「しくしくしくしくしくしくしくしく……………………」 キュィィィィィィィィィィ
「セブン、いつまで泣いているんですか。一体なにが不満なんです」
「不満だらけです!!マスターも響美輝さんも鬼です!悪魔です!人間じゃないです〜〜〜〜〜!!」 キュィィィィィィィィィィ
「だから一体なにが不満なんです?そんなかっこいい姿にしていただいたっていうのに」
「私……、私……、ほんの三年前まで聖典だったのに……、聖典だったのに………………」 キュィィィィィィィィィィ
「みゃう……………(ぽむ)」
「……………………(ぽむ)」
「魎皇鬼さん、レンさん……。慰めてくれるんですか?」 キュィィィィィィィィィィ
「みゃ…………」
「………………」
「うぐ……、ひっく……、ぐしゅ……、わたし、わたし、汚されちゃいましたあああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」 キュィィィィィィィィィィ
「みゃぁぁぁぁぁ………………(抱き)」
「……………………………(なでなで)」
機動戦艦ナデシコ
嵐を呼ぶ乙女達
樹雷編
第三話 ワルプルギスの午後
「ねえねえねえねえ!新しいパワードスーツのテスト手伝って欲しいんだけど♪」
「あんたのパワードスーツ……?」
アキト達が樹雷入りして二週間。
とにかく最低限日常生活には不自由しない程度の読み書きはできなくてはラピスの就学すらままならないので、蘇羅ともう一人に先生役を務めてもらって現在必死に勉強中のアキト達である。
個性的に過ぎる同僚達、特に北斗の中のもう一人の人格、枝織の存在に面食らったりもしたが、現在はどうにか良好な関係を築いている。
そんなある日、やたらとはしゃいだ調子で飛び込んできた響美輝の声に対して、蘇羅は熱意の感じられないじと目で振り返った。
「確か前に試作した奴は暴走して332層の庭園一つ火の海に沈めたっけね」
「不幸な事故だったわね。シェラさんの物を破壊する才能を甘く見てたわ」
「…………あんたって子は…………」
完全に本気の顔で答える末の妹のまったく悪びれない姿に、思わず眉間を押さえる蘇羅。
そんな苦悩する長姉の姿を見かねて、もう一人の先生役である紫の髪と瞳を持つおかっぱ頭の少女が代わりに質問した。
「それで、今度はどんなものを作ったんです?」
「よくぞ聞いてくれました!!これまでのパワードスーツの弱点の一つだった乗り込む際の隙を極力軽減する事を目標として、着用者は普段はマーカーを所持!必要に応じてキーワードを口にする事によってマーカーから信号が送られ母艦から着用者の身に直接装着されるようにスーツが転送されてくる画期的システム!さあ蘇羅姉これを腕にはめて叫ぶのよ!
蒸○と!!」
「………………パス」
突き出されてきたブレスレットをぺし、と手の甲ではたいて練習問題の添削に戻る姉を信じられない物を見る目で見つめる響美輝。
「なんで!?そりゃ設定上の制約で飛行能力すら無いけどちゃんと銃だって追加してるのに!!」
「……私エージェントで刑事じゃないし」「ううっ、痛いところを……」
そういう問題だろうかと思いながらも口を挟むと巻き込まれそうなので、黙って見ていようと目で会話するアキトとルリ。
わくわくしているような目のラピスがなんか心配だったが、響美輝がまたなんか妖しいシロモノを持ち出してきたため注意をそちらに向ける。
「もー、しょうがないなー。それじゃこっちの方はどうかな?」
「ガラス球?」「なんか文字が浮いてますね?」
「あんたねえ…………」
目の前に突き出されてきたガラス球を辟易した様子で眺めながら、蘇羅はふと頭に浮かんだ疑問を問い質した。
「そう言えばあんた、こういうがらくたの開発費一体どこから融通してるのよ?船には母さんがお金出してくれるって言っても、大和方式にも限界があるでしょ?」
旧日本海軍が戦艦大和、武蔵を建造する際、その予算から艦の規模が漏れるのを嫌ってとった方式にちなみ、さまざまな名目で用意された予算の内から目立たないように少しずつカネをくすねてくる手口を大和方式と呼ぶ。
「失礼な事言わない!!全部あたしのポケットマネーよ!!」
「ならなおさらよ。どうやって稼いだの?」
その問いを待ってましたと言わんばかりにえへんぷいと薄い胸を張る響美輝。
「ふっふーん!『帝釈』を量産向きに再設計したコストダウン版の改帝釈級が樹雷通常艦隊の次期主力艦に正式に決まってね。今左団扇なのよね〜〜♪」
「…………何てこと」
蘇羅はその答えを聞いて思わず右手で顔を覆った。手元不如意でもろくな事しないのに、まとまった金なんか持たせたら一体何をしでかすか。
妹の資産凍結を本気で検討しだす姉の内心などお構いなしに、響美輝は勝ち誇った様子で再び蘇羅にガラス球を突きつけた。
「さあ、人を横領犯扱いした詫びにおとなしくこいつのテストをしてもらいましょうか?」
「う…………」
普段ならば断固拒否する所だが、流石にこの場では分が悪かった。しぶしぶながら承諾する蘇羅。
「わかったわよ。で?これはどういう代物なの?」
「うん。基本フレームはみんな一緒なんだけどね、追加装着するオプションパーツでいろんなバリエーションを持たせようって言う発想で
今のところ四種類完成してるの。最終的には十一タイプを予定してるんだけど。」
「……で?どんな恥ずかしいキーワードがあるわけ?」「わかってきたじゃない♪」
最初からうんざりしながら説明を聞いている姉の様子に全く気付く気配も無しに親指を立てる響美輝。
「はいそれじゃあ右手はこう上に、うん左手は前に出して、そうそう。さあ右手も前に出して中腰でこう印を結びながら気合いを込めて叫ぶのよ!
武装――っ、○空――――――!!」
ガンッ!!
○珠を力一杯床に叩きつける蘇羅だった。
てん
「なんでよぉ!この鎧を嫌がるなんて、天としての自覚が足りないわよ蘇羅姉!!」
けんだっぱ
「乾闥婆のくせして楽器類は全滅でアニソンばっかり歌ってるあんたに言われたくないわよ!!」
「そんな事言わないでさあ〜〜〜、ほら、武器は飛び道具だよ?」
「いらないわよ!大体空で弓ならシエルさんの方がお似合いでしょ!!おあつらえ向きに黄色だし!!」
「あの、止めた方がいいんじゃ?」「いや、こうなったらもう遅い」「そうなんですか?」
こそこそと会話するアキトとルリと蘇羅との付き合いの浅いおかっぱ少女。
この半年の付き合いでアキトには蘇羅の行動パターンがある程度把握できていた。ただでさえ休暇中だと言うのに同僚たちの連日の珍プレーの後始末にイツキと一緒に駆け回らされているのだ。ここは言いたいことを徹底的に言わせてガス抜きさせてやらないと爆発すると判断したのである。
「ん〜〜、それも考えたんだけどね」
「ならそうすりゃ良いでしょ!!貢物にボ○カレーの一ダースでも持ってけば喜んで引き受けてくれるわよ!!」
頭に血が上っているせいか、本人に聞かれたらヴァチカン式精神鍛錬房にご招待間違い無しな暴言を吐きまくる。
「いやー、あの人前に頼まれて作ってあげたのに今夢中なんだわ」
まいったねーと頭を掻く響美輝だったが、姉の次の発言にはかちんと来たらしく、大声で反論する。
「ふん!所詮あんたの趣味のがらくたなんてその程度の興味しか惹かれないって事じゃない!」
「そんな事ないもん!!北斗さんや枝織ちゃんは大喜びだったよ!?得物があー姉と被るのがちょっとだけ不満そうだったけど!!」
「北斗……、お前って奴は……」「……所詮は木連人でしたか」「あは、あはははははは………………」
引きつった顔で空虚な笑いを浮かべるしかない北斗達の乗艦である帝釈級二番艦『インドラ』の制御AIにして生体アンドロイド、キャティ・ネビュラート嬢であったとさ。
「ちょ、ちょ――……りゅ――……」
「零ちゃん、声が小さいよ!!必殺技はもっと大きな声で元気良く!!」
「ねえ、どうしてもやらなきゃ駄目?」
「駄目!!二人で無いと合体波はできないんだから!!」
「あ、アキトさんには闇○将の鎧なんかどう?」「いや、けっこう」
「あなたとの腐れ縁もいい加減長いですが、そろそろお互いに決着をつけてもいい頃と思いませんか?」
「その意見には全く同感だけどさ……、なに?その格好」
彼女、アルクェイド・ブリュンスタッドの目の前に居るのは確かシエルとかいう元なんちゃって女子高生のカレーを守る人の筈なのだが、今の格好はなんとも現実感の湧かない物だった。
「ふう…………。カレーの食べすぎでとうとう脳がやられちゃったみたいだにゃ〜〜」
「ふっ。せいぜい吼えていなさい」
二本角と四本アンテナの青緑色のヘルメットを被って余裕の笑みを浮かべるシエルだったが、実際彼女のその姿は余りにもアレだった。
「ふふふふ、シエルヘビーアームズカスタムとでも呼んでいただきましょうか?」
…………早い話が、等身大モビルスーツ少女。
上腕部や腿は剥き出しな所が更にいかがわしさを助長している。
アルクェイドならずとも、呆れて物も言えないという見本のような格好であった。
「中身のボリュームの問題で胸のガトリングは流石に無理でしたが、重火器の恐ろしさという物をあなたに思い知らせて差し上げるには十分です」
どっかの妹が聞いたら血涙流しながら吼え猛りそうな事をさらっと言いながら両腕の純銀弾装備のダブルガトリングを構えるシエル。
「……どーでもいいけどさ、そんな重たそうな物着込んでまともに接近戦できるの?」
「当然前衛も用意してありますよ。セブン!!」
その呼び声にあわせて、彼女がそこに現れた。
内心、両腕塞がってるのにどうやってアレ振り回すんだろうと考えていたアルクェイドもその姿に流石に目を剥く。
「しくしくしくしくしくしく…………」キュィィィィィィィィィィ
そこには、かつては一角獣の角と聖典だったという第七聖典の変わり果てた姿があった。
両肩から撃ち出される予算の関係で一回しか撃てない大量の純銀ベアリング弾。
左腕に固定されたこれまた予算の問題であまり装弾数は無い純銀弾の三連チェーンガン。
接近戦主体の設計のため、そもそも飛び道具はあまり重視されていないのだ。
パイルバンカー
最大の武器であり、本体でもある右腕の杭打ち機。
だが、そんな物々しい装備が霞んで見えるほどの圧倒的な存在感がそこにはあった。
オリジナルにはヒートホーンが装備されていたその場所に設置された、
ドリル。
キュィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ
それも唸りを上げて回転中。
改修者コメント「いやー、そのままダウンサイジングしても面白くないし、元一角獣って話だし。あの角って回転しそうに見えない?」
「響美輝さんの全面的な協力の元徹底的な改修を行い、自律判断、自律行動、自律戦闘を可能とした最新式対あーぱー戦闘用概念武装!!」
強襲型鋼鉄重装第七聖典、ななこアイゼンであった。
「う…………」
本来警戒すべきはその右腕である筈なのに、ななこの額で唸りを上げるその物体の脅威に思わずたじろぐアルクェイド。
あらゆる理屈を超越する圧倒的威圧感がそこにあった。
純白の吸血姫ともあろう者が自分の額から生えているモノに気圧されている事を敏感に感じ取り、それ故に更に「泣き」の入るななこ。
「しくしくしくしくしくしくしくしく…………」ギュィィィィィィィィィィィィィィィ
そして更に回転を増すドリル。
体の持ち主がブルーな気分になればなるほど回転力の増す機構になっており、それが更に悲しい気分を増幅する。まさにネガティブ無間地獄。
彼女の身体を改修した趣味人が、喜ぶに違いないと完全に善意で気合いが入るほど回転が上がる機構を組み込んだ筈が、回路を逆に繋ぎ間違えてしまったが故の悲劇であった。
「……さて、そろそろ始めましょうか」
「ううっ、やだなあ」
構えるシエルと引くアルク。ななこの泣きっぷりを見せられた後では尚更である。
どうにもテンションの上がらない自分を自覚するアルクェイド。このまま戦闘に突入しては思わぬ不覚を取りかねない。それ故に、彼女は一つの決断を下した。
「……よし!決めた!」「……何をです?」
胸の前で両手を握り締めてそんな事を言う彼女に警戒の視線を向けるシエル。何か仕掛けてくるかと身構えたが、目の前の白猫は意外にもくるりと背を向けて逃走を始める。
「てったい、てったい、てった〜〜〜〜い!!」
「あ〜〜〜〜っ、待ちなさ〜〜〜〜〜〜〜〜い!!」
「精が出るな」
そう言いながら部屋に入ってきたその人物に、鍛錬の手を休めて男は目を向けた。
「もう動けるのか。……調子はどうだ?」
「くく。上々よ」
「…………そうか」
無言で筋トレの続きを始める男。
「それにしても……、主が彼奴らに荷担するとは予想外であったな」
「…………意外か?」
「我には関係の無い事であるがな」
「…………全てが潰えた今となっては、あの方の無念を晴らす以外にやりたい事など無い。……それだけだ」
続く
改帝釈級高速戦艦
皇家の船によって構成される無敵艦隊で知られる樹雷軍であるが、その辺境宇宙に広がる広大な版図を守る艦艇の殆どは当然ながら通常の宇宙戦艦である。
その主力たる八武瀬級戦艦の旧式化による世代交代で樹雷軍が新たに採用したこのシリーズの性能は、全銀河の軍事、造船関係者の度肝を抜く驚異的なものであった。
信頼性、生産性を優先したためオリジナルの帝釈級にくらべて70%ほどに抑えられたが、それでも従来の八武瀬級とは比較にならない機関出力を誇り、そのパワーによってかつては航宙艦には搭載不可能とまで言われたエタニティーフィールドの展開を連続三十秒とはいえ量産艦としては初めて可能とした。
これにより、改帝釈級は要塞並の防御力を得る事となり、護衛艦を置いて行きかねない機動力、砲数を犠牲にした代わりに速射砲並の射撃間隔の主砲などと併せて、戦艦という艦種の概念そのものを変えてしまったのである。
数々の改良を加えられながら千二百年の長きに渡り樹雷軍の主力艦の地位を守りつづけたこの一連のシリーズの活躍は今もって語り草であり、銀河の戦艦史を語る上で決して外す事の出来ない巨大な転換点の一つであろう。
武装 主砲 反陽子砲×6
連装プラズマショック砲×8
連装レールキャノン×10
四連装対艦ミサイルランチャー×2
八連装多目的ミサイルランチャー×4
後書き
前回からもうかれこれ二ヶ月近くです。
これだけのボリュームに何でこんなに時間掛かるんでしょう。
謎です。
自分の遅筆に我ながら呆れております。
参りました。
「……だからってなんでこんな姿にならなくちゃならないんです……」
まあそう言うな。悪い事ばかりじゃないぞ?フルアーマーのお約束として全ての装甲は一瞬で強制排除できる。本体だから右腕だけは無理だが。契約相手以外とも普通におしゃべりできるぞ?ドリルだって取り外し可だ。流石に危ないし。
「……だったら最初から普通のアンドロイドにして欲しかったです」
それはしょうがない。あの姿になるのは樹雷編開始以前からの予定だったからな。
「その予定を曲げてくれたって良かったじゃないですかと言ってるんです!!」
嫌。
「……どうして」
俺が作者だから。
「……………………鬼」
ふっ、当然だ。作者とかRPGのマスターとかいう肩書きのつく人種はそう呼ばれると昔から相場が決まっておるわ。
「しくしくしくしくしくしく……………………」
※作者注 私は絵が好みでなかったんで某タービンロボは全く見ておりませんので、そっち方面は全く無関係です。どうか誤解のないようにお願いいたします。
代理人の感想
こ、これは・・・・・・・・・・・・・・・・ムゴイ、ムゴすぎるよ!
笑えるけど(爆)。
>胸のガトリング
・・・・・・・どーせなら生体改造して光子力ミサイルでも取りつけたらどーですか(すでに投げやり)