The answer

翼編第11話

 まあ、いろいろあったが、俺は記憶を取り戻し、旅は終わった。

 観鈴も、癇癪も呪いも治ったし、晴子も母親をしていると言う感じだった。

 いわゆる、グッドエンドというやつだろう。まあ、それは別にいい。それまで否定するほど俺は人間やめてないからな。

 ――――――が、だ。

「観鈴〜!酒のまんか〜い!!」

「お母さん、私まだ未成年だよ〜!」

「んじゃ、そこのからす〜!!」

「くわ〜!」

 ・・・さすがに3日連続宴会は、耐えられん!

「居候〜!こっちこんか〜い!!」

「えーかげんにせーい!」

 パシコーン!!

 神尾家に、ハリセンの音が甲高く響き渡った。

「とにかく、観鈴が戻ってきて、よかったよかった!」

「よかったね〜。」

「くわ〜!」

 ・・・ま、この家族には、この明るさがよく似合ってるよ。

「居候も、記憶戻ったんやって?おめでとさん。」

「おめでとー。」

「くわ。」

 何かぞんざいだなオイ。

「あ、そうだ。お母さん、今日は何日?」

「ん?今日は・・・8月○日や。」

「あ、大変。明人さん、明人さん。」

「どうした?観鈴。」

 観鈴が、何故か上目づかい、目ウルウルで俺を見上げてくる。更には襟元から胸がチラリと・・・。

「来週、神社で夏祭り、あるの。一緒に、行こ?」

 頼むからその見方は止めてけれ。俺の理性やら何やらが持たん!

「おっ、居候、顔真っ赤やで〜!行け〜!観鈴〜!」

「くわ〜!」

 ・・・・・・外野2人、煽るな!

「わ、わ、分かったから、その見方は止めろ!」

「わ〜い、やった〜!」

 俺の心中知ったことか、無邪気に喜ぶ観鈴。天然なのが怖い。

「お母さんも、一緒に行こ?」

「うち、その日は無理やで。」

「え?どうして?」

 ・・・晴子、表情で、嘘なのがバレバレだがな・・・。

「うち、あんたが消えてから保育園で働くようなってな。そこのガキどもの付き添い行かなあかんねん。

 ついでに、このカラスも一緒な。」

「くわ!?」

 そらが驚き顔で、首根っこをつかんだ晴子を見てる。観鈴について行きたかったんだろね、こいつ。

「そら、拒否権なしやで。この2人のラブラブな空間に、あんたおったら邪魔やからな。」

「くわ〜・・・。」

 納得したのか、黙り込むそら。しかし、ラブラブって・・・。

「お、お母さん!?」

「ええねんええねん、隠さんでも。若い二人でよろしゅうやってき。

 あ、事するにしても、アレは忘れたらあかんで。孫はまだ早いからな〜。」

「お母さん!」

 観鈴が顔を真っ赤にしてる。しかし、そこまで話が飛ぶか普通?

 結局、晴子がからかい、観鈴がからかわれで一日が過ぎた。

 ちなみに、この日は俺がこの家に来て初めて家の中で(といっても台所でだが)眠れた日だ。万歳。

「おはよう、明人さん。」

「うい、おはよ。」

 台所で目覚めたとき、観鈴は既に朝食を作っていた。今日は卵のうまそうな匂いがする。

「居候、相変わらずお寝坊さんやな〜。」

「くわ!」

 ・・・・・・こいつらもいたのか。

「お母さん、知ってる?明人さん、料理うまいんだよ。」

「へえ〜、ほな、晩メシは作ってもらおか。」

 既に決定事項のように話す二人。期待の目で俺を見る。

「・・・まあ、いいけどな。」

 料理は嫌いじゃないからな。

「くわ〜?」

 そらは疑ってやがるな。創造主に対してそれは失礼と言うものだ。

「何か、急に晩は焼き鳥が作りたくなってきたな。」

「くわ〜!」

 俺のセリフに、そらは一目散に逃げ出していった。それを見て、笑う母と娘。

 神尾家は今日も平和だった。

 観鈴が学校へ行き、晴子も出かけ、

 俺とそらは・・・・・・することがない。

 人形は前の騒ぎで無くなってしまい、人形芸はしばらく休業。法術が無くなったわけではないから、いつかは再開できる。

 金は、まだ口座に結構あるから、ちょくちょく銀行から下ろしてくればいい。

 ――――――この町に銀行がないことを知るのは、数日後だが。

 とにかく、暇なわけだ。

 幸い、今日は観鈴も晴子もすぐに帰って来るらしく、暇ではなくなるのだが、これからどうしよ・・・。

 ・・・・・・トレーニングでもするか。

「お母さん、明人さん。」

 で、家。観鈴が、深刻な顔で話してくる。

「どないしたん?観鈴。」

「大事な話か?」

「うん、すごく大事。お母さんと、明人さんに、見て欲しい物があるの。」

と言って、観鈴はおもむろに上の服を脱ぎだした。

「わ!わ!わ!」

「観鈴!いきなり何すんね・・・。」

 慌てふためく俺。俺の両目を隠そうとする晴子のセリフが、急に止まった。

「・・・どうかしたのか?晴子。」

「・・・自分の目で見て確かめ、居候。」

「手、どけていいか?」

「あ、忘れとった。」

 俺の目を覆う晴子の手をどけ、観鈴を見た。観鈴は、脱いだ上着を胸の前に当て、恥ずかしそうにこちらを見ていた。

 俺が見たのは、華奢だが、綺麗なラインを描いた観鈴の肩

 ――――――じゃなくて!肩の後ろに見える、銀色の大きな一対の翼だった。

「・・・・・・。」

「・・・明人さん、感想、ある?」

「・・・コメント不可能。」

「じゃ、また服着るから。お母さん。」

「ん、分かったで。」

 晴子が再び俺の目を隠す。・・・ちっ。

「で、ひと段落ついた所で質問なんだが・・・。」

「いや、ついてないやろ。」

 晴子のツッコミを、俺は無視。

「観鈴。どうして俺の名前が分かった?」

「え?」

「俺は記憶が戻ってから、一度も名乗ってはいないが?」

「・・・ばれちゃった。」

 照れる観鈴。可愛い、やっぱり。

 ・・・・・・ナデシコ女性陣とえらい違いだ。

「実は、さっきの翼と、その事、関係あるの。」

「どういうことや?」

 俺はなんとなく想像はついたが。

「実はね・・・。」

 観鈴は語りだした。自分の今までの病気のこと。昔の翼人のこと。翼人と自分との関係。そして、自分が戻ってこれた理由。

 エトセトラ・・・。

「だから、神奈さんの今回の転生が私で、翼を受け継いだの。」

「はあ・・・何か、信じられへんわ・・・。けど、観鈴は観鈴なんやろ?」

「うん。」

「それやったら、別に問題あらへんわ。」

 晴子が笑顔で頷く。

「で、俺の質問の答えは?大体予想はつくが。」

 ゲームやってるしな。

「翼人はね、他の翼人に、今まで生きてきたときの記憶と、知識と、呪いを受け継がせられるの。」

「だから、俺の名前を知ってたのか。」

「ち、ちょっと待ち!呪いっちゅうことは、また観鈴苦しまなあかんのか!?」

「あ、それは大丈夫。呪いは、明人さんが全部受け止めてくれたから。」

「へ?」

 珍しく、晴子のまぬけ顔を見れた。

「ホンマか!?居候!!」

「ああ、俺は呪いとか負の感情を吸収できる。観鈴は、もう苦しむことはないさ。」

「は〜、よかったわ〜。」

 晴子は、心から観鈴の心配をしていた。やっぱり、母親なんだなあ。

「けど、今の聞いとったら、居候はどこぞの極悪モンスターやな。カカカ・・・。」

 ・・・・・・撤回。晴子はやっぱり晴子だった。

「結局、居候の正体って、何なん?」

 そうきたか。

「教えて、明人さん。」

 二人きりのときその尋ね方したら、俺はお前を押し倒すかもしれん。

「俺の名前は天河明人。年は(作者の記憶によると)19歳だ。」

「んで、職業は無職やな。」

 晴子が意地悪くわらう。

「いまは、な。少し前まで、とある所でパイロットをやっていた。」

 今のところ戻る気はないが、な。

「ナデシコAの、エステバリスライダーだよね、明人さん。」

「・・・ちょっと待て。何故観鈴がそれを知ってる?」

「星の記憶だよ。

 あ、星の記憶っていうのは、翼人が受け継いできた知識だよ。」

 ・・・・・・おそらく神奈だろうな、んな事調べたのは。

 というより、知ってるなら聞かなくてもいいじゃねえか、観鈴。

「エステバリスっつうたら、どっかの会社の機動兵器やでな、確か。

 あんた、軍人やったんか。似合わんなあ〜。」

「私もそう思う。」

「ほっとけ。ついでに、俺は軍人じゃねえ!」

 一応・・・サラリーマンか。

 数日後。

「・・・・・・観鈴、ちょっといいか?」

「うん、いいよ。」

 夜。観鈴が起きてるか確かめてから、明人はドアを開けた。

「話したいことが、あるんだ。」

「なあに?」

「観鈴は、俺の今までの人生の事、神奈の記憶で全部知ってるんだろう?」

「うん。」

「俺は、どうしたらいい?」

「ほえ?」

 明人の唐突な質問に、観鈴は首をかしげた。

「えっとな・・・詳しく言えば・・・。

 俺の戻ってきた理由は、やり直すためじゃなかったんだ。けどアクシデントがいろいろあって、やり直すのもいいと思い始めた。

 だが、本当は俺は観鈴と一緒にいたいんだ。俺はどうしたらいいと思う?」

 明人の質問に、観鈴は考え込むそぶりを見せ、それから言った。

「うちがそんなに頼り無う見えるんか!?」

「!!」

「・・・って、お母さんなら言うと思う。」

 観鈴はいつもの顔で、

「私のことは心配しなくても、大丈夫。明人さんの、したいようにやって。

 明人さんが帰ってくるのを、私は信じてるから・・・。」

 観鈴の真摯な態度に、明人は圧倒される。

「・・・・・・すまん、観鈴。」

「気にしない、気にしない。」

 ふと表情が緩んだ明人は、続いてポケットに手を突っ込んだ。

「あ、今から言うことはさっきの話とは関係ないんだが・・・。」

 取り出したものを、観鈴に見せる。

「・・・・・・何?これ。」

「・・・指輪だ。」

 明人はゆっくりと深呼吸して気分を落ち着けてから、言った。

「俺と、結婚してくれ」

 観鈴の顔が、ボッと真っ赤になった。

「け、け、け、けっ、けっ、」

「落ち着け、観鈴。」

「だ、だって、結婚って、あの結婚だよね!血の痕って書いて、血痕じゃないよね!?」

(・・・・・・マジボケか?)

「わ、私、あの、その、えっと・・・・・・。」

「・・・・・・嫌か?」

 明人の質問に、観鈴は慌てて首をブンブンと振る。

「そ、そんな事ない!

 ・・・・・・いいの?私で。」

「ああ。」

「・・・・・・ありがとう。

 あっ、私も、頼み事、してもいいかな?」

「なんだ?」

 観鈴は顔を紅く染め、ささやく様に言った。

「・・・・・・私を、貰ってくれますか?」

「・・・いいのか?」

「・・・初めてだから・・・優しくして。」

「・・・・・・わかった。」

 そして、俺は観鈴をベッドに押し倒し、上から組み伏せていた。

 パジャマ姿の観鈴は恥ずかしそうに頬を紅く染めているが、抵抗はしなかった。

「観鈴・・・。」

「明人さん・・・。」

 相手の名を互いに囁いた後、唇と唇を合わせる。

 更に、俺は舌を強引に相手の口に入れる。

「んっ・・・。」

 互いに激しく求め合い、舌どうしが糸をひく。

 しばらく絡み合った後、少し顔を持ち上げ、上着に視線を向ける。

 俺は少しためらった後、意を決してパジャマのボタンに上のほうから手をかける。

「あっ、だめっ。」

 そのとき、観鈴が初めて抵抗してきた。

「心配するな。出来るだけ優しくするから。」

「あ、その事じゃないの。」

「へ?」

 観鈴は横を指差す。

 その先には、ドアを半開きにして、ニヤニヤしながら覗いている晴子がいた。

「・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・(照)

「うちは気にせんと、若いもん同士でなかよ〜やりや〜。」

 ・・・とりあえず俺が出来ることは、黙って起き上がり、気を溜めて、

「覇王!翔龍撃!」

 晴子に向かって炎の龍をぶっ放すだけだった。

「空間断絶!!肥後守!!」

 斬られたが。

「・・・・・・どこから聞いていた?」

「『話したいことがあるんだ。』のとこからや。」

 全部じゃねえか!!

「・・・居候。」

「何だ?」

「・・・・・・観鈴の事、これからも頼むで。」

「・・・・・・ああ。」


コメント

・・・・・・作者は逃げ出した!!

しかし取り囲まれてしまった!!

「ロウカード発動!!意味不明シーン禁止!!」

作者にレッドカード!!作者はプリズン送り!!

・・・・・・作者不在ゆえ、しばらく作者代理がコメントします。

次回は、意外な人物が出てきます。あまり意外ではないかも。

 

感想代理 皐月

 

けけけけけけけ、結婚!?

あの甲斐性無しのアキトが!?

黄色い救急車かエクソシストの出番だよ!!