The answer

天使編第13話

「ダンスのとき、一緒に踊ってくれないか?」

その時、ミルフィーがどんな表情をしていたか、俺には知るよしはないが、

彼女の答えが嬉しそうに聞こえたのは、俺の妄想ではないだろう。

「・・・はい!」

ミルフィーと待ち合わせの約束をして、楽しみに準備をしている俺に、レスターが話しかけてきた。

「よう、タクト。さっき、妙な噂を聞いてな。」

「妙な噂?」

「ああ。どうやら、最近ファーゴに妙な物が流れ着いたらしい。」

「妙な物?はっきりしない言い方だな・・・。」

「まあな。しかも、それは兵器らしいぜ。

 ま、お前に関係あるかどうかは知らんがな。」

というと、レスターはどこかへ行ってしまった。

「・・・何がしたかったんだ?あいつ・・・。

 ・・・そういや、今日は紀柳見てないな。トレーニングルームにもいなかったし。」

「やあ、ミルフィー。お待たせ。」

ファーゴの中のショッピングモールにて待ち合わせをし、俺とミルフィーはドレスを買いに出かけた。

準備をしたとは言っても、心の準備のことで、服装は2人とも制服だったが。

店でしばらく品定めをしたが、そんなに時間はかからなかった。

「タクトさん、ちょっと試着してきますね。」

「解ったよ。」

「お客様、試着はこちらでどうぞ。」

店員に連れられて、ミルフィーは向こうへ歩いていった。

「お客様、これはいかがでしょう?」

「うーん・・・別の、お願いします。」

(・・・どんなのを選ぶんだろう?)

「これは、当店の最新モデルのドレスでございます。」

「うわー、すごく派手じゃありません?

 ここの切れ込み・・・すご・・・。」

(一体どんなドレスなんだ!?)

「あ、これって・・・。」

「そうです!さすが白き月のお方ですね。」

(・・・仕事の関係?)・

やがて、ミルフィーが出てきた。

「あれ、ドレスは?」

「明日まで秘密です。それよりタクトさん、見てください!」

ミルフィーが出した物は、針金のような部品だった。

「これに使われている材質が、前に私たちが見つけたロストテクノロジーなんですよ!

 今までになかった材質でできているんです!」

「へえ・・・。」

関心を示した俺に、店員が説明をする。

「この材質のおかげで、今までより随分軽く、安いドレスが作れるようになりました。

 無論、ドレスだけに使われている訳ではありませんが。

 勿論安全性も高く、故障による事故の報告は一度もありません。」

「凄いね、ミルフィー。」

俺が誉めると、ミルフィーは「そんな事ありませんよ」と言いながらも、満更ではなさそうだった。

この後、色々回ったり、ファーストフードの食事中にフォルテとミントに見つかり、からかわれもしつつ、一日デートは終わった。

デートと思っていたのは、俺だけかもしれないが。

「やばいやばいやばい〜!仕事に手間取った〜!!」

そして、ダンスパーティーの日。同時に、俺のエルシオール司令の最終日。

誰が次を引き継ぐかは知らないが、その者のために書類をまとめるのに遅れ、会場に走る羽目になった。

慌てて、しかし会場に入るときはこっそりと入場する。

「遅いですよ、タクトさん。」

俺の前にいたのは、ピンクのドレスがよく似合う、ミルフィー。思わず、俺は呟く。

「き・・・。」

「・・・?」

「綺麗だ・・・。」

「えっ・・・。」

と、自分が言ったせりふの意味に気づき、俺は全身がまたかあっとなるのを感じる。

・・・最近、こればっかだなあ。

「あ、いや、その・・・。」

「・・・タクトさん?」

「・・・踊ろっか。」

「・・・はい。」

踊っている途中で、俺とミルフィーは意外なものを見る。

「ミルフィー、あれ・・・。」

「ランファと、榊さん?」

そこには、ドレスを着たランファと、どこから調達したのか、皇国軍の制服を着た榊が踊っていた。

「榊はこんな事に疎そうだから、誘ったのはランファだろうなあ・・・。」

「意外な組み合わせですね・・・。」

「全くだ。」

「・・・あの、タクトさん?」

「なに?」

「前にみんなでピクニックした時、トラブルであまりピクニックにならなかったですよね。」

「うん、そうだね。」

「今度休みになったら、ピクニックに行きませんか?今度こそ。」

「・・・そうだね。」

と、突然ちょっとしたハプニングが起こる。

ミルフィーのドレスの下の方から、急に焦げ臭い煙が上がってきたのだ。

「ええっ!?な、何でっ!?」

「ミルフィー、動かないで!」

俺は手刀を一閃、スカートの下の部分を支えの針金ごと切り落とす。

そして、ボヤの原因を拾い上げる。

「これは・・・さっきの新型の材質?」

確か、安全性は高いはずなんだが・・・。・・・絶対はないということか。

「やっぱり・・・。」

「ん?」

「やっぱり・・・私がいたら・・・。」

「・・・ミルフィー?」

「あ、いえ、何でもないです。」

「そう・・・なら、いいけど。

 しかし・・・。」

俺が見た先には、中途半端にちぎれたミルフィーのドレス。

「タクトさん・・・あの・・・。」

「ふっ・・・。だが!

 この程度の障害で、俺の熱き思いを止めることはできんっ!!」

と、ミルフィーがビックリしたように俺を見る。

「た・・・タクトさんが壊れた!?」

ズコーッ!!ひでえ・・・。

 そうじゃなくて、俺にいい考えがあるよ。」

「え・・・でも・・・。」

「それに、俺はミルフィーとダンスを踊りたいからね。」

「タクトさん・・・。」

「うわぁ〜、これの方がいいです!」

「ありがと。よく似合ってるよ。」

俺がミルフィーのドレスにした事は、中世貴族の着るようなドレスの、下の方の変に曲がって浮いているスカートをミニの如く短くさせ、軽くさせた。

「さ、ラストダンスにはまだ早いよ。続きを踊ろうか。」

「・・・はい!」

「・・・ふう、何かトラブルあったみたいだけど、タクトとミルフィー、上手くやってるじゃない。」

「親友として、心配か?」

「当たり前でしょ?

 あの子ったら、いっつも心配かけるんだから・・・。」

「・・・・・・。」

本来ならば、まだまだ続くはずのダンスパーティー。だが、奇特なことに、とある乱入者によってそれは終わりを告げる。

「キャアッ!」

「うわあっ!」

突如、入り口付近から叫び声が聞こえた。

「ミルフィーは、ここにいて。」

「・・・はい。」

何だ、と思って近寄ってみると、そこに、奴がいた。

皇国本星を壊滅させ、皇国に牙を剥くもの。反逆の廃太子、エオニア・トランスバールが。多くの武装した兵士を引き連れて。

(にしては・・・気配が感じられない?)

他の者は、大方が怯えていた。

ここにいる奴の殆どが戦場に出たことのないような奴ばかりだから、銃を突きつけられた時の反応としては当然かもしれないが。

そんな奴等を一瞥しつつ、エオニアは仰々しく挨拶する。

「ごきげんよう、皇国の諸君。」

「貴様!どこからここに!!」

皇国軍のお偉いさんのヒステリに近い叫びに、エオニアはふっ、とキザな笑いを浮かべる。

「そんなことはどうでもいい。我らの要求はただ1つ。

 シヴァ皇子を渡してもらおう。」

「そのような暴挙、許すものか!」

「そうだ!」

周りが次々に騒ぎ始め、

「死ね!エオニア!」

血の気の多い若者の1人がそう叫び、勇敢にも(もしくは無謀というのかもしれないが)銃をエオニアに放つ。

が、銃弾はエオニアをするりとすり抜けていった。

「な・・・!」

(やはり・・・。)

それを意にも介さず、エオニアは残念そうに告げる。

「ふう・・・残念だ。ならば、私からは、こういうしかないな。

 さらば、と。」

そして、エオニアたちの姿は掻き消える。

「き・・・消えた!?」

(ホログラフだったか・・・。)

ズドォォォォォォォン!!

「うわあっ!」

「きゃあっ!」

エオニアが消えると同時、次々と振動が会場を襲う。

「え、エオニア軍が攻撃してきたぞ!」と誰かが叫び、会場はパニックに陥った。

「タクトさん!」

騒ぎを聞きつけ、エンジェル隊のみんなが集まってくる。その中には、シヴァ皇子もいた。

「一体、どういうことですの?」

「エオニア軍が、攻めてきたのかい?」

「らしいな・・・。

 みんなは、シヴァ王子を連れて、エルシオールへ!」

「了解!」

みんなが走っていったその時、レスターから連絡が入る。

「タクト!ファーゴの周囲を、エオニア軍に囲まれた!」

「そうか・・・もうすぐエンジェル隊がシヴァ皇子を連れてエルシオールに向かう!

 搭乗したら、すぐに出港してくれ!」

「タクト、お前はどうするつもりだ!」

「出来るだけ助けて、ジャンプでそっちへ行く!」

「解った!」

が、ここでCCがあるかどうかを確かめてから、通信を切るべきだった。

(・・・・・・CCが、無い!?)

ポケットを探っても、CCは何一つ無かった。通信も、電波障害が起こったらしく、繋がらない。

「・・・・・・やべっ。」

「エンジェル隊、及びシヴァ皇子の搭乗を確認しました!」

「よし、エルシオール緊急発進!」

レスターの指令とともに、エルシオールはスクランブルに入る。

程なくファーゴを脱出し、そのまま完全包囲に入る前に隙間をくぐり抜けてから、エンジェル隊が出撃した。

「これより、エルシオールは外側から包囲を破り、友軍を助ける!」

シヴァ皇子の号令が、ブリッジに響きわたった。

戦闘自体はそんなに苦労するものでもなく、たやすく次々と撃破出来た。

が、まるで近くに本拠地があるかのごとく次々と増える敵と、攻め方が積極的ではないことに、レスターは一抹の不安を感じていた。

「それに、タクトが戻ってこない・・・。

 何かあったか?」

そう思案したその時、胸元のクロノクリスタル(通信機の事)が鳴り出した。

「どうした!」

レスターが怒鳴りつけると、雑音混じりの切れ切れの、タクトの声が流れてきた。

「あ・・・レス・・・。」

「タクトか!?何をしている!さっさとジャンプして来い!!」

「わ・・・無理・・・ない・・・。」

「どうした!聞こえないぞタクト!・・・タクト!?」

レスターの呼びかけもむなしく、ブツッと通信は切れてしまう。

「・・・くそっ!」

「副司令!」

「何だ!」

苛立ち混じりのレスターに、アルモの悲鳴に近い報告が知らせられる。

「前方に、惑星大の巨大な反応が!」

「何だと!?」

その頃、未だ諦めることなく脱出方法を探しているタクト。

「他の戦艦に頼んで、乗せてもらうか・・・。

 ・・・・・・格納庫って、こっちだったよな。」

「周囲に妨害電波が発生しており、詳しいことは不明!

 ・・・・・・その反応物から、膨大なエネルギー反応です!」

ココの報告に、レスターはとっさに何かを感じたのか、反射的に指示を出した。

「本艦、及び全機は一刻も早くファーゴ周辺の宙域から離脱しろ!近くの友軍にも出来るだけ通信をつなげろ!

 急げ!!」

エルシオールが回避運動をとった数秒後、レーダーはその物体から発射された膨大なエネルギーを観測した。

運良く直撃は避けたとはいえ、エルシオールはかすっただけで震度5近い振動が走った。

更には、そのエネルギー波がファーゴの中心を直撃粉砕し、惑星ロームにも直撃、

その衝撃波が惑星全体を壊滅させる様子をモニターは余すところなく捉えていた。


コメント

ムーンリットラヴァーズ、やっと買えました。

・・・・・・はあ。月姫とマブラヴとKanonと4重並列は辛い・・・(涙)

次の話を送るのが遅れそうです。

 

 

 

管理人の感想

ヴェルダンディーさんからの投稿です。

何やらピンチに陥ってるタクトですが・・・生きているんでしょうかね?

それより自分の最大の武器ともいえるCCを忘れるとは、弛んでますなぁ(苦笑)

今回、一度も顔を出さなかったユリカの動向が気に掛かりますね。

 

 

 

多分、出てこないのには訳があると思いますが(笑)