「ヤマザキノ助手カ何カジャナサソウダケド、何ノツモリデココニ来タンダ? キミハ一体…… ソンナオレノ心ノ中デノ呟キニ応エルヨウニ、彼女ハ軽イ自己紹介ヲシタ。 「ああ、自己紹介がまだだったな。 貴様を捕らえ、この地獄に放りこんだ男、北辰の愚息よ。」 北辰? 北辰ダト!? アノ木星蜥蜴トイウ名前ノ由来ナンジャナイダロウカト思ワセル、爬虫類ジミタ顔ノ男カ……ッ!! 彼女ハソノ娘ダトイウノカ? させぼノ海岸線デ突然途切レタ俺ノ記憶。 ソノ機動兵器の調査ニ来たラシイ……北辰と奴に付き従う六人集。 俺は機動兵器で逃げようと思ったけど、機能不全に陥っていたらしい機動兵器では何もできず、俺に似た男共々捕らえられてしまった。 俺に似た男は異常なほど強かったが、どうやら記憶喪失だったらしい。 一方、凡人でしかなかった俺は、このヤマサキラボで人体実験という名の拷問……いや、緩慢な死刑に付き合わされる事になった。 それから……半年。 俺と同じ「実験」で次々と命を落していく「被験者」達。 その中に地球との和平を望む人達が幾人も混じっていたのではなおさらだ。 木連が火星でしでかした事を悔いて平和を望んだ人達を、こんな「人間処理場」に放り込んだ奴等。 そしてみんな大体……半月で死んでいった。持った人でも最長2ヶ月。 確かに半年も持った俺は、彼女の言う通りタフなんだろう。 「…………… 俺は漏れ出す殺意を隠さずにそう言った。 「フッ、平凡な筈の男がそのボロボロになった身体でこれほどの殺気を放つか。 俺はダークトーンの声で続ける。 「質問に答えろ。 「北辰の息子……いや「駒」である事に嫌気がさしたからだ。」 「なに……?」 そして、彼女の身の上話が始まった。 「俺は八歳頃に母親を亡くしている。殺ったのは北辰だ。 ただ、母様が奴に殺された理由は憶えている。 俺から「死」に対する禁忌を取り除く為だ。」 「……………」 「また、俺に対する牽制の意味もあったかも知れんな。 俺は十歳にして奴を圧倒し、八歳当時でも奴に僅かに劣る程度だったからな。」 「なっ………!!」 十歳で北辰を圧倒? 「その後も色々あったが、教育という奴は恐ろしい。 「……北辰の操り人形だな………」 「ああ、その通りだ。 俺は操り人形である事に少々嫌気がさしてきてな。 奴を殺すのは簡単だが、それではつまらん。」 「それが俺を逃す理由か。 そう言った俺を、彼女は担いでいった。 Side Hokuto 「で、どうやって俺を逃すつもりなんだ?」 俺が担ぎ上げた男がそう質問する。 「お前達が乗っていた機動兵器を使う。場所は分かっている。」 さて、もうそろそろだな。 だが…… 「やはり来たか。愚息よ……」 「「北辰!!」」 機動兵器の前に立ち、俺達を出迎える北辰。 確かに俺はこいつより強い。だが、今回の目的は今担いでいる男を逃す事だ! 俺は北辰を踏み潰すように突破し、機動兵器にとりつく。 最悪、北辰があの笛を使ってくる事も考えられるが、北辰にかまけて「あの」男に出て来られては、俺でさえ勝機は絶無!! 俺はハッチを開き、コクピットに担いできた男を座らせる。しかし…… 「憐れよな、愚息よ。その機体は何人たりとも動かせぬ。」 「「!!!!!」」 「そして……貴様が我に刃向かえると思うているのか?」 そう言いながら奴は…あの笛を取り出した…… 明日も知らぬ僕達
第七話 火星-闇との邂逅- Side Kazuki 火星。 それは、故郷。 見る影も無く荒廃しているだろうが、この事実とそこでの思い出は変わらない物。 Side Akito 火星。 それは、悲劇の始まり。 俺が両親を失い、故郷を失い、そしてその元凶が眠る場所。 そしてそれは、「プリンス オブ ダークネス」にとっても同じ事…… Side Jun 火星。 それは――――――― 俺にとって、なんだったのだろうか? ユリカを行かせたくなかった最前線? 全ての鍵が眠っている場所? けど今は、俺が殺してしまった男に代わって守るべきナデシコの目的地…… Side Zin 火星。 それは、救えなかったもの…… 守るべき者達に、私自らが手を下してしまった場所…… 「……私になにか言いたかった事があったのだろう? センドウ君?」 「そうですか……」 そういって部屋を出ていく彼の背中は、いつもよりも小さく、頼りなく見えた。 ……少年よ。願わくば、私のようになってくれるな……… Side Kouiti 火星。 それは過ぎ去りし思い出が眠る場所。 戻ってくれば、その思い出の登場人物達が出迎えてくれた筈の場所…… 「火星か……懐かしいな。 「あれ? コウイチ君、火星に来た事あったの?」 「あれ、前に言わなかったっけ? 「え、えええぇぇぇぇーーーーーーーー!!!」 「なるほど、それで艦長はセンドウさんとお友達なんですか。 「まあ、ね。 ま、ユートピアコロニーって一口で言っても広いからねえ。 中学出てからは地球に移り住んで軍学校に入学したから、そうそう会えるもんじゃなかったし。」 「人に歴史ありって事ですか?」 「まあそういう事。」 「私には「むかし」がないから良く分かりませんけど……」 「ルリルリ、無ければ作ればいいのよ。 「ミナトさん、いい事言いますね。 「でも、どうやって作ればいいんですか?」 「このナデシコにいれば嫌でもできていく物よ。 「同感ですね。 「もう、できてる?」 「そう。 例えば、あたしがナデシコ食堂に連れていってあげた時、あなた「こんなに美味しい物を食べたの、初めてです。」って笑ったわよね。 「そういうものなんですか?」 「そういう物だよ。」「そういう物よ。」 「じゃあ、このナデシコには私の「思い出」が沢山詰まっているんですね。」 火星を眼前に捕えたその時、ブリッジではこんな会話が交わされていた…… Side Akito ナデシコは見える範囲のチューリップを殲滅し、グラビティブラストのチャージを終えてから大気圏に突入した。 この辺り、コウイチさんは、まだこの時点ではソコツ者な所も多かった「プリンス オブ ダークネス」の時のユリカとは違う。 それはともかく、俺はブラックサレナ達との約束がある。 「ユートピアコロニー跡を見に行きたい、だと?」 ブリッジから、こんなゴートとプロスさんの声が聞こえてくる。 まあ考えてみれば当たり前かもしれない。 だが、俺も黙って見ているつもりはサラサラ無い。 「おいカズキ。 と、プロスさんが続けて何かを言おうと、フクベ提督とコウイチさんが声を上げた。 「行ってきたまえ。誰にでも故郷を見る権利はある。」 う〜〜ん、フクベ提督の顔を見るとなんか罪悪感があるな……。 カズキもカズキで何やら思うところがあるようで、「この時」の「プリンス オブ ダークネス」よりも複雑な面持ちで提督を見ていた。 「ねえねえプロスさん、ユリカもユートピアコロニーに行っていいかな?」 ……どうしてくれよう、この音波兵器。 「…え、と、ユリカちゃんだったっけ? カズキの言葉の重さに引き下がるユリカ。 「ならば、何故君は見に行くのかね?」 カズキの確かめたい物、か……奴が俺の代わりに「プリンス オブ ダークネス」の人生を踏襲しているのなら、ユートピアコロニーのシェルターと……アイちゃん=イネス・フレサンジュの安否か。 「過去」では生き延びていたけど、今回も生きているとは限らないしな…… あと、俺は今回の単独行動で一つやっておきたい事がある。 「コウイチさん、ちょっと副艦長を借りていってもいいっすか?」 Side Jun テンカワは一体、何のつもりで俺を連れて来たのだろう? あの後、俺は副艦長の仕事をユリカに押し付ける格好でテンカワに連れ出された。 「俺達の見ておきたい所は別々の場所だろう? と言ってカズキを行かせてしまい、俺と二人きりになった。 一体何を考えているんだ? そんな事を考えている俺と当のテンカワを乗せたエステは、郊外にある軍施設跡へと向かって行った。 「さて、これでゆっくりと話が出来るな、副艦長?」 軍施設跡の格納庫前でエステを降りたテンカワは、そう切り出した。 「何の話だ?」 「やっぱり、知っているんだな。「奴」の事を。」 「人から聞いた。」 ブラックサレナ。」 「なん、だって…?」 テンカワ、いや「この世界」のテンカワは、俺が驚いているのを尻目に格納庫の扉を開く。 「ブラックサレナ!! テンカワとブラックサレナのAIと思しき声が格納庫内に木霊する。 そしてそれと呼応するかのように、ユートピアコロニー上空に二隻の戦艦が姿を現した。 「ナデシコCに……ユーチャリス? 「…なんで俺にこんな事を話す。」 ……さて、副艦長。お前、「プリンス オブ ダークネス」のその後って奴を知っているだろう? Side Akito …………………… 「漆黒の戦神」ねえ……女一人の為にあそこまで狂ってしまえた男に何があったんだろう……… 15人。 もっとも、時折吹き出す闇は、確かにその男がかつて「プリンス オブ ダークネス」と呼ばれた復讐の鬼神だった事を物語る。 特にルリちゃんは…… 「過去」において、どうして「プリンス オブ ダークネス」が狂ってしまったかを、あるいはラピスちゃんよりも良く分かっている筈なのに…… しかし、何よりも驚かされたのは…… 「ちょっとまて。 洒落になってない強敵の存在。 俺がこれからナデシコCやユーチャリス、そしてブラックサレナを持ち出すとなると、ほぼ確実にぶち当たる相手だと考えた方がいい。 おまけに彼女は「プリンス オブ ダークネス」との戦いで、「プリンス オブ ダークネス」共々とんでもないスピードで強くなっていったらしい。 「あ、あれより更に強く、だと? 人間か、そいつら?」 「真紅の羅刹」影護北斗。 そして、そこから得られる結論は……… 「皮肉なもんだな。 最後に、副艦長は、「プリンス オブ ダークネス」もろとも遺跡にとり込まれ、かつて奴等が経験した「精神だけの」ボソンジャンプによって、この世界にやってきたと告げた…… 「これでこの話は終わりだ。 その一言の直後、俺達の話が終わるのを見計らったかのように、遺跡と同じ鈍い銀色の機動兵器が俺達の頭上にジャンプアウトしてきた…… Side ???? 「俺にトドメをさすのは…ゴフッ、ちょっと、まってくれない、かな?」 俺は、貫き手で俺の腹を貫いている少女にそう答える。 それにしても…… 北辰が笛を吹いた後、北斗は彼女に取って代わられ、枝織ちゃんは北辰の命じるままに俺のどてっぱらをぶち抜いた。 痛みは思ったほどじゃなかった。この程度ならヤマサキラボでは日常の事だ。 そしたら、どうしようもなく……ユートピアコロニーに行きたいと思った。 そして、俺は機動兵器を操作してコクピットを閉じ、起動シーケンスの後、搭載されていたAI、ブロス君とディアちゃんからジャンプフィールド発生装置の使用法を教えてもらって……ユートピアコロニーへと跳んできた。 機動兵器「ブローディア」のカメラアイから見た北辰の顔が随分驚いているようだったけど…… 「火星の、空?」 「え……ああ〜〜〜〜、本当だ〜〜〜〜〜〜。 無邪気な笑顔でそういう枝織ちゃん。これが演技でない所が彼女の怖さか。 自分の娘にさえこんな「教育」を施す北辰に、激しい怒りが湧きあがるけど、先のない俺がそんな物を抱いてもしょうがない。 願わくは、近い内に奴を屠る存在が現れるよう…… 『あのさ、二人とも、妙にいい雰囲気作るのもいいけどさ、アレに気付いてないの?』 AI達に言われて、周囲を見まわすと、二隻の戦艦がこの空域に浮かんでいた。 Side Kazuki 「ようこそ、歓迎すべきかせざるべきか……招かれざる訪問者くん。 招かれざる訪問者、か…… 「で、早速で悪いけど、私達はナデシコには乗らないわ。 …………………………… 「なんですって? だったらあなた達どうやってここまで来たのよ!!」 ……ここまで驚かれるとは思わなかった。 「奴等にその程度の戦力があるのは判っていたわ。私がナデシコが火星を脱出できるわけがないと言っている論拠もそこ。 彼女はそういうと、出口に向かってスタスタと歩いていき、俺はそれについていった。このシェルターの中へは地上に開いていた穴から落ちて来たもんだから、来た道を戻っていけなかったからだ。 そして地上に出た俺達が見た物は…… 「ナデ……シコ?」 俺達は空に浮かぶ二隻の戦艦に度肝を抜かされながらも、とりあえず俺が乗ってきたエステに向かう。 「ん……通信か…」 来ていた通信を開くと、そこには副艦長の顔が出てきた。 「……なんか用ッスか?」 Side Akito 「ねえねえ、なんで殺しちゃいけないの〜〜〜〜〜〜? 俺は今、ノーテンキに危なすぎる事をのたまう女の子と対峙している。女の子と言っても、その実態は健康体の「プリンス オブ ダークネス」に匹敵する化け物だ。 あの鈍色の機体は、さっきの話に出てきた「プリンス オブ ダークネス」専用機「ブローディア」らしく、俺とジュンはてっきり「プリンス オブ ダークネス」が乗っている物とばかり思って通信をいれてみた。 で、出てきた者は「プリンス オブ ダークネス」ではなく……… 「プリンス オブ ダークネス」ではない「俺でない俺」と、奴のどてっ腹をぶち抜いている少女、影護北斗の分身、影護枝織。 いや、びびったよ、あの時は。 流石に「俺でない俺」を見殺しにするのは、いくらなんでも夢見が悪すぎる。 その後、瀕死の「俺でない俺」をブローディアから引きずり出し、医務室に運ぼうとしたところ、奴を殺すよう北辰に言われたらしい影護枝織がそれを嫌がった。 そこまで来て、冒頭の彼女のセリフに繋がるワケだが…… 「全く、二言目にはお父様、お父様。 「プっ」 影護枝織。「プリンス オブ ダークネス」に匹敵する戦闘力を秘めた最強の戦士「影護北斗」の一側面、変則的な別人格と言って良い存在。 本来、俺なんぞでは逆立ちしたって勝ち目が無い相手。 それが、それが、あんな何気ない一言で戦闘不能に陥るなんて…… 助かった。 けど、このやり場のない怒りはなんだ? 程なくして、ジュンが呼んだらしいカズキと……イネス・フレサンジュがユーチャリスに乗艦してきた。 「おい、アキト。まさか重傷を負った生存者ってのは……」 「で、アレって誰なんだ?」 ま、笑い死にしかけてる女の子を指して「最強の戦士」って言ったってなあ。 「あんなのでも、俺なんざ問題にならないほど強いんだよ。」 Side Jun 「な、何がどうなっているのよ、この船!! ナデシコCとユーチャリスは今、ナデシコが待っている空域に向かっている…… Side Kouiti 「……では、その二隻の戦艦は未来から来た、と?」 「戦争の真実……ですか…………」 プロスさんの言葉が嫌に重たい。 「テンカワさん、それを知る事がどういう事か」 「え〜〜〜と、それってもしかして物凄くヤバイ話なのかしら?」 「う〜〜〜〜ん、どうしようコウイチ君……」 ブリッジクルーの皆が思い思いの意見を口にする。 そして、俺はそれらを聞きながら俺なりに考えを纏め…… 「みんな。すまないが、みんなの命、俺にくれ。 俺は、決断を下した。
「……で、このランダムジャンプの後、ナデシコCとユーチャリス、その二隻に積まれたブラックサレナとスーパーエステバリスは、もぬけの空の状態でこの世界に飛ばされてきたんだ。 アキトの話が、終わった。 「で、連中としては、またこんな未来にはしたくはないらしいし、それについては俺も同感だ。 この会話のしばらく後、ネルガルの目的の一つであるイネス・フレサンジュ博士がアオイ、アキト、カズキ、そして知らない女の子を伴ってブリッジインして来た。 「………ねえアキト、その子、誰?」 ガタッ!! 大きな音がしたのでそちらを向くと、メグミちゃんが物凄い勢いで引いている。 可愛らしい笑顔が、かえって彼女の異常性を不気味に浮き彫りにする。 「……とまあ、こういう教育を受けた娘だ。 アキトの言葉に皮肉が混じる。 「こ、殺しの道具として、ってアキト君!!」 「なあ、アキト。」 ……冗談事じゃないんだが……… Side Ruri 影護枝織さんですか……なんか思いっきり「獅子身中の虫」って感じがしますね。 それにしてもこの人、誰かに似ているような気がします。 と、私は高速で接近してくる機動兵器と思しき反応に気付きました。 「艦長、高速でこちらに接近してくる反応をキャッチしました。 そして出てきた映像は…… 「黒いエステ?」 「「ブローディア!?」」 「え?」 「あれ〜〜〜〜、迎えに来てくれたのかな?」 「「「「なんですと!?」」」」(艦長、副艦長、テンカワさん、センドウさん) 「あれに乗ってる人ってね、多分今の話に出てきた「プリンス オブ ダークネス」って人だと思うの。 ブリッジが凍り付きました。 「勝てるわけが無い」、そんな絶望が枝織さん以外の全員に重く圧し掛かります。 でも、それでも…… 「ブロスにディアって言ったっけ、今の話は聞いたよな。 戦おうとする人がいました。 そのテンカワさんの行動に、艦長が動き出しました。 「エステ隊は全機出撃準備!! 私を含めた他の面々も、「プリンス オブ ダークネス」迎撃の為に動き出しました。 「でもコウイチ君……もし戦闘になったとして、私達……」 ただ、恐怖を払拭する事は出来ませんでしたが……… 「艦長、あと10秒ほどで通信可能域に到達します。」 メグミさんの声が思いっきり震えています。 テンカワさんは「プリンス オブ ダークネス」の事を 「……通信、繋がりました。映像、モニターに出ます。」 そして出てきた映像は、確かにテンカワさんの姿でしたが印象がまるで違います。 『地球の戦艦、撫子が俺になんの用だ?』 副提督が「艦長」として、「プリンス オブ ダークネス」と受け答えをしています。 これが失敗してしまえば、コンマ1%以下の生存率を賭けて、究極の戦闘生命と戦う羽目になってしまいますから。 そのコンマ1%以下の生存率を全くの0にしてしまわない為に、パイロットの皆さんが待機していますが、全員が出番が無い事を祈っているでしょう。 「俺に名など無い。」 「「プリンス オブ ダークネス」と呼ばせてもらってもいいですか?」と、続けようとした艦長を遮って「プリンス オブ ダークネス」が口を開きました。 「深遠。俺の事を識別したければそう呼べ。」 副提督もかなり計算ずくで行動しています。が、「プリンス オブ ダークネス」には取り付く島もありません。 「第一、この場で死に逝く者にのみ通用する呼び名など、あっても無意味だ。」 …………………… ま、まあ確かにそうなんですけどね。 しかし、それは次の「プリンス オブ ダークネス」の一言で、先ほどを遥かに超えた緊迫感へと変貌しました。 「影護枝織、その船の排除、もしくは拿捕は今現在の草壁閣下の至上命令だ。 「は〜〜〜〜〜〜〜い♪」 次の瞬間、 枝織さんの腕が 艦長の腹部を 貫通していました…… そして、その凍り付いた時の中で、私は気付きました。 コノ人ハ私ニ似テイルノダト……ナデシコニ来ル前ノ私ニ…… Side Akito だぁ〜〜〜〜〜、クソッ!! 最悪の結果だ!! 「ブラックサレナ!! 手持ちのチューリップクリスタルを握りしめながら「出撃してくれ」と続けようとした時、俺はブリッジでの異変に気がついた。 それは、コウイチさんが、人でなくなる、過程だった…… Side Kouiti 腹が痛い…… 血が溢れ出す……… 俺は死ぬのか? おれはしぬのか? 俺ハ死ヌノカ? オレハシヌノカ? オレハ俺はオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハおれはオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハ俺はオレハオレハオレハオレハオレハオレハおれはオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハおれはオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハ俺はオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハおれはオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハおれはオレハオレハオレハオレハ俺はオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハ俺はオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハ俺はオレハオレハオレハオ・ 激nオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハおれはオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハおれはオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハ俺はオレハオレハ 俺は 死ぬ……のか? 俺が死んで……みんなも死ぬのか? アオイが死ぬ。 ユリカちゃんが死ぬ。 ルリちゃんが死ぬ。 プロスさんが死ぬ。 メグミちゃんが死ぬ。 ゴートさんが死ぬ。 ホウメイさんが死ぬ。 ウリバタケさんが死ぬ。 カズキが死ぬ。 ヤマダが死ぬ。 アキトが死ぬ。 リョーコちゃんが死ぬ。 ヒカルちゃんが死ぬ。 イズミさんが死ぬ。 ヒロユキが死ぬ。 整備班の人達も、ホウメイガールズの五人も、みんな、みんな、死ぬ。 そして、ミナトさんが、死ぬ。 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ぬ死ヌ死ぬ死ヌ死ぬ死ヌ死ヌ死ヌ死ヌ死ヌ死ヌ死ぬ死ヌ死ヌ死ヌ死ヌ死ヌ死ヌ………… 嫌だ………嫌だ嫌だ嫌だいやだいやだいやだいやだイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ、ソンナノハイヤダッ!! 力ガ、ミンナヲ守ルニ足ル力ガ欲シイ!! 「グォォォォォォ――――――――――――――――――ッ!!」 俺の絶叫、普通ならただの断末魔でしかなかったソレは……… 俺に再び生きる力を与え、 それと同時に俺をヒトデナクシタ………… 人でなくなった俺の姿は…御伽噺に良く出てくる「鬼」を思い出させる怪物の物だった……… 俺が怪物に変じた時、枝織ちゃんは丁度ゴートさんを血祭りにあげているところだった。 ゴートさん以外に怪我人はいない。どうも俺の次のターゲットがゴートさんだったらしい。 ブリッジにいる全員が俺を凝視する。まあいきなり怪物になったんだから当たり前だが。 枝織ちゃんまで止まっているのは好都合だ。 「めぐみチャン、急イデごーとサンヲ医務室ニ運ンデ! よし、怪物の姿でも人間と同じように話せる! 「すっごいすご〜〜〜い♪ コーくんかっこいーーーーーーーー!!」 マズイ!! 最初に復活したのが枝織ちゃんかよっ! 「枝織チャン、俺ガ相手ダ!!」 そう言ってはみたものの、俺は震えを抑えるのが精一杯だ。 「ミンナハ「ぷりんす おぶ だーくねす」ニ集中シテッ!」 そういう暇もあらばこそ、俺は枝織ちゃん相手に絶望的な戦いを開始した…… Side Akito 俺はコウイチさんの意思を汲み、ブリッジへのジャンプを中断して、「プリンス オブ ダークネス」との戦いに意識を集中させる。 「全機出るぞ!! いいか、弱気な事は考えるんじゃない。 俺の檄に皆答えてくれてはいるが、空元気なのが丸分かりだ。 「ああ。アイツは、この場で必ず殺す!!」 若干一名、殺る気満々な奴がいたが。 『ア、アキト兄が相手なんだよね……』 そして俺達は「プリンス オブ ダークネス」を倒すべく出撃する。 相手は一機とはいえ機体はブローディア。しかも、そのパイロットは最強の存在だ。 対するこちらは、ブロス&ディアのブローディア、俺のブラックサレナ、皆のエステが六機の、計八機。 パイロット能力を考慮しなければこちらが圧倒的に有利だが、如何せんパイロットの技量があまりにも違いすぎる。 出撃直後、敵ブローディアから正確無比な連続射撃が飛んでくる。 ま、これは軽〜〜〜〜い挨拶代わりって奴だろう。 「あんな一瞬で90機を叩き落したのかよ……」 俺は皆の応答を待たずにブローディアに突貫する。で、案の定アッサリかわされ、カウンターのDFSでアサルトピットを横薙ぎに斬られそうになる!! その俺をフォローするかの様に、ブロス達がフェザーという攻撃用端末を飛ばして「プリンス オブ ダークネス」を攻撃する。 その一瞬の隙を見逃さずに、俺は距離を取りつつ「プリンス オブ ダークネス」目掛けてハンドカノンを撃ち放ち、その間にもフェザーは執拗に「プリンス オブ ダークネス」への攻撃を繰り返す。が、まるで雲か霞にでも撃ちこんでいるかのように当たらない。 『いけるかも知れない!! そんな事を言いつつも、「プリンス オブ ダークネス」の射撃をなんとかかわす、俺のブラックサレナと鈍色のブローディア。 しかし、向こうはフェザーを使ってこない。 なんでだ? Side Kazuki 「なんっつーーー戦いだっ! ついていけねぇっ!!」 「……て、敵のディストーションフィールドの強度は、ナデシコの5倍以上です。 ルリちゃんの声が震えているのが気になったが、今はそれどころじゃない。 「……センドウ、奴がお前達の事を侮っているなら、侮らせておけ。 副艦長も本気で「プリンス オブ ダークネス」を殺すつもりのようだな…… 奴の過去を知らされた後なので、やり辛い事この上ないが、ここは生き残りをかけてやるしかない。 「了解。」 あっさり立て続けに3機撃墜させることで、「エステバリスではブローディアに傷一つ付けられない」と思わせておいて、俺のDFSで叩っ斬る作戦か。 「「「了解。」けど、ただでやられるつもりはねえっ!!」」 ブローディアは舞うようにフェザーやハンドカノン、グラビティブラストを避けつつ、ブラックサレナや鈍色の同型機に正確無比な射撃を間断なく撃ち込んでいる。 「コイツは急がねえとヤバそうだな…… リョーコの号令の元、今まで遠巻きに射撃を繰り返すだけだった俺達は、ブローディア目掛けて突っ込んでいった。 Side Ryo-ko ヤマダの奴、何の躊躇もなく突っ込んで行きやがった。 丁度「プリンス オブ ダークネス」がこちらのブローディアを撃とうとしていたタイミングだったらしく、その射線が僅かにズレる。 だが、次の瞬間、何が起こったのかも分からないまま俺とヤマダ、おまけにヒカルが落される!! 気付いた時には……俺の両足首が切断されていた……… 激痛の中、俺は何も出来ずに……… Side Kazuki 「「「リョーコ!!」」」 ほんの僅かな間にヤマダ達三機を叩き落すブローディア!! しかもリョーコ機はアサルトピットにDFSの斬撃が直撃している!! 「リョーコ機、弱っていますが生命反応を確認。パイロットは気絶している模様です。」 間髪を入れずに俺達にそう報告する、AI。多分オモイカネダッシュだろう。 「化け物め、速すぎて見えなかった……!」 Side Akito 『ふう、まさかヤマダに助けられるなんて』 そういって俺は最初にやったのと同じようにしてブローディアに突貫する。 「プリンス オブ ダークネス」はそれに反応して俺に銃口を向け、一連射!! 俺は、避けきれずに堪らず、という演出つきでジャンプ!! そして、ソレを合図に漆黒のブローディア目掛けて全方位からフェザーが殺到する!! 「プリンス オブ ダークネス」に逃げ道はない!! だというのに…… 「ちぃっ、これでもダメかよ!!」 奴は全てのフェザーを迎撃したのだ。 機動兵器一機攻撃すりゃいいこちらと違い、格段に小さく数も多いフェザーを空中で迎撃してしまったのだ。 まさに神業。これが最強の戦鬼の実力か。 そして……敵のフェザーが荒れ狂う!! 「ブラックサレナ、バーストモードっ!!」 俺達はそれぞれバーストモード、フルバーストを使い、フェザーの全てを防御に回して辛うじて撃墜は免れる!! だが…これでバッタは全滅、ヒロユキとイズミさんも撃墜され、ブラックサレナの左手にグラビティブラスト、ブローディアの右手足が持っていかれている。 『や、やっぱり強すぎるよ、アキト兄……』 火器を捨て、フェザーの嵐を纏いながらDFSを構える「プリンス オブ ダークネス」機。 「マジか!!」 そう口に出す暇も有らばこそ、今度は敵機に三条のグラビティブラストが殺到する!!! ナデシコ、ナデシコC、ユーチャリスの援護射撃か! しかしそれもアッサリとかわされ、「プリンス オブ ダークネス」が咆竜斬を放とうとしたその時!! グラビティブラストが、遥か下方、地上の方から漆黒のブローディアに襲いかかる!! ブローディアはそれさえも避けるが、どうも奴にとっても予想だにしていなかった攻撃だったらしく、DFSを握っていた右手首が吹っ飛ばされる!! だが、それでやられてくれる奴なら、ハナッから苦労はしない。 ……一体どこから飛んで来たんだ、今のグラビティブラストは。 ナデシコやナデシコC、ユーチャリスでないのは分かっている。三隻ともに位置を把握できているし、大体三隻ともグラビティブラストを放った直後だ。 「って、考えてる場合じゃねえかっ!」 敵ブローディアはバーストモード状態!! さっきまでより格段に迅い!! 「プリンス オブ ダークネス」機はDFSを残った左手で構えて、鈍色のブローディアに肉迫!! 「ちぃっ!!」 俺は漆黒の機体を鈍色の機体から引き剥がそうとハンドカノンを連射!! そして………… 「……来る!!」 漆黒のブローディアがブラックサレナ目掛けて突っ込んでくる。 と思った矢先、長大な紅い刃の刺突がブローディアに襲い掛かる!! が、所詮ノーマルエステの攻撃がバーストモード状態のブローディアに当たるわけもなく…… DFSで受け止めた? 何のつもりかは知らないが、今の敵機は片腕の手首が無い!! 残っている方の腕が塞がっている今なら!! 『こっちのフェザーだって!!』 ブロス達のフェザーがそれを迎撃、打ち洩らした分は俺の技量で回避できる! 一方、敵機はカズキの空戦フレームと切り結んでいる。 凄まじい速さで、 一合! 二合!! 三合!!! DFSとDFSがぶつかり合い、火花を散らす!! カズキの奴は例のバイザーでの訓練のおかげか、「プリンス オブ ダークネス」の動きを読み、それでもって辛うじてついていけているようだ。 が、速さが、技量が違いすぎる!! カズキのDFSが四合目に間に合わない!! だがその場面になって……俺のブラックサレナが間に合った!! 「野郎っ!!」 俺はハンドカノンを撃ち放って空戦からブローディアを引き剥がす! 「俺が相手だ! 「プリンス オブ ダークネス」!!」 Side Ruri 「グォォォッ!!」 「艦長っ!!」 そんな私達のやり取りと、艦長の苦闘の横で、メグミさんは固まってました。 「艦長が……化け…物……」 そんな事を呆然として呟いているだけです。 艦長が化け物? そんなのどうだっていいじゃないですか!! 艦長は確かに恐ろしい怪物かもしれません。 なのに、なのになんで拒絶するんですか? あんなに血を流してまで私達を守ってくれている艦長をなんで否定できるんですか!! ちなみにゴートさんですが、固まったままのメグミさんに代わってプロスさんが医務室に運んでいきました。 Side Kazuki ちぃっ、作戦失敗かよっ。 後は真正面から叩くしか方法はないみたいだが、敵さんは右手首を失っただけ。 俺の空戦だって四肢が残っちゃいるものの、あっちこっちが悲鳴をあげていて、いつ墜落してもおかしくない。 その俺の眼前で二機の漆黒の機動兵器が死闘を繰り広げる! それにしてもアキト、なんでお前、ハンドカノンでなんでもスパスパ斬っちまうDFS相手に接近戦挑んでんだよ。 漆黒の機動兵器同士のぶつかり合いの最中、俺は敵のフェザーを避けたり切り払ったりするのに手一杯で、アキトを助けにいけない! 「このまま、やられてたまるかよっ!!」 俺が自分に言い聞かせるように言い放ったその時、今度はDFSの紅い刃が下の方から伸び、敵機に襲いかかる!! Side Akito 「右肩部追加スラスターがやられたか!!」 そう毒づく俺にブローディアのDFSが襲いかかる!! 俺は咄嗟に機体を沈めてなんとかその斬撃をやり過ごすが、体勢的に非常にヤバイ位置取りになっちまった! そして、なおもブローディアの苛烈な攻撃が襲いかかろうとしたその時!! ブローディアがソレを避けた隙に体勢を立て直し、ハンドカノンを…… 「クソッ、弾切れか!!」 俺はハンドカノンを捨て…って使える武器がない!! 『ブローディアのDFS、受けとって!!』 そんなディアの言葉と共に接近してくる鈍色のブローディア。 「分かった。今がチャンスだな。 DFS、ありがたく使わせてもらうぞ!!!」 DFSを受け取った俺は、敵機を捕捉し……唖然となった。 ヒ、ヒロユキサン? アナタ、ナンデナマミデソラトンデルンデスカ? イマヒダリウデカラハナッタコウゲキッテ、モシカシテグラビティブラストデスカ? ミギテカラノビテルアカイヤイバッテ、ヒョットシテDFSデスカ? アナタ、ホントウニニンゲンデスカ? そんな風にカタカナで喋りたくなるような光景が繰り広げられていた。 さすがの「プリンス オブ ダークネス」も戦艦クラスの攻撃力を持った人間相手の機動戦には戸惑いがあるらしく、その動きはやや鈍い。 が、その戸惑いが消えた瞬間、ヒロユキが殺されるのは目に見えている!! 「どういう作りの身体しているかは知らないが……生身で「プリンス オブ ダークネス」が乗っているブローディアに喧嘩を売る奴があるかよっ!!」 俺はDFSを構えて突っ込む!! 初めて使う武器だが、この際贅沢を言うつもりは無い!! 「ブラックサレナ!! バーストモード、残り時間はどのくらいだ!?」 時間切れもそろそろみたいだ!! これでケリをつけられなければ……それで終わっちまう!! 「これでっ! 俺達は終われないんだよ!!」 Side Kazuki 「これでっ、ラストっ!!」 俺は最後のフェザーを叩き落す。 とはいってももう空戦フレームも、落下スピードを落す位しか出来ない体たらくでとても空中戦なんぞ無理。 おまけにもうこれ以上動くと空中分解しちまうそうだ。 更に言うと、四肢は右腕以外残っていない。 「これって撃墜扱いだよな。」 で、そのアキト&ヒロユキVS「プリンス オブ ダークネス」なんだが…… なんというか、DFSって接近戦用の武器だと思っていたんだけど…… 『『いっ、竜王牙斬!?』』 「プリンス オブ ダークネス」が放ったディストーションフィールド製の竜を、ヒロユキが前に俺が使った圧縮ディストーションフィールド攻撃を楯にして防ぐ。 とまあ、こんな攻防も時折みうけられる戦いだ。 だが、アキトが突っ込んで一瞬こちらに傾きかけた戦況も、今では完全に「プリンス オブ ダークネス」に傾いている。 「やばいぞ。 全ての攻撃が一撃必殺のこの戦いで、あんなばけもん相手に劣勢に立たされちゃ、長くはもたない!!」 なんですと? 『しかも、それと同じタイミングでブローディアも止まるから……』 ……それが過ぎたら、マトモに動ける戦力はヒロユキ一人ってか、オイ!! 俺は空戦の右腕を僅かに動かしながら呟く。 「鼬の最後っ屁って奴を見せてやる…………これを外したら終わりだろうな」 Side Akito バーストモード、あと10秒っ!! 「野郎っ!!」 俺の攻撃に焦りが滲む!! アッサリと切り払われ、逆に切り返しを食らう!! 「ちぃっ!!」 今の一撃が胸部装甲へのトドメとなる!! 残り9秒!! 思えば戦闘開始から「プリンス オブ ダークネス」が食らった攻撃といや、ヒロユキの不意打ちのグラビティブラスト一発だけ! これが、最凶最悪のテロリストの実力か!! ブローディアの追撃がブラックサレナに迫る! その隙に、俺はただの重い鎧に過ぎなくなった追加装甲を脱ぎ捨てる。 残り8秒!! 俺は、弾幕を避けつつヒロユキに迫るブローディアに向かって、今さっき野郎がぶっ放した技を叩き付けようとDFSを構え直す!! 残り7秒!! ヒロユキのわき腹がブローディアのDFSによって切り裂かれる!! 残り6秒!! 今度はかつての愛機に引導を渡さんと迫ってくる「プリンス オブ ダークネス」! 「お前の技だっ!! 真紅の竜がこちらのDFSから放たれ、ブローディアに襲いかかる!! 比較的攻撃範囲の広い技、ということでこれを使ってみたが、右肩の装甲にかすっただけかっ!! お返しとばかりにブローディアは200mの刃を形成し、遠く離れたブラックサレナに斬りつけてくる! 残り5秒!! ブローディアはDFSを振るいながら距離を詰めてくる! 残り4秒!! 「プリンス オブ ダークネス」の剣戟を、受け、きれない………!! 刹那っ!!!! ブローディアのアサルトピットを一瞬だけ現れたDFSの紅い刃が貫通する………っ!! 次の瞬間から、ブローディアの動きが無くなり…… タイム オーバー 時間切れと同時に、ブローディアアサルトピット内からボース反応が検出されたと、ダッシュから報告があった…… 生きて……いるのか? 俺……達は…… Side Kazuki 「ふぅ〜〜〜、やれたか……」 極力気配を殺しながら、隙ができる唯その一瞬のみをうかがい、機が来たと見るや一撃。 ちなみに照準なんかはブロス達にも手伝ってもらっている。 『よ、よくアキト兄から気配を隠し通すなんて事………』 ちなみにあの一撃の直後、空戦フレームはものの見事にバラバラになってしまっている。 気が抜けたら眠…く………なっ……ちま……… Side Minato あの戦闘の後、枝織ちゃんはアキト君のギャグで無力化され、私達は彼女を船外に放り出してしまう事にした。 それと、今回の戦闘のとばっちりで半壊したナデシコは、同じく半壊しているナデシコCとユーチャリスとともにアキト君のアジトで修理する事になった。 今回の戦闘で重傷を負ったリョーコちゃん、ヒロユキ君、そして枝織ちゃんと戦って満身創痍になった艦長は、医務室で治療を受けている。 リョーコちゃんの足首は元通りに繋げられるのだそうだけれど、マトモに歩けるようになるまでに長いリハビリが必要なのだそうだ。 ヒロユキ君は運びこまれた時点で、何故か大分治癒していたけれど、危険な状態には変わりないらしい。 そして、艦長は……生きてはいた。助かる可能性も充分ある。 この人は、人間ではない、という……… 第八話「火星-牙を研ぎ続ける刻-」に続く あとがき 大分遅くなってしまいましたが、明日も知らぬ僕達第七話、お届しました。 代理人様、予想大正解です。しっかし、初めてのマトモな描写のある戦闘が対「プリンス オブ ダークネス」inブローディア戦というのは我ながら無謀だったと思っております。 で、元ネタが無ければ(あっても?)許されない暴挙を連発(特にヒロユキの大暴れ)した今回ですが、一応予定通りです。 では……枝織ファンの方、リョーコファンの方、(いないと思いますが)藤田浩之ファンの方、柏木耕一ファンの方カミソリその他はご遠慮下さい。 それでは。 PS.ブラックサレナとブローディア 今回アキトが使用したブラックサレナはB型サレナにヴァージョンアップしています。 B型のBはBurstの略、つまりバーストモードの実験機であり、もっと端的にいってしまえばブラックサレナ「時の流れに」仕様です。 今回出てきた二機のブローディアは、鈍色の方がオリジナルで、漆黒の方はレプリカです。 |