第17話
・
・
・
・
・
・
・
・
・
もうすぐ白き月というところで、戦いは始まっていた。
というより、エルシオールが戦う前に戦いは始まっていた。
近くの惑星から、皇国軍の援軍が来ていた。突撃艦20隻に、巡洋艦15隻。対する敵は高速艦たった5隻、そして5機のロストテクノロジー。
それだけの差がありながら、先遣部隊は圧倒的に敗北し、敵は1機と2隻を失ったのみ。
辛うじて拾った情報から、俺は作戦を考える。
・
・
・
・
・
・
「よーし、そこだっ!」
カミュ搭乗、戦闘機形態にも人型形態にもなれ、4本のビーム砲が脅威のクラウドセイバー。
「ブロウクンマグナムッ!!」
ギネス搭乗、恐ろしいほどのパワーを持つ黒鋼の巨神、ガオガイガー。
「アン、ドゥ、トロワ・・・。」
リゼルヴァ搭乗、雷の如き速さで切り裂き、攻撃をかわすギア、サンダーブレイカー。
「ゲッタービィィィィィィィムッ!!」
レッドアイ搭乗、破壊の奔流を腹部から吐き出す、ゲッター1.
・
・
・
・
・
・
「ミルフィーは、クラウドセイバーを。
4本のビームは、全部に当たらなきゃラッキースターのシールドでも防げるはずだ。」
「はい、頑張ります!」
「ランファは、ガオガイガーを。
あいつの攻撃は受けたらどれもおしまいだから、とにかくかわして!
まずは左腕のプロテクトシェードを狙うんだ!」
「オッケー!」
「ミントは、サンダーブレイカーを。
あの変幻自在の動きは厄介だ。全方位から少しずつ詰めていって。」
「お任せください。」
「フォルテとヴァニラは、ゲッター1を。
多分近距離の戦いになるから、前のビームには注意してね。」
「よっしゃ!まかせな!」
「・・・頑張ります。」
「紀柳はみんなの援護を!」
「諾。」
「それとみんな、俺はみんなを信じてる!
必ず、生きて帰ってくることを!行こう!!」
『了解!!』
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「こちらラッキースター。攻撃します!」
ラッキースターが吐き出すミサイルとバルカンの弾幕を、クラウドセイバーは暴風の如くかわし、接近。
「速い・・・!」
「よし、行くぜっ!!」
ラッキースターの零距離で、コンマ未満で人型に可変したクラウドセイバーが実体剣を振り下ろす。
「きゃあっ!!」
だが力場が刀を阻み、はじき返す。
「ちっ・・・。」
カミュは離れつつもライフルを連射し、シールドを散らす。
「ええいっ!」
相手が離れた隙に、中型ミサイルをバラバラと撒くが、戦闘機形態に変形して当たる事は無い。
「外しちゃった・・・。」
「今だッ!」
クラウドセイバーはエネルギー全開、高出力を出しつつ突撃。
大型艦を一撃でぶち抜く程の、4門のビーム砲が全てラッキースターに直撃する。
「うわあああああっ!?」
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「これでも・・・食らいなさいっ!!」
ランファが、対艦用の大型ミサイルを発射する。だが、ギネスは左の掌を広げ、モーション大きく前に掲げる。
「プロテクトシェェェェェェェェェドッ!!」
ミサイル着弾の衝撃は、しかし左腕から発せられる不可視の壁によって、本体に通される事は無い。
「アレがプロテクトシェードね・・・。」
と、ガオガイガーは右腕を上に掲げる。
激しい摩擦音とともに右腕部が回転し、そのまま振りかぶる。
「ブロウクンマグナムッ!!」
勢いとともに右腕から発射された螺旋の衝撃は、ギリギリでかわしたはずの、カンフーファイターの機体を揺らす。
さながら、渦潮に巻き込まれる小船のように。
「わっ・・・!」
その間にガオガイガーは腕を回収。両手から網のような電撃波をランファに向かって放つ。
「プラズマホォォォォォォルドッ!!」
電撃波はカンフーファイターに命中。ダメージこそ少ないものの、動きを止めるには充分だった。
「なっ・・・何これ・・・。」
・
・
・
「ヘル・アンド・ヘブン!!
ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ・・・。」
その隙にガオガイガーは右腕に破壊の力、左腕に防御の力を集め、それらを次の呪文で1つに収束させる。
その寄り合わせた力を持って、対象を貫くために。
・
・
・
「はあああああああああああっ!!」
「・・・・・・キャアッ!!」
固まったランファ機をさらに拘束する如く、ガオガイガーは力を内包した両拳からEMトルネードという電磁波の嵐をぶつけ、
その渦はカンフーファイターの動きを完全に捕まえる。
懸命にランファは操縦桿を動かすが、うんともすんともしない。
「うおおおおおおおおおおおおっ!!」
渦の中を迫り来るガオガイガーに、ランファは死の恐怖を覚え、硬直した。
「――――――っ!!」
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「フライヤー、お行きなさい!」
ミントは3機のフライヤーを操作し、3次元で攻めにかかる。
しかし、サンダーブレイカーは名の由来の雷の如き早く、捕らえどころの無い動きで宇宙を滑り、走り、かわす。
「やりますわね・・・」
スリップしているようにふらふらした動きだが、それが災いして予測できない。
まるで酔拳ですわね、とミントは思う。
こういうときには落ち着きが必要ですわね、とも。
その一瞬のスキに敵機はこちらを上回るスピードで背後に回りこみ、突撃。
すれ違いざま、機体横部に内蔵された(勝手に内蔵した)数枚の電磁ブレードで切り刻む。
「あうっ!・・・・・・なかなか。」
トリックマスターには深い傷が入り、ミサイル発射口の片方と姿勢制御スラスターが死んでいた。
「どうだ、僕の力は!」
「あら、どうしましょう・・・・・・そうですわ!」
「人の話を聞け!!」
リゼルヴァの勝ち誇った声を無視し、ミントは一人頷くと、紀柳に通信をつなぐ。
「紀柳さん、フライヤー6機、貸していただけます?」
「諾。」
・
・
・
程なく、6機のフライヤーが飛んでくる。
ミントはいつもより精神集中し、心を研ぎ澄ます。
3機でフライヤーダンスと言う技をするだけでもかなりの疲労がたまるのだが、9機を制御下に入れるとどうなるかは容易に想像がつくだろう。
いつもより多くの負担が頭を突き刺すが、今はそれを意図的に無視する。
「覚悟なさい・・・!」
9機のフライヤーのうち4機がまず飛び出し、サンダーブレイカーを包む、巨大な四面体フィールドの頂点となる。
そして、頂点は一斉に高出力の電磁波を撃ち出し、動きを止める。
「がああああああああっ!!」
「まだまだですわ!!」
フィールドの体積は小さくなり、同時に残ったフライヤーもあわせて、捕獲した獲物を中心に回りだす。
そして、フィールドが9つの頂点で形成される形に変わる。
頂点は縦横無尽に飛びながらそれでもフィールドを崩すことなく、内側に向かってビームと電磁波を撃ちまくる。
「フライヤー・・・ハリケーンですわ!!」
「ぎゃあああああああああっ!!」
嵐の直撃は、緑のギアを完全に破壊した。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「トマホォォォォォォォォクッ!ブウゥゥゥゥゥゥゥゥメランッ!!」
赤い死神が、腕をブンと振って手に持った斧を投げる。
「当たるわけには・・・行かないねえっ!!」
重い機体を振り回し、フォルテはすんでのところでかわす。
「行くよ、ヴァニラ!」
「・・・はい。」
合図一声、ハッピートリガーとハーベスターの大型ミサイル網がゲッター1を捕まえる。
着弾、爆発、振動、そして衝撃。
「・・・!」
「まだです、フォルテさん。来ます!」
「ああ、そうらしいね・・・ッ!!」
百万パワーは伊達ではなく、ゲッター1のダメージは殆ど無い。
ミサイルに対してかわすどころか、凄いスピードでハッピートリガーに突撃、肉薄。
「ゲッタァァァァァァァァッ!!トマホォォォォォォォォォクッ!!」
戻った斧を受け取って、ハッピートリガーに斬りかかる。
重い衝撃とともに、レールガンの一本が本体から分かたれた。
「ちっ・・・!」
「修理します。」
ヴァニラが近づくが、ゲッター1は返す斧でハーベスターを振り払う。
「うっ・・・!」
シールドを突き破って、ハーベスターの機体に傷が入る。
幸い直進運動が速いだけで、その隙にハッピートリガーは離れる事が出来た。
「至近距離で全弾ぶちこみゃ、倒せるんだろうけどね・・・。」
「フォルテさん、私が囮になります。
その隙に・・・。」
「囮って、ヴァニラの機体じゃ、当たったら一発で沈むじゃないのさ。」
「大丈夫です。方法は考えています。
ただ、やった後は修理ができなくなりますが・・・。」
「・・・解った、任せるよ。」
・
・
・
と、ハーベスターはミサイルを撃ちながらちょこまかと動き回り、攻撃を誘う。
「鬼さんこちら・・・です。」
ゲッター1は斧を振り回すが、なかなか当たらない。
「・・・・・・!!」
「ヴァニラ!!」
・
・
・
だが、とうとう重い斬撃がハーベスターを一閃して――――――
「・・・?」
「あれ・・・?」
予想していた爆発は起きず、ただいなくなるだけ。
と、フォルテは気づく。レーダーに、ハーベスターが一機どころか、無数に浮かび上がっていた。
それはゲッター1も同じで、目の前に広がるハーベスターの山に驚愕し、動きを止めていた。
「・・・ナノマシンを使って、レーダーをごまかせる分身を作りました。
まだまだ改良が必要ですが、短時間なら有効のはずです。」
・
・
・
だが、この技の弱点は分身が動けない事。
ゲッターの動きが復活すると、片っ端から斬りかかる。面倒くさくなったのか、とうとう必殺技を繰り出す。
「ゲッタァァァァァァァァァッ!!ビィィィィィィィィィィィィィムッ!!」
腹に開いた穴から出てくるエネルギービームが、まとめてハーベスターの山を吹き飛ばす。
そして、ハーベスターは一機残らず消え去った。
「・・・・・・。」
ハーベスターがいなくなると同時、ハッピートリガーは動き出す。
出力を最大にして、敵の懐へと――――――
「ゲッタァァァァァッ!!トマホォォォォォォォォクッ!!」
それに対して、ゲッターは斧でそのまま斬りかかる。
ハッピートリガーのスピードでは、どうしても間に合わなかった。
・
・
・
ドゴォンッ!!
突如ゲッター1の腹部に起こった爆発が、動きを止めることに成功する。
ビーム発射後、どこからか本物のハーベスターが、ビーム発射口に攻撃を打ち込んだのだ。
「・・・今です。」
「解ってるよ!!」
フォルテは初めから解っていた為、そのまま飛び込んでいたのだ。
至近距離に近づく事に成功し、ハッピートリガーの全砲門が吼える。
「ストライクバーストッ!!」
・
・
・
・
・
・
ドゴォォォォォォォォォン!!
「・・・終わりました。」
「どんなもんだい!!」
・
・
・
・
・
・
・
・
・
一瞬意識が飛んだミルフィーユは、回復するとすぐに自機を確認する。
「ビームファランクスとシールドは死んでる・・・。
ミサイルとビーム砲は・・・大丈夫。」
目の前の敵は、人型になって遠い距離。とても手強いし、速い。
だけど、と一人呟く。
「私は、エルシオールを・・・。
大好きな人を、守るんだからっ!!」
彼女の心からの叫びに呼応するように、機体背部から再び光り輝く翼が浮かび上がる。
「な・・・何だと!?」
「行きますッ!!」
ミルフィーユが操縦桿を握り締めると、ラッキースターが前方に急加速。
羽を後ろに撒き散らしながら、前の敵へ。
前から拾うは敵へ突撃する恐れない意思。後ろに捨てるは自らの心に沸きあがる怯えの心。
「か、かわせない!速すぎる・・・!!」
「はあああああああああああああっ!!」
ドスッ!!
ラッキースターの大型ビーム砲が、ベクトルを味方につけてクラウドセイバーの胸部に打ち込まれる。
「う・・・!!」
「これでっ・・・!!」
・
・
・
ズガアァァァァァァァッ!!
巨大なビームは、クラウドセイバーを零距離から圧倒的出力で宇宙に帰した。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「蘭花!!」
ランファが次に受けた衝撃は、拳に貫かれる自機の悲鳴ではなく、夜天光が自分を突き飛ばす音。
「紀柳!?」
「我を・・・信じよ!!」
有無を言わせぬその声の響きに、ランファは首をコクリと振る。
「おおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
そして、緑の輝きの拳が、夜天光を貫く。
メリメリと金属が軋む音とともに、夜天光の各所から火花が飛び出す。
「ふんっ!!」
拳を引き抜くとともに、夜天光は弾かれたように爆発。だが、ランファは動揺を押さえ込む。
紀柳は、自分に信じるように言ったから・・・!!
・
・
・
・
・
・
「うおおおおおおおおおっ!!」
気合。絶叫。咆哮。激情。全てを心に込める如く、操縦桿をへし折らん力で前に押す。
心の力はエンジンに伝わり、エンジンの動力は爪に伝わる。
「てえいっ!」
激しく伸ばしたクローの一本が、掲げた腕の左に突き刺さる。
「はっ!!」
刺さった方の操縦桿を引き、
「とおっ!!」
反対の爪を伸ばし、片腕をへし折る。
「がああああああああっ!!」
「まだまだあっ!!」
右、左、右、左の連撃で、二つの脚が獅子の全身を砕く。
・
・
・
砕き続ける。
・
・
・
喰い散らかす。
・
・
・
蹂躙する。
・
・
・
陵辱する。
・
・
・
暴食する。
・
・
・
成すがままに。
・
・
・
成されるが故に。
・
・
・
「うぎゃあああああああああああっ!!」
「・・・じゃあね。」
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「ちっ、ヘルハウンズめ・・・役に立たん。」
ブリッジで、ヘルハウンズと残りの艦が全滅する様子を見ていたシェリーが毒づく。
「まあ、いい。これを使うまでだ・・・。」
と、シェリーはブリッジの機器のうち、一つのレバーに手を伸ばし、引っ掛けた。
「時間稼ぎだ・・・。
これでも・・・食らえ!」
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「いたっ・・・!」
「つ・・・何だこれは・・・。」
ユリカとレスターが、ふいに頭に起こる鈍痛に顔をしかめる。
「何だ・・・?」
「どうやら、敵艦から何らかの波動が感知されています。」
ココやアルモも、頭を押さえている。
「それが、この痛みの原因かい?」
「そのようですわね・・・。」
エンジェル隊の面々も、同様の現象に陥ったらしい。
「あっ!それより紀柳よ!紀柳!!」
「声が・・・大きいぞ・・・。」
ランファが叫びを上げると、雑音混じりのかすれた声が聞こえる。
「き・・・りゅう・・・。」
「さすがに無事とはいかんがな。
早く救助してくれると助かる。」
「解ったわ。」
と、誰もが鈍痛の事を忘れようとしていたその時――――――
・
・
・
・
・
・
・
・
・
ドサッ。
・
・
・
「タクト!?」
ブリッジに響く、レスターの叫び。
その視線の先には、タクトマイヤーズが、まるでマネキン人形のように、固まって倒れていた。
誰もが知らぬ、一瞬の出来事に。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
コメント
なんか・・・ありがちな展開になりそう・・・。
FCソフトが復活は嬉しい限り。
管理人の感想
ヴェルダンディーさんからの投稿です。
・・・歴戦のスーパーロボット達が、こうも呆気なくやられるとは(涙)
やはり、パイロットが違うと全力を発揮できないのでしょうね。
それにしても、いっそ見事なまでに出番も見せ場も無いなアキト(タクト)