The answer

翼編第9話

「・・・ハァーッ・・・。」

 相変わらずの引っかかりのため息が、森の中にこだまする。

 男は、屈強な僧兵たちに囲まれていた。が、男は飢えたような表情のまま、敵をにらみつけて告げた。

「・・・貴様ら・・・何者だ・・・。」

 囲みの中の、リーダー格の男が威圧的に告げる。

「我らは、金剛の生き残り。神聖なるこの山に、何用か!」

 敵の圧力を感じる声にも、男は怯みもしない。不気味に思ったか、囲みの者は武器を次々と前に掲げる。

 一方、男は顔をニヤリとさせ、

「ちょうどいい・・・質問に答えろ。

 翼人を、貴様らは知っているだろう・・・。何処にいる・・・。」

 その途端、囲みの一同に緊張が走った。

「貴様!何者だ!」

 敵のこわばった声に、男は引っかかった声で、自らの名を告げる。

「涼村・・・暁・・・。」

「教えてやろう。」

 リーダーの男が、周りを制して発言する。何故か暁は寂しそうな顔をする。

「翼人は、最早この世にはおらん。」

「む・・・。」

「我ら方術士が、封印した。」

「そうか・・・いつだ?」

「去年の夏だ。」

「・・・1年後に着いたか・・・約1000年前と言うイメージだけでは、不完全だったか・・・。」

 男たちに聞こえないように、暁は呟いた。

「そして、そのことを知る者は他にはおらん!」

 急に、リーダーの男の声色が変わった。同時に、周りからの殺気が暁に突き刺さる。

「何故なら、貴様はここで死ぬからだ!」

 対して、暁は挑発するように指を曲げ、

「来いよ・・・。俺を楽しませろ・・・。」

 全周囲から、僧兵が錫杖を持って殴りかかってきた。

「・・・遅いな・・・。」

 が、暁は垂直にジャンプ。

「愚か者が!落ちてきたところを叩け!」

 僧兵達が叫んだそのとき、突如竜巻が起こり、同時にかまいたちが次々と僧兵を切り裂いていった。

<ブラストベント>

「ギャアアアアッ!」

「ウガアッ!」

 倒れ臥していく僧兵。その跡に悠々と降り立つ暁を見て、リーダーの男がうなる。

「・・・方術・・・。」

「違うな・・・。」

 暁はやんわりと否定する。

「・・・法術だ・・・。」

<ユナイトベント>

 最早暁の前にしかいない敵達の、さらに前方に、巨大な怪物が現れた。

 胴は銀色のサイ、腕はエイと毒蛇。現実にはありえない魔物。

「ひ・・・か・・・。」

 あまりの恐ろしさに、声も出ない男たちを、怪物はギロリと一瞥する。

「・・・法術で・・・俺が創り出した・・・。

 1分しか持たないが・・・貴様らを葬るには十分だ・・・。」

<ファイナルベント>

「うああああっ!」

 危機を察したのか、男たちは皆暁のほうへ必死に突撃していった。

 何倍もの大きさの怪物よりも、反対側にいる人間の方が、倒しやすいと思ったのだろう。

 が、そんなチャンスすら、男たちには与えられなかった。

 怪物が腹部の穴を開く。そこには、無限の闇を思わせる、黒。

 そして、男たちは何故か後ろに引っ張られ、怪物の方へ引き寄せられていく。

「う、うわあっ!」

「助けてくれっ!」

「・・・さっさとくたばれ・・・。」

 暁は、男たちが意外にしぶといのにイライラしたのか、両手を前に掲げる。

「・・・はっ!」

 暁の手から衝撃波が発生し、男たちを殴り倒していく。

 そのまま、男たちは永遠の闇に放り込まれ、腹部は閉じられた。

 そして、怪物の姿はまるで蜃気楼のごとく消えていく。

「こうなれば・・・裏葉のところへ行くしかないか・・・。

 しかし・・・ネタにツッコム奴がいないのは・・・寂しいな・・・。」

 居候の男が消えてからも、日々は刻々とすぎていく。だが、神尾家は、一時の幸せを手にしていた。

 あるはずのない痛みを感じ始めていた少女、神尾観鈴。

 観鈴とともにずっと暮らす為、旅行と称して観鈴の本当の家、橘家に乗りこみ、親権を手に入れて帰ってきた女性、神尾晴子。

 いつのまにかいた、空を飛べないカラス、そら。

 二人と一匹は、今までの分を取り戻すかのごとく、幸せを作ろうとした。

 夢の通り、観鈴が記憶をなくしても、二人と一匹は幸せな時間を作っていった。

 が、それは長くは続かなかった・・・。

「お母さんが、私のゴール。私、もう十分頑張ったよね。もう、休んでもいいよね。

 今までの夏の中で、一番幸せだった。」

 ショートボブの髪型にした観鈴は、よたよたとおぼつかない足取りで、たった10mほどの距離を、一歩一歩進んでいく。

「あかん、まだゴールしたらあかん!これからまだ、楽しいこといっぱいあるんやで!」

 晴子が心からの叫びを上げて観鈴を止めようとするが、観鈴は無視して進んでいく。

「あと・・・3歩・・・。」

 とこ・・・とこ・・・とこ・・・。

 そして、たどり着いてしまった。

「ゴールッ・・・。」

「法術や翼人の事、いろいろ感謝する。ありがとう、裏葉。」

 暁(自称)が、白装束を着て、幼い子供を抱えた女性、裏葉に礼を言う。

「いえ、私も神奈様と柳也様の為ですから。その為に、貴方を利用しただけです。」

「それでも構わんさ。俺も観鈴を助ける為。互いの利害が一致しただけだ。」

 暁はフッと笑う。

「じゃあな。」

 背を向け、去ろうとする暁をふと裏葉が呼び止める。

「あっ、ちょっとお待ちを。」

「・・・何だ?」

 暁が振り向く。

「幾つか聞きたいことが。

 貴方の本名は?涼村暁という名ではないでしょう?」

「・・・・・・・・・何故判った?」

「法術の単純出力ならともかく、技量は私が上です。私は心を読めますから、嘘はつけませんよ。」

「・・・・・・。」

 暁(ウソ)はため息をつき、仕方なしに話す。

「・・・本名は、天河明人だ。」

「次。初めに会った頃と、随分人格が違うというか、その・・・闇が消えたのはどういうことですか?」

「同じ人格だ。ただ、初めの頃のはカーズモードだ。」

「かあずもおど?」

 裏葉は首をかしげる。この時代には英語は日本にはないので、この反応は当然だが。

「簡単に言えば、呪いの力だ。」

「呪い・・・。」

 裏葉は顔をこわばらせる。

「ああ。俺は今までに、多くの者たちの怨みや憎しみ、悲しみをこの身に浴びてきた。また、俺の中にもそれはあった。

 それらが積もりに積もって、一つの力となった状態なんだ。」

「・・・なるほど。」

 その時、明人が何らかの危機を察した。

「・・・まずい。」

「どうかしましたか?」

「マーカーが、観鈴の危機を知らせている。時間がない。」

「では、時を越えるのですか?」

「ああ。といっても、法術だけじゃ不正確だからな。」

 といって、明人はかばんの中から石を出す。それは、CCだった。

「これを使う。じゃあな。」

「ごきげんよう。

 ・・・・・・神奈様を、頼みます。」

「了解!」

 元闇の皇子は、時を越える。翼の少女を解き放つ為に。大事な人を助けるために。

 そして、囲われた空に辿り着く。

「・・・また、ここに来たか・・・。」

 明人は、周り一面に広がる空を見て、ポツリとこぼす。

「前は法術士の呪いに追い出されて、何も出来なかったからな・・・。

 ・・・いるか?あいつは・・・。」

 キョロキョロとしながら、明人は前に進んでいく。そして、目的の人物を見つける。

「・・・いたか・・・。」

 目の前にいたのは、翼を持った、蒼い髪の少女。

「・・・久しぶりだな・・・・・・神奈。」

「・・・明人殿?」

「ああ、大変失礼ながら他称人間磁石の天河明人だ。」

 シーン・・・。

「・・・冗談はともかく、今すぐ解き放ってやる。もう、大丈夫だ。

 ・・・とはいいたいが、また邪魔が入ったか。」

 明人が周りを見渡すと、1人1人が違った鎧を着た者たちが13人、こちらを囲んでいた。

「こいつら・・・・・・相手のイメージに応じて姿を変えやがる。

 前は確か夜天光50機1分の1サイズが出てきて、あっけなく負けたんだよな・・・。

 けど、今回はよりにもよって、龍騎、ナイト、ゾルダ、王蛇、シザース、ベルデ、ライア、ガイ、タイガ、インペラー、ファム、リュウガ、オーディンか・・・。」

 というより、お前はロボット50機に生身で戦いを挑むのかというツッコミが入るが。

 ちなみに、勝てたらキングオブハート顔負けである。

「なら、こっちはクウガかアギトか・・・ネタが厳しい。却下だな。

 じゃあこれで・・・。」

 明人はまず左手を伸ばしたまま下から前に持ち上げる。

「ハァーッ・・・。」

 次に、左腕をひじを中心に90度内側に折りたたみ、右腕を90度曲げて上に手を向ける。

 そして、右腕を目の前で振り回す。

「変身!」

 実際は変身というより変化なのだが、明人はともかくカーズモードになった。

「・・・ハァーッ・・・。」

 髪は金色に染まり、目つきは悪く、プレッシャーを撒き散らしている。

「・・・・・・ガァァァァァァァァッ!!」

 明人が吼える。強い力を手に入れるため、この空間に1000年積もりに積もった、神奈の悲しみを取り込んだのだ。

「さあ・・・始めようぜ・・・。」


コメント

今回観鈴の出番少なめ。

カーズモードですが、明人自身への弊害はナシ。明人が浅倉のモノマネをしているだけのようなもの。

ただ、闇属性一直線。怨みや悲しみ、憎しみを喰って強くなります。それだけ。

鬼畜になったりはしません。

さて、涼村暁とは誰でしょう(意味不明)?

一部ネタに引っかかる説明。

8話後半から9話中盤は、本文中に説明がないですが、約千年前に舞台が移っています。

AIR本編では主人公が千年前に行ったりすることはないのですが、

この話ではとある理由で明人の一部を過去にとばしました。

また、明人の使っていた技ですが、明人の技だけは法術という設定です。カードではありません。

何故明人を強調するかは、次回のバトルの都合上です。

それと、場所は前半は過去の金剛山、中盤は過去の西国の地域、後半は空の上(時間不明)で、前話後半から明人の記憶は戻っています。

何故カーズモードに目覚めたかは次回。

 

 

感想代理 皐月

 

 

いや、もう、どこにつっこんだらいいものかと思ってしまいました。

 

ちなみに個人的にはクウガが好きです(取って付けたかのように)