※これは時ナデ第二章第九話直後の話です。

 

 

 

まあまあ…。

お二人とも少しは落ち着いてください。

そんなに慌てられなくてもちゃんと事情は説明しますよ。

ナオさん、すみませんが少し席をはずしてくださいませんか?

お仕事なのは承知していますが余計な茶々を入れられるとうっとうしいので。

静かにしていられるなら構いませんけど、無理でしょう?


あんなに落ち込まなくてもいいと思うんですが、まあいいでしょう。

え?その時々言動に容赦が無くなる癖は直したほうが良い?

まあ、そうかも知れませんね。気をつけましょう。

さて…、どこからお話しましょうかね………。

 

 

ある少女のむかしばなし

 

 

今よりちょっとばかり昔の事です。ある所に子供の居ない夫婦が居ました。

一般家庭ならそれでも構わなかったでしょうけど、その夫婦は立場上どうしても跡取が必要でした。

後には男の子の五ツ子なんて作ってしまうんですけど、その頃にはそんな事解りませんし、

人工授精に頼る事まで考えたんですね。

それはそれで一つの手段だとは思いますが、こともあろうにその受精卵の保管されていた病院が

爆弾テロに会いまして、受精卵もそのどさくさで行方知れずになってしまったんです。

その夫婦にとっては悲しい事ではありますがそこまでの話だったんですが、その受精卵の方はそうもいかなくて、

めぐりめぐってある遺伝子研究所の手に渡り、かくして受精卵の段階から遺伝子を操作された

瑠璃色の髪と金色の瞳を持った少女が誕生する事になったわけです。

 

その生まれのせいか、その少女は幼い頃から知能指数だけはやたら高かったんですが、

まわりはみんな彼女の事を実験体としか見ない大人達です。

少女の方でも、自分にはわけなく出来る事すら出来ない周りの人達をまともに相手する気にもなれず、

かといって特にやりたい事や興味が有る事が有る訳でもない。

結局周囲に言われるまま流されるままに生きて、十一歳になる頃には「ばかばっか」が口癖の

物事に無感動な少女が出来上がっていました。

いっつも斜に構えて、周りの全てをくだらないと馬鹿にして。何でも知ってるつもりで本当は何にも知らないお人形。

少女にとって、毎日の生活はただ言われるままにコンピュ−タ−を操ってみせるだけの

単調な、つまらない、ただ時間を使いつぶすだけの物でした。

その日、ある船のオペレ−タ−としてスカウトを受けた時も、それは変わらないと思っていました。

何も変わらない、はずでした…。

 

その船は、本当に、変なところでした。

「人格に問題は有っても腕は一流」を基準に集められたクル−達。

少女に言わせれば、ほんとに「ばかばっか」なクル−達。

装甲板一枚隔てた向こう側では人類の居住圏全てを巻き込んだ大戦争やってるときに、

そんなことそっちのけで毎日のように戦争と全然関係ない馬鹿騒ぎを起こして。

少女もそれに否も応も無しに巻き込まれて。

ほんとに「ばかばっか」と言わない日が無いような毎日で。けど何だかおかしな気分で。

「ばか」だけど、自分の事を実験体でなく、人間として見てくれる人たちに囲まれて、

「ばか」なのもそんなに悪くないかもしれないと思えてきて。

少女も一緒になって「ばか」な事をやるようにまでなってしまって。

戦争の中で実の両親とも再会できたけど、やっぱり自分の居場所はその船だと思えるほどに、

いつの間にかその船とクル−は少女の大切な家と家族になっていました。

 

その中でも特に、ほとんどの騒ぎの中心にいた臨時雇いのコック兼パイロットさん。

少女に笑顔と温かい食事の素晴らしさを教えてくれた人。

ただコックになりたくて、でも戦争がそれを許してくれなかった人。

誰よりも地球と木星の和平を望んでいた人。

その人と皆が全てを賭けて勝ち取ろうとした和平が成る寸前に、その人は行方不明になりました。

けど、少女を含め、その船のクル−は誰一人、その人が死んだなんて思っていません。

その人は帰ってくると約束したから。その人は必ず約束を守る人だから。

少女は決めました。

三年は待とう。

三年待って帰ってこなかったら、そのときは自分から探しにいこう。

もう、待つだけの少女じゃないから。

 

え?その人の名前ってもしかして?

残念ですが秘密です。ふふっ。

でも、船の名前くらいなら教えてあげても良いですよ。他言は無用ですが。

そう。「ばか」でないと到底やっていけない船。

実験体の人形を「ばか」な人間に生まれ変わらせてしまった船。

 

機動戦艦「ナデシコ」………。

 

 

後書きに替えて

「…なんか逆行前の心境と逆行後の心境がごっちゃになってません?」

「第三者に解りやすく説明しようと思ったらそれしかあるまい。」

「まあ否定はしませんが…。」

「しかしこの対話形式ってのは便利だな。突っ込まれる前に言い訳が出来る。」

「いろんな方を敵に回す発言ですよ、それ。」

「む、この話題はこの辺にしておくか。では、これにて。」

「またお会いする日まで、さようなら。」

 

 

代理人の感想

 

バレバレやん(苦笑)。

どう考えたって該当者は一人しかおらんと思うで。

・・・それはともかく幕府若年寄さんの時事ネタ投稿第二弾、「ある少女のむかしばなし」でした。

こう言うネタは鮮度が命ですからね〜。

皆様もお早目にお召し上がりください。

 

・・・それにしても、このSSを読んで

 

ルリちゃんピノキオ

 

と連想がつながるのは私だけでしょうか。

・・・・・・・いや、人形が人間になるだのなんだの言うから(^^;

そーすると女神様がミナトさんでジミニー・クリケットは・・・・やっぱりアキトか(^^;?

いや、ゼペット爺さんがウリバタケでコイツの作ったルリちゃんフィギュアが

人間になるために善行を積むと言うのもいいかな。←既に論点がずれてる

で、嘘をつくと当然ルリの鼻が伸びると(爆)。