えりなせんせいといっしょ!エピローグ『終点の刻』
<日本国内某所某マンション一室>
「ラピス、つまみ食いは止めなさい」
エリナ・キンジョウ・ウォンは、いろいろ写真の載った本を見ながら、横目で注意した。
「は〜い、これで最後にする♪」
テンカワ・ラピス・ラズリが答えた。
でも、その口元はチョコレートで汚れている。
先程から指先でつまみ食いをしている成果である。
「イネス、キッチンにメスシリンダーとかビーカーを持ち込まないでよね」
精密秤やメスシリンダーで、先程から何種類かのチョコレートの分量を
キッチリ測定しているイネス・フレサンジュにも注意した。
「あら、おかしくないわよ。私は、いつもこうだもん♪」
そう言うイネスの姿は、白衣にエプロン。
しかし、試験管やら三角フラスコまで持ち込んでいるから、研究室と様子は変わらない。
「それに、エリナの方こそ、本を見ているだけで、全然進んでないじゃない?」
「仕方無いでしょう、初めてなんだから、こういうの作るの」
エリナがブーたれる。
「あら、学生の時は作らなかったのかしら?」
「贈りたい相手がいなかったわ」
「義理とかは?」
「買うか妹に作ってもらってた…」
「虚しいわね」
イネスが遠い目で呟いた。
話から大体想像つくかもしれないが、今日はバレンタインデー前日である。
時期外れとは言わないように(笑)
「貴方も贈る相手なんかいなかったでしょうに、良く言うわね〜」
「あら、私は昔からいつもこの時期は大忙しだったわ」
チョコを手馴れた手つきで湯煎しながら、イネスは答えた。
「え?」×3
「この時期のチョコレートはみんな食べてくれるから、良い結果が得られたわ」
「………何人か殺した、イネス?」
「失礼ね〜、病院までしか逝かせてないわよ」
イネス……学生時代もさぞかし美人だったであろうが、お友達にはなりたくない人である。
ところで、『「え?」×3』……『3』?
「エリナさん、次は何を入れるって書いてますか?」
ボールと泡立て器を抱えた、テンカワ・ルリが尋ねた。
「え、え〜と、……溶かしたバターに砂糖を混ぜた後ね……卵黄を3個入れて…」
「卵ですね」
テケテケテケ…
作業台にボールを置き、冷蔵庫に走るルリ。
こちらは、どうやらチョコレートケーキに挑戦しているようである。中々に無謀な二人である。
初心者は、材料チョコを溶かし、固め、デコレーション用チューブでメッセージを入れる方が良いのだが…
おそらく、意外なイネスの手際に触発されての事と思われる。
アキトに手渡し食べるのは同じ場所。ここで、差をつけられたくないというのは、乙女の決意であろう。
今、アキト他4人は同居をしている。
残念ながら、ラピスも含め部屋はそれぞれ別であるが。
そう、ルリも同居しているのである。
ヨコスカシティで無理矢理別れさせられ呆然自失のルリに、
エリナが『冗談よ、早くしないと、本当に置いていくわよ』と声をかけたのだ。
エリナの言葉がルリの脳髄に届くのにしばらく時間がかかったが、
ルリが我に返った時、泣きじゃくりながらエリナの胸元を叩き、『酷いです!』を連呼している自分を発見した。
頬を真っ赤に染めてスゴスゴと下がろうとするルリをエリナは抱きしめ、頭を撫でてやりながら言った。
「一緒に暮らしてくれるかな?」
「……はい」
こうして、女子トイレに御篭りを続けるユリカちゃんと出遅れを最後まで取り戻せなかったメグミを残し、
5人はナデシコを後にした。
その後、アキトはルリとラピスの養親になり、現在に到るわけである。
決して、プロローグのあとがきで某艦長よりは良い扱いをすると書いた手前の言い訳ではない。
何故なら、ルリは知らない。
火星出身のアキトが日本国籍を取得してあることを。
そして、この国に古い法律がまだ残っていることを。
その法律とは…
民法736条
[養親子関係者間の婚姻禁止]
その内容とは、
養子と養親の婚姻は禁止、親族関係がなくなっても駄目という事である。
(感想掲示板の全ての法律関係者に多大な感謝を捧げます(笑))
エリナ「さぁ、アキト君をぜ〜ったいびっくりさせるわよ!」
ルリ&ラピス「おう!!」
イネス「フッ、精々頑張りなさい」
エリナ&ルリ&ラピス「ムッ!負けないんだから!!」
エリナがイネスとの勝負に勝つのが先か?
ルリが法律に気付き、法律改正か他国籍取得に動くのが先か?
全ては、歴史が証明してくれるであろう…
完
<あとがき>
『えりなせんせいといっしょ!』ご愛読ありがとうございました。
こんな拙い話を最後まで読んで下さった方、そして、感想を下さった方、本当にありがとうございました。
更に、毎回、面白い感想を付け足して下さった代理人様もありがとうございました。
そんな皆様に改めて、言わせて下さい。
『劇場版ナデシコ』を見た事がない私の話を、
それどころか、
『TV版ナデシコ』さえも見た事がない
私なんかの話を読んで下さって、
本当にありがとうございます!!
感謝感激に堪えません。
ああ!もう気分は、
『王様のミミは、ロバの耳』(核爆)
三平さん、ここに掲示板でお探しの愚か者が一人いたようです。
流石にこれでは、まぁ、あんまりですので(笑)、つけたしを少し。
TV版も劇場版も見てない訳ですが、過去の職業柄シナリオは大体知っていました。
ただ、これではナデシコにハマる訳はありませんよね?
そう、私がハマったのは、ナデシコというよりも、『時の流れに』と『ActionのSS』だったんです。
私の出すキャラはよく壊れると言われますが、
元々希薄でしかなかったナデシコキャラのイメージを皆様のSSで補完した結果になります(責任転嫁!)
つまり、壊れた訳でなく、元々壊れていたキャラに私の想像をブチ込んだ結果という事になります。
ちなみにビジュアル面の補完をどこに頼ったかと言うと、『ナデシココミック全4巻』…某大和になります(爆)
こんな私にシリアスが書ける筈がないと思った方、きっと正しいです(笑)
私をこの世界に引き戻してくれた、時なで作者Ben氏と代理人鋼の城氏と投稿作家の皆々様方に感謝を捧げ、
私のナデシコ連載の初めての完結編を終わらしたいと思います。
本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
代理人の感想
こう言うオチですか白い鉄さん・・・・・・・
実は私もなんですよぉっ!(核爆)
いや、TVも劇場も麻宮先生のコミック版も見てますけど、
そこそこ面白いと思いこそすれ「ハマる」ほどではなかったんですよね。
なんせ私「萌え」とは縁がない人ですし、
当時流行のエヴァも少し引いた所から眺めてましたから
エヴァ直系とは言わないまでも派生の一つであるナデシコには余り馴染めなかったのも
まぁ、当然と言えば当然ですか。
で、すっかり「過去の存在」だったナデシコですが某所で知り合った影竜さんに誘われ、
こちらへ来た時に「時の流れに」を見ました。確か西欧編が終わったあたりでしたね。
当時は投稿作家さんも10人ちょいしかいなかったんじゃなかったかなぁ(遠い目)。
そしてそれまでSSなんぞ書いた事もなかった私が
北斗が登場した時に閃いた物をキーボードに叩き付けて完成したのが「北斗異聞」。
それから色々あって現在は代理人などと言う稼業をやっているわけですが・・・・
「ナデシコだから」好きになったんじゃなくて「時ナデだから」好きになったのは白い鉄さんと全く同じなんですね。
ああ、すっきりした(笑)。
・・・・感想になってないというツッコミはご勘弁(爆)。