「呼んでいる……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦長!! 前方のチューリップより新たな重力波を感知しました!!

 ・・・無人兵器、来ます!!」

 

「リョーコさんより通信が入りました!!

 ・・・被弾した為、一時ナデシコに戻るそうです!!」

 

「了解しました。

 ルリちゃん、リョーコちゃんの援護をお願いね!!」

 

「はい、オモイカネ、ミサイル発射。」

 

『OK、ルリ』

 

 

 

  

 

「ここは完全に敵の包囲網が完成する前に、一点集中攻撃で脱出をします!!」

 

 

 

「え〜〜〜〜〜!! 嘘〜〜〜〜〜〜〜!!」 

「・・・・そんな!!」

「な、何てしぶとい奴!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたしを、呼んでいる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤマダさんから通信が入りました!!

 弾丸の補給の為にナデシコに帰艦するそうです。」

 

『今はそれどころじゃね〜!!

 ヤマダの奴が修理したばかりの、リョーコちゃんのエステバリスに乗って出撃しやがった!!』

 

「俺は!!

 ・・・アキトと約束をしたんだ、絶対にナデシコを守ってみせるってな!!

 だから約束は守ってみせる!!

 艦長!! 俺の身勝手を無駄にするなよな!!」

 

「ヤ、ヤマダ機が前方の半壊したチューリップに突撃します!!」

 

 

 

「最善は尽くします!!

 バックアップも、ナデシコのルートも!!

 ・・・いずれは誰かに頼む事でした。

 それをヤマダさんが引き受けてくれたんです!!

 私達はその気持ちを無駄にする訳にはいきません!!」

 

「えっと・・・ヤマダさんから入電です。

 

 『俺の名前はダイゴウジ ガイ、だ!!』

 

 ・・・だ、そうです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「呼んでいる………戦いがわたしを呼んでいる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『消えやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!』

 

「チューリップの破壊を確認!!

 ・・・ヤマダ機、辛うじてその場に待機しています!!」

 

 

 

「ルリちゃん!! 後、どれくらいでヤマダさんの回収が出来る?」

 

「・・・後、30秒はかかります。」

 

「ミナトさん!!」

 

「これで最大戦速だよ艦長!!」

 

「メグちゃん、エステバリス隊はどう?」

 

「駄目です!! 皆さん無人兵器の数が多過ぎてヤマダ機に近づけません!!」

 

 

 

「駄目です!! ヤマダ機のジェレネーターが過負荷で停止します!!」

 

 ルリちゃんが珍しく悲鳴を上げる!!

 しかし、私達もそれは同じ気持ちだった!!

 

 

「ヤマダさん!!」

 

 

 全員の見詰める中。

 動きを完全に止め真下の海に降下する赤いエステバリスに、敵の攻撃が・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「銀河、十文字斬り―――――!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦艦ナデシコ 時の流れに  序章 第十三話 異伝

戦士、襲来

接触編

 

 

 

…………………はっ!?

私としたことが一瞬意識が飛んでしまいました

何ですか今のは!?

今の叫び声と同時にヤマダさんの周りの無人兵器が一斉に爆発してヤマダさんのエステは海に沈んでいきましたがそんな事はどうでも良いです!

ここはアキトさんが颯爽と現れてナデシコのピンチを格好良く救ってくれる所じゃなかったんですか!?

アキトさんの大活躍を記録するべく、監視衛星を乗っ取ってピット内映像も外部映像も準備万端待ち構えていたのに!!

最近ライブラリの空き容量の残りが気になってきて、このままじゃ少し艦内事務の処理速度を落とさなくちゃならないかななんて―――

そんな事はどうでも良いんです!!

アキトさんはどうしたんですか!?

今の叫び声は誰ですか!?

こんな時にどうしてフルオーケストラなんかかかってるんですか!?…………え?

『なんだい?この音楽は?』

『おい!こんな時に何のんきにBGMなんかかけてんだよ!?』

アカツキさんやウリバタケさんが戸惑った様子で通信を入れてきます。どうも全回線でかかっているようですね。

「オモイカネ?」

『僕じゃないよ?どっかから通信に割り込んできて……あれ?どこからだ?』

「わからないんですか?」

『う、うん……あれ?変だな?一体どこから?」

オモイカネにも解りませんか?…………それはそれとしてさっきから無人兵器の動きが変ですね?なんだかナデシコじゃなくて別のものを警戒しているような?

その時、珍しく慌てた様子でヒカルさんが通信を入れてきました。

『ち、ちょっと!!ブリッジの上に人が立ってるよ!?』

その言葉に呆れた様子でエリナさんが答えました。

「何言ってるのよ?戦闘中に甲板に出るような馬鹿がいるわけないでしょ?」

『ほんとだってば!』

その様子に嘘を言っている感じが無いのを見てとったのか、ユリカさんが指示を出しました。

「ルリちゃん、上甲板の映像出して。」

「はい。」

映像を出してみると、たしかに、いました。

目を閉じたまま腕を組んで立ってらっしゃいます

二メートルを越す長身の男の方で、黒髪に黒いジャケットに黒ズボン、それに、背中に大太刀を背負っています。

「さっきの、この人がやったってことは……、無いですよね?」

「嫌ねえ、何言ってるのメグちゃん。」

 

 

 

 

「また、戦わなくてはならんか………」

男は、そう呟くとゆっくりと背の愛刀、銀河流星剣を抜き放った。

「むん!!」

力強い気合いと共に甲板から飛び上がり、ナデシコのディストーションフィールドを生身で紙のように突き破ると、目の前に迫る無人兵器を一刀両断にし、その片割れを踏み台に次の標的に向かう。

足場など全く無い海の上だと言うのに、男の動きはそんな事は問題にもならないと言わんばかりに淀みなく、バッタ、戦艦を問わずになす術なく破壊されていく無人兵器群。

「わたしの名はクレスト・セイバーハ―ゲン」

無人兵器の爆発の渦の中で男は呟いた。

                  スターブラスト
「だが人はわたしを”星壊し”セイバーと呼ぶ」

目の前に迫るチューリップを次の標的に定め、手にした愛刀でフィールドを切り裂くセイバー。

「銀河、十文字斬り―――――――!!」

 

 

 

 

ブリッジクルー全員が四つになって崩れ落ちていくチューリップを呆然と眺めていました。

「…………なに?あの人……………………」

ミナトさんの言葉がその場の全員の心境を代弁しています。

「クレスト・セイバーハ―ゲン。辺境ズバルト星系の出身」

イネスさん?毎度思う事ですがこの人は何時の間にブリッジに入ってくるんでしょう?

「彼にまつわる伝説は数多い。銀河帝国正規軍の一個艦隊を一人で全滅させ、一個大隊の機動兵器と生身で戦える男。

セイバーのために全滅した師団や倒産した会社は数知れず、彼が通った後は草一本残らないと言う星々を放浪する謎の宇宙戦士、銀河最強の男

                                 スターブラスト 
―――いつからか人々は彼の事を”星壊し”セイバーと呼ぶようになった」

さっきまでとは別の種類の沈黙がブリッジを満たしました。皆を代表してユリカさんが恐る恐る尋ねます。

「あの、イネスさん?ズバルト星系とか銀河帝国とか一体何のお話です?」

「…………え?あ、あら?ここ……ブリッジ?どうしてこんな所に……?」

「ドクター?なにをとぼけてるのよ?」

なんだかうろたえているイネスさんに呆れたような調子で話し掛けるエリナさん。

「とぼけてなんていないわよ。ついさっきまでいつもどおり医療室で待機してたら急に気が遠くなって……」

……どうも嘘ではないようですね。どういう事でしょう。…………まさかとは思いますが…………。

イネスさん。………説明の神でも降りてきましたか?

 

 

 

 

 

 

 

 

「空しい――戦いはいつも空しい」

数え切れぬ敵を共に葬ってきた愛刀を鞘に収め、周囲に動くものと言えば海原のみとなったナデシコの甲板に一人たたずむ男を、夕日が照らしていた。

「日は昇れば必ず沈むように、戦いの後にわたしの胸をよぎるこの空しさが消えることは無い」

寂しい口笛のバラードがあたりに響く。

「だが、わたしは戦う。戦い続けねばならない。なぜなら……」

組んでいた腕をほどくと、夕日に背をむける戦士。

「なぜなら、それが戦士と言うものの宿命なのだ」

戦士は、一人、戦場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………ねえ」

「………………………なんです?」

「………………………まだお昼前じゃなかった?」

 

 

 

 

その後すぐにアキトさん達と合流して、ヤマダさんの事を思い出したのは日もすっかり落ちた午後の六時でした。

流石に絶望かと思われたのですが、かなり危険な状態ながら見事に生き延びておられました。

ヤマダさん、あなた本当に前回亡くなられたんですか?

 

 

                                                                                 


 

後書き

少し前、掲示板上でアキトや北斗より強いだろう人物という話題がありました。

私もずっと前からそれは考えていましたが、真っ先に頭に浮かんだのが正義の味方を自称する非常識なこのお方でした。

またこんなに誇張しちゃってと思われるかもしれませんが、これでも凄く控えめです。

地球上から火星軌道の戦艦への狙撃を肉眼で軽くこなし、マイクロのつかないブラックホールを片手間に消し飛ばす、東方の師匠や衝撃のおぢさまも裸足で逃げ出す銀河最強の無敵超人ですから、彼。(嫁さんはもっと強いようですが)

ですから日本近海で夕日に背を向けて陸地に辿り着けるのかとかそういう突っ込みは不可です。

「それがどうしたと言うんですか!!よくもアキトさんの出番を削ってくれましたね!!」

……言っちゃあなんだが、君のせいだよ。

「わたしの?」

君が監視衛星先に乗っ取ったせいでラピスもとっさにジャンプのサポ−トができなかったの。

「あ……あう……」

 

 

 

代理人の感想

ぶははははははははははは(爆笑)!

う〜む、セリフでもしやとは思っていましたがやはりコイツでしたか(笑)。

好きやねぇ、アンタも(爆)。

 

ちなみに出演作品は「ARIEL」(笹本裕一 朝日ソノラマ文庫)です。