The answer
天使編第14話
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エルシオールが回避運動をとった数秒後、レーダーはその物体から発射された膨大なエネルギーを観測した。
運良く直撃は避けたとはいえ、エルシオールはかすっただけで震度5近い振動が走った。
更には、そのエネルギー波がファーゴの中心を直撃粉砕し、惑星ロームにも直撃、
その衝撃波が惑星全体を壊滅させる様子をモニターは余すところなく捉えていた。
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「エオニアの奴・・・!!」
滅多に聞く事のない、レスターの呪詛。エオニアの理不尽な行為に対する怒りに、声を震わせている。
「クールダラス副司令?」
その時、恐れと不安を含んだ声で通信して来たのは、ミルフィーユ。
「タクトさん・・・まだ戻ってきてないんじゃないですか?」
「・・・ああ。」
「!!」
「マジ!?」
「何てこったい・・・。」
声を引きつらせる、ランファとフォルテ。
「そんな・・・!」
「タクトさん・・・。」
絶句する、ミントとヴァニラ。
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そして、更に。
「あ・・・ファーゴの残った部分から、艦が脱出して来ましたよ?」
「違う・・・あれは・・・!」
ミルフィーユが見た、残った箇所から出てきた戦艦というのは、脱出してきたものではなかった。
「エアロックが破れて・・・中から押し出されてきたものです・・・。」
ヴァニラが、無理を抑えた様な平坦な口調で告げる。
「じゃあ、あの小さいのは・・・。」
「・・・くそっ!」
引きつるランファと、やりきれないフォルテ。
「アルモ、まだか!」
「電波状況、回復しました!モニターに出します!」
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モニターに映った物を見て、全員が先程とは違う意味で絶句した。
さっきは多くの命が目の前で失われたことに対する怒りからだったが、今回は純粋に驚きからなるものだった。
映った物は、黒い惑星のような、巨大な人工物。中心部に見えるは、血の色のようなモノアイ。
そして、周囲には黒い戦艦が多数。更には、同じ戦艦が人工物の中からどんどんと湧き出てきた。
「あれは・・・!!」
「シヴァ皇子、ご存じなのですか!?」
レスターの問いに、シヴァは恐れを言葉の端に含ませながら答える。
「シャトヤーン様に・・・昔、聞いたことがある。」
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「あれは・・・黒き月だ。」
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「黒き月?」
「シャトヤーン様の話によると、白き月と対を成す存在との事だ。
詳しいことは、解らないそうだが。」
シヴァの説明に、レスターが自分なりの考えを補足する。
「映像を見る限り、黒き月内部から戦艦が湧き出ている。さしずめ巨大な兵器工場であり、兵器自身でもあるということか。」
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その時、友軍から通信が入ってくる。
「ルフト准将からです。」
「よし、繋げ。」
モニターには、未だ衰える様子のない、軍服の老人が立っていた。
「おお、レスター!生きておったか!
現在惑星ロームの裏側で残存艦隊の集結を急がせておるのじゃが、シヴァ皇子が見当たらんのじゃ!
知らぬか!?」
「案ずるな、ルフト。私はここにいる!」
シヴァの言葉に、ルフトは安堵の表情を浮かべる。
「おお、ご無事でしたか!」
が、ブリッジの人数が少ないのに気づき、レスターに尋ねる。
「レスター、タクトは?」
「・・・逃げ遅れて、恐らくファーゴとともに・・・。」
「そうか・・・。」
「エルシオールは、エンジェル隊たちとともに時間を稼ぎます。今の内に、集結を。」
「お前達には、本当に苦労をかけるな・・・。くれぐれも、無理はするでないぞ。
シヴァ皇子に何かあれば、元も子もないのじゃからな。」
「解っております。」
レスターの返答にルフトはうむと頷き、続きを話す。
「ミスマル嬢、そこにおるな?」
「・・・はい。」
「うおっ!」
飛び上がるレスターの横に、ユリカが気配も感じさせずに存在していた。
「いつの間にこの艦に・・・。」
「レスターの助けになってやってくれ。」
「・・・了解。」
「では、頼むぞ。」
「はい。」
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通信が切れる。それから、レスターは天使たちに指示を出す。
「全機、最低でも5分、時間を稼いでくれ!」
「了解!」
5機の紋章機が、舞って行く。
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「全弾発射!ストライクバースト!!」
ハッピートリガーが全弾を引き換えに、多くの戦艦を火球と変えていく。その隙間をぬって、敵味方が多く入り交じる。
その中、数隻の戦艦が一斉にエルシオールめがけて主砲を放つ。
「・・・紀柳。」
「任せよ!」
ユリカの指示で紀柳が動き、夜天光零の背中から3つのフライヤーが飛び出す。
「防げよ!ファンネル!」
フライヤーが大きなトライアングルを作り、発生したエネルギーの壁が攻撃を防ぐ。
そして、防ぎきれなかった分の着弾は、ハーベスターが散布するナノマシンによって即座に修復される。
「防御は任せろ!」
「修理は・・・任せてください。」
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「任せたわよ、紀柳、ヴァニラ!
行きなさい!アンカークロー!!」
気合一発、カンフーファイターから伸びる2本の爪が、戦艦の機関部を叩き、動きを止めていく。
任務は時間稼ぎのため、潰せたら儲け物、最低でも攻撃能力を無くせばいいのだ。
「さあ、どんどん行くわよ!」
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「援護致しますわ、ランファさん。」
ミントの通信とともに、トリックマスターからフライヤーが飛んでいく。
夜天光零のそれとは違い、ミントのは主にレーダーかく乱を得意としている。時間稼ぎには最適だ。
そして、動きが鈍くなった戦艦を、フライヤービームやミサイルで1つずつ始末していく。
「攻撃は任せますわ、ミルフィーさん、フォルテさん。」
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「は〜い!ミルフィーユ、いっきま〜す!!」
「お待たせ!補給してきたよ!!また暴れてやろうじゃないのさ!!」
高出力攻撃のラッキースターと重爆撃のハッピートリガーが、再び前に突貫して敵をかき乱す。
「おらおらおらおら!!はーはっはっはっはっ!!
さっさとやられちまいな!!」
「うわーん!フォルテさんが壊れた〜!!」
「バカな事言ってないで、あんたも一発かましな!」
「は〜い!わっかりました〜!!」
傍から見れば能天気か、はたまたふざけているようにしか見えない会話を交わしながら、その間に嵐のような攻撃で敵艦にアタックして潰していく2人。
「ミルフィーユ、いっきまーす。ハイパーキャノン!!」
もはやお馴染みの高出力ビームキャノンが、斜線上の敵艦を光の奔流という川の流れに巻き込み、砕いていく。
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「我も負けてはおれんな・・・とおっ!!」
夜天光の姿が掻き消え、一瞬にして近くにきていた敵艦の底に現れる。
「滅殺!」
錫杖を一突きして、装甲に豆腐のように軽く穴を開ける。
「沈め・・・。」
錫杖を突き刺したまま、先端から電撃を発射。行き場の無いエネルギーが艦内部で暴れまわり、弾ける様に爆発する。
それに巻き込まれる前に跳躍し、再びエルシオールの防衛に移る。
「・・・脆い!脆いわ!!」
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「よし、近くの敵はあらかた片付けたな・・・。」
「エンジェル隊、紀柳、帰還して。エルシオールも、離脱します。」
「了解!」
「諾。」
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「ふふふ・・・。なかなかやるわね・・・。
けど・・・もう終わりよ。」
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天使達が戻る途中、突然漆黒の宇宙に、それとは違う黒さの光が、黒き月を中心に広がっていく。
「何だ?この光は・・・?」
「副司令!」
アルモの悲鳴がブリッジに響く。
「エルシオールの動力が、ストップしました!」
「何!?」
「通信以外、全て使用不可能です!!レーダーも利きません!」
「・・・あの光・・・?」
「副司令!!」
「今度は何だ!?」
フォルテが多少危険を感じた声を届ける。
「紋章機が、うんともすんとも言わなくなっちまった!!」
「動かないよ〜!!」
「レーダーも効かなくなっちゃったわよ〜!?」
「あの光の後ですわね・・・。」
「・・・恐らく。」
「この状態で・・・攻撃を受けたら・・・!!」
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「簡単には・・・殺さない。
暗闇の中で、とことんまで苦しめて、じわじわとなぶり殺しにしてあげる。」
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ズドォン!ドォン!ドシュゥン!!
「きゃあっ!」
そして、レーダーが死んでいる為、外の様子が何もわからぬまま、エオニア艦隊の一斉攻撃が始まった。
「くっ・・・!」
「回復・・・できない?」
「出来ません!原因も不明です!」
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「さすがだな、ノア。紋章機を、動けなくさせるとは。
目隠しのまま、なぶり殺しとは・・・恐ろしい。」
「ねえ、お兄さま。もう、エルシオールを沈めてしまってもいいのよね?」
「ああ。白き月を護る封印も、シヴァがいなくとも解ける方法はあるだろうからな。
手に入らないのなら、無理に手に入れる必要は無い。」
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困惑と混乱の中、更に第二波が。
ドスゥン!ガァン!ボォン!!
「きゃっ!」
「いったー・・・。」
「まずいね・・・。」
「紋章機とはいえ、こうも食らいすぎては・・・。」
「せめて・・・修理が出来れば・・・。」
「・・・もしや・・・?」
一方的に撃たれつづけるなか、紀柳が何かを思いつくが、それを実行に移す前に第三波が襲う。
「被害は!」
「第2、5、6、9・・・被害箇所が多すぎます!」
「エレベーターホールで火災発生!近くの修理班は至急向かってください!」
「くっ・・・これまでなのか?俺たちは・・・。」
「・・・・・・。」
さすがに、レスターやユリカの顔にも、諦めの表情が浮かんできた。
「もう一回きたら・・・。」
「・・・みんな・・・。」
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「諦めるな!!」
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コメント
・・・誰でしょう(爆)
というより何で生きてたんだか(核爆)
ああ・・・段々方向性が変わってく・・・。
管理人の感想
何だか主人公不在で話が盛り上がってますね(苦笑)
次回、颯爽と助っ人が現れるみたいですが、動力停止現象に対抗できるんでしょうかね?
夜天光も止まってるみたいですし。
・・・某人物が生きてる理由が分からないというのは、構成的にどうかと?(汗)