第14話
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「敵艦、進撃してきます!」
「全艦、迎撃!何としても此処を通すな!!」
漆黒の宇宙を舞台に、大小様々な大きさの華が、咲いては散り、咲いては散りを繰り返す。
ミサイルと言う名の蜂が飛び交い、グラビティブラストという名の光が辺りに注ぐ。
人、そこを戦場と呼んだ。
連合軍と木星蜥蜴が一進一退を繰り返す戦闘は、その場をいつ途切れるとも知らぬ、混沌たる空間と変えていた。
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が、その時、1つの乱入者によって、それは破られる事となる。
「艦長、我が部隊前方にボース粒子反応!」
そして、光が止んだ後には、白き戦艦。
「バカな・・・。ナデシコだとぉぉぉぉぉぉっ!!」
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「・・・うう・・・。」
ナデシコの中では、全員が気絶していた。
その中、一番に目を覚ましたのは、アオイジュン。
寝ぼけ眼を擦りつつ、ゆっくりと起き上がる。
「ん・・・今の状況、どうなってる?」
ジュンの呟きに反応し、メインモニターに外の様子が映し出される。
そこには、連合軍と木星蜥蜴の戦闘シーンがあった。
同時に、違うモニターには、ナデシコの現在地を表す図が出てきた。
が、ジュンはこのとき気づくべきだったのだ。あまりにも、静かすぎることに。
「・・・げっ!戦闘のど真ん中!?」
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ポチッ。
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「あ」
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ビックリした拍子に、ジュンはグラビティブラストの発射ボタンを押してしまう。
と、言う事は。
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ズキュウウウウウウウウウン!!
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重力波が遠慮無しに発射され、連合軍と木星蜥蜴を見境無く巻き込んでいった。
「Nooooooooooooooo!!」
皮肉にも、ジュンのムンクの叫びの如き絶叫が、ブリッジクルーを目覚めさせた。
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それから、わんさか来た連合軍の抗議に対処してから、ナデシコも戦闘に参加する。
「エステバリス隊、発進!」
ジュンの指令が響き、少し遅れて各機から反応が届く。
「ようし!ダイゴウジガイ、出撃ぃ!!」
「スバル機、出るぜッ!」
「アマノ機、でま〜す!」
「マキ機、出ます・・・出ます・・・不発。」
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「エステバリス隊、各機発進しました。」
「全機、フォーメーションを組みつつナデシコの防衛に重点を。」
指示を出し、ジュンが黙る。各クルーも、次に来るだろう喋りを待つ。
「・・・・・・・・・」
――――――が、。
「・・・・・・・・・?」
いくら待っても、ブリッジはサイレントな状態だった。
「ゲキガンフレアーッ!!」
いや、ガイの叫びだけは響いていたが。
そして、ブリッジクルーの全員が気づいた。
ユリカと、ノーマッドがいないのだ。
基本的に口数が少ないユリカはともかく、ツッコミ専門のノーマッドが何もしゃべらない事はありえないのだ!
「・・・二人の事は後で考えよう。今は戦闘に集中。」
「了解!」
「ホシノさん、念のためオモイカネに、艦長が艦内にいるか捜索してくれるかい?
ノーマッドがいないから、オモイカネに戻ってるかもしれない。」
「はい、解りました。」
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「げっ!フィールドが強化されてやがる!」
襲来してきたバッタは以前より固く、ライフルでは一撃では撃破出来なくなっていた。
「敵さんも強くなったの?」
「昨日の友・・・今日敵・・・強敵・・・だめね。」
と、ガイが前に飛び出す。
「ヤマダ!何をする気だ!?」
「何するの〜?」
「銃が効かんなら、殴るまでだっ!!」
ガイは腕の一突きで、バッタを潰す。強化したフィールドとはいえ、まだ格闘戦まで耐えられるレベルではなかった。
「なるほど・・・そいつぁいい!
ヒカル、イズミ、援護射撃頼むぜ!」
「は〜い!」
「風呂屋にあるもの・・・桶・・・OK・・・。」
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「8時方向より、ミサイル多数!」
「かわせぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「正面に、敵戦艦!数は6!!」
「主砲、収束で撃てぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
連合軍の殆どがやられた(一部はナデシコのせい)今も、ナデシコは奮戦していた。
が、被害はたまっていく一方。
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ドガァァァァァァァァン!!
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今もまた、ブリッジに衝撃が走る。
「右ブレードに被弾!」
「フィールド薄いぞ!」
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ズゴォォォォォォォォン!!
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「相転移エンジン、片方が死にました!」
「ミサイル撃ってからフィールド、更に重視!
1番から6番まで、撃てエェェェェェェェェェッ!!」
ドシュドシュドシュゥゥゥゥゥゥゥン・・・。
ズドォン!!
懸命に抵抗を続けるが、不利なこの状況の打開には至らず、じわじわと押され始めていた。
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「くそっ!まだいやがるのか!」
ひっきりなしに沸いてくる無人兵器群に、エステバリス隊も押されていた。
「ゲキガンナックルッ!・・・まだいるのかよ!」
「もうへとへと〜・・・。」
「君達、そこから下がった方がいい。」
その時、軽い口調の男の声が、通信に割り込んできた。
「誰だ!」
「そんな事より、早くどかないと巻き込まれるよ?
・・・よっ、と・・・。」
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そして、連合軍の方向、遙か向こうから、1条の重力波が突き抜けていく。
「此処は僕たちに任せたまえ。」
セリフの後、グラビティブラストが今度は何発も走っていった。
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同じ頃、ブリッジも乱入者の正体を捉えられずにいた。
「連装式のグラビティブラスト!?」
「ネルガルもまだ開発していない物を、どうやって・・・。」
『何故か』展望室にいて、ブリッジまで走ってきたイネスと、ブリッジに初めからいたプロスペクターが驚く。
「ま、ともかく・・・。」
ジュンが一息つく。
「ピンチが去ったと考えるのは、早計かな?」
その提案に反対するものは、誰もいなかった。
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戦闘終了後、謎の乱入者の正体はネルガルの二番艦コスモスと判明した。
ドッグ艦でもあるコスモスにナデシコは収容され、現在修復中である。
「おかしいですな・・・。」
プロスペクターが疑問を口にするが、「ボゾンジャンプは、ただの空間移動ではないというの?」とイネスが呟くだけで、答えるものはいなかった。
ルリとアカツキはオチが解っていたが、黙っていた。
ともかく、アカツキは自己紹介をした。
「やあ、僕はアカツキナガレ。コスモスから来た男さ。」
そして、歯をきらりとさせる。
が、態度はいかにも軽そうな男であり、女性陣は好意の視線は向けていなかった。
アカツキもそれはわかったらしく、(ふん・・・美凪君さえいれば、僕はいいのさ。)と、少しいじけていた。
「か、会長!」
と、いつの間にか側に来たプロスペクターが、小声で耳打ちする。
「エリナ女史だけでなく、会長自らとは、どういうことですか?」
「ちょっとね。」
アカツキは苦笑。
「さて、今どういう状況か大方は解らないと思うから、かいつまんで説明しよう。」
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ナデシコクルーが知った事実は、火星でジャンプしてから『何故か』8ヵ月後にいる事、ネルガルが軍と手を組んだ事だった。
「じゃあ、私たち、軍隊に入るんですか?」
「そうなりかねない状況だったけど、さっき軍のお偉いさん方に話をしてきて、交換条件を通してきた。」
「・・・どういう条件ですか?」
前とは違う動き方に戸惑いながら尋ねるルリの疑問は、その場の全員のそれを代弁していた。
「ナデシコA、即ちこの艦を、軍に引き渡す。」
『!?』
全員の表情が、驚愕に彩られていた。
「そんな馬鹿な!?」
「私達はどうなるんですか?」
ブリッジが怒号と喧騒と不安に包まれる中、アカツキは周りを抑える。
「話は最後まで聞くものさ。
渡すのは、ナデシコAだよ。」
「だから・・・」
「あっ!そうか!!」
突然、納得したようにジュンが大声を出す。
「何ですか、いきなり・・・。」
「つまり、渡すのはナデシコだけです。僕達は、軍に入るわけじゃありません。」
「それじゃ、私達はどうなるの?」
「頼むから最後まで聞いてね・・・。」
無視されていたアカツキは、またいじけていた。
「元ナデシコAのクルーは、今まで通りネルガルの戦艦に乗って戦ってもらう。」
ここで、あらかじめ質問を予想して少し黙ったが、さすがに何もなかった。
「で、その戦艦の名は・・・ナデシコB。」
「ナデシコB!?」
ルリが聞き覚えのある名前に、飛びあがって驚く。
「何かあるのかい?ホシノ君。」
「い、いえ・・・軍はナデシコを渡せ、と言ってるなら、それも渡せ、と言われるんじゃないかと思って・・・。」
「心配要らない。ナデシコBは、ナデシコの名前を借りた『別物』と言うことになっているからね。
ナデシコAより格納庫を広々と取って、出力も向上。
武装はミサイルが無くなったけど、グラビティブラストを全力で撃ってもフィールドは十分維持できるからね。」
おお、と周りから歓声が上がる。
「ただ、条件はもう一つ――――――というよりこれはお願いだけど――――――あるんだ。」
一瞬にして、辺りが静まる。極端だなあ、とアカツキは思いつつ、
「火星の人も救助できたし、しばらくナデシコは地球で活動して欲しい。
それが向こうからのお願いってやつさ。」
なあんだ、と言う呟きがいくつか聞こえる。やはり地球と言うのが安心なのだろう。
「そして、クルーの追加。
こっちにいるのが、操舵手のエリナ君。
そして僕が、パイロットのアカツキナガレさ。」
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と、メグミが手を上げる。
「何だい、レイナード君。」
「今までの話を聞いてたら、まるでアカツキさんがネルガルのえらい人みたいですね。」
「ふっ・・・軍とはいろいろつながりがあるのさ。」
と、アカツキが格好よく決めようとする前に、
「それはそうです。
アカツキさんはネルガルの会長さんですから。」
と、ルリは先にオチを言ってしまう。
「・・・ホシノ君?いきなりそれは酷いんじゃないかい?」
「解りません。
私、少女ですから。」
アカツキにとっては久しぶりに聞くルリの口癖に、懐かしさを思い出す。
「メグミさん、解ってて質問した?」
「当たり前ですよ、アオイさん。」
「ルリルリが、さっき言ってたもんね。」
得意げに言うメグミと、それを見るミナトのやり取りを聞いたアカツキが、ルリをジト目で睨む。
「ホ〜シ〜ノ〜君!!」
が、ルリはお決まりのセリフで流すのみ。
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「・・・私、少女ですから。」
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「おい、あんた、ネルガル会長のアカツキとか言ったな?」
「もう広まってるのかい・・・。」
アカツキはナデシコらしさに頭を抱える。
「・・・ああ、僕がアカツキさ。
どうしたんだい、ええと・・・ウリバタケ君だね。」
地球でナデシコBに乗り換えるまで、暇をもてあます大部分のナデシコクルー。
アカツキは、自分の機体をもう一度見るために格納庫に寄ったところ、ウリバタケと遭遇した。
「おう。あ、ちょうどいいところに来た。
ネルガルで、DFSとかいうやつ、開発してたか?」
「・・・何だい、そりゃ?」
「俺が知りてえよ。
さっき俺の部屋に行ったら、そういう名前の武装の設計図が落ちてたからよ。
てっきり、ネルガルの新製品の製作注文かと思ってな。」
「いや、そんなものは知らないが・・・それは、使えそうなのかい?」
「テンカワかゼロぐらいの力がないと、使う事すら難しいんじゃねえかな、あれは・・・。」
「そうかい。」
(どうせ、天河君には新型と、法術があるしね・・・。)
「そうそう、お前のあの機体、凄くねえか!?
エステの高さを遙かに上回る20m台、それを感じさせない空戦フレームを上回る機動性と飛行能力!」
ウリバタケの説明は止まらない。
「連装マシンキャノンにプラズマカッターなどと装備は充実、とどめは小型相転移エンジンからなる高出力のグラビティブラストと、
実弾バズーカを同時につけたあの銃ときたもんだ!」
「・・・・・・・・・。」
あまりのウリバタケの迫力に、少し意識をなくしたアカツキだった。
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が、この事はある問題の残骸程度でしかない出来事だった。
ブリッジでも、問題は発生していた。
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それは、ジュンの一言から始まった。
「・・・あれ?
アキトの奴、いつの間にコックになったんだ?」
ブリッジで書類を整理していたジュンの口からこぼれた言葉に、ルリが弾かれたように振り向く。
「えっ!?」
(私がちょっかいを出したのは、アキトさんをコックではなくパイロットにした事でしたが・・・。
自分でなったんでしょうか?
いいえ、それならコックになったときに、まず何を置いても私に報告するはずです!)
多少妄想が入っているが、ルリの思考は大方正しかった。
アキトはルリの記憶通り、パイロットしか契約してはいなかったし、食堂にも一度も立ってはいない。
「どういう契約になっていたんですか?」
「コック兼パイロットになってるよ。」
「・・・・・・へ?」
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その時、ルリをさらに驚かせる事が。
<ルリ。>
「どうしました、オモイカネ?」
<フクベ提督、何でまだナデシコにいるの?
火星に置いてきたはずじゃなかったの?>
「な・・・・・・?
何を言っているんですか、オモイカネ?
私達はゼロさんに跳ばされて・・・。」
<こっちは、データにはチューリップに突入した記録になってるよ。>
「そんな・・・どういうことなんですか?」
と、クルーの代表者がブリッジに次々と駆け込んできた。
「おい、ジュン!
俺のゲキガン人形と、ガオファイガーのフィギュアが無くなってるぞ!
ゲッターのも!」
「俺の刀もねえ!!」
「先程言うのを忘れてましたが、火星民の方々が荷物が無くなったと苦情が・・・。」
「俺のリリーちゃんEXと、新兵器の設計図もやられた!」
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「はあ・・・これは、フレサンジュ博士に聞いてみるかな?」
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コメント
> 俺のゲキガン人形と、ガオファイガーのフィギュアが無くなってるぞ!
> ゲッターのも!」
>「俺の刀もねえ!!」
>「俺のリリーちゃんEXと、新兵器の設計図もやられた!」
ナデシコ内の持ち物については私オリジナルの設定です。
リリーちゃんEXについては、質問禁止です。オチはまた次回。
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・・・さあて、テレビ見た分の貯金がなくなった。
また見なきゃ。
管理人の感想
ヴェルダンディーさんからの投稿です。
さて、何やらイベントが起ころうとしていますが、一体何が起こるのでしょうか?
それより、アキトの影が薄すぎるような気が(汗)
出番なんて、食堂で料理しているところだけですからねぇ・・・