第一話
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2194年。それは、突然のことだった。
火星の遥か向こうから、巨大な隕石群が襲来。火星の守備隊が迎撃に向かう。
だが、それは隕石ではなかった。
未知なるテクノロジーを持った、未知なる軍団。軍は、それを木星蜥蜴と呼び、後々1年以上敵対していくことになる。
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それとの初めての会戦は、火星付近。第一次火星大戦と呼ばれる、戦い。
当時の軍の戦力では、謎の歪曲場を装備したバッタと呼称する機動兵器、幾らでも戦力を発生させるチューリップと呼ばれた兵器、
その他様々な戦力に太刀打ちできず、大敗北を喫する。
その中、とある戦艦のフクベという艦長が自分の艦をチューリップにぶつけ、沈めたという戦果を挙げる。
それによって、フクベは英雄の扱いを受けた。――――――地球では。
実際は、チューリップは沈んだのではなく火星に落ち、ユートピアコロニーを崩壊させた。
そして、火星の民は多くが死んでいった。
生き残った人々も、多くが地上に降りた無人兵器によって命を散らし、シェルターにて数少ない人々が生き延びたのみ。
今からの光景も、そういったシェルターの一つの出来事である――――――。
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「・・・・・・・・・。」
火星出身のその青年、テンカワアキトは、絶望と呆けが入り混じった表情で、シェルターの床にたたずんで座っていた。
普段は立ち気味の黒く短い髪も、今はしおれている様に見える。
(いきなり、戦争だとは・・・。
あの人は、生きているだろうか?いや、あの爆発なら、もしかして・・・。)
遠くには、無線機に向かって叫んでいる軍人が見えた。
が、繋がらないことにいらだったのか、無線機を叩きつける。
段々とシェルターを揺らす振動は、避難してきた人々に、もうここも持たないという事実を刻々と突きつけているようにも感じられた。
(・・・俺たちも、もう終わりか・・・?)
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くいっくいっ。
と、アキトが考えにふけっていた時、7、8歳ぐらいの幼い金髪の少女が、アキトの服の袖を引っ張る。
「・・・・・・ん?」
「お兄ちゃん、何してるの?」
「・・・・・・ああ。少し、考え事をしていたんだ・・・。」
さすがに子供の前で暗い顔を見せるわけにもいかず、優しく微笑む。
「ふーん・・・。
あっ、私、アイっていうの!」
「アイ・・・か。」
「お兄ちゃんは?」
子供の純真な瞳に少し気圧され、さっきまで考えていた暗い考えを忘れていたことにも気づかなかった。
「アキト。
・・・テンカワ、アキト。」
「ねえ、アキトお兄ちゃん!これあげる!」
と、アイが後ろに置いていた鞄から取り出したのは、一つのみかん。
「・・・いいのか?」
「うん!」
「・・・そうか。ありがたく貰おう・・・。
・・・だが、貰いっぱなしでは、悪いな。・・・これを、やろう。
・・・親は、お守りと言っていた。」
アキトが首から外して取り出したのは、蒼い小さな石をつけたネックレス。
それを、静かにアイの首にかけてやる。
「わぁ〜、きれい・・・。
ありがとう、お兄ちゃん!」
「・・・気にするな。こんなもんなら幾らでも持ってる。」
と、ポケットから同じ石をいくつも出す。
アイは石を物珍しそうにしばらく見つめていたが、突然こう言った。
「ねえ、お兄ちゃん!アイとデートしよ!」
アキトはいきなりの少女の言葉に目を丸くしたが、少し微笑みながら返す。
「・・・ああ。ここを、出られたらな・・・。」
(・・・出ることは、出来るのか・・・?)
暗い考えはやはり忘れることは出来なかったが。
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ドゴォォォォォォォォン!!
「・・・!!」
突如向こうのほうで、激しい轟音。
ドタァァァァァァァァァン!
「ぎゃああああああああああっ!!」
そしてそれに続く、シェルターの扉の倒れる音と、多くの断末魔の叫び。
「――――――何だっ!?」
アキトは驚きつつ、音の発生源の方向を見る。
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そこにいたのは、一匹の機械の虫。黄色と灰色の。
それも、人間の高さをはるかに超える、大きな虫。
「ぎゃああああっ!」
「に、逃げろっ!」
「押すなっ!いてえっ!」
数々の喧騒と怒号が響き渡り、慌てて奥に押し合いへし合い逃げる中、虫の先の小さな頭がくるりと群衆のほうを向く。
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ズダダダダダ・・・・。
「ぎゃっ!」
「ひいっ!!」
「うわあっ!!」
虫から放たれた何発もの銃弾が、悲鳴の葬送曲を奏でていく。
シェルターは、今や地獄と化していた。
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「――――――・・・??」
アキトは恐る恐る体を見たが、奇跡的に傷一つはなかった。
アキトを貫くものは、巨大な虫の視線一つだけ。それに、アキトも気づいていた。
が、それよりも。
「・・・・・・アイ!?」
思い出して振り向くと、金髪の少女は後ろを向いてしゃがみこんでいた。
その先には、さっきまで一緒にいた、彼女の母親。血だまりの中、その身を静かにさらしていた。
「・・・・・!」
それを見たアキトの中に、ふと熱い感情がほとばしる。
怒りという名の感情をすんでの所で押さえ、彼はしゃがみ込んで放心しているアイを抱え、走り出す。
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――――――と、思いきや。
アキトの瞳は、少女の胸の石が、いきなり眩しい光をたたえ出したのを認めた。
「・・・何だ?」
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――――――次の瞬間、テンカワアキトと少女はその空間から完全に消失していた。
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「――――――これがあれば、私達は、どこでも望む場所へ行ける。
そう、望むなら――――――」
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「――――――・・・どういう意味だ・・・いや、意味ですか? さん――――――」
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「――――――あなたにも、いつか分かるわ。
この星で、生まれているから――――――」
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>アキト
「テンカワ、次はこれ頼むぞ!」
「・・・了解。」
光に包まれて、気がついた先は何故か地球。サイゾウという師匠の男の経営する小さな食堂にバイトとして雇ってもらっている。
もう三ヶ月が経った。コック志望で火星でも修行を積んでいたことが幸い(?)し、今では雑用のほかに軽い一品ぐらいなら任されるようになった。
・・・まだまだサイゾウ師匠は「甘い!甘いぞテンカワ!」と、認めてはくれないが。
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そして、分かったことが2つ。
火星は落とされたらしく、地球上では時々木星蜥蜴が空を飛ぶのが見ることが出来ること。
そして、どうやら何らかの手段(もしくは超常現象)で、俺は火星から一瞬にして地球に渡ってきたらしい事。
俺にはそんなことが出来るとはとても思えない。
出来るとしたら、あの人か――――――
「おい、テンカワ!ぼけっとするな!」
「・・・了解。」
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・・・と、そんなある日。
「おい!店長!」
いかにも柄の悪そうな男二人の内ごついちびっこい奴が、ラーメンを食べている途中、突然店中に響くような大声を上げた。
顔に傷などあるところから、ヤのつく人だろうか?
「この店は、こんなのを客に出すのかァ?え!?」
もう一人のひょろ長とでも言う体躯の男が、ラーメンどんぶりの中から頭文字Gの黒い虫(?)を取り出す。
思わぬ荒事に、サイゾウ師匠は顔をしかめ、他の客は怯えている。
「・・・・・・。」
俺は可能なら今すぐこいつらを殴り飛ばしてさっさと店からご退場願いたい所だが、それでは店に迷惑がかかるのでしない。
こんなありきたりの奴等に・・・!
「どうなんだよ!」
「責任者呼んでこい!」
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バリィン!ガシャン!
「い、いてえっ!」
「誰だ、皿投げてきやがったのは!!」
ドゴォッ!バキッ!
「ぐおっ・・・!」
「がはっ!・・・バタ。」
俺の決心はほんのコンマ1秒未満で吹っ飛び、食べ終わったテーブルから回収中の皿二つをすばやく頭に投げつけ、
怯んだ隙にみぞおちに一撃ずつをやって、縄で縛って近くのゴミ捨て場に棄ててきた。
ああ、もうこの店では働けんな・・・。これから、またバイト先を探すか・・・。
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と思ったら、意外なところに救いの手が。
店も終わり、責任をとるために店を出ようとした夜遅く、チョビ髭のおっさんとごっついおっさんが店を尋ねてきた。
初めはさっきの報復かとも思ったが、どことなくギリギリでヤクザに見えないのと、
「私、こう言うものです。」と出した名刺がネルガルという会社の名を書いてあったことで、とりあえずは杞憂に終わったと思った。
・・・俺に用がある、と言うまでは。
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「テンカワ・アキトさん。
ユートピア・コロニー出身の18歳で、ご両親はネルガルの火星研究所にお勤めになられていた・・・間違いありませんね?」
「・・・ああ。」
よく調べてある。さすがは大企業・・・といったところか。
まあ、かくいう俺も、親が何を研究していたのかは知らない。
研究が完成すれば、人類は今よりずっと遠くへ、どこへでも、すぐに行けるとか言っていたような気もするが。
「あ、申し遅れました。
私、プロスペクターと言いまして。ネルガルでスカウトみたいなことをしております。給料が少ないのがちょっとした不満でしてね。ははは・・・。
おっと、こちらが同僚のゴート君。」
苦笑をするチョビ髭ことプロスペクターと、表情むっつりのごっついゴートという男。
「・・・で、天下の大企業のスカウトが、俺に何か?」
「いやいや、これは失礼。
実は、私達はあなたをスカウトしに来たんですよ。」
「・・・・・・??」
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プロスは、コックとして俺に、最近行うプロジェクトに参加してほしいという。
契約書を見れば、確かに待遇もよい。それに、師匠のお墨付きも出た。
しかし、コックが大企業のプロジェクトで、何の役に立つんだろうか?
・・・それはどうでもいいかも知れない。給料もいいし。
が、それとは別に、俺にはひとつ聞いておかねばならないことがあった。
重大な問題だ。
「・・・なんでしょうか?」
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「・・・女の人は、いるのか?」
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・・・プロスは、何も答えなかった、と言っておく。
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・・・その後、俺はこの選択をしたことを激しく後悔する事となる。
コメント
・・・真面目な話、ひどく悩みました。
「The answer」といい、今まで書いてきた作品といい、私が書いてきた作品はことごとくネタに走った作品なのは明白な事実です。
・・・リアルの性格からしてネタに走った性格であるという理由なのが事実の一端ですが。
というわけで、普段はおきらく極楽100%の作者が無い頭なりに考えました。
・・・「The answer」を続けるべきか?このままネタに突っ走っていいのか?
三日三晩、授業中も考えました(マテ
・・・で、結論でました。
「The answer」はそのままネタで行きます。行っちゃいます。逝くとこまで。
「これ」は、真面目に行きます。多分ネタなしです。無意識に入ってる可能性は否めませんが。
コンセプトは「ちょっとだけ原作より強く、ちょっとだけ変なアキト」です。
それでは拙作ですがよろしく。
代理人の感想
・・・・・・ん〜。
新連載第一話としてはつかみがちょっと弱いかなと思います。
まぁ、強いのも変なのも「ちょっと」と言うことならあまり強調も出来ないのは判りますけど、
それならそれで例えば
「昼のヤクザ達のお礼参りに来た集団に囲まれ、ヤケで特攻するが結局袋叩き。プロスとゴートに救われる」
のようなやや特異なイベントを用意するのも良かったかと。