「……あんた、知ってたわね?」

「阿耶芽達ガスグソコマデ来テタ事カイ?」

「……なんで黙ってたのよ?」

「聞カレナカッタカラナ。」

「…………うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ……」

がしゃこん!ぢゃぎん!!

「おい!やめろ!!何だその対戦車ライフル!!」

「放してえぇぇぇ!!今日という今日は絶対ぶち殺すううぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

 

 

「よろしいんですか?止めなくて。」

「くすくす……、大丈夫ですよ。」

『……いつもの事。』

 

 

 

機動戦艦ナデシコ

嵐を呼ぶ乙女達

 

第五話  黒い王子と妖精と

 

 

「ラピス、すまん!悪かった!決して忘れてたわけじゃないんだ!!」

「お、お願い。いいかげん機嫌直して?」

征木家の居間。だらだら冷や汗を流しながら、アキトと蘇羅はラピスに必死に謝っていた。

あれから蘇羅の予想通りに敵は阿耶芽に蹴散らされ、脱出艇ごと捕獲した沈めた敵艦から逃げ出した連中とまとめて『帝釈』で時間凍結にかけられている。

説明を求めるルリも連れてひとまず地球に戻ってきた一同を出迎えたのは居間のソファの上で膨れっ面でそっぽを向くラピスであった。

何の説明もなしにいきなり飛び出していって二日間音信不通では、ラピスでなくてもそれは怒ると言うもの。

食事その他の面倒はジョージが見てくれていたが、これでは保護者失格の烙印を押されても文句は言えないであろう。

帰って来てからずっと不貞腐れて口もきいてくれないラピスの機嫌を必死に取ろうとするその姿からは、かつて闇の王子様と呼ばれたテロリストの面影など微塵も感じる事が出来ず、ルリはここまで彼の心を解きほぐした人々に対して複雑な思いを禁じえなかった。

「…………チャーハン。」

「え?」

窓の方を向いたままぼそっと呟いたラピスの言葉を聞き逃したか、問いかえすアキト。

「チャーハン!!」

「わ、解った!すぐ作る!!」

ラピスの怒鳴り声を浴びせられ、慌てて台所に向かおうとするアキトの姿が昔にだぶり、ルリはつい口走ってしまった。

「あ、私はチキンライスお願いします。」

 

「…ルリちゃん……。」

「あ、いえ、そんな、別に無理には……。」

情け無さそうなアキトの視線を受け、ルリは慌てて弁解しようとしたが、それに割り込むようにさっきから穏やかに微笑みながら茶を啜っていた阿耶芽が蘇羅に目を向けて言った。

「いいですね。そろそろ晩御飯の時間ですし。私にはピラフをお願いします。」

「……オムライス。」

隣に座る美夜呼もそれに同調し、二人そろっての視線を受けて湿布や包帯だらけの蘇羅はたじろいだ。

「な、何よ、その視線は……。」

「……誰のおかげで今こうしてられるの?」

「久しぶりに蘇羅姉様の御飯が食べたいですし。」

遠回しに謝礼を要求され、蘇羅は肩を落とした。

「わかったわよ……。アキトさん、ご飯足ります?」

「……炊かなきゃだめだろうな。」

「ラピスが一番。」

「はいはい。」

苦笑して台所に向かう二人の背中に阿耶芽が声をかける。

「あ、うちの昨夜のご飯の余りが有りますから。使ってくださいな。」

「怪我人相手に……。せめて取って来ようという気は無いの?」

 

 

(違う……。)

久しぶりの、本当に久しぶりのアキトのチキンライス。

懐かしい思いに包まれて食べた最初の一口で感じたものは、まず違和感だった。

(何時の間にか美化していたの?ううん、そんなはず無い……。)

不味いわけではない。十分に及第点だ。店で出されても納得する味だろう。

だが、違うのだ。何処がどうとは言えない。ただ、あの頃のアキトのチキンライスとは明らかに何かが違っている。

そっとラピスの様子を見てみる。どうにか機嫌の直った彼女は美味しそうにチャーハンを口に運んでいた。当然だろう。彼女はアキトの以前の味を知らないのだから。

その様子をほっとしたように眺めながら笑っているアキトの様子に、ルリは正体のわからない漠然とした不安を覚えた。

 

 

「………もう、帰るつもりは無い。」

夕食をすませた後、二人で話したいというルリの頼みに蘇羅達がごねるラピスを連れて出て行った後。

これからどうするのかというルリの問いにアキトが答えた第一声がそれだった。

「……何故です?」

ある意味、予想通りの答えだった。帰る気が有るならとっくの昔に帰って来ていていい筈なのだから。

「あの頃とは状況も違います。今なら裁判にも十分に勝ち目があります。」

それは本当の事だった。アキトが消息を絶った後、コロニー爆破は火星の後継者が証拠隠滅のためにやった事という有力な証拠が挙がったのだ。

実はその証拠はルリが捏造したものだったりするが、それが事実なのだから全く問題無しである。

これによりアキトの罪状に民間人の大量虐殺の項目は消えた。

明らかになっている彼の罪のうちあと主な物は軍へのテロ行為であるが、それにした所で殆どが火星の後継者の一味であった事はほぼ明らかになっており、情状酌量の余地は望める筈だった。やりようによっては数年の懲役刑で収められる見込みも十分に有るのだ。

そのような事を熱心に話すルリをアキトはただ静かに見つめていたが、話が一段落した所で口を開いた。

「違うよ、ルリちゃん。帰らない理由はそんな事じゃない。」

「だったらどうして!?みんな待ってるんですよ!!ユリカさんなんてアキトさんが何時帰ってきてもいいようにあの部屋で暮らして、屋台も用意して!!」

「チキンライスの味、違ってただろ?」

その一言で、ルリの話しているうちに熱くなっていた頭は一瞬で冷えた。

「それ、は…………」

表情に出したつもりは無かったが、やはり気付かれていた。思えばナデシコ時代から、恋愛にはやたらと鈍いくせに人の感情の機微には驚くほど鋭い所の有ったアキトなのだ。

「感覚は戻ったけどね、自分の味が思い出せないんだよ。たぶん、ラーメンの味もあの頃とは変わってると思う。」

「そんなの、私たちが覚えてます!!」

「違うんだよ、ルリちゃん。そういう事じゃない。そういう事じゃないんだ……。」

そう言って立ち上がると、アキトは窓際から外を眺めた。

 

「年月が経つうちに味が変わっていくのは料理人なら当たり前の事さ。料理って言うのは絶え間ない創意工夫の集大成なんだからね。自分の味に満足した料理人は終りだよ。」

ルリにはアキトが何を言いたいのかさっぱりわからなかった。

料理の味が変わったと言うが、アキトの味を覚えているものは大勢いる。

自分たちの記憶に合わせて修正していけばすぐに昔の味を取り戻せる筈だというのに。

そんなルリの戸惑いに気付かない風にアキトは続けた。

「人間の人生も同じ事だよ。奴らに捕まってた一年、復讐に明け暮れた二年。今更それを自分の中から消し去って昔の暮らしに戻る事は出来ない。」

「もう、終わった事じゃないですか!」

「……終わってなんかいない。いいや、終わる事なんて無いさ……。」

 

 

「……長引きそうね。」

「デ、イツマデ悪趣味ナ盗ミ聞キシテルツモリダイ?」

「もう止めるわよ。」

居間の出入口から離れて廊下を歩きながら、蘇羅は緑色のボールに二つ目を付けたようなLEONの外部端末に訊ねた。

「阿耶芽と美夜呼はどうしてる?」

「現在、二階でラピスさんを着せ替え人形にしています。」

「はあ……、あの子達も好きねえ……。」

「自分ダッテ此処二来ルタビニらぴすニ御土産持ッテ来テタクセニ。」

「…………ほっといて。」

せっかくだから自分も混ざろうと階段を上りながら、ふと思いついて蘇羅はLEONに訊ねた。

「アキトさんはともかくとして、そういえば彼女たちはどうしてる?」

「鍛錬に明け暮れていますね。阿耶芽に負けたのがよほど悔しかったようです。」

「あはは。こてんぱんにやられてたからねえ。」

「それがいい刺激になったようですが。」

「世ノ中何ガ幸イスルカ解ラナイヨナ。」

 

 

「次から次へと死んでいったよ。最初同じ部屋に入れられた三十人が一ヶ月で半分になった。」

アキトの話は続く。

「忘れてしまえれば楽かもしれない。でも、忘れるわけにはいかない。俺が忘れてしまえばもう、あの人達の苦しみを覚えている人間は誰もいなくなってしまう。人類の進歩と発展とかいう物の為に無かった事にされてしまう。そんな事は許せなかった。」

「アキト、さん…………。」

話を聞きながらルリは自分が考え違いをしていた事を唐突に悟った。

アキトのこれまでの様子を見て昔に戻ったような気になっていたが、それはとんでもない誤解だったのだ。

今自分の目の前にいる男は、自分の知る四年前のどこか危ういコックの青年ではなかった。

想像を絶する地獄を潜り抜け、それに潰される事無く立ち直った、鞘に収められた剛剣だった。普段はその刃は覆い隠されているが、必要なら何時でも抜き放たれて人を斬る事が出来るのだ。

「助け出されて、五年の命と言われて、エリナやイネスさんが薦めたように大人しく療養生活をしていても良かった。けど、それは負けを認める事だ。人生も、感覚も、ユリカも奪われて、意地まで奪われる訳にはいかなかった。だから誓った。何をしてでも奴らの企みを叩き潰してやる。唯一人の生き残りとして、理想とか正義とかいうおためごかしを振りかざしていい気になっている奴らに踏み躙られた者の痛みを思い知らせてやる、ってね。」

そう言いながら、アキトは何かを押さえ付けるように窓に掛かったカーテンを握り絞めていた。

「……そんなの、木連と何が違うんですか……。」

「……その通りさ。かつて踏み躙られた者達の子孫が今度は自らが踏み躙った相手に復讐される。なかなか皮肉が利いてるだろ?」

「そんな…………。」

「あの復讐に関して誰にも文句は言わせない。第三者の分際で復讐など無意味だというなら少なくとも俺たちと同じ目に遭ってから言って貰う。その上でまだ同じ事を言えるようなら俺は無条件でそいつの下僕になってやるさ。靴を舐めろと言うなら舐めてやるよ。」

目の前が真っ暗になっていくような錯覚をルリは覚えていた。自分が話している相手は、本当にあのアキトなのか?そんな想いが顔に出たのだろうか、アキトの顔にもそれまでとは違う寂しげな表情が浮かぶ。

「後悔はしない。仲間達と自分自身の為に、奴らを放っておく事など出来なかったから。自首する事は出来ない。それはあの復讐を罪と認める事だから。それは仲間達への裏切りだから。だから……、帰ることは出来ない。」

「ユリカさんはどうするんです!!」

泣きそうな目で縋るように叫ぶルリに、アキトは聞き分けの無い子供を見るような目で言った。

「人は変わるんだよ、ルリちゃん。前に言ったろ?君の知っているテンカワ アキト、ナデシコのコック兼パイロットでユリカの王子様のテンカワ アキトはもう、あのシャトル事故で……死んだんだ。」

そう言うと、アキトは居間の出口に向かって歩き出した。

「アキトさん!!」

何が言いたいのかもわからず立ち上がって叫ぶルリに向かって、アキトは振り向かずに言う。

「帰ったとしても、もう昔の暮らしに戻る事は出来ない。……今日の戦闘の間もね、蘇羅ちゃんを心配して焦る自分の外に久しぶりの命の遣り取りにどうしようもなく血の騒ぐ自分が居たんだ。もう、俺は日の当たる世界を堂々と歩ける体じゃなくなってるらしい。」

「……………………。」

言葉が出なかった。アキトはもう「決めて」しまっている。決断が遅く優柔不断ながら、一度決めた事は梃子でも曲げない。ルリの知るテンカワ アキトとはそういう人間だった。

「樹雷からもガードをつけてくれるそうだ。これからはそうめったな事にはならないと思う。……明日、ネルガルまで送るよ。後はアカツキ達がうまく誤魔化してくれるだろう。……おやすみ。」

そう言い残してアキトが出て行き、自分以外誰もいなくなった居間で、ルリはただ項垂れてソファに座り込んだ。

 

 

「アキト……、いいの?」

廊下に出ると、派手に着飾ったラピスが心配そうに立っていた。どうやら着せ替え人形にされている最中に逃げ出してきたらしい。

「今更だよ。……何もかも今更さ……。」

そう言うと、アキトはゆっくりとラピスの頭を撫でだした。ラピスは気持ちよさそうに目を細める。

ルリに話した事に強がりは無かった。

この半年の穏やかな生活にも満足してはいたが、その中で自分の中に燻る何かを常に感じてはいたのだ。

それが何なのか、これまでは解らなかったが、今日はっきりと自覚した。

それは、戦いへの渇望だった。一瞬の判断が生と死を分ける戦場を求める心だった。

その闘争心を無理に封じ込め、平和な日常に溺れれば自分は何時か間違いなくおかしくなる。

だからこそ、ただ平和な日常を望むユリカと共に居ることはできない。

しばらくはもつだろうが、いずれ必ず破綻が訪れる。それがはっきり解ってしまったのだ。

既に自分の中でユリカへの気持ちに整理がついてしまっている事をアキトははっきりと認識していた。

「樹雷に行くの?」

「ああ……。今日の事で決心がついた。……ラピスも来るか?」

「当たり前の事聞かないで。」

口を尖らせるラピスに笑いながら謝るアキト。

「すまんすまん。…それはそれとして、良く似合ってるぞ、ラピス。」

「…えへ、そうかな?」

 

 

 

翌日、月のネルガル本社 会長室。

「ルリ君の行方はまだ掴めないかい?」

珍しく真剣な顔でアカツキが言う。

現在中間報告のため一時捜索を部下に任せ、プロス、ゴート、月臣にイネスまで集まっていた。

エリナは当然執務机の脇に立っている。

「地下駐車場への通路で戦闘の痕跡が有りましたが、遺留品その他一切見当たりません。」

「ほぼ同時刻、月軌道上にて強力なジャミング反応と共に相転移兵器に匹敵するエネルギー反応が検出されています。」

「以上の事から見ましても、ルリさんの身柄を争って少なくとも二つ以上の組織が争ったものと思われます。それもかなりの力を持ったものと。」

アカツキはプロスとゴートの報告に頷き、視線を月臣に向けた。

「クリムゾンに大きな動きは無かった。あの花火はおそらく火星の後継者と考えて間違い無かろうが、何者かがそれに便乗して細工したと考えるのが妥当だろうな。」

「やれやれ、クリムゾンや火星の後継者だけでも頭が痛いってのに。これ以上は勘弁してもらいたいんだけどね。」

「私からもいいかしら?」

イネスが口を開いた。

「建物内の警備システムは最初から支配されていたわ。まるでシステムの制御の中枢が勝手に他所に移ってしまったかの様に見事に乗っ取られていたわね。それもどんな手品を使ったか知らないけど、全く侵入の痕跡が無いのよ。システムの中に突然現れたとしか思えないような見事な手際だったわ。」

その言葉に反応したエリナが呟くように言った。

「……ラピス?」

「そうね。あの子ならそれくらい出来るでしょうけどそれでも少し苦しいわ。仮にラピスがハッキングをかけてアキト君がルリちゃんを攫ったのだとしても、それだと地下通路での戦闘が説明できない。敵対する二つの組織の争いに便乗してアキト君が彼女を助け出したと仮定しても、ラピスが隠蔽しなくてはならないのはアキト君の事だけの筈だもの。地下の戦闘を隠さなくてはならない何らかの事情があったとしてもヒントくらいはシステムの中に残していく筈よ。アキト君がルリちゃんに害を成す存在を放置しておく筈が無いものね。この点から見ても……」

「あ〜、もうその辺でいいよ、ドクター。」

イネスの長広舌を遮るアカツキ。喋り足り無そうなイネスを無視して一同を見渡す。

「いずれにしても今回の件では流石にテンカワ君も動くだろう。ルリ君を攫った相手の目的どころか正体も掴めない現状では受身にならざるを得ないが、君達も不測の事態への対応の備えは十分に……しておく必要も無いかな?これは。」

「会長?何を?」

急に口調の軽くなったアカツキに不審気な声を出したゴートも、その直後背後から響いてきた会長室の入口のドアの開く音に振り返る。

「ええ。厄介事はもう収まりましたよ。」

そう言って部屋の中に入ると、ルリは静かにドアを閉めた。

 

 

「そんな事がねえ……。話したのが君じゃなかったらいい病院紹介する所だけど。」

今だ半信半疑の様子のアカツキと一同。

「信じてくれとは言いません。ただ、事の経過だけは事実です。アキトさん自身にもう帰るつもりが無いことも……。」

「君らしくない台詞だねえ。諦めるのかい?」

顔色は悪いながらも落ち着いた様子のルリに揶揄するような調子で問い掛けるアカツキ。

その問いを無視するようにルリは言う。

「しばらく、この話はこの場だけの事にしてください。もちろん、ユリカさんにも。」

「ちょっと、ホシノ ルリ?」

眉根を寄せてエリナが反論しかけるが、ルリの次の言葉には口をつぐまざるを得なかった。

「ユリカさんには、自分で話すそうです。」

 

 

 

 

「ふう……、ルリちゃんが無事助け出されてまずは一安心だけど、これからまた忙しくなりそうだなあ……。」

南雲の乱の後再び地上勤務に戻されたユリカは現在宇宙軍参謀本部勤めである。

火星の後継者に拉致されていたルリも無事救出され、地球の作戦本部に泊り込みで気を揉んでいたユリカはひとまず着替えを取りに家に戻っていた。木造アパートの階段を登りきると、自分達の部屋の前に人影が立っていることに気付く。

「……?誰かな?」

一瞬不審者かと思ったが、すぐにそれが待ちわびた人物だと気付いた。

「アキト!!帰ってきたんだね!!」

喜色満面で駆け寄るユリカ。

彼女に背を向けていたその黒いロングコートの男はゆっくりと振り返った。

「…………久しぶりだな。ユリカ……。」

 

 

 

 

 

 

 

「……で、母さんからの荷物ってこれ?」

「はい。私たちも中身については伺っておりませんけど。」

『帝釈』のカーゴスペース。

初音から預かってきた荷物があると聞かされ阿耶芽に案内されたそこで、蘇羅は胡散臭そうな目つきで問題のコンテナを眺めていた。

「……ま、眺めてても仕方ないか。開けてみましょ。」

 

 

「……………………何よこれは。」

コンテナの中身を見ながら半眼でぼやく蘇羅。

「あら、可愛いじゃ有りませんか?」

何やら気に入ったらしく、その脇でにこにこ笑いながら胸の前で両手を合わせている阿耶芽。

「全く……、大体読めたわよ。母さんったら……。そういうつもりなら最初っから言いなさいよね。」

蘇羅はこめかみを押さえながら疲れ果てた調子で深々と溜め息をついた。

「……あの悪党!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

月の軍施設内にて、あてがわれた部屋の中でルリは書き上げた二通目の手紙に封をすると、一通目と重ねて机の上に置き、立ち上がった。

何かを決意した人間の顔をしていた。

 

 

 

 

                                                                          続く

 


後書き

自虐の塊のアキト君はそこら中で見かけますので、うちのアキトは一皮剥けていることにしてみました。

もし犠牲者の遺族が目の前に現れたとしても復讐か諦めるかを鉄砲玉で選ばせる事でしょうし、復讐を選んだなら容赦なく返り討ちにするでしょう。

さてさて、いかがな物でしたか?

ユリカとの事ですが、長年付き合った恋人同士でも別れる事は大して珍しくありません。

生き方が違ってしまったなら共にいることは出来ませんし、そうなってしまったならとっとと別れた方がお互いの為です。

まあ相手の気持ちを無視した一方的な通告である以上は、逆をやられても文句は言えないかもしれませんが。……なんかトレンディードラマ論みたいになってきたな。

あと、LEONの移動端末はハ○です。念のため。

「まあ、それはお好きにしてくださって構いませんけど。」

おや、初音様。どうなさいました?

「次回は出番をいただけるんですよね?」

はい、それはもう。

「そうですか。安心しました。」

「……出さなくても良いのに。」

「あら、どうして?」

「母さんが出てくると誰かが不幸な目に遭うからに…あいたたた!」

「もう、蘇羅ちゃんったら。母さんを悪く言ういけない口はこの口かしら?…あら、細面のわりにけっこう伸びるわね。(くすくす)」

「ひほのはほへはほほははひへ(人の顔で遊ばないで)〜〜〜〜!」

 

 

 

代理人の感想

う〜〜〜〜〜〜む。

面白いは面白いんですが、天地である意味が余りないような(爆)。

 

後、ユリカが「それでもアキトについてゆく」と言って、それを実行したら

アキトはどういう顔をするのか・・・・ちと興味のある所ですね(笑)?